不安を乗り越え、大好きな歌とともに
新たなステージへ進みだした“あげい
ん”に訊く

ボーカルグループ・mono palette.として活動中のあげいんが、8月18日に恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブ『Rhodd』を開催することを発表した。

今回はmono palette.のリーダーとしてではなく、一人のシンガー・あげいんとしてSPICEに登場。インタビューでは、6年前に遡り動画投稿を開始したいきさつから、昨年末に発表された声帯ポリープ手術により“活動休止”から“復帰”といった現在にいたるまで、さらに8月のワンマンライブに向けてたっぷりと語ってもらった。
──2013年から動画投稿を開始されていますが、ご自身の歌をインターネットにアップしてみようと思ったきっかけというと?
僕、もともとはネットとかに全然詳しくなかったんですよ。でも、昔から歌うことが好きで、友達とカラオケとかにもよく行っていて。それで、ゲーム実況をニコニコ動画に投稿していた友達から、「歌うのが好きだったら、ニコニコに投稿してみたらいいんじゃない?」って言われたんですけど、「ニコニコって何……?」って(笑)。
──もうそこからだったんですね。
そうなんです。それでニコニコ動画を教えてもらって、いろいろと観るようになったんですけど、最初の1年ぐらいは動画のアップとかはしていなくて。でも、その頃に「ニコルソン」という配信アプリがあったんですよ。そこで普通の配信をしたり、スピーカーで音楽を流して歌っていたりしていたら、リスナーさんから「ニコニコ動画に投稿してみたら?」って。だからきっかけとしては、友達とリスナーさんに薦められたからですね。
──でも、「投稿してみたら?」と言われて、すぐにやってみようと思えました?
いや、僕はそもそもインターネットが怖かったんですよ(笑)。住所を特定されるとか、悪い話しか聞いていなかったから、最初は動画をアップロードするのが怖くて。それもあって、最初の1年は配信するだけだったんですけど、それを経て、インターネットってそこまで悪いものでもないんだなって。じゃあ投稿してみようという感じでしたね。最初は怖かったけど、だんだん好奇心のほうが強くなっていきました。
──昔から歌うのが好きだったそうですが、どんな音楽が好きでしたか?
小さい頃から、車の中で親と一緒に歌ったりしていたんですけど、実際に自分が憧れたり、影響を受けたりしたのはジャニーズでしたね。コンビニとかファミレスで流れている有線放送でNEWSの曲を聴いたときに、手越(祐也)くんの歌がすごくうまいなと思って。そこからいろいろ調べて漁るようになり、いろんなステージを観て感化されていきました。
──他のアイドルの曲も聴いていたりしたんですか?
そこまでゴリゴリに推していたわけじゃないんですけど、AKB48を好きな友達がいたので、その子と話を合わせるために、ちょっと追いかけていたときはありましたね(笑)。友達に誘われて秋葉原の劇場に行ったりとか、駄菓子屋さんとかに売ってる非公式のステッカーを無地の筆箱に貼ったりとか(笑)。
──「話を合わせなきゃ!」と思って、いろいろ勉強するタイプなんですね。
そこは今でもそうなんですけど、輪に入りたくて仕方ない人なんですよ。友達が楽しそうにしているところに、俺も入れてよ!って行っちゃうタイプなので。
──グループの中心にいるというよりは、そこに混ざりにいくタイプでした?
いや、昔から中心になって何かを動かしたりすることは多かったです。たとえば、みんなでどこかへ旅行に行こうという話になったら、いろいろ計画を任されることが多かったり、歌い手仲間でライブをやろうとなったときも、進めていくのが僕だったり。モノパレ(mono palette.)もそうなんですよ。
──あげいんさんがリーダーですからね。となると、輪の中心にいながらも、どこかの輪の中に入りたいという。
そうですね(笑)。すごく欲張りなのかもしれないです。いろんなものに興味がありすぎて、ひとつのことに集中できないので、「いろんなところに手を出しすぎないように!」って怒られるときもありますね(笑)。
──あげいんさんは音楽的にかなり幅広い楽曲を投稿されていますが、「こういう音楽が好き!」というツボみたいなものってあるんですか? 特にこういう感じの曲は引っかかるなとか。
最近は邦ロックとか、バンドの曲がすごく好きなので、そういうテイストのものをよく聴くし、歌いたい感じはありますね。あと、歌い手さんの中では天月さんがすごく好きなので、よく歌わせてもらっています。でも、「こういう音楽が好きだから歌う」というのが、まだ定まっていないところもあって。だから、とにかく自分が興味を持った曲をどんどん歌っていこうという感じではありますね。
──ここまで活動を続けてこられたあげいんさんですが、昨年末に、ポリープ手術のため活動を一時休止することを発表されました。以前から調子は悪かったんですか?
結構前から悪かったですね。僕が投稿を始めたのが高校1年生のときだったんですけど、高校2年生の秋口ぐらいに声帯炎になってしまって。それが治ってもずっと声が出しづらかったんですよ。でも、その頃に身長も伸びていたから、成長期だからかなって放置していたんです。そこから去年の夏ツアーが終わった辺りに、声が出なくなってしまって。おかしいなと思って、ずっと行っていた病院とは違うところに行ったら、「ポリープができているよ」って。それで、実は高校2年生のときに……という話をしたら、「そのときに小さいものができて、それが大きくなっちゃったんだろうね」って。
──ポリープの診断をされたときの心境というと?
びっくりしました。ずっと謎だった原因が解明された嬉しさはあったんですけど、「手術をするから」と言われて。その「手術」というワードが結構恐怖だったんですよね。どんな影響が出るんだろうとか、失敗とかあるのかなとか。
──不調の原因がわかった安堵感と、この先どうなるんだろうという不安が入り混じって……。
そうですね。それで今年の1月15日に手術しました。
──緊張しましたか?
すごくしました。オペ室に入るのも生まれて初めてだったので、全身麻酔をしてもらうまではすごく緊張しましたね。でも、「麻酔入りますよー」って言われて、パっと起きたらもう終わってました(笑)。
──あっという間だったんですね(笑)。でも、人によってはポリープの手術をすると声が変わることもありますけど、あげいんさんは?
そこまで変わらないなっていう感じはあって。うまくなっているのかいないのか、出しやすくなっているのかどうなのか、ちょっとわからないところはあるんですけど。でも、今まではポリープのせいで息がずっと変な漏れ方をしてたんですよね。それがなくなったかなとは思います。なんか、大きな変化はないですけど、小さいところで変わっているのかなっていう感じはしますね。
──今はリハビリをされているんですか?
はい。2月から始めてます。発声が悪くてそういうふうになってしまったので、今はボイストレーナーさんに付いてもらって、イチから型を作っていますね。
──今まで歌を習うことはなかったと思うんですが、実際にトレーナーの方から学んでみていかがですか?
いやあ、歌うのってこんなにも難しいのか……!って(笑)。今まではただ楽しく歌っているだけだったし、楽しいだけでいいやっていう感じだったんですけど、いざ学んでみると、使わなくちゃいけなきゃいけないところとか、考えなくちゃいけないことが多くてパンクしかけてます(笑)。
──難しさは感じながらも、歌うのはやっぱり楽しい?
楽しいですね。手術してから1ヶ月ちょっとの間はまったく歌えない状況で、声も1週間ぐらいは出しちゃいけないと言われていて。僕は歌うのが世界で一番好きなことなんですよ。ライブも好きだし、“歌ってみた”を投稿するのも好きだし、カラオケに行くのも好きだし。毎日何かしらの形で歌があったんですよね。だから、自分の好きなことができなくなっていた時期は不安になったり、イライラするときもあったんですけど、実際に声を使えるようになってからは楽しいです。
──手術されることを発表したときに、いろんな方から励ましの言葉があったと思うんですが、印象的なことはありましたか?
活動休止の発表をしたときに、かなりの反応があったんですよ。リスナーさんもそうだし、今までリプライで見かけなかった人からも「がんばってね」と声をかけてくださったりして、こんなにもいろんな方に観ていただいていたんだなって、改めて実感したところがあって。友達からも「また一緒に歌おうね」という声をもらったりして、早く復帰したいなって。そういう気持ちにさせてくれたのがすごく嬉しかったです。
──あと、先日行われた『i-STAR FESTIVAL』に、mono palette.が出演されていて、あげいんさんはメンバーのみなさんが3人でライブをしているところを観ていたそうですが、そちらはいかがでしたか?
めちゃめちゃ不安でした。いつもであれば、僕が場を回して、みんながボケたものに対して僕がツッコんで収拾をつけて……みたいな流れだったんですけど、収拾をつける人間がいないんですよね(笑)。
──回し役が不在だったと……(笑)。
はい(笑)。あとは、歌割りも変わって、今までやっていた形と違うものを届けるのは3人も不安だっただろうし、それが伝わってきていたから、大丈夫かなと思いながら観ていたんですけど。でも、3人でステージを作ろうという気持ちがすごく伝わってきたし、僕がライブでよく歌っている「おじゃま虫」という曲があるんですけど、客席のみんながサイリウムを僕のイメージカラーの赤色にしてくれて、「あげいん、がんばれ!」みたいな感じで歌ってくれていたので、ウルっときました。
──それはめちゃくちゃ嬉しいですね。
嬉しかったです。ステージにいないのに客席が真っ赤になっていて。これは早く帰ってこなきゃいけないなって。
あげいん
──励みになりますよね。ちなみに、「歌うのが世界で一番好きなこと」とのことでしたけど、音楽以外で好きなものって何があります?
なんだろう……サプライズとかですかね。人を驚かせたり喜ばせたりするのが好きなんですよ。こういうことをしたらこういう顔をするだろうなっていうのを思い浮かべながら何かをするのは好きですね。
──たとえば、マンガとかアニメとかで好きな作品とかはあります?
僕、マンガも読まないし、アニメも観ないし、ゲームもやらないんですよ。「趣味って何?」って言われると、自分でも「何だろう……」って思うぐらい無趣味で。なんか、何が好きなのか自分でよくわからないんですよね(苦笑)。
──でも、それすごくわかりますよ。
わかります? 「じゃあ何して生きてるの?」って言われて、「いやあ、俺、何して生きてるんだろう……」って考えちゃうっていうか。
──そうそう。きっと何かをしてはいるんですよね(笑)。
そうなんですよ! 何かはしているんですけど、本当に無趣味で。
──家にいるときって何してることが多いんですか?
……寝てるかなあ(笑)。あとは、それこそ“歌ってみた”をやっているときは録音したり、あとは配信したり。「好きなことはなんですか?」と言われたら、音楽を聴くとか、歌を歌うとか、それぐらいしか思いつかなくて。あ、でも服は好きですね。ネットサーフィンして、これいいなって思ったりする……ぐらいかなあ。
──そうなってくると、歌えなかった時期はめちゃくちゃしんどかったでしょうね……。
しんどかったです。歌うことだけじゃなくて、配信とかもやめていたので、自分のやりたいこと、やっていて楽しいことがすべてなくなってしまっていたので。でも、何か始めてみようかなと思って、ギターを買ったんですよ。そしたら、アコースティックギターを買ったつもりだったのに、クラシックギターが届いちゃって(苦笑)。それで練習すればよかったんですけど、ギターをやっている人から「アコギとクラッシクギターは全然違うものだから、買い換えて練習した方がいいよ」って言われて、買い換えるのダルいな……って(笑)。でも、今度のワンマンに向けて、ちょっと練習してみようかなと思ってます。どうなるかはわからないですけど(笑)。
──作曲してみたいなと思ったりとかします?
思います。思うだけタダみたいな感じではあるんですけど(笑)、やっぱり曲が作れたらいいなとは思いますね。一応、今年中に1曲ぐらい書けたらいいなと思ってはいるんですけど。
──おっ!
思ってはいます……思ってはいます……思ってはいます……。
──めちゃめちゃ繰り返すじゃないですか、しかも小声で(笑)。
いや、保険かけとかないと(笑)。
──あははは(笑)。そして、先ほどお話に少し出ましたが、8月18日に恵比寿リキッドルームにてワンマンライブ『Rhodd』が決定していますが、どんなライブにしたいですか?
これまでのワンマンライブって、すべて自己主催だったんですよね。自分でハコをおさえて、バンドさんに連絡したり、セトリを決めたり、自分の手が届く範囲でやっていたんですけど、今回はいろんな方に協力していただいてステージを作るんですよ。だから、自分ひとりじゃできなかったこと、自分だけじゃ手の届かなかったことを、何かしらステージに反映させたいなとは思っていますし、今までのライブの中で一番豪華にしたいなと思っています。
──あと、今回のワンマンは2部制になるそうですが、内容はかなり違うんですか?
完全に別公演ですね。1部はバンドセットで、僕がこれからやることの指標というか、「自分のやりたいことはこういうものです」というものを押し出したものにしようと思ってます。2部はDJセットで、ちょっと距離感近めな感じというか、エンタメチックなものにしたいと思っていて。僕、YouTuberさんが好きなんですけど……あっ! 趣味ありました! YouTubeを観ること!!
──ありましたね(笑)。
チャンネル登録している人も結構いて、よく観てるんですけど、YouTuberさんがやるような感じの映像を作ってみたり、いろいろとおもしろいことができたらいいなと思ってますね。なので、1部は「かっこいいあげいん」、2部は「楽しいあげいん」という感じにできればいいなと思ってます。なので、両方観に来てもらえると嬉しいです(笑)。
──全然別物でしょうからね。そのワンマンを踏まえて、今後はどんな活動をしていきたいですか?
先日、復帰第1作目として、夏代孝明さんからいただいた楽曲(「Again」)を投稿をしたんですけど、いろんなクリエイターさんから楽曲をいただいて、2ヶ月に1回ぐらいのペースで投稿していきたいなと思っていて。だから、2次創作だけではなく、自分のオリジナル曲も発信していきたいなと思ってます。
──こうなりたいという目標はありますか?
ツアーで全国をまわってみたいなとか、パフォーマンスのひとつとして踊ってみたいなとか、そういうものはあるんですけど、何か大きな目標を立ててしまうと、「ああ、終わったな……」っていう感じになっちゃいそうだなと思って、これまでそういうものは特に決めてこなかったんです。それに、僕はいろんなことに興味があるので、これをやってみたいな、今度はこれをやってみよう!って、ひとつひとつステップアップしていくような感じでやっていきたいですね。

取材・文=山口哲生 撮影=菊池貴裕

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