【インタビュー&レポート】
森崎ウィン(PRIZMAX)
×和楽器ユニットAUN J
PRIZMAXのヴォーカルのみならず俳優としてもマルチに活躍する森崎ウィンが、5月4日に東京・浅草花劇場で行なわれた和楽器のみで演奏を奏でる音楽ユニットAUN J クラシック・オーケストラ(以下、AUN J)のコンサートにゲスト出演した。そして、その直後に森崎とAUN Jの井上公平と対談が実現! コンサートの感想やコラボ曲「Don't Cry」、海外での活動についてなどのトークが繰り広げられた。
ひとりの音楽人として
得られるものがたくさんあった
L→R 井上公平(AUN J)、森崎ウィン(PRIZMAX)
まずは本日の公演『響 The Sounds of Japan Tour 2019』の感想をお願いします。
森崎
めちゃくちゃ楽しかったです。この場にいられることが純粋に幸せでしたし、生演奏…しかも、なかなか経験できない和楽器とコラボさせていただけたのは、僕にとって人生の財産のひとつになりました。
井上
僕も和楽器と歌のコラボは初めてのことだったので最初はどうなるのかなって思っていたんですが、違和感なく、今までずっとあったようなサウンドになってとてもやりやすかったです。
では、今回のコラボのきっかけを聞かせてください。
井上
3〜4年前にAUN Jのメンバーがミャンマーのイベントに出演して、ウィンくんにお会いしたんですよ。その後に“AUN Jと歌のコラボをやりたい”って話が出てきた時に、真っ先にウィンくんの話になってコンタクトをとったんです。
森崎さんの歌のどんなところに惹かれたのですか?
井上
和楽器も音域がいろいろあるんですが、ウィンくんは透き通った歌声なので和楽器に合いやすいと思ったんです。
森崎さんはAUN Jにどんな印象がありました?
森崎
和楽器のインストゥルメンタルバンドじゃないですか。音だけで感情を伝えるものって、今まであまりライヴで観たことがなかったんですよ。僕は歌い手だから、歌詞を聴いたり、声や歌い方に注目しがちなんですけど、AUN Jさんのライヴを観に行かせていただいて、“やっぱり音って人の心を動かすんだ!”ってことを改めて感じられたんです。“言葉、いらなくない?”って思ってしまうくらいに(笑)。音の魅力を改めて感じました。
和楽器に対してはどんなイメージがありましたか?
森崎
和楽器を生で聴くことは、中学生以来だったんです。僕が普段聴く音楽にも和楽器が出てくることはそんなにないですし。今回コラボさせていただくことになっていろいろ調べたらいろんな楽器があって、コラボ曲をいただいた時も最初は“難しいな”というのが第一印象でした。“ここに僕の歌を乗せて逆に壊しちゃうかな”って不安もあったんですよ。でも、レコーディング当日にブースの外から公平さんが見てくれていて、大きく受け止めてくださって。なので、頑張って歌えましたね。
では、AUN Jが6月12日にリリースする、数々のヴォーカリストとのコラボ楽曲を収録したアルバム『響 〜THE SOUNDS OF JAPAN〜』に収録されている、森崎さんをフィーチャーした「Don't Cry feat.森崎ウィン」ができた経緯を聞かせてください。
井上
シンガポールでコンサートをした時に、ベトナムの女性の方とマレーシアの男性の方と僕の3人で、“世界平和”“アジアはひとつ”ってテーマで曲を作ったことがあったんです。その前に「ONE ASIA」って曲があったので、そこから付随して“ひとつの気持ちになろう”って曲を作りました。原曲はもうちょっとハッピーだったんですけど、ウィンくんの歌声を聴いたら“バラードがいいかな”と思ったんです。なので、思い切ってアップテンポだった曲をバラード風にアレンジし直しました。
森崎さんの声ありきで、曲の雰囲気が変わったと。
井上
そうです。伸びのある声に合うと思ってアレンジを変えましたね。
森崎
最近PRIZMAXでバラードを歌うことがほぼないので、今日、久々に人前でバラードを歌って緊張しました(笑)。
「Don't Cry」の歌声のキーはいつもより高いですよね。
森崎
めちゃくちゃ高いんですよ。ライヴでは地声で包みたいというのもあって、みなさんと相談して今日はライヴアレンジさせていただきましたけど。
歌詞は森崎さんの書き下ろしですが、これはどのように書いていったのですか?
森崎
最初、公平さんから“アジアをひとつに”って題材で歌詞を書いてほしいってお話をいただいたんです。でも、正直言って今の僕はまだ“世界平和”や“アジアをひとつに”とかを書ける器ではないんですよ。なので、全然言葉が浮かんでこなくて。そんな時に、ミャンマーのホテルのカフェでたまたまカンボジアの男の子のドキュメンタリーを観て、この子に向けたものを書こうと思ったんです。カカオ農園で働いているんですけど、その子はカカオがチョコレートになるのを知らないんです。でも、ひたすら木に登って働いている…そういう子たちって、実は世界にはたくさんいるわけじゃないですか。“僕はその子に何ができるのか”って気持ちを、そのまま歌詞に書こうと思いました。
井上
その歌詞がすごく良かった。シンプルなんだけど、伝えたいこともすぐ分かるし。あと、サビは僕が作ったメロディーをちょっと変えて歌っているんですけど、“こういうアプローチの仕方があったんだ!? さすがだな”と思いました。
森崎
いえいえ。もちろん公平さんのメロディーに沿ったものなんですけど、歌詞を乗せる時に、はめたい言葉にあわせて“変えていいですか?”って変えさせてもらったんです。
森崎さんが今まで歌詞を作ってきたやり方とはちょっと違ったと。
森崎
全然違いますね。やっぱりメロディーにも気持ちは乗っかっているので、そこに僕の気持ちを乗せる責任感はありましたね。
そのように生まれた曲を実際にステージで歌えたのは、感慨深いものがあったのでは?
森崎
ありました。AUN Jさんとのコラボのおかげで、森崎ウィンの曲が世に出せることができて本当に嬉しいです。
しかも、AUN Jのみなさんにしっかりバックを固めてもらって歌えたわけですしね。
森崎
本番中はなるべく後ろを見るのやめようと思っていました。だって、世界を回ってる方々の歴史の中に入り込むわけじゃないですか。いや〜、緊張しました(笑)。
でも、大船に乗った気持ちもあった?
森崎
そこは、逆に乗っかっていかないと駄目だなと思いました(笑)。僕はみなさんに失礼のないようにってことだけを気を付けて、“もし何かあったらフォローしてくれるはずだ”と思ってたので(笑)。
井上
僕らとしては、やっぱり気持ち良く歌ってもらいたいんですよ。なので、決められた譜面はあるけど、ウィンくんのアプローチの仕方で尺八や笛のメロディーを少し変えていきましたね。そこはライヴならでは面白さですね。
あと、「ただいま」では森崎さんがアコギを弾いていましたが、普段は楽器を弾きながらステージに立つってことはないですしね。
もっと楽器を弾きたい欲も出たんじゃないですか?
森崎
僕がヴォーカル&ギターでバックバンドを率いて歌うっていうのをやってみたいですね。今日も「カフェオレ」の時に盛り上がっちゃって、メンバーのみなさんに“一緒にステップを踏んでください”ってお願いしたんです。ああいうことがやってみたかったので、ちょっと夢が叶いました(笑)。
今回の経験がPRIZMAXの活動にもフィードバックできそうですね。
森崎
それはもちろんです。ひとりの音楽人として、長くやってる先輩の方々と一緒にやれたことで自分の音楽の感じ方も変わりますし。本当、今日は得られたものがたくさんありました。それを整理して、次にPRIZMAXでライヴをやった時にはまた違う表現ができるんじゃないかなって。僕の引き出しが増えることによってグループの引き出しが増えると言っても過言ではないくらい、外で得られる機会があるのはありがたいですね。