【<MUSISION FEST>インタビュー】
関取花「どこにいっても変わらないそ
の時のベストを演ります」

インディーズで紡いできた10年もの活動を経て、関取花がついにメジャーデビューを果たした。2019年5月8日発売のミニアルバム『逆上がりの向こうがわ』を引っさげて、彼女は2019年5月25日(土)に開催される<MUSISION FEST 2019>に登場する。

<MUSISION FEST 2019>は、春の上野恩賜公園というロケーションも手伝って、アコースティック・ギターによる弾き語りが心地よく響くイベントだ。老若男女を問わず多くの人々を魅了する飾らぬ立ち振る舞いと、その透き通るような彼女の歌声は、<MUSISION FEST 2019>でも大いなる話題を振りまくことだろう。
──長く活動をしていますが、ついにメジャーデビューですね。

関取花:そうですね。大きなスタジオでしっかりプリプロができて、「使ってみたい」と言った楽器が使える環境が本当にありがたいと思いました。

──これがメジャーなのか、と?

関取花:ほんとに。今まで手弁当というか、サポートミュージシャンも自分で見つけてつながっていったものですし、レコーディングも倉庫でやったり通路で歌ったり、いい歌が歌えていても選挙カーが通ると中断してしまったり、機材も限られていたり…とかでしたから。

──インディーズはそうですよね。
関取花:それでずっとやってきたので、整った環境でやらせていただくありがたさがきちんと理解できるのは、このタイミングでメジャーデビューできたからと思っています。10代でいきなりメジャーデビューしていたら「これが当然」と思っていたかも。変な話、グッズやCD制作にどれだけのお金や人が動くのかも経験してきたことなので、今回はいろんな意味できちんと気合いが入りました。ミュージシャンとしてはもちろん、社会人として「関係者全員が地獄に行くか天国に行くかは、私のこの1枚次第なんだ」くらいのつもりで。

──4月から社会に出たフレッシュマンに聞かせたい金言ですね。

関取花:いやいや(笑)。でもまさにそういう感覚です。「私を雇っていただいた」んだから。「雇ったのそっちでしょ」じゃなくて。

──「こんな環境で超ラッキー」とか。

関取花:そうはなれないですね。自分でいろいろ見てきたからこそ、重みが分かるみたいのはあります。

──この経験が、次作品に影響するかもしれませんね。

関取花:そうですね。今まで、いわゆるインディーズっぽいデッドな音作りができるので倉庫とかで録っていたんです。昔のアコースティックっぽい音が好きでルーツミュージックに寄っていたわけですけど、今回マイクを変えたり広いスタジオで録ることで、「音楽性は変わってないのに、こんなにメジャーな質感になるんだ」っていう発見がありました。そういうのは今後活きていくなって思います。めちゃめちゃニッチな音楽をやるけど音作りだけはメジャーな感じとか、歌ってることやコード進行はすごい変なのに、サビ前のキメだけ亀田さんから学んだすごいポップなキメを入れてみるとか、自分の中ですごくいろんな発見がありまして。
──もともと音楽を作り始めたのは、表現欲求からですか?

関取花:表現欲求というか、自分のためだけに歌ってました。聞いて欲しいとかじゃなかったんですよね。

──日記を書くような感覚?

関取花:そう、自分のため。独白ですね。高校で音楽部に入って友だちと3人で「ギャルバンやろうぜ、イエイ」ってやってたんですけど、女の子3人で思春期だから「なんか違うね」って、すぐ解散しちゃったし。やってもないのに「音楽性の違い」みたいな。

──ぶはは(笑)。

関取花:「え?ベースってもっと高い音出ると思ってた」って言って解散しましたからね(笑)。「私はB'zの松本さんみたいなギターが弾きたかったんだ。形が似てるから弾けると思ったら全然違うじゃん」って(笑)。そういうよくある感じですよ。

──よくあるのか?

関取花:よくあります。最初私もギターとベースの違いがわからなかったですもん。音楽なんてTSUTAYAに行ってランキングの1から10まで借りてMDに焼いて聞いているような普通の中高生でした。

──ギャルバンではギターですか?

関取花:アコギです。理科の電気回路がどうしてもできなくて、抵抗がどうのってほんとにダメで「私は電気はダメなんだ」って思ったから、エレキギターもベースも×、鍵盤も電気につなぐから×。その点アコギは鳴らせば鳴るから(笑)。中学生のときはまじめにバスケをやっていたので、継続的にがんばるっていう気合だけは一応ありまして。

──真面目に取り組んではいたんですね。

関取花:軽音学部で夏と秋に県大会があったので、自分の書いた曲を出してそこでやったり。

──目標と発表の場はすでにあったんだ。

関取花:でも、ただその日のために作って、前にちょっと練習して終わったらあまり弾かない。放課後はドラッグストアのバイトと友だちとマック行ってフルーリー食べて帰るみたいな、そんな感じでした、ほんとに。

──いつ頃から関取花が誕生するんでしょうか。
関取花:大学生になって、18歳の時に<閃光ライオット>に出たのは、「優勝すると100万円」て書いてあったから。100万円あったらバイトしなくていいかもって。バンドだったら5人で山分けだけどひとりで優勝したらまんま100万円じゃんって感じで。そこでたまたま審査員特別賞をいただいて、閃光レーベルからミニアルバムを出さないかって言われて、やらせてもらいました。めちゃめちゃクオリティの高いものになったんですけど、「これ長くやっていくのかな」「なんか違うな」って思ってました。19歳のときに「これからも一緒に頑張っていきませんか?」って話になったんだけど、「いいです、普通に就活します」って大学生してました。たまに賞金が出る大会があったら出てましたけど。

──やる気があるのかないのか、わからないですね。

関取花:その頃は音楽活動で時間がつぶれるより、友だちや彼氏といたかった。自分のライブよりも学祭のステージに立ちたかったし、就活したいとかもっと勉強したいと思っていました。で大学4年生のときに転機が来たって感じですね。昔の大会の映像をご覧になったCM関係の方から「神戸女子大学のCMソングの書き下ろしをやってみないか」というお話を急にいただいたんです。就職活動の最終面接のタイミングだったんですけど、そこで初めて「胸を張って私らしい、いい曲だと思える曲」ができたんです。「むすめ」っていう曲なんですけど。

──いよいよ関取花の誕生か。

関取花:それが関西でしか流れてなかったので、エゴサーチするんですけど、流れている箇所が「学べ 学べ 贅沢言う前に学べやがれ」って歌詞のところだったので、「なんでこんな偉そうなこと言われなきゃいけないんだ」とか「誰かと思って調べたら女子大生じゃないか。何で女子大生に大学のCMで説教されなきゃいけないんだ」みたいに言われているんですね。曲を全部聞けば「親から言われた」という歌詞であることも分かるんですけど、そこだけ15秒切るとそう聞こえるんです。

──それはショックですね。

関取花:でもそのときは、珍しく傷つかなかったんです。「フルで聞いてもらえれば絶対わかるもん」って思って、「この人たちにフルで聞いてもらうにはどうしたらいいんだろう」とか「15秒の尺になってもわかってもらう曲はどういうものだろう」と、就職活動では出なかった好奇心とかやりたいことが生まれたんです。人の顔色をうかがってばかりだった自分の性格も、今回みたいにいい方向に働いて好きになれるし、いい意味で強みにもなって突き進むことができると思った。それで就職やめて音楽で食べていくって決めたんです。
──そこが関取花というアーティストの誕生の瞬間ですね。

関取花:ですね。たまたまその時期にエッセイを書く授業があって、その先生がわざわざ「僕んち2枚ずつCDがあるのがあるから、よかったら聞いてみて」「多分好きだと思うから」ってジョニ・ミッチェル『コート・アンド・スパーク』のCDをくださったんです。それに衝撃を受けて「私の好きな音楽これだな」って思って。

──ビンゴ?

関取花:そう、ビンゴ。アコースティックギターを弾いて歌う女の人って、YUIさんとかmiwaさんとかテイラー・スウィフトとか、可愛くてキラキラしていてポップでお花のような綺麗なイメージで。

──「花」ではありますが。

関取花:名前負けの人生ですよ(笑)。「私はきっとそういう存在にはなれないだろうな」って思っていたけど、これはいいなって思って、そこから音楽をどんどん掘るようになって、今の音楽に繋がったりしました。
──いい出会いをたくさんしているんですね。それにしても何故アコギで詞とメロディを作っていたんでしょう。

関取花:なんでなんですかね?

──ストレス発散?

関取花:それもあったと思いますよ。ベッドの横に置いてて、弾いてたら同時にポロっと言葉が出てきて、なんか棘が取れるような感覚っていうか。

──デトックスのような?

関取花:そんな感覚はありましたね。あとは「私、今こんなこと思ってるんだ、ほんとは」とか。それこそ「めんどくさいのうた」とかは、ただ寝ながら弾いてたら「ああ、めんどくさいな、めんどくさいな、お前の優しさが」って出てきて、そこからいろんな人の顔といろんな出来事が出てきてそれをただツラツラ言ってる感じでしたから。「めんどくさい」って言ったときに出てきた顔が、自分の中ではフタをしていた人だったりするんですよね。よかれと思ってやってくれていたり、そう言い聞かせてきた人たちがパンって出てきて、やっと自分の本心に気付くみたいな感覚があって。

──うわ、その中のひとりになりたくないなあ。

関取花:やっぱり歌詞の一行に顔が見えるのって、強いですよね。だからラブソングって世の中で強いんだと思います。

──自然に身体から出てくるものが曲になっていたんですね。

関取花:実家にいた頃はアルペジオの曲ばっかりなんです。ストロークすると隣がお兄ちゃんから壁どーんってされるんで。

──うるさい、って?

関取花:そう、もし兄が音楽好きで応援してくれていたらまた別だと思うんですけど、本の虫みたいなお兄ちゃんなので、だから私もささやく感じになるんです。

──しかも「めんどくせえ」って歌っているし。

関取花:そう、「でかい声出したと思ったら、あいつ「めんどくせえ」しか言ってねんだよ」ってお母さんに言って。「こっちまで気分落ちるからヤなんだよな」って。そりゃそうですよね(笑)。あそこでストロークできてたら、もしかしたらめっちゃパンクな精神がもっと出てたかも。

──言ってることはパンクですもんね(笑)。

関取花:つぶやいている感じだから「めんどくさいな」だったけど、ストロークで歌えるミュージシャンだったら「めんどくせー めんどくせー あいつめんどくせえ」って歌うパンクバンドをやっていたかもしれないですね。もちろんそういう音楽好きだし歌詞も超好きだし。音がガンガン出せる環境があったら、もしかしたらほんとに…はい。

──スタジオじゃないと思いっきり音は出せませんもんね。

関取花:そうですね。歌を歌うとなると迷惑になっちゃうので、バイトしながらギター背負ってチャリで20分とかこいで一番近い練習スタジオまで行って、ポイントカードめっちゃ貯めて「やっと500円貯まった、タダだ」みたいな。そこでわーって歌う。

──しかし家族内においても、音楽の力は強力ですね。兄の気持ちを揺さぶっています。

関取花:そうですね。「あいつ、めんどくせえしか言ってねんだよ」っていうのはすごく覚えているんです(笑)。「その通りです」って思ったし。それをもって一人暮らししようって思いました。でも兄ちゃんがいない時間帯は大きい声で歌えてたし、ストロークも全力だったのに、一人暮らしをしたらそれがまったくできなくなるっていう状況になって、実家のありがたみも分かった。いろんなことを知りましたね。スタジオに行くようになって、はじめてストロークの曲をいっぱいやるようになって、今までいかに自分がストロークをやってこなかったのかもよくわかりました。ライブでもアルペジオ10曲、ストロークが1曲とかだったんですよね。「花ちゃん、アルペジオ上手いけどストローク下手だよね」って(笑)。
──<MUSISION FEST 2019>も楽しみにしています。どんなライブになりそうですか?

関取花:基本的にいつもと一緒です。それこそ1~2年前までは、状況や環境によって、それに合わせて寄せていくようなセットリストを組んでいたんです。その方がみんな聴いてくれるかなと思ったので。

──わかります。

関取花:でもそれをやめて、どこにいっても変わらないその時のベストを演るようにしました。一番自分らしく興味を持ってもらえるセットリストとか、ナチュラルなもの。いろんな曲をやるようになってから、その方が自分のキャラも伝わって、お客さんも増えるようになったんです。バラエティとか他の仕事をさせていただいて、「どこにいっても自分でいることの大切さ」に気づいたんですね。私は少しでも音楽を聞いてくれるお客さんが増えればと思って出ているんだから、番組の色とか求められていることに寄せ過ぎちゃうと、そもそも意味がない。そこで自分らしいエピソードを話さないと、音楽のことがないと…って学ばせていただきました。

──なるほど。

関取花:じゃないと「寄せたからダメだったんだ、他の曲もあるのにな」って言い訳しちゃうし。自分でベストだって思った状態で響かなかったら「オッケー、出直します」ってなれるから、そのほうが気持ちが込めやすいしパフォーマンスも良くなる気がします。だからいろんなジャンルの方とやるのは、一番燃えるし楽しいし一番悔しい。女子もいて男子もいてバンドもいる<MUSISION FEST 2019>のようなラインナップってなかなかないので、すごい楽しみなんですよ。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
<MUSISION FEST 2019>
2019年5月25日(土)
@上野恩賜公園(うえのおんしこうえん)
自由席 4,000円(税込)・当日4,500円(税別)
【ローソンチケット】 TEL:0570-084-003 Lコード:71721(

【チケットぴあ】 TEL:0570-02-9999 Pコード:147-382(

【e+】https://eplus.jp/musisionfest/開場/開演:12:00/13:00
出演(順不同):The Cheserasera音速ライン浅草ジンタ、浜端ヨウヘイ、関取花、kitri、フラチナリズム、MAISON“SEEK”

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