スガ シカオ、暗黒面から脱却す。
前作『THE LAST』の衝撃
そこから更に自身の作家性を研ぎ澄ませ続けた結果、とんでもない作品が完成したのです。それが2016年に発表されたフルアルバム『THE LAST』。そこに羅列されていたのは、恐怖と狂気すら感じさせる音楽たちでした。
たとえば「あなたひとりだけ 幸せになることは 許されないのよ」。イントロのビートとからして不穏な雰囲気を放ちますが、Aメロに入ると今度はシンセベースが入ってきて更にカオティックな印象になります。従来のファンクの方法論は散見されるものの、決して王道のそれではない。この曲だけがこの調子なのではなく、アルバム全編通して「ヤベェ」のです。Radioheadが『Ok Computer』の次に『Kid A』をリリースした時のような、“行き着いてしまった感”がありました。それはポジティブな質感だけでなく、不安や焦燥、苦悩などの、人間の暗部を伴ったものです。何しろ一発目から「ふるえる手」という、自身の実の父親(アルコール依存症に罹患)のことを歌った曲からスタートしますから。
3年前、死や夜の悪臭が立ち込めた「THE LAST」という衝撃的なアルバムを苦しみ抜いて生み出しました。自分の音楽性の全てを、そして革新性とスキャンダラス性を全部ぶち込んでしまって、ぼくの脳ミソは空になりました。もう新しい発想なんて何もないし、ビリビリ電気が走るような言葉も残ってないから、自分には新曲なんて作れないかも・・・そんな風に思って、自己暗示スランプの状態で昨年、アルバム制作はスタートしました。 – 『労働なんかしないで 光合成だけで生きたい』スペシャルサイトより
「am 5:00」も今作においては非常に印象的です。曲の雰囲気だけで判断すれば、これまでのスガ シカオのディスコグラフィーにもありそうですが、このトーンで“中身(歌詞)が優しい”というパターンは初めてではないでしょうか。でもその優しさの形は非常にスガ シカオ的。エロさもグロさもありませんが、その気配は残っていると言いますか。「おれだってギター1本抱えて 田舎から上京したかった」に至っては、確実に本作のモードでないと成立しなかったように思います。
また、コメントでスガ シカオは本作についてこうも述べています。
「過激さや最先端っぽさはあまりありませんが、やさしさや笑いや涙や勇気がリアルに描かれています」
■ SUGA SHIKAO TOUR 2019 ~労働なんかしないで 光合成だけで生きたい~
2019年4月27日(土)神奈川 厚木市文化会館
2019年4月29日(月・祝)静岡 グランシップ中ホール・大地
2019年5月6日(月・休)宮城 仙台電力ホール
2019年5月12日(日)福岡 福岡市民会館
2019年5月19日(日)富山 黒部市国際文化センター コラーレ
2019年5月26日(日)北海道 わくわくホリデーホール
2019年5月31日(金)愛知 名古屋市公会堂
2019年6月8日(土)大阪 オリックス劇場
2019年6月9日(日)大阪 オリックス劇場
2019年6月15日(土)新潟 新潟県民会館
2019年6月16日(日)栃木 那須塩原市黒磯文化会館
2019年6月22日(土)東京 NHKホール
2019年6月23日(日)東京 NHKホール
2019年6月28日(金)香川 レグザムホール(香川県県民ホール)小ホール
2019年6月29日(土)広島 三原市芸術文化センター ポポロ
INFO: http://www.sugashikao.jp/lp/halltour2019/
スガ シカオ、暗黒面から脱却す。はミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。
ミーティア
「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。