【インタビュー】グランド・メイガス
「一発録りはエネルギーやグルーヴが
生まれる」

グランド・メイガスの9枚目となるアルバム『ウルフ・ゴッド』がリリースされた。バンドでジャムをしメンバー全員で書き上げたという作品で、レコーディング前に全員で入念なリハーサルを行ない、実際のレコーディングでは一発録りでベーシック・トラックを仕上げている。

スピリチュアル・ベガーズでもヴォーカリストを務めていたヤンネ“JB"クリストファーソン(Vo、G)に、『ウルフ・ゴッド』の制作秘話を聞いた。
──『ウルフ・ゴッド』は一発録りだったそうですね。

ヤンネ“JB"クリストファーソン:ベース&ドラム&ギターはワンテイクで録って、そのあとに追加のギターを入れた。つまりそれぞれの曲ごとに録っていったんだ。まずドラムを全曲録ってそこにベースを重ねて…というダビング方式ではなくてね。ベーシック・トラックはクリックも聴かずに入れたから、活き活きとした結果になったよ。

──なぜそのような方法に変えたのですか?

ヤンネ“JB"クリストファーソン:俺たちは3人編成でライヴも当然3人でやるし、バッキング・トラックもクリックも使わない。それで「何で人工的なサウンドにするのに、スタジオであんなに時間をかけてバラバラに録音する必要があるんだろう?」って思ったんだ。曲を完全に把握して同時に演奏して録音してしまったほうがいいと思ったんだよ。実際にやってみると、やはり曲にエネルギーやグルーヴが生まれることもわかったし、何よりこうやってレコーディングしたほうがずっと楽しいんだ。

──曲作りもメンバー全員でやるようにしたというのも、関係ありますか?
ヤンネ“JB"クリストファーソン:時期によって曲の作り方も変わっていてね、初期のころはわりとみんなでジャムをして曲を作っていたけど、最近では俺がひとりで曲を書くようになっていた。だからといって、俺ひとりですべてを書き上げていたわけではないし、共作の曲もいくつかあったから、今回は、俺がたくさんのアイデアを用意して、それをもとにみんなでジャムをして、その結果をトリガーにして俺が曲を仕上げていくというスタイルにしたんだ。俺は指揮者というか、バンド・リーダーみたいな役割だよね。俺の役割は大きかったし歌詞もすべて俺が書いているから、さまざまな曲の決定権も俺にあったけど、全員が曲作りに参加したことで、仕上がりは良いものになったと思う。俺ひとりで書くと、どうしても以前の曲と似たようなものになってしまうリスクがあるからね。以前のアルバムの問題のひとつは、俺が書いた5曲がどれも似たようなものになってしまっていたということだと思う(笑)。今回はそれが避けられた。

──歌っている内容などういうものですか?

ヤンネ“JB"クリストファーソン:俺たちのすべてのアルバム…俺が書いたすべての歌詞はどれも俺自身に基づいたものだよ。俺のイマジネーション、本能や感情とかね。テーマは明白ではないし、俺自身も何を意味しているのかうまく説明することができない。『ウルフ・ゴッド』というタイトルを思いついたときは、鳥肌が立つ思いだった。実際にそれが何を意味しているのかはわからなかったのだけど。狼であり同時に神でもある。それは自然の象徴かもしれないし、俺たちが人間としてどのように自然を扱いコントロールするのか…みたいなことかもしれない。でもわからないんだ。俺の感情的なものだからね。これは歌詞の難易度のことを言っているのではなく、その中身が何を意味しているのかを説明するというのは難しいということ。感情にかかわるものや言葉で説明できないアイデアとか。日本の俳句に近いんじゃないかな。俳句を読んでもそれが何を意味しているのかを知るのは難しいだろう?感情的なものだから。

──ジャケットは矢が刺さった狼ですよね。これはやはり歌詞の内容とリンクしているのでしょうか。

ヤンネ“JB"クリストファーソン:間違いなく歌詞と大きなつながりがある。だけど、どんなつながりがあるのかはわからない(笑)。ウルフ・ゴッドがどういう外見であるかの基本的なアイデアがあって、つまりアートワークのように、矢が刺さっていて鎖でつながれていて、これはさっき言ったみたいな、人間と自然の関係、あるいはその関係のなさとか、あるいは自然の復讐みたいなものとか。だけど、これらアートワークが何を意味しているかということではなく、あくまで俺のイマジネーションの一部なのさ。何を意味しているかは、アートワークを見る人、アルバムを聴いた人たちのイマジネーションの中で見出されるべきだから。

──今回は、スタファン・カールソンがプロデューサーを務めていますね。

ヤンネ“JB"クリストファーソン:最近の過去4作では、エントゥームドA.D.でプレイしているNico Elgstrandにお願いしていた。Nicoとの仕事ももちろん素晴らしかったけど、今回は新しいことをやってみたいと思ったんだ。変化が必要なときもあるからね。今回のアルバムでは、俺たちが欲しているものがどういうものなのか、はっきり見えていた。だから、一緒に素晴らしい仕事ができて、プロフェッショナルで経験豊富な人物を共同プロデューサーとして迎えたかった。俺たちにも一発録りでやりたいなどの明確なアイデアがあったからね。それで、以前ドラムのレコーディングだけスタファンに頼んだことがあったし、アーチ・エネミーやスピリチュアル・ベガーズのプロデュース作も知っていたし、マイケル(アモット)からスタファンのことをいろいろと聞いていたから、彼が最適だと思ったんだ。彼を選んだのは当然のことだったし、素晴らしい仕事をしてくれたと思うよ。実は彼は、経験豊富な素晴らしいシンガーでもあるんだ。歌がうまい人物であるというのも、ヴォーカルをレコーディングする上での重要なポイントになる。

──グランド・メイガスの歌詞には北欧神話の色が感じられますが、これはバソリーからの影響なのでしょうか。
ヤンネ“JB"クリストファーソン:そうだよ。それから俺が育った環境もある。小さいころ父親が俺を寝かしつけるときに、いろいろと北欧神話を語ってくれたんだ。オーディンの話とかね。いろいろな北欧神話が載っているイラスト入りの本も持っていた。ギリシャ神話やローマ神話の本も持っていたな。ヘラクレスの話とかね。だから、子供のころ、神話というのは俺のイマジネーションの大きなパートを占めていたんだ。特に、北欧神話は俺の魂の中で特別な位置を占めていたよ。

──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ヤンネ“JB"クリストファーソン:ニュー・アルバム『ウルフ・ゴッド』を聴いてくれるとうれしいな。ハート、ソウル、パワーを持ったヘヴィメタルが好きならば、気に入ってくれると思うよ。

取材・文:川嶋未来
写真:Jens Ryden

ウルフ・ゴッド『ウルフ・ゴッド』

2019年4月19日 発売
【通販50セット限定 CD+Tシャツ】 WRDZZ-859 / ¥5,000+税
【CD】 GQCS-90704 / 4562387209071 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/日本語歌詞対訳付き
1.ゴールド・アンド・グローリー
2.ウルフ・ゴッド
3.ア・ホール・クラッド・イン・ゴールド
4.ブラザー・オブ・ザ・ストーム
5.ドーン・オブ・ファイア
6.スピア・スロワー
7.トゥ・リヴ・アンド・ダイ・イン・ソリチュード
8.グローリー・トゥ・ザ・ブレイヴ
9.ヒー・セント・ゼム・オール・トゥ・ヘル
10.アンテイムド

【メンバー】
ヤンネ“JB”クリストファーソン(ヴォーカル/ギター)
マッツ“フォックス”スキナー(ベース)
ルートヴィヒ(ドラムス)

アーティスト

BARKS

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