【インタビュー】首振りDollsとライ
ヴ〜大阪FANDANGOという場所

5月22日にニューアルバム『アリス』をリリースする首振りDolls。マンスリーインタビュー第3弾では、【首振りDollsとライヴ】に迫る。

バンドにとってライヴとは一番の要。故に、バンドとライヴハウスの絆はとても深い。北九州バンドである首振りDollsにとってホームは地元の小倉FUSEだ。しかし、彼らは大阪・十三の伝説のライヴバーFANDANGOを第二の拠点としていたほど、結成当初から深い繋がりがあったのだと言う。

第3弾インタビューでは、首振りDollsとライヴの在り方、そしてライヴハウスとの関わり方について、本人たちが“首振りDollsの歴史を語るには外せない人物である”と語るFANDANGOの店長・加藤鶴一氏との対談で掘り下げてみることにした。
2019年4月5日。首振りDollsは大阪・十三にあるライヴバーFANDANGOでワンマンライヴを行なった。ツアーの一貫でもなく突然。リリースタイミングでもない流れに、たった1本だけ、地元でもない大阪の地でそのワンマンライヴは組まれていた。

彼らがここ最近FANDANGOでライヴをしたのは2018年の10月12日のこと。その年の5月に行われていたメジャーアルバムを引っ提げた全国ツアー<MIDNIGHT COLORS -真夜中の極彩夢->の追加公演でのことだった。

九州バンドの首振りDollsが活動を始めたばかりの頃から、その音楽性の高さと音楽に対する真っ直ぐな想いを高く買い、積極的に受け入れてくれていたのが大阪FANDANGOだった。メジャーデビューツアーには同所を真っ先に組み込みたかったのだが、京都磔磔でのワンマンが先にフィックスした流れで、泣く泣く外すことになってしまったのだという。大阪でライヴができるようになるきっかけを作ってくれたFANDANGOのステージでどうしてもメジャーデビューの報告をしたいという想いは収まらず、彼らはその想いを追加公演という形で実現させた。

しかしその後、FANDANGOから2019年の7月末をもって、現住所での営業を終了することが店長である加藤鶴一氏から発表された。ここをホームとしてきた多くのアーティストから悲しみの声が上がる中、首振りDollsにとっても第二の故郷・FANDANGOの営業終了のニュースは大きな衝撃となった。

“なんとかもう一度FANDANGOでライヴがしたい!”強く願ったその想いを形にしたのが、2019年4月5日のワンマンライヴだったのである。
■首振りDolls&加藤鶴一氏(FANDANGO店長) インタビュー

──まず、九州バンドである首振りDollsが、大阪の十三にあるライヴハウスFANDANGOを第二の拠点とするようになったのは、どういうきっかけだったの?

ナオ:一番最初にきたのは、後藤さん(小倉FUSE(前バグー)の元店長。故・後藤貴幸氏)きっかけだったかな。

ジョニー:そう。後藤さん。

ナオ:当時、俺たちずっと後藤さんにツアーを組んでもらっていたんだけど、結成当初からFANDANGOにはお世話になってましたもんね。2013、14年くらいからお世話になっていると思う。

加藤:そうやね。そう思うと長い付き合いになるなぁ。

ナオ:最初の頃は、対バン相手も加藤さんが見繕ってくれて。

ジョニー:そうだったそうだった!

ナオ:本当に、首振りDollsの大阪の歴史はFANDANGOから始まってると言っても過言ではないんです。

加藤:当時からちゃんとお客さん入れてたからね、それはすごいなと思ってたよ。

──なるほど。加藤さんにとっては、もっともっと長い付き合いのバンドもいらっしゃるでしょうし、一回だけの関係性で終わってしまう間柄の方もいらっしゃるでしょうし。そんないくつもの出逢いの中で、加藤さんにとって首振りDollsとの出逢いとは、どんなものだったんでしょう?

加藤:うんうんうん。単発で終わってしまう関係性もあるからね。やっぱり気持ちがそこにないと続けていけるものでもないし、気持ちが離れてしまったらそれまでになってしまうからね。首振りDollsとここまでずっと繋がっていられるというのは、やっぱり彼らに魅力があるんやろなと思うけどね。

──最初に首振りDollsのライヴを観たときの印象って覚えていらっしゃいます?

加藤:新しいタイプのバンドじゃないやんか。今時ではないというか。音的にも見た目的にもね。でも、FANDANGOのステージには合ってるバンドやなって思ったのと、やってることが面白かったっていうのが一番かな。こんなバンドが小倉におったんか〜って。初めて来たときも、小倉から出てきて大阪で初めてライヴやるのに、お客さんも結構呼んでくれててね。

ナオ:一番最初のライヴのときは、とにかくお客さんにいっぱい来て欲しくて、すごく頑張ったんですよ、俺(笑)。最初の大阪のライヴだから、いっぱいのお客さんに見て欲しかったし、とにかく会場をいっぱいにしたくて。Twitterとか、当時mixiとかで一生懸命呟いて。来て来て! って(笑)。知り合いの人たちにも連絡して、ツアー回れるようになったから来て下さい! って連絡したら、みんな来てくれて。でも、一番最初は10人くらいだったと思う、お客さん。

加藤:いやいや、でも、初めてであれだけ呼べてたら大したもんだよ。大阪はFANDANGOが最初なの?

ナオ:そうなんです。毎月来てましたよね、FANDANGO。毎月来れてたのは加藤さんが、おいでって呼んでくれてたから来れてましたからね。本当に感謝してます。でも、FANDANGOでやり過ぎて、地元のライヴハウスよりお客さんが多くて(笑)。

加藤:あはははは(笑)。そうなんや!

ナオ:そうなんですよ! 大阪のバンドだって思われてたことあったんですよ!

加藤:そういえば、大阪の別のハコでライヴしに来てても、十三に泊まってたからちょこちょこ会ってたもんなぁ(笑)。

ナオ:そうそうそう! 大阪と言えば十三のことなんですよ、俺たちの中では(笑)。それくらい愛着のあるライヴハウスだし、愛着のある街なんです。馴染みの場所。駐車場も安いし。

加藤:ええ街やと思うよ、十三は。ほんまに。

ジョニー:十三は大阪の小倉なんですよ。なんかすごく空気感が近い気がする。

加藤:うんうん。俺も昔行ったときにそう思ったなぁ。なんとなく似てるね。なんかいかがわしいというか(笑)。一緒に居酒屋行ったなぁ。

ナオ:行きましたね! すっごく覚えてます! FANDANGOのツアーがあったんですよね!

加藤:そう。だから、小倉では絶対に首振りDollsに出てもらおうと思って。楽しかったなぁ、あのツアーも。

ナオ:本当にお世話になってますね。FANDANGOにも加藤さんにも。

──いい関係性なんだね。移転が発表されたとき、すごく残念で。

加藤:そうね。十三でやれたら良かったんやけどね。もともとここに店を構えたのは前の店長で、昔はこの場所、うどん屋さんやったんですよ。そんで、うどん屋さんをたたむって話になって、なんか面白いことやれへんかな? ってなって。十三は昔、おじさんの遊び場みたいな街やったから、そこに若い子を連れてこれないかなぁって考えて、“なんか、ライヴってええらしいで!”って話を持ちかけられて、FANDANGOが出来たんですよ。最初は、自分たちでブッキングするんじゃなくて、ブッキングの会社が入ってブッキングしてくれていたんで、有山じゅんじさんとか清水興さんとか、大阪の音楽シーンの重鎮である方々が中心にライヴをされてたハコやったんですよ。ブルースとかフュージョンとか。そこを中心として、あとは地元のバンドがちょこちょこライヴしてたみたいな感じやって。最初の1年くらいはそんな感じやったかな。2年目からは、自分たちでブッキングもするようになってった感じかな。ウルフルズもそのあたりからかな、出始めてくれたのは。

──ウルフルズといえばFANDANGOって感じですからね。ショーンはその当時別のバンドで活動していて、FANDANGOでもライヴしていたんだよね?

ショーン:ですです。僕はGROOMYっていうバンドで。当時からよく首振りDollsに呼んでもらってFANDANGOには来てましたね。

加藤:あ、ショーン、GROOMYか!

ショーン:そうなんです(笑)。

加藤:そうかそうか。よくイベントライヴとかもしてたよな。

ナオ:そうなんです。大阪でなんかしようって思ってたら、まず加藤さんに相談してたし。

ジョニー:うん。大阪と言えばFANDANGO。大阪と言えば十三、中華と言えば、毎回ライヴの後に行ってたFANDANGOの近くの中華屋。人生の中で最も多く行ってる中華屋。もう中華と言えば、あそこの店の味しかない。

ナオ:1年で消費する水餃子の数はあの店の水餃子がトップだからね。

加藤:あははは。そうやね、よく行ったね(笑)。

ジョニー:本当に好きでしたからね、FANDANGO。

ショーン:特別な場所ですよね。壁のペインティングとかもすごく好きですし、楽屋とか他にはない感じだから、本当に印象深くて。畳だからすごくゆっくりくつろげるんですよね。

ジョニー:あの楽屋があるからいいライヴ出来てる気がするって言ってもいいくらい。本当に落ち着く。精神的に落ち着けるもん。それに、FANDANGOは、客席下手の方に階段があって、そこが楽屋に繋がる階段だから、そこから降りてきてステージに向かうんだけど、あのプロレス入場がすごく好きだった。

ショーン:独特な作りですもんね。

ナオ:そうだね。でもね、最初の頃というか、ツアーまわり始めの自分たちからしたら、この作りがすごく難しかったんですよね。天井が高いから、音のまわり方が他のライヴハウスとは違って独特で。なかなか慣れなかったんだけど、それが毎月来てたからか、いつの間にか何も感じなくなっていて。何かが変わったんだなって思った瞬間があったんだよね。

ジョニー:俺は、ここで出すギターの音が一番いいなって思ってた。

ナオ:そう。FANDANGOは何処のハコよりも音がデカイんですよ! スタッフさんもデカめでお願いしますっていうと、本気のデカめでやってくれるんで(笑)。

加藤:あははは。スタッフも本気やからな(笑)。

ショーン:やっぱりハコがカッコいいと駆り立てられるんですよね。すごくテンションが上がるというか。

ナオ:だよね。本当に、次のFANDANGOも楽屋に畳があるといいなぁ〜。

加藤:あははは。しかし。畳、似合うよな、お前らな(笑)。

ジョニー:もぉ本当に。何回あそこ(楽屋)で寝たことか!

ナオ:泊めてもらったことあるしね(笑)。

──泊めてもらえてたなんて、特別なんじゃない?

加藤:そうそう。特別。嫌いな子は泊めないからね(笑)。

ナオ:あんっ。嬉しいっ! 加藤さんと年越したの覚えてます? 

ジョニー:FANDANGOの最終日だったね。FANDANGOの仕事納めの日に。

加藤:次の日が大掃除やねん! って言ってたときか!

ジョニー:そうそそうそう! めっちゃ思い出した! 

ナオ:その大掃除に俺も居たっていう(笑)!

ジョニー:楽屋で飲んだなぁ。赤兎馬買ってくれてて。うわぁ懐かしいなぁ〜。

加藤:最近な気がするけどな(笑)。

ナオ:3年前くらいですね。大掃除終わって、FANDANGOのスタッフのみんなの忘年会に俺も居ましたもん(笑)。

加藤:そやそやそや(笑)。

──愛されてたね。

ナオ:愛されてたねぇ。愛してるし。

加藤:あははは。嬉しいね(笑)。でも本当に毎年のようにFANDANGOの年末のライヴには来てもらってた気がする。

ジョニー:うん。毎年出とった気がする。しばらく年末は大阪に居るって感じやったもんね。

ナオ:そうそう。俺たち、FANDANGOと出会ってから、毎年のようにFANDANGOで年末を過ごすようになったからね。

加藤:大掃除まで手伝わされてなぁ(笑)。

ナオ:あははは。いやいや、きっと手伝えてないですよ、邪魔になってたと思う(笑)。

加藤:首振りのメンツは本当に年が離れているけど、一緒に遊べるんだよね。音楽性ももちろんすごくいいし、人もいい。そこってすごく大切で。

ナオ:酒の呑み方もね(笑)。最近は随分と大人しいけど(笑)。

加藤:そうかな(笑)。ライヴ終わってから自然と一緒に呑めるというかね。すごくいいライヴの後に、すごくいいお酒が呑める最高のバンドやなって思う。安心出来るし、信頼出来るし、一生の付き合いになるなぁって感じがしてる。

ナオ:押忍っ!

ジョニー:FANDANGOは何処に行ってもFANDANGOなんで!

ナオ:新しいところに行ってもライヴやらせて下さいね!

加藤:嬉しいね。もちろん。今日次のライヴ決めて帰ろか?

ナオ:はい! っていうか、これ! これなんです! 加藤さんこれなんですよ! ライヴして、終わって、今日はありがとうございました! って挨拶に行くと、“今日決めてこか、次。今日決めて帰ろ。来月とか何してんの?”って言ってくれるんですよ! それだから、ずっと途切れずにまたここに帰ってこれてたんですよ! ほんっとに加藤さんのおかげ!

加藤:来ます来ます! って言ってくれるからな(笑)。

ナオ:東京とか名古屋とかでライヴがあるときは、必ずFANDANGOを経由してましたからね! 大阪スタートのツアーもいままで何回もあったしね。

──それはもう大阪バンドだって思われても仕方ないね(笑)。でも、バンド激戦区の大阪の地で戦えるのはすごいと思う。加藤さんから見た首振りDollsのライヴの魅力ってどんなところだと思いますか?

加藤:他のバンドが出そうと思っても出せないものを出せてるとこじゃないかな。ちゃんと毎回新しいものに挑戦していってるから、何回見ても飽きへんねん。またおんなじことやってるわ〜っていうんじゃないからね。お客さんもほんまに毎回楽しそうやし。一回ライヴ観たら絶対に虜になるバンドやと思うで、首振りDollsは。忘れられなくなるというかね。
──インディーズ1st アルバム『首振人形症候群』をリリースしてから、メジャーデビューアルバム『真夜中の徘徊者~ミッドナイトランブラー』をリリースするまで、少し期間が空いていますけど、そこまで、新曲がない状態で飽きさせないライヴをしてこれてたのは、どういうところにその魅力があると思われますか?

加藤:それはね、ステージそのものに魅力があるんやと思う。存在そのものと楽曲そのものの力かな。それに、すごく考えてると思うしね。めっちゃ考えてると思うんですよね。そこがちゃんと伝わってるというか。考えてることを感じさせないというか。本当に楽しそうにライヴするし、本当に音楽を好きなのが伝わってくるんだよね。戦略的ではないというか。ちゃんと魅せてる。そこはね、バンドのテクニックというか。本当に一回見たら忘れられなくするバンドやと思うよ。首振りDollsはね、とにかくライヴを観なくちゃダメ。アルバムだけでも楽曲の良さは伝わると思うけど、本当にライヴを観たら、もう絶対に忘れられなくなるから。本当の意味で惚れこむと思う。そういうバンド、もうあんまり居ないからね。今年からショーンくんが入って、僕自身、今日(4月5日)のライヴで初めてショーンくんが加入した新体制の首振りDollsを観るんやけど、めちゃくちゃ楽しみで!

──そうですね。前回ここでワンマンしたのは、2018年10月12日でしたからね。まだ前任のベーシストのジョンのときでしたから。

ショーン:実は、今日、お客さんのツイート見て知ったんですけど、ちょうどデビュー戦から3ヶ月記念日らしいんですよ! 

ナオ:あらんっ、やだ! お祝いしなくちゃ! 3ヶ月検診!

──記念日。

ナオ:あらんっ、やだぁ。検診じゃなかったわ。3ヶ月記念日(笑)。お祝いしなくっちゃね!

ジョニー:3ヶ月かぁ〜。もっと長く一緒にやってるみたいに濃い(笑)。

ナオ:ほんとよね〜。でも、3ヶ月記念日をお祝いするとか、ちょっと高校生カップルみたいね(笑)。

ジョニー:高校生カップルでいうと、そろそろ倦怠期みたいな感じ!?

ナオ:若い子は早いからねぇ〜(笑)。3ヶ月が節目見たいよ。

──早っ(笑)! そうなの? 加藤さんも高校生の頃そうでした?

加藤:何!? 高校生の頃? 3ヶ月で終わった恋があったかって(笑)!? お、おぉぉん。まぁ、そんな恋もあったなぁ〜。

一同:(爆笑)

加藤:でも、その周期やな、なんでも。3、6、9、12。なんかそんな区切りはある気はするね。

──でも首振りDollsはラブラブだよね(笑)。日に日にラブラブ度が増してる気がする(笑)。

ナオ:そそそ(笑)。

ショーン:毎日が楽しくて仕方ないですからね! ライヴもきっと自分が一番楽しんじゃってるんじゃないかなって思ってます(笑)!

加藤:なんかすごくリズミックになって、横ノリのグルーヴも加わったって聞いたんやけど、まだアルバムも聴いてないし、ライヴもまだ見れてないから、想像が全くつかへんねんけど。

ショーン:さっき、加藤さんが、首振りDollsのライヴは毎回違うから面白いって言ってらしたんですけど、多分、すごく変化を感じてもらえると思います! さらに新しくなったので。

加藤:すごく変わった?

ショーン:そうですね、でも、やっぱりジョニーさんがギター弾いて、ナオくんが歌うと首振りDollsになるんです! なので、変な感じで、あぁ〜変わっちゃったなぁっていうのはないんじゃないかなって思うんです。

ナオ:その心配は本当にないよね。でも、ずっと昔から首振りDollsを観てくれてる加藤さんの前で演るから、緊張というか、“観てください!”って感じ。なんかね、自慢したくて仕方ないの。

加藤:おぉ、いいねぇ。ウチのスタッフも初めてだから。みんなすごく楽しみにしてたよ。

ナオ:めちゃめちゃ自慢したいっ! 本当にね、めちゃくちゃいいの!

ジョニー:めっちゃいいっすよ。自分たちで言うのもなんですけど、本当にめっちゃいいんですよ!

ナオ:本当にね、違うバンドになったくらい違うけど、でも、首振りDollsなの!

加藤:すごいね!

──ショーンが加入してから、本当にライヴがより力強くなったと感じますね。ドラムボーカルということもあり、ボーカルが動けないから、ライヴパフォーマンスの弱さがあるんじゃないか? という指摘も受けたりしてたんですけど、そこの心配は全くないですね。ホールのステージでもきっと狭く感じさせるくらいの動きがライヴに出ましたから。

ナオ:ショーンがすごく動くからね。本当にパフォーマンスがすごい。それによってジョニーも今まで以上にパワーアップした感じだから。

ジョニー:うんうん。ショーンは本当にすごく絡んでくれるからね。

──3人以外の演出が要らなくなった感じというか。

加藤:なるほど、映像で見せる感じとかではない感じ?

ナオ:とにかく今は、3人で音を出すのが楽しいんです。他の要素は今要らないというか。

加藤:なんかめっちゃ楽しみになってきたな!

ナオ:本当に最初の方から観てくれてる加藤さんだから、なんて言ってくれるかな? って楽しみで仕方ないです! 本当にFANDANGOにはめちゃくちゃ思い出があるから。

ジョニー:関西のホームだからね、間違いなく。ここが俺たちの関西のホーム。

ナオ:5月24日からスタートするアルバムツアー<~PSYCHO SHOCK!!~>でも FANDANGOを一番最初に組み込みたかったのに、ちょうどタイミング的にFANDANGOが現在の場所での営業の終了を発表したところで、またアルバムツアーには組み込めなかったから。

加藤:アルバムツアーは終わっちゃうかもだけど、その先の展開の一番最初にまたFANDANGOでライヴやってよ。

ナオ:やりたい! 

加藤:よし、今日決めてこか!

一同:是非!

──デビューツアーもFANDANGOは追加公演だったしね。今回も追加公演はFANDANGOで!

加藤:おっ! それ名案やん! 

ナオ:そうしよう! 今回もそうしよう! 追加公演、絶対にFANDANGOでやらせて下さい! デビューツアーのときもね、タイミングが合わずに本ツアーに入れられなかったとき、お客さんから“なんでFANDANGOないん!?”ってお叱りのメールをもらったくらいだったから。お前ら、FANDANGOでやれ! みたいな(笑)。

──お叱りを受けたのね。

ナオ:そうそう。それくらいFANDANGOでの首振りDollsのライヴはみんな特別に思ってくれてるみたいで。

加藤:嬉しいね! よし。じゃあ決めて帰ろ!

ナオ:是非是非!

ジョニー:平成最後のFANDANGO!

ショーン:本当に光栄です。首振りDollsとして十三のFANDANGOのステージに立てて良かったです。

加藤:そうやね。ナオくんとジョニーがここまで思い入れがあるって言ってくれてる十三のFANDANGOにショーンくんも一緒に首振りDollsとしてライヴしてもらえて良かった。これもきっと何かの縁だと思うからね。本当にいいバンドやと思うし、これからも末長くよろしくね。僕が十三FANDANGOで働き出してから30年になるんだけど、僕は創立のメンバーではないのね。でも、ここには人一倍の思いがあって。22歳でこの町に来て、今年で52歳。人生の大半をこの町で過ごしてきたからね。辛い事もたくさんあったけど、その数を遥かに上回る程の楽しい事があったから、それが、こんな歳になった今もここにいる唯一の理由で。実際、今も楽しいしね。首振りDollsと過ごしてきた時間も本当に楽し買った大切な思い出だから。最初にオーナーからこの土地を売却したという話を聞いたとき、これでFANDANGOの歴史を終わらせようかとも思ったけど、どうしてもその踏ん切りがつかなかったのも、やっぱり楽しい思い出があったからだからね。十三を離れるのは寂しいけど、建物が無くなるだけの話で、その気持ちさえしっかりと引き継いでいけたら、いつかその新しい場所は往年のFANDANGOの雰囲気になるはずだから。無くなってしまうのは本当に寂しいけど、31年前にこの十三で産まれたときのように、新しいものを一から作っていく楽しさがそれを上回ればいいと思ってるから。絶対に来てね、新しいFANDANGO。待ってるから。

ナオ:絶対行きます! 絶対行くっ! 

加藤:今日、本当に楽しみやわ。新生首振りDollsやね。今日いいもん見せてください! よろしくね! 頑張って!
4月5日。この日のライヴは、開演時間の19時を5分まわったあたりから始まった。おきまりのオープニングSEであるThe Zanies の「The Mad Scientist」が会場に響きわたると、3人は下手にある階段の上で、絶叫とも言えるほどの大きな声を重ねて気合いを入れて気持ちを一つにし、勢い良く階段を降りていった。

この日彼らが放っていた熱は特別だった。恩師のような存在である加藤氏に初めて見せるニュードールズのライヴへの想いと、第二のホームとも言っていた場所への特別な想いが重なっていた、特別な気合いを彼らは纏っていたのだ。

「黒い太陽」「カラリカラマワリ」など、今までの首振りDollsのノリには存在しなかった横ノリのグルーヴに、オーディエンスはツーステップを踏んで盛り上がった。ループする独特なサウンド感もショーンが加入したことでの化学変化と言っても過言ではない。赤い照明が似合うバンドであった首振りDollsが、緑の照明も似合うバンドになったことは、実に大きな変化である。

「愛するべきあなたたちが、1人で涙をこぼさないように──」

ナオの言葉から繋がれていったバラードを届けたブロックでは、ロックンロールナンバーを歌うときとは全く別の人格が宿るのでは? と思うほど、切なさが込み上げてくるような柔らかな肌触りの声質が浮き彫りになり、その歌声を包み込む嫋やかなジョニーのギターとショーンのベースのバランスが、心地良い温度でオーディエンスを酔わせていった。

ロックンロールナンバーと歌モノに宿るバンドの個性はまったく別モノ。そんな二面性、多面性こそ、彼ら首振りDollsの魅力だろう。

ショーンが加入して3ヶ月、アルバム『アリス』に収録された新曲たちが生まれてからもわずか4ヶ月ほどである。彼らはそこから何本もライヴを重ねてきてはいるが、この短期間の間に、旧曲たちを実に見事にニューDollsが放つ世界観に融合させたのである。

首振りDollsの看板曲でもあった、乱歩地獄を思わせる「鏡地獄」は、少しテンポが速くなったことをきっかけに、フロアからはクラップが自然発生するという光景が広がったのだ。同じ空気感を放つ旧曲「金輪罪」や「ピンクの実」などのアングラな世界観の楽曲でも、オーディエンスはこれまで以上に体を揺らして応えていたのも、新生首振りDollsが新たに築き上げた個性であると感じさせられた。

ショーン・ホラー・ショーという新たな武器を手に入れた首振りDollsのライヴを、加藤氏はこれまでと変わらず、入り口近くの定位置から優しくあたたかな眼差しで見守っていた。

終演後、興奮気味に3人に“最高だったよ! いや、想像以上で驚いた! 最高! いままでのファンの人達もこれなら納得だし、新たに首振りDollsを知ってくれる人達も、きっと夢中になると思うよ!”と大絶賛し、ライヴで全てを出し切った彼らを労い力強く抱きしめながら加藤氏はこう言った。

「で、次のライヴ、いつにする? 今日決めちゃおう!」

そんな加藤氏の言葉に、安堵の表情を見せていた3人。ライヴバンドとライヴハウスの絆を見た気がした。

この先も、FANDANGOと首振りDollsがこれまで以上のあたたかな関係で続いていけることを。そして、FANDANGOが新たな出発に選んだ堺市という地で、首振りDollsとFANDANGOが築き上げてきた絆のように、たくさんのバンドをシーンに送り出していってくれますように。

7月末で営業を終了する十三FANDANGOに感謝を。
そして、堺市で産声を上げるFANDANGOに期待を。
新生首振りDollsがロックシーンの台風の目となっていけることを願って。

取材・文◎武市尚子

■ファンダンゴからの移転先決定のお知らせ

いつもお世話になっております! 皆様にはかねてからご心配をかけておりましたファンダンゴの移転先が、正式に決まった事を報告させて頂きます。 僕たちファンダンゴは長年お世話になった十三の町を離れ、 大阪府堺市にて再出発する事となりました。 住み慣れた十三を離れるのは寂しいですが、新しい町で一から皆さんと一緒に新たなるファンダンゴを作っていけたら嬉しいです。 以下、現時点でお知らせ出来る情報になりますので、参考にして頂けたらと思います。

場所:〒590-0985 大阪府堺市堺区戎島町5-3-1階 店舗名:Live Bar FANDANGO (旧堺港に面する倉庫を改造したパーティースペース"ROUTE26"を改装して、新しいファンダンゴを作ります)
営業開始日:2019年10月1日(火)

十三ファンダンゴは7月31日の営業終了まで悔いの残らないように全力でやり遂げ、新店舗での営業開始に向けて全力で動く所存でありますので、引き続きのご愛顧を宜しくお願い致します。 尚、新店舗に関しての詳細は追って報告していきますので、 期待と共にお待ち頂けたら幸いです。
(大阪・十三ファンダンゴ一同)
http://www.fandango-go.com/jp/jinfo.htm


■首振りDolls『アリス』

2019年5月22日発売
KICS-3800/¥2,700+税/KINGRECORDS
詳細:http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=45515

<収録曲>
01.唐紅
02.カラリカラマワリ
03.PSYCHO CLUB
04.黒い太陽
05.産声
06.ティーネイジ~new dolls ver~
07.lazy
08.ホール
09.BROWN SUGAR
10.地獄に堕ちた野郎ども
11.INU
12.シャボン
13.星くずのメロディ
14.ティーンネイジャーアンドロックンロール


■ライブ・イベント情報

5月24日(金)福岡小倉FUSE 【one-man】
5月26日(日)神戸ART HOUSE
5月28日(火)広島SECOND CLUTCH
5月30日(木)福岡DRUM SUN

2019年6月
6月1日(土)岡山DESPERADO
6月2日(日)名古屋MUSIC FARM
6月9日(日)仙台FLYING SON
6月11日(火)川崎Serbian Night
6月12日(水)渋谷Cyclone
6月14日(金)横浜BAYSIS
6月15日(土)千葉 稲毛K'sDREAM
6月21日(金)大阪梅田Zeela 【one-man】

2019年7月
7月15日(月祝)小倉FUSE
7月23日(火)川崎Serbian Night
7月24日(水)東京SHIBUYA REX
7月26日(金)名古屋クラブロックンロール 【one-man】
7月28日(日)京都磔磔 【one-man】

2019年8月
8月2日(金)福岡DRUM SON
8月4日(日)大阪Bigtwin Diner SHOVEL
8月5日(月)名古屋車道LINK
8月30日(金)新宿ロフト【one-man】

関連リンク

BARKS

BARKSは2001年から15年以上にわたり旬の音楽情報を届けてきた日本最大級の音楽情報サイトです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着