BRADIO 初の47都道府県ツアーを前に
“らしさ”をタフに表現したシングル
発売するバンドのリアルとは?

BRADIOがキャリア初の47都道府県ツアーの開催を前にリリースする、2019年第一弾シングル「O・TE・A・GE・DA!」。ソリッドでタイトなバンドのプレイがフィーチャーされた新曲3曲に加え、昨年のNHKホールでのライブからバンドの代表曲7曲、そして新曲のインストバージョンを収録した、これからBRADIOに出会うリスナーにもリアルな今の彼らが伝わる超充実盤になっている。新曲が生まれた経緯、そして今の3人のスタンスを探ってみた。
――昨年はライブ会場の規模が大きくなっていきましたが、どんな経緯でシングルの方向性が決まっていったんでしょうか。
大山聡一(Gt):アルバム(『YES』)を出してツアーがあって、ツアーを廻ってる間も“シングルは出したいね”って話してたんですけど、どういうものにするかは全然決まっていなくて。曲の方向性は今年の頭にかけてでしたけど、そもそもリリースするってなった時に“BRADIOらしい感じのものは作りたいね”とは漠然と話していて。で、そこから“らしい”ってなんだ?って話になっていく中で作っていった3曲かなと思っていて。毎回そうなんですけど、改めてBRADIOというものを届けられるような作品作りをしたいねっていうところから、3曲入れるとか、ライブ音源を入れるとか、そういうところにつながっていったという風に思ってます。
――このタイミングでBRADIOらしさを考えるというと、例えば5年前に比べたら“らしさ”の種類は違いましたか?
大山:違うと思いますね。5年前というと『Swipe Times』を出した頃か。もう全然別モノなんじゃないかなと思いますね。昔の方が、色々考えようとしてたかなみたいなところがあって、ああした方がいいんじゃないか、こうした方がいいんじゃないか、とか。やっぱりそういう部分は少しずつ削れていっていて、わかりやすくなってきてるのか、そのまんまやりたいと思うことをやれば“らしく”なっていくっていう風にシフトしていってる気はしますね。
――今回は賑々しいアレンジじゃなくて、タイトじゃないですか。どういうアイデアからまず出てきた曲なんですか?
酒井亮輔(Ba):シンプルなやつをやってみたいなっていうのが最初のきっかけで。なんかこう……それこそ、もうずっと同じことを弾いて、ライブでプレイしながらあんまり気にしないで前を見てできるようなやつをやりたいなっていうのが自分の中では漠然とあって。マイケル・ジャクソンとかブルーノ・マーズ、シックあたりは頭にあって。ゆる~く大人なやつになったらいいなっていうところからサウンド作りは始まった感じですね。
――シンプルな分だけ音像が新鮮に響きます。
大山:そうですね。「O・TE・A・GE・DA!」は編成は少ないんで、その分、各パートはミックスしていくと浮き出る。もちろんブラスがいっぱい入ってる曲も好きなんですけど、そうではない魅力が今回、3曲ともに出せたかなって思いますね。
――3リズム主体のアレンジは早いうちに決めてましたか?
酒井:結構早い段階で決めました。編曲はEFFYくんにやってもらってるんですけど、最初、何もオーダーせずに楽曲以外の、例えばパーカッションとか鍵盤、ホーンみたいのをオーダーした時も、やっぱりがっつりホーンが入ってきて、すごくきらびやかで派手だったんですけど、なんかそういう曲にはしたくなかったっていうのは最初からあって。どんどん削ぎ落として、結果的にこうなったっていうのはあります。いずれ将来的には、ライブでホーンが入ってとか、そういうのはすごく楽しそうなんですけど、音源自体はどっしりとしたシンプルなものにしたいなというのはあったんで、早い段階で決まりましたね。
――それもあるし、ファンク、グルーヴミュージックってここ数年トレンドでもあるので、そこに対するBRADIOなりの回答なのかな?と思ったんですけど。
大山:そこまでかっこいい提案とかではないですけど(笑)、人と比べてどう、みたいなこと考えるのが嫌になっちゃって。周りにかっこいい先輩がいますし、最初の話じゃないですけど、“らしさ”をシンプルに出したいなっていうのは、この作品に限らずですけど、ありましたね。

――今回はサウンドプロダクションが新しいなと思いました。アレンジをシンプルにしたいと思ったことがきっかけなんですか?
大山:そうかもしれないですね。もちろん、バンド4点――ドラム、ベース、ギター、歌以外にちょっと入ってますけど。2曲目の「バクテリアch.」も最初、生バンドだけでやろうっていうぐらい、かなり削ぎ落としていった感じなので。でも、その方が後々色々増やしていくのも楽しみだな、みたいな感覚で。
――今、どんどんサブスクリプションでレコメンドされる音楽に関しては、音数が少ないですね。洋楽は特に。
大山:かなり少ないですね。だからほんとに聴こえてくる音が、極端に言えば2つ3つとか、それぐらいなんで。よ~く聴くとなんか入ってるなぁとかはあるんですけど(笑)、それで特徴がある曲がすごい増えてるなっていうのは感じます。
――今回の制作までに聴いてきたものの、そういう音楽のリファレンスはありますか?
大山:僕はサブスクで、いわば世界のトップ50みたいなのをひたすら流してるんですけど。いわばバンドじゃないんですよね、もう。打ち込みのドーンっていうリズムがあって。バンドがたまーに入ってくるぐらいで。それの影響もあってか、サウンドはやっぱり低音出したいなっていう気持ちがあって。「O・TE・A・GE・DA!」に関してはかなり低音を出した感じが、僕に関してはありますね。誰の曲を聴いたっていうわけではないですけど。
――ポップスの楽曲でサブベースがガンガン鳴ってますからね。
大山:かなり鳴ってますね。オクターブ下がもう当たり前みたいになってきてるんで。それをバンドでやるのも一つの面白いのかなっていうのがあって。ちょっとチャレンジしてみた感じです。
――酒井さんは生ベースでこの低音を出してるんですか?
酒井:一応、生っていうか普通に弾いて、オクターバーでもう一個下を出すっていうサウンド作りはしましたね。
――基本的に誰がどの音を演奏しているかはっきり分かりますし。
大山:そうですね。分離がしっかりしてる曲なんで。CD版にはトラックだけ(インストバージョン)のものもいつも入れるんですけど、そっちも楽しい曲に仕上がってるなと思います。
――インストのトラックは、ダンストラックスとして踊れる仕上がりだと思いました。
酒井:ほんとにいろんなところでトラックで使ってもらえたら嬉しいな、みたいな気持ちもあって作ったんで。
BRADIO/真行寺 貴秋(Vo) 撮影=横井明彦
――そして真行寺さんはボーカリスト、作詞家としてどういうアプローチを?
真行寺貴秋(Vo):歌はほんとに特になんも考えてなかったと言えば考えてなくて。いつもどおりの延長線上にはあります。今回、特に歌詞が楽しくて、力を入れられたんじゃないかなと思っておりまして。『YES』の時は歌の方にフォーカスするっていうテーマが自分にあったんですけど、今回は歌詞の方にフォーカスできたかなという感じはあります。
――“お手上げだ!”ってダブルミーニングじゃないですか。歌詞の最初から言ってますもんね、<ハンズアップ!>って(笑)。
真行寺:ははは。
――よくできてるなぁと。別に困ってるだけの曲じゃないという。
真行寺:そうですね。困ってる、にっちもさっちもいかないお手上げだ、っていうのと、ハンズアップっていう二つの“お手上げ”があって、日本語でこういう歌詞を書くのって改めて面白いなと、この曲は思いましたね。
――じゃあ、言いたいことがあるというより、音にはめていくのが面白かった感じ?
真行寺:いや、言いたいことも全然、はい。今回、どの曲もチームやメンバーと話す機会があったので、結構その中から掘り起こしたものが多かったりします。自分の感覚で書きましたけど、いろんな人の意見がそこにあったのかなというか、導いてもらってこういう形になれたのかな?って。
――BRADIOの歌詞って、基本的に底にはブルースがあると思うんです。悲しみみたいなものがあって、その上で元気を出そうというような内容だと思うんですけど。今回の歌詞は、今起こっていることが書かれているなと。
真行寺:うん。今、みんなが感じてることや思ってることを聞く機会がすごく多かったので。ほんと、作詞以前の普通の会話の段階で、そういう普段しないような、なんでもないような“今、こういうこと思ってる”みたいな会話から結構歌詞を書きました。そういう部分を聞けたのが、一番大きかったのかなと思います。
――感じてることをじっくり考える暇もなく、次にいくことが多いですよね。
真行寺:ああ。曲が立ち止まるきっかけになったらいいのかなっていう気はします。
――だからタイトルは「O・TE・A・GE・DA!」なんですけど、諦めてはないというか、むしろ逆かなと。
真行寺:“お手上げ”を辞書で調べたらどうなのかわかんないですけど、言葉って僕たちが話してる中で、意外と辞書と違ってて、間違って使ってることがあったりして。その“お手上げだ”って言葉もそれこそダブルミーニングじゃないですけど、意外と“お手上げだ”っていう言葉自体がキャッチーだなっていう感じがあったりとか。英語にするとなんか面白いなとか、そういう部分がパッと出たので、それでタイトルにつけたところはありますね。とりあえず言って、でもなんか諦めきれてないところがある、みたいな部分はあるかもしれないですね。
BRADIO/大山 聡一(Gt,Vo) 撮影=横井明彦
――2曲目の「バクテリアch.」は、後半、想像以上にロックチューンになっていくという。これはどこからできたんですか?
大山:これはトラック先行ではありましたけど、もともと沸点の低い曲をやりたいっていうところでネタは仕込み始めて。でもすごくメッセージ性のこもったワードが乗ってきた流れで、それのマッチングがすごく良かったというか。曲の感じと歌っていることの統一感もすごく出たんで、まぁ行くとこまで行ってしまおうと。で、先ほどの話じゃないですけど、ほんとにサウンド的にはシンプルに、バンド感が3曲の中では一番強い、バンドが出せる音を出したいんだ、っていうのが一番サウンド面では現れている曲なんじゃないかなと思います。
――「バクテリアch.」ってワードはどういうイメージですか?
大山:バクテリアって生物が何にでも変幻していく生態があって。それと同じように自分の中でもいろんな――歌詞で言われてる、“ああ、自分もそうだよな”と思うこともあれば、自分の考え方ひとつで物事の捉え方は変わるし、チャンネルを合わせて行く、みたいなイメージですかね。
――失敗したら二度と戻って来られない、みたいな最近の風潮に対する怒りも感じる歌詞で。
酒井:ほんとに色々考えてたことを反映させた部分はあって。それこそ今おっしゃった、失敗したら戻って来られないような社会って、多分みんな保守的になるし、だからうまく取り繕う風習みたいな。言っちゃいけないことが多くなってきてるような、それがどんどん重なってきて、結構麻痺してるんじゃないかなと思ってるんですよね。で、自分自身にもそれがあって、すごく気づかされる部分があったので。これは絶対おかしいことなのに“ちょっと待った”って言えてないなとか。だから、「O・TE・A・GE・DA!」の話しもそうですけど、一歩立ち止まって“いや、これはこうだよね”って言えたりとか、前に進むためにあえて言っていかないと。なぜハッピーに行き着くのか?が結構わかんなかったりするというか。俺ら自身が常にそういう人間であれば問題ないと思うんですよね(笑)。もう毎日、昼過ぎに起きて、夕方からパーティが始まって、朝まで騒ぐみたいな(笑)、そんな生活をしてたら、ほんとにそういう歌を歌えばいいんだろうと思うんですけど。でも自分自身、やっぱ生きづらいなというか、やりづらいなってすごく感じた時期ではあったので。そういうことを出していった方がいいのかなとすごく感じたんですよね。
――確かに。そして普段言葉で言いづらい、説明しにくいことが「帰り道のblues」には一番現れているかもしれないですね。この曲も、シングルに3曲入れるなら入れたいなと?
大山:そうですね。ほんとにいい曲できたんで入れたいなっていう感じですかね。だから今回は、1曲目は「O・TE・A・GE・DA!」ですけど、どれが表題だとかいう感じではなくて、いい曲が3曲できたから入れました、という感覚があります。
――ある意味素朴というか、平熱な曲で。それがじんわりきます。ソウル寄りのスローとはまた違いますけど、歌うときはどんな感じでしたか?
真行寺:あんまりソウルとかは意識してなかったです。この曲から僕は空っぽな虚しさをすごく感じてて、そこに埋まる感じがなんとなくいいなと思ってたんです。なんかその辺は意識しつつ、っていう感じではありましたね。技術的なというよりマインド的な部分はこさえていきましたけど、技術的な部分はあんまり意識してないかもしれないです。
――リリースの仕方にも意思を感じました。CDには新曲もインストもライブ音源も全て収録されるじゃないですか。で、配信は新曲3曲とライブ音源を日付を分けて配信するという。
大山:そもそもライブ音源を入れてみようというのは、全国にツアー行きますし、BRADIOのライブ面白い!って、それをきっかけに現場に来てくれる人が増えたらいいなっていうところから着想して。レコーディングした曲とライブでやってる感じは全然違うので。同じ曲でもライブの中での熱量だったり荒々しさだったり、パワーだったりがそのまま入っていて、それも一つの良さなんじゃないかというところで。僕ら基本的に今までの音源も全てサブスクに解禁して、盤も出してますけど、サブスクをきっかけに知ってくれる人もいるだろうし、いろんな形態で音楽を聴けること自体、すごくいいことだと思ってるんで。
――BRADIOはファン層も幅広いですし。
大山:俺が個人的に思ってるのは、この3曲もそうですけど、サウンド的に言うとバリエーションが広いというか。例えばずーっとハイテンションの曲ばかりじゃない中で、サブスクのプレイリストじゃないですけど、BRADIOの曲の中でも“めっちゃ元気出したい!”っていう曲を選んでプレイリストを作ってもいいだろうし、“なんかしっとりしたい”みたいなのも、聴いてる人が自由にスタンスをとっていけばいい時代だなと思って。だから配信は配信の特色を出して、盤は盤で好きだし。みんなプレーヤーが違うだろうし。今は、音楽を映像と同時にしか楽しまない人もいると思うんですよね。でもそれが絶対悪か?と言うとそんなこともないと思っていて。逆に好きな風に楽しんでもらえたらいいなって気持ちはすごくありますね。ライブも好きに感じたままに踊ってくれ!みたいなところがあるから、それと似てるのかなと思います。
BRADIO/酒井 亮輔(Ba) 撮影=横井明彦
――そして5月1日から47都道府県ツアーがスタートします。全部を対バンにしようと思ったのは何故なんですか?
大山:今回初めての47都道府県で、規模感もライブハウスというところで、いろんなパターンを考えたんですけど。やっぱり見ていただく方に楽しんでもらいたいという思いと、自分たちとしてもいろんなアーティストと共演して刺激を得て成長につなげていきたいっていう気持ちもある中で、友達とか先輩から、自分たちの中でも何か得るものがあるというか、変わっていくものがあるっていう話をよく聞くので。行くからには何か、最大限得たいな!みたいな(笑)、っていう気持ちがすごくあるからなんです。
――ライブバンドであることの実証ですね、このツアーは。
酒井:そうですね。ライブハウス好きですし。もちろん大きいとこでやる楽しさもありますし、ライブハウスでやる楽しさもある。ほんとにBRADIOを始めて、いろんなライブをやって、マインド的な不安はないんですけど、ちょっとフィジカル的な不安がありはしますけど(笑)。今後につながるいいツアーになるだろうし。いろんなアーティストともやれますし、あと、その地域に行かなきゃ来られないお客さんも必ずいると思うんで。県外出るとなかなか難しい、そういう人に見てもらえるチャンスなので楽しみですね。
――“この県どこ?”っていう県あるでしょ?
酒井:僕と大山はないです。
真行寺:ははは(苦笑)。
――確かに千葉の名産が出てこなかった真行寺さんは怪しいかも(笑)。
酒井:前、“仙台県”みたいなこと言ってたよね。
真行寺:宮城、宮崎とか……。最近ようやく四国の4つのパーツがわかってきました。
――パーツとか言われたら心外ですよ(笑)。
酒井:中学一年の地図の教科書とか持っていった方がいいよ。
――先日のSPICEの生配信の中で、真行寺さんのアフロの変遷がネタになってましたが。
真行寺:あ、そうでした(笑)。適当なことばっかり言ってるから全然覚えてない。
――どれぐらいの間隔でかけないと保てないんですか?
真行寺:2ヶ月間、短い周期なんでツアー中は2回行けたらいいかなと。
――もし保てないタイミングが来たら?
真行寺:ライブ中に断髪式……やらないっすよ!(笑)

取材・文=石角友香 撮影=横井明彦
BRADIO 撮影=横井明彦

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