「臼井孝のヒット曲探検隊 ~
アーティスト別 ベストヒット20」
14作のミリオンセラーを記録している
Mr.Childrenを探求

7位と10位には“記憶の名曲”と言える
「抱きしめたい」と「365日」

さらに4位以下を見渡すと、7位に初期のシングル曲(または同時発売のアルバム『KIND OF LOVE』収録曲)の「抱きしめたい」や10位にアルバム『SENSE』収録の「365日」など、CD部門の上位には決して現れない楽曲がTOP10入りしているのも興味深い。これもデビューから26年を経た、間違いのない“記憶の名曲”と言えるだろう。

「365日」
Mr.Children TOUR POPSAURUS 2012 

このうち「抱きしめたい」はアルバム『KIND OF LOVE』との同時発売ということもあり、オリコンTOP100にチャートインせず、メガヒットを連発した95年になってようやく最高位56位をマークするものの、オリコン累計では10万枚に満たないセールス記録となっている(実際には、101位以下で長く売れ続けているので、実売ではもう少し売れているだろうが)。

ただし、アルバムのほうは初登場45位でいったんチャートから外れるものの、93年の3rdシングル「Replay」や続く3rdアルバム『Versus』の評判から再度TOP100入りし、4thシングル「CROSS ROAD」のヒット以降徐々にセールスを積んで、95年には最高13位をマークし、やがてミリオンヒットを記録している(累計約118万枚)。

「抱きしめたい」は強い愛を歌ったバラードで、ミスチルの中では比較的歌いやすいストレートな曲調なのも人気の要因だろう。演歌歌謡歌手の平浩二の楽曲「ぬくもり」の歌詞が、この「抱きしめたい」と酷似している(のちに指摘を受け発売中止になった)ことも話題となったが、言い換えれば演歌歌謡にも自然に馴染むような“ぬくもり”のある歌詞ということだろう。

なお、同アルバム収録の「星になれたら」もカラオケ17位にランクイン。他にも、「車の中でかくれてキスをしよう」など、様々なラブソングが詰まっている(まさに『KIND OF LOVE』!)ことも、本アルバムが長く支持された理由と言える。

「抱きしめたい」Mr.Children
[(an imitation) blood orange]Tour

そして、緩やかな楽曲ばかりではなく、総合4位に94年の「innocent world」、総合5位に95年の「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌」と軽快なギターロックチューンが入っている。近年はミスチルゆえに壮大または重要なテーマのタイアップの楽曲がオファーされ、それに応じた楽曲が作られていることが多いが、この90年代のように青春を彩ったポップな楽曲もミスチルの大きな魅力の部分なので、今後もこうした代表曲が生まれるのを期待したい。

ミスチルに非常に少ない
楽曲の特徴とは!?

それにしてもミスチル作品で、サビから始まる人気曲はかなり少ない気がする。少なくとも上位20曲は全て曲のラストにサビが来るし、そこそこ有名なもので探すと93年の3rdシングル「Replay」(オリコン最高19位、累計約9万枚)があるのだが…。他の90年代アーティストでも、それ以前の歌謡曲時代のアーティストでも、さらに00年代以降のデビュー組でもサビ頭のヒット曲は多数あるのに、ミスチルには1曲もない、そもそも殆ど作っていないというのは非常に大きな特徴だと思う。
それらサビ頭の超キャッチーな楽曲を作ることは、タイアップ至上主義だった90年代において、最も効果的な戦術であったはずだ。しかしながら、ミスチルも多数タイアップがある中で、そうした楽曲制作を行わなかったのは、その断片的なインパクトよりも、楽曲全体で伝わるメッセージを大事にしてきたということではないだろうか。だからこそ、こうして後世まで歌い継がれている楽曲が多いのだ。

プロフィール
臼井 孝(うすい・たかし)

1968年京都府出身。地元大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽系広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のマーケティングに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽市場の分析や配信サイトでの選曲、さらにCD企画(松崎しげる『愛のメモリー』メガ盛りシングルや、演歌歌手によるJ-POPカバーシリーズ『エンカのチカラ』)をする傍ら、共同通信、月刊タレントパワーランキングでも愛と情熱に満ちた連載を執筆。Twitterは @t2umusic、CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、カラオケ、ビルボード、各番組で紹介された独自ランキングなどなど、様々なヒット情報を分析してお伝えしています。気軽にフォローしてください♪

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