MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』
第十四回ゲストは稲村太佑(アルカラ
)「ライブハウスが大好き」という言
葉の裏には何があるのだろう

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第十四回目のゲストはアルカラの稲村太佑。普段、僕らがアーティストの演奏を観に行っているライブハウス。フロアには観客の汗くさい匂いが立ち込めて、ステージ上では無数のスポットライトを浴びながらアーティストが歌っている。そしてMCや曲中に「ライブハウスが大好き」と口にする。ライブを観に行ったことがある人なら、一度はそんな瞬間を目撃しているはずだ。ただ……あのときの言葉には、一体どういう真意があったのだろう。今回の対談は「ライブハウス」という話を軸に進む。彼らはマイク越しに、ライブハウスの何を見てきたのだろう。
●MOROHAのアフロの「すいません」だぞ●
アフロ:俺は相変わらず、中目黒の例のスパゲティに行ってますよ。
稲村太佑(以下、稲村):え、それなんやったっけ?
アフロ:駅前のスパゲティ屋ですよ。前、太佑さんに「俺はよくあの店に行くんですよ」と言ったら「まあ、あそこは中くらいかな」って。
稲村:いやいや、そんな!
アフロ:「俺は中目黒の奥の奥まで知ってる」みたいな。中目黒で俺にマウントを取ってくるっていう。
稲村:言ったかなぁ(笑)。
アフロ:「俺はもっと美味いところ知ってる」っぽいことを言ってましたよ。
稲村:スパゲティとか行かへんから。
アフロ:やっぱり飲みに行くことが多いですか。
稲村:飲みに行くし、そんな洒落てないから。もっとディープなところっていうか。
アフロ:どこに行くんですか。
稲村:最近はな……大衆的な、ちょっとチェーン店的なところで——。
アフロ:チェーン店に行ってるじゃないですか。なんでチェーン店に行ってる人が、俺の行きつけを否定してるんすか。
稲村:ほんまにそうやな(笑)。この界隈で店を出している系列のお店があって、そこの店員と仲良くなって。何が良いわけでもないんやけど、店員と仲が良いから。
アフロ:どうやって店員と仲良くなるんですか。
稲村:いきなり話しかける。
アフロ:太佑さんが?
稲村:「これ、ええやつ使ってますねぇ」とかいろんな話をしながら、だんだん仲良くなる。
アフロ:絶対俺はそんなふうに仲良くできない。
稲村:出来るやん。アフロくんは言葉の宝庫やんか。
アフロ:いやいや、俺は飲食店の店員さんには頭にきてばっかりで。例えば机がガタガタしていると許せないんですよ。行きつけの喫茶店があって、そこはガタガタしているんです。しょうがなく紙ナプキンを畳んで、机の脚にかまして安定させるんですよね。で、それは俺の中で店員さんに対する一種のメッセージなんですよ。掃除のときに気づくじゃないですか。
稲村:「お、なんだコレは」と。
アフロ:「ガタガタしているから、お客さんが紙ナプキンを挟んだんな」と。そんなのホームセンターに行って、道具を買えばすぐ直せるわけですよ。それで次の日に同じ喫茶店に行くじゃないですか。またガタガタしているんですよ。で、また紙ナプキンを机の脚にかまして帰るんです。で、次の日に行ったらまたガタガタしてる。
稲村:全然気づいてへんやん。
アフロ:多分、ガタガタに対してどうでも良いと思ってるんですよ。あとは「すいませーん!」って店員さんを呼んでも、返事をしないことがあるんです。聞こえてないのかなと思って、もう一度「すいませーん! すいませーん!」と言ってるのに返答がない。声を使って仕事している人間が、一発で店員を呼べないなんて俺は恥だと思うんですよね。だから「すいません」を言う度に、俺の心は傷ついてるんです。
稲村:俺の「すいません」が届かないと。
アフロ:その辺のサラリーマンが言う「すいません」じゃないぞ、と。MOROHAのアフロの「すいません」だと。それで一生懸命に声を出しても返事がなくて、思いっきり「すいませーん!」って呼んだら、ちょっとイラッとした感じで「順番にお伺いします」と言われたんですよ。「……聞こえてたのに、それをスルーして何回も言わせたんだ」と思ったら、その日は怒りで手が震えちゃって。
稲村:ハハハ!
●ライブハウスにみんなが集まって、自分がちやほやされるのが好きなだけやねん●
アフロ:やっぱり店員さんと仲良くなる前に、そういうところが気になりますね。
稲村:負のところが勝ってしまうんやね。
アフロ:そういうのが太佑さんはないっすよね。
稲村:俺は鈍感なんかな。ボーカルの声が届いてないまで考えてないかも。
アフロ:悔しいながら、この感じだと文字に起こしたとき「太佑さんは器がデカイ」みたいになりますよ。
稲村:え、これって対談始まってんの?
アフロ:始まってますよ。
稲村:あっ、始まってんねや!! なんの話をしてるのかなと思ってたら——。
アフロ:だいぶ前から始まってます。全部文字に起こされますよ。
稲村:マジか、おぅい。
(ここでタイミングよく牡蠣が運ばれてきた)
稲村:(牡蠣を一口でほおばる)ズルズルゥ〜。おぉ美味い! (大将に向かって)牡蠣めっちゃ美味しいです! ありがとうございますぅ!
尋・大将:ありがとうございますっ!
アフロ:なるほどな。そりゃあ店員さんと仲良くなるわ。
稲村:1個1個こうやって反応しちゃうから。
アフロ:飲食店で働いたことはあるんですか。
稲村:飲食店というかライブハウスやな。まあ飲食といえば飲食やけど。
アフロ:O-Crestで働いていたんでしたっけ?
稲村:O-Crestでも働いてたし、神戸のART HOUSEは18歳から30歳まで働いてた。
アフロ:よく「ライブハウスが大好きです」ってバンドマンが言うじゃないですか。俺、アレがすごく嫌いで。
稲村:あんなの嘘やもん。ライブハウスにみんなが集まって、自分がちやほやされるのが好きなだけやねん。ライブハウスの汚いトイレを雑巾で掃除しながら、また次の人が入ってきて「またハードコアのイベントやん」って。そういう掃除している奴のこともわかって「好き」と言ってるのと、自分らがライブをやって「カッコイイー!」「アンコール、アンコール!」と言われて「夢のある場所やから好きや」というのは全然意味が違う。
アフロ:そういう話だと思うんですよね。「ライブハウスが好きです」と言ったら「仲間がたくさんいて」という言葉が続くじゃないですか。その感じのノリには、ライブハウスのトイレの奥行きが見えない。そいつらが「仲間だ」と言ってる団体も本当かな?と思ったりしちゃうんですよね。だけどアルカラがやっている『ネコフェス』にそれを感じたことがなくて。太佑さんはトイレのことも含めて「ライブハウスが好き」と言ってるんだろうなと思えるから、今の言葉で紐解けた感じはするっすね。
稲村:言い方悪いけど、みんなは人の言葉をコピーしてると思う。
アフロ:そうっすね。「ライブハウス好きです」と最初に言った人は、ちゃんと奥行きがあったはずなんですよ。
稲村:そうやね。例えば「どこへ行ってもお前らなんかが出れる場所はないぞ」と言われたバンドでも、ちゃんと評価してくれるライブハウスがあるから「この箱のスタッフは俺らを認めてくれた。だからここを基盤にしたいねん」と、そこのライブハウスを好きになるパターンもある。逆に「俺はライブハウスがめっちゃ嫌いや。ノルマも取られるし、照明も適当やし、音も悪いし、店員も絶対にアホやし。俺らは俺らでインターネット配信できるからええねん」というバンドがいっぱいおっても良いと思う。
アフロ:要はテンプレじゃないですか。しかも、それを言ったらある程度「イエー!」ってなるのはズルいと思うんですよ。HIPHOPだと「黒い音楽が好きな人はどれだけいますかー?」ってやると「ウェーイ!」みたいな。そういうのを観たら俺の場合は「黒い音楽が好きな人どれだけいますか?」って散々盛り上げた後に「……俺は黒い音楽はわかんねえけど」って言うんです。
稲村:うわぁ、この人は尖ってるわ。
アフロ:そういうの言いたくなっちゃうんですよね。「お前らもよくわからねえのに声上げてるんだろ? そんな空間は嘘なんだよ」って。「ライブハウス大好きです! イエー!」と言ってる奴らに対しても、俺はその言葉の中身ってどのくらいあるの?って思う。
●俺が「ライブハウスが好き」って言うのも、そこしか居場所がなかったから●
稲村:この人は面白いなぁ、やっぱ。
アフロ:俺ね、自分のことを『週刊文春』だと思ってる。やっぱり暴きたいの。
稲村:なるほどね、バンド界の『週刊文春』。
アフロ:「嘘つくんじゃねえ」と思ってるんですよ。そういうのをアルカラのライブでは感じたことないですね。
稲村:ある意味、ありがたかったのは近道が見えなかったバンドなのね。俺がアルカラを22歳から始めて、東京に出たのは30歳やねんけど。8年かけて、ようやくO-Crestくらいの箱で100人近くのワンマンができた。そのときに「こんなに年数かかって、この規模やったら時間かかり過ぎですよね」と言われたことに、そのときはカチンときたけど、むしろすごい良かったなと思えて。だって1年でドーンと上がって、2年目でドーンと下がる人もおるし。自分らでは、8年かけてええとこまで来たなと思った。俺が「ライブハウスが好き」って言うのも、そこしか居場所がなかったから。俺らもいろんなライブハウスに出たけど、ブッキング・マネージャーや店長がライブを観てくれなかったりとか、対バンの奴が誰もいなくて客が0人やったりとか。
アフロ:0人ってありました?
稲村:あるある。そういうときはPAさんとバリ仲良くなった。
アフロ:そのときは「アルカラです」って、バンド名言いました?
稲村:言う言う。
アフロ:どんな感じでした?
稲村:お客さんが0人のときは「PAさん、宜しくお願いします。今からしんどいと思いますけど聴いてください」と言いながらやってたね。今やったら話題に出来たり「PAさん今日は飲みに行きましょうよ」とか言えたと思うけど。まだ若かったから、ひたすら悔しい気持ちが大きかった。
アフロ:俺らもお客が0人のときが一度あって。やっぱりPAさんに語りかけましたもん。そのときのPAさんの気持ちといったらないですよね。誰のために良い音を出しているんだろうな、っていう。
稲村:辛いと思う。俺も後輩の子が「大阪から神戸へライブしに行くから、観に来てよ」と言われたらしくて。いざ、行ったら客が自分1人やって。「辛いから出たいけど、出たら0人になるから出られへん、という謎の苦行でした」と言ってた。あれは苦行すぎるよ。
アフロ:お客さんにとっても、フロアがガラガラの状態で観せられるのってものすごい重圧があるし、歌ってる俺も自分の世界に入れないですよね。やっぱりある程度、人数がちゃんと入らないと響くものも響かない。だから俺は数字を出さないとなって。
稲村:ホンマにな。すごく良いことを言う。
●「ライブハウスに頼るんじゃなくて、自分らでやらなあかんな」と思った●
アフロ:今やアルカラが演奏するとなったら、何千人も集まってくれる場所にいるわけじゃないですか。太佑さんが俺に前に話してくれた「ダメならダメで、楽しい方へ行けば良い」という考えはすごいなと思うんですよ。そのマインドを持ったままやれているのは、他にいないんじゃないかなって。どこかで音楽で生きていく為に修羅の方に行きがちじゃないですか。
稲村:いや、元々は修羅な感じはあったの。18歳でART HOUSEに出たときは、メンバーも揃ってなくて、ギターも弾けなかったから打ち込みを流しながら歌ってた。正直、そんなの出てきたら見た目でダサいやん。散々な状態やったけど、ライブハウスの店長は「お前らは頑張ってるから」って、なんとなく良いメンツが出演するライブのオープニングアクトに入れてくれて。それをイケてた同年代のバンドマンが「なんでこんなバンドを先輩は可愛がってるんですか」みたいなことを、めっちゃ聞こえるように言ってきたの。腹立ったけど向こうは喧嘩も強いし、男前やし、CDも出してる。こっちは人気もないし、メンバーも揃ってない。
アフロ:はいはい。
稲村:それから1年くらい経つと、ようやく仲間増えてきて下手くそなドラムと下手くそなギターも入って、なんとなく形になった。そこから「ライブハウスに頼るんじゃなくて、自分らでやらなあかんな」と思って、機材を買ってストリートライブをやりまくったの。演奏中に警察が来たらライブ終了みたいな。1年後、蓋を開けたら俺らがART HOUSEで一番お客を呼べるバンドになってた。呼べると言っても0人だったのが50人やから大したことないねんけど、そのときは覇者の気持ちになって。
アフロ:0人から50人にするのって、100人から1000人にすることよりも難しいと思うんですけど。どうやって路上でお客さんを増やしたんですか。
稲村:路上でむっちゃやってた。まずライブを観たいと思ってない人が歩いているし、何ならうるさいと思われてマイナスのスタートやんか。それなら面白い一言を出せばバーっと響く。それは恋愛と一緒で、マイナススタートの方が心に残るみたいな。プラスのスタートだと悪いところが見えてきたら、どんどん減点方式になっていって「可愛いけど、食べ方が汚いからあの子嫌やな」と。逆に、最初から「ストリートライブで汚い機材でやってるわ。見た目も服もダサいな。お金もないんか」みたいな奴がちょっと良いメロディを歌うことで人は振り向いたりする。そこからはデモテープさばく作戦で。どんどん売れるから作りがいがあってん。
アフロ:めっちゃ嬉しいですよね。
稲村:「今日、60本もデモテープが売れたで」となったら本当に万歳したくなって。テープ代を差っ引いたら安いもんやけどな。
アフロ:だけど音楽で稼げたお金と言ったら、それまでのバイト代と全然違いますよね。それは嬉しいよなぁ。
稲村:俺らはストリートで掴んだお客さんをライブハウスにも誘導したいと思ってて。ライブハウスまでの道のりを地図に書いて、立ち止まっている人に配ってた。振り返ると、すごく丁寧なことをやってたなと思うけど。そういうのも大きかったかな。
アフロ:今もやってるっすよね。
稲村:ああ、手書きのフライヤーはそのときの名残ね。
アフロ:そういうところから、「ライブハウスが好き」と言っても嘘が見えないんですよ。やっているかわからないけど、メンバー自ら箱に直接連絡している画がフライヤーを見て浮かぶ。今の太佑さんがあるのは、路上の経験が活きているってことですよね。
稲村:そうね。道がないんやったら自分で作るしかないなと思って。どこかあるものに入り込むんじゃなくて、自分で0から1にしていくのが良いなって。それは遠回りやけど、一番の近道やなと思ってた。
●アルカラの音楽には、ラッパーが喉から手が出るほど欲しいフレーズが1曲の中に1つ入ってる●
アフロ:ライブでいうと、俺はアルカラのステージを観てると「すごくエンターテイメントだ」と思うんですよ。MCだけを聞いたらひょうきんなオジさん達じゃないですか。だけど演奏も歌も上手で両方がフリになるというか。それが奇跡のバランスだなって。
稲村:ハハハ!ありがとう。
アフロ:ただ……前に『METROCK』でアルカラのステージを観たときに、お客さんがいる状態のリハで「俺のがヤバイ」のモノマネをやってスベったのを目撃したんですよ。あのときは「なんで俺たちがスベったみたいな気持ちにさせられてるんだ」という怒りの気持ちと、「俺たちが有名だったらウケていたのに」という申し訳なさと、2つの気持ちが混在して。
稲村:スベったというか、似てなかったんじゃない?
アフロ:「え、誰?」って感じだったんですよ。だから数字で売れないとダメなんですよね。あのとき、アルカラはフェスの場でありながら対バンをしようとしてくれたわけじゃないですか。そこも「ライブハウスが好き」ということことの1つの説得力だと思ってて。ただ、俺らの知名度が足りないことが原因でうまく転ばなかった。
稲村:あの時はそうやったかもしれんけど、今やったらドカーンやろ。
アフロ:そうかもしれないですけど。
稲村:今やったら違うよ。
アフロ:だけど、ちょっとスベっても全然へこたれないですよね。「スベるのはわざとじゃないかな」と思う瞬間があるんですよ。
稲村:俺はバッチリ盛り上げてるライブを観ても、あんまり心に残らへん。スベった方が帰りの電車で「あいつ、バリスベってなかった?」ってなるやん。それを「笑いの四次元」と言ってんねんけど、時間差でくる笑いというか。今、ここで話題にあがった時点で俺らの勝ちやん。むしろ上辺だけの「ライブハウスで待ってます! ライブハウス好き」という言葉は、後になっても話題に上がらないと思う。
アフロ:いびつさがないですもんね。
稲村:ロックって自分で正解を作っていくもんやから。
アフロ:アルカラは歌詞もすごく好きなんですよ。時々深いことを言って考えさせるところがズルいよね。ラッパーが喉から手が出るほど欲しいフレーズが1曲の中に1つ入ってたりするのよ。
稲村:まさに1曲の中に1フレーズあれば良いと思ってる。そこに気づいてくれたのはホンマに数少ない1人やわ。ゴールを見せないからこそ、想像させられるのが音楽の美学やと思ってて。
アフロ:はいはい。
稲村:だけど、最近はそれだけじゃなくて何を歌っているか明確にするのも大事やと思うようになった。そこってアフロくんは強い気がしてる。
アフロ:俺はそれですね。だけどラップは説明的になっちゃう部分があるんですよ。逆に、俺は想像できる余白が羨ましいと思ってます。1小節によって、それまでは切り取り線でしかなかったものが、一気に3Dで入ってくる感じ。その一瞬の画を頼りに、もう一度イメージしながら聴き返す想像の膨らませ方はMOROHAにはない。
●ライブハウスも1日だけは手を取り合えるきっかけを作りたい●
稲村:音楽って繰り返しを許される芸術でしょ。同じ曲をもう一回やってもグッと来るというか。同じフレーズが何回来ても、同じメロディが何回来ても「逆にそれがリフレインだ」ということになる。昨日聴いた曲が明日聴いたら違って聴こえる。MOROHAの音楽は、何回も聴いているのに新鮮な気持ちにさせられるのは、まさにその要素があると思っていて。一緒にしてるわけじゃないけど、スギム(クリトリック・リス)もそういうところがある。ぶっちゃけオチもわかってるやん。
アフロ:曲のオチですか?
稲村:うん。言うたら新喜劇を観ている感じやねん。だけど、たまに観るとオモロいからグッとくるし、エモいことを言ってはる。
アフロ:俺からは発してないのに、スギムさんの話題って前回のハンバート ハンバートの佐藤良成さんと対談したときも出てきたんですよね。
稲村:うわぁ、落とし穴にハマってもうた。
アフロ:ハハハ! 本当に。この対談には絶対呼ばないけど!
稲村:呼ばなくていい。酒代と飯代の無駄になるから。
アフロ:俺とスギムさんは、割と近い感情の発露をしていると思ってて。MOROHAはよく「ポエトリーリーディング」というジャンルに括られることが多いんですけど、俺はすごく嫌なんですよ。まず響きが弱そうじゃないですか。
稲村:フワァ〜っとした感じで、妖精さんみたい。
アフロ:でしょ。可愛いじゃない。何より俺自身がポエトリーというものにあんまり心を動かしたことがないんですよね。だからポエトリーで括られるのは嫌なんですけど、スギムさんとだったら括られても良いなって。
稲村:ポエトリーで?
アフロ:ポエトリーだろうがなんだろが、そこにクリトリック・リスという名前があるなら括られても良いなと思う。あと、俺はクリトリック・リスのライブを、ただ笑って観てる女とは付き合えないなと思うんですよ。笑っているんだけど、俺と同じタイミングで泣いていたら「この人とは将来一緒にいられるかも」と思うっすね。スギムさんについて喋るときに、その人の人生観が見えるんですよ。「スギムさんをどう話すか」で、その人がどういう風にステージと向き合っているか。
稲村:せやなぁ。毎回『ネコフェス』に呼んでるしな。
アフロ:ところで『ネコフェス』は続けていくんですか。
稲村:続けていかないとね。そっちの話をしようか。
アフロ:俺はね、対バン感のないサーキットは嫌いなの。だけど『ネコフェス』はそれをどうにか出そうとしているのが良いよね。アルカラのメンバーが走り回って、なんとかブッキングした出演者の全ステージを観ようとしてるでしょ? そういうのもあって、対バンする気持ちで『ネコフェス』は挑める。
稲村:フェスやイベントって、ちゃんとした思いがないとただの集まりになる。あんな小さい神戸という場所に、すごい沢山のライブハウスがあって、スタッフは元々バンドをやっていた奴ばっかりで。ちゃんとバンドを応援する土壌ができているわけよ。一方でライブハウス同士は、商売敵になるからうまくいってないの。俺の解釈では馴れ合いじゃなくて、お互いに切磋琢磨するため戦い合っていると思うの。
アフロ:それは良いことですよね。
稲村:だけど『ネコフェス』のときくらいは、全員俺の知り合いやねんから「その日はみんなで楽しい1日を作ろう」というのが元々の狙いで。「神戸にはこんな面白いスタッフ、面白いライブハウス、面白いバンドがいるよ」って伝えたい。地元でやっているバンドも名前が載ることによって、チェックしてくれる人がいるかもしれない。地元の子にとって「そういう機会をもらえるなら、出れるように頑張りたいな」とか「出たことでいろんな人と繋がれたな」とか、そういうきっかけを作りたい。ライブハウスが1日だけは手を取り合えるきっかけを作りたい。
アフロ:それこそ「ライブハウスが好きです」という言葉の裏にどれだけのドラマが詰まっているか。アルカラが『ネコフェス』を主催して、サーキットを始めて。その日のトリで「ライブハウスが大好きです」という言葉を言っても言わなくても、その日は満たされている瞬間になるんですよね。
(MOROHA・マネージャ):すいません、そろそろお時間が……。
アフロ:うーん、最後が良い話になっちゃって非常に不満! 
稲村:アハハハハ、俺と対談したら良い話になっちゃうで。
アフロ・稲村:(目を合わせながら)ハハハ!
文=真貝聡 撮影=西槇太一
取材撮影協力=炭火焼 尋 (東京都目黒区上目黒3-14-5ティグリス中目黒II 3F)

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