伊藤健太郎が全身全霊で挑む主演舞台
『春のめざめ』囲み取材&公開ゲネプ
ロレポート
初日を目前に控えた心境を聞かれた伊藤は「初日が開いてどうなるか正直想像がつかない」としながらも「僕は舞台出演はまだ今回が2回目と経験が少ないので、声の出し方や体の動かし方を一から白井さんに教えてもらって約一か月間稽古をしてきた。自分が今出せる力を全部出し切りたい」と意気込みを語った。またこの作品については「思春期の男の子の考えとか、当時の自分と照らし合わせてメルヒオールに共感できる部分が多いので、そこをどう伝えられるのか」と、気持ちがわかる部分が多いとしながらも、それを演じる難しさを吐露した。
岡本は「稽古で白井さんから『ヴェントラを生きろ』という言葉をもらった。それを胸に、本番もヴェントラとして生きられるようにしっかり舞台に立ちたい」と力強く語った。
栗原は「初演から約2年が経ち、役者が変われば空気も変わるので、僕も一から新鮮な気持ちで稽古してきた。本番を迎えるにあたり、僕ら自身がこの芝居を楽しむということを大事にしたい」と初演から引き続きの出演者として心境を語った。
『春のめざめ』公開ゲネプロ
ドイツの中等教育機関・ギムナジウムで学ぶ優等生のメルヒオール(伊藤)は、友人のモーリッツ(栗原)に「子供の作り方」を図解で説明すると約束する。劣等生のモーリッツは学校での過度な競争に耐えられず、将来を悲観して自殺してしまう。一方、メルヒオールは幼馴染のヴェントラ(岡本)と半ば強姦のような形で関係を持ってしまう。自殺したモーリッツの遺品からメルヒオールが書いたメモが見つかり、モーリッツの自殺の原因と見なされたメルヒオールは親によって感化院に送られてしまう。さらにヴェントラが妊娠していることも発覚。それを知った親たちが取った行動とは……。
『春のめざめ』公開ゲネプロ
14歳の少年少女たちが抱く、性への興味やどうしようもない衝動、それに対する戸惑い、苦悩、暴走、と思春期の揺れ動く心が鮮烈に描かれる。それと同時に、そんな子どもと向き合う親や教師といった大人たちの姿も描かれている。既に大人になってしまった者にとっては、メルヒオールの両親(那須佐代子、大鷹明良)やヴェントラの母(あめくみちこ)たちの取る行動が胸に刺さる。もし自分がその立場に置かれたら、子どもたちに対してどう接すればいいのだろうか? 子どもを教育し、導くのが大人の務めであるが、子どもを抑圧したり支配することとは違う。この作品に子どもの苦悩が浮かび上がるとき、同時に大人も試されているのだ。
『春のめざめ』公開ゲネプロ
伊藤は今作への出演についてのインタビューで「思春期の子たちに何も刺さらない作品にしたい」とその意気込みを語っていた。彼が演じるメルヒオールと同世代の観客は、この作品をどのように受け取るのだろうか。思春期からだいぶ遠くまで来てしまった大人には想像することしかできないが、忘れかけた昔を振り返ることで彼らの気持ちを理解できるのではないか、と淡い期待を抱く。それも大人の勝手な思い込みかもしれないが、高い壁の上から見下ろすのではなく、子どもたちと同じ目線に少しでも近づきたい、と思わせてくれる作品だ。
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