【ライブレポート】<千歌繚乱 vol.
20>、“また観たい”と思わせるパワ

BARKS主催ヴィジュアル系ライブイベント<千歌繚乱>の2019年第一弾となる公演、“vol.20”が、3月25日に池袋EDGEで行われた。
今回はRuiza solo works(From.D)、AXESSORY(Sadie亜希のソロプロジェクト)、K(ex.BORN)、ARTiCLEAR、AMBEEKという顔ぶれで開催。長年にわたってヴィジュアル系シーンを牽引し続けている3名のソロプロジェクトと、これまた長くヴィジュアル系シーンで活躍してきたメンバーを擁するニューフェイス2バンドの競演ということで、多くのリスナーが観たいと思ったことは想像に難くない。ライブ当日の池袋EDGEには多数のオーディエンスが集まり、場内は開演前から華やいだ空気に包まれていた。

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トップバッターを務めたAMBEEKは、「Shout out」や「存在証明」「CLOVER」といったナンバーを相次いでプレイ。パワフルなサウンドとキャッチーなメロディー、メンバー達が織りなすフィジカルなステージングなどがひとつになった彼らのステージは、気持ちを引きあげる力に溢れている。そんな彼らに牽引されて、ライブが進むに連れてオーディエンスの熱気はどんどん高まっていった。
「今日は素敵なイベントに出させていただいて、ありがとうございます」というKEKE(Vo)のMCを挟みつつ、ライブ後半ではダンステイストを活かした「REZONATE」とアッパーな「霞」を披露。安定したピッチや表現力が光るボーカル、スキルの高いリードギタリスト2名を擁するバンドならではのフレキシブルなギターアンサンブル、躍動感に満ちたグルーブを生み出すリズムセクションなど、プレイ面の見どころが多いことも彼らの魅力といえる。良質なサウンドと明るくテンションを上げていくアプローチが決まって、場内は一体感と温かみに溢れた盛りあがりを見せた。

親しみやすい楽曲や演奏力の高さ、異なる5つの個性が生み出すバンド感など、AMBEEKは注目ポイントの多いバンドといえる。今年2月に始動したばかりということで、今回のライブで初めて彼らに触れたオーディエンスも多かったと思うが、そういう状況で客席を巻き込んでみせたのは見事。またひとついいバンドが登場したことを感じさせただけに、今後の彼らにも大いに期待したい。
ARTiCLEARのライブは暗鬱な「碧落の「君」へ」から始まった。歌詞が映し出される薄いスクリーンの後ろでドレッシーなシルエットを浮かびあがらせて歌う儿(Vo)と、“静と激”の対比を活かしたサウンドを紡いでいく楽器陣。彼らが構築する退廃的かつアグレッシブな世界観は圧倒的で、ライブが始まった瞬間から場内はARTiCLEARの色へと染まった。
その後はハードネスと抒情味を融合させた「Invisidia」やヘヴィなシャッフルチューンの「黎明の涙雨」、切迫感に満ちた歌中とメロディアスなサビパートを配した「Solitudart」といったナンバーで幅広さを提示。尖りとドラマチックさを併せ持った彼らの楽曲が生で叩きつけられるときの破壊力は圧巻だし、強い存在感を放つ5人が並び立って激しいパフォーマンスを繰り広げる姿にも目を奪われた。

1曲ごとに異なるテイストで世界観を深めていったARTiCLEARは、ラストに高速チューンの「A.O.D」をプレイ。客席はヘッドバンギングの嵐と化し、ショートライブとは思えない怒涛の盛り上がりを見せてARTiCLEARのメンバー達はステージから去っていった。明るいイメージのAMBEEKのステージ直後にも拘わらず、惹き込み系のライブでオーディエンスを魅了してみせたARTiCLEAR。始動から僅か3ヶ月にして完成度の高いライブを披露したのはさすがの一言で、“凄いバンドが出てきたな”と思った人は大いに違いない。ARTiCLEARが唯一無二の存在になることを予感させる、魅力に溢れたステージだった。
サイバーなオープニングSEに続いてステージに姿を現したKは、パワフル&キャッチーな「Rebirth」でライブをスタートさせた。華やかなオーラを発しながら情熱的な歌を聴かせ、テクニカルなギターソロを決めるKの姿にオーディエンスのボルテージは一気に高まり、ライブは上々の滑り出しとなった。

その後はパンキッシュな高速ナンバーの「Higher」やラグジュアリーなサビパートを配した「RDAN」、エモーショナルな「Mirror」などを相次いでプレイ。アッパーさを保ちつつ多彩さを見せる構成は見飽きることがないし、色気を漂わせるKのボーカルも実にいい。ソロになってから歌い始めたとは思えない歌唱力の高さや華麗なステージングなどから、彼のセンスの良さをあらためて感じることができた。
ライブ後半では「もうひと暴れしようぜ!」というKの煽りと共にハイエナジーな「雀羅」を炸裂させて場内のボルテージを引きあげた後、ミディアムチューンの「STORY」を披露。熱いライブの締め括りに煌びやかなナンバーを持ってくるアプローチが功を奏して、Kのライブが終わった後の場内は心地好い余韻に包まれていた。

Kの美学に溢れたライブは観応えがあって、楽しめた。彼の中には“ROCKはカッコよくないと話にならない”という思いがあるに違いない。パワフルでいながら退廃的な匂いがあり、なおかつキャッチーというKの音楽性と存在感は普遍的な魅力を湛えている。そんな彼だけに、これからも強い輝きを放ち続けることは間違いなさそうだ。
オーディエンスがあげる熱い歓声を浴びてステージに立ったAXESSORYは、ハイエナジーなサウンドとアグレッシブなボーカルのマッチングを活かした「VOID」や「QUESTION」「X TIMES」といったナンバーで楽しませてくれた。クールな立ち居振る舞いでファットにシャウトするAKIは超絶的にカッコいいし、実力派が揃ったバック陣が奏でるタイトなサウンドは心地好さに満ちている。長いMCを入れたり、客席を煽ったりしないスタイルのライブでいながらオーディエンスは熱狂的なリアクションを見ていた。
場内にエネルギーが渦を巻く中、ライブ後半ではクラブ感を纏った「HYENA」と力強くドライブするキャッチーチューンの「CALL MY NAME」をプレイ。こういったナンバーの爽快なハードネスは、ライブ前半とは一味異なる“駆り立て力”が光る。オーディエンスの反応も上々で、場内は一体感を伴った華やかな空気感で盛大に盛り上がった。

「CALL MY NAME」が終わり、クローズSEの「MORE THAN WORDS」が流れると、AKIが「今年も今日という日をステージで迎えられて嬉しいです。最高の誕生日になりました。ありがとうございます」とコメント。彼がこういう言葉を発することはオーディエンにとって予想外だったようで、“ええっ!?”という嬉しい喜びの空気が流れた後、温かみに溢れた拍手が沸き起こったことが印象的だった。クールかつ寡黙なAKIのあり方は実に魅力的で、“また観たい”と思わせるパワーを持っていることを再確認させられるライブだった。
トリを飾ったRuiza solo worksのライブは、オーケストラとピアノをあしらった重厚なオープニングSEからエモーショナルなミディアムテンポの「Nexsu」に移行する流れで幕を開けた。ステージ中央に立ったRuizaが奏でるテイスティーなギターはもちろん、Ruizaと息の合ったツインリードを決める刻(G)のプレイやTsunehito(B)とHIROKI(Dr)からなるDのリズムセクションが生み出すタイト&ファットなグルーブも上質で、ライブが始まると同時に“ググッ”とステージに惹き寄せられた。
「Nexsu」を聴かせたところで「こんばんは」とRuizaが挨拶。続けて、AKIの誕生日を祝いたいということでステージにケーキが運び込まれ、オーディエンスのコールに応えてAKIが姿を現した。客席からは熱い歓声と拍手が湧き起こり、ステージ上も含めて場内は笑顔で染まった。Ruizaの温かな人柄によって実現した情景は、その場にいたすべての人にとって忘れられないシーンとなったに違いない。
粋なサプライズを経て、Ruiza solo worksはスペーシー&アッパーな「ONE」やドラマチックな「Nemesis」、知的かつテクニカルなギターを配した「CONNECT」などを披露。Ruizaのペンによるインストナンバーは、キャッチーなメロディーやわかりやすい構成を活かしていることがポイントで、“インストゥルメンタル”という言葉からイメージする敷居の高さなどは全く感じさせない。メンバー全員が延々とアドリブ合戦を織りなすパターンでもなく、心地好い瞬間、カッコいい瞬間の連続で、インストに馴染みのないリスナーも楽しめるものになっているのはさすがといえる。オーディエンスのリアクションも良く、池袋EDGEの場内はイベントの締め括りにふさわしい盛大な盛りあがりとなった。
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<千歌繚乱>は“若手のバンドをフィーチュアしたイベント”というのが基本的な位置づけだが、今回はベテランが顔を揃えた一夜となった。いつものフレッシュな雰囲気も魅力的だが、年季の入ったアーティストならではの良質なライブを続けて観れる今回のようなライブも“あり”だと思う。組み合わせの妙を味わえたことも含めて、いつもながら<千歌繚乱>のアーティスト・チョイスは絶妙だなと思わずにいられなかった。

月曜日の開催ながら大勢のリスナーが集まったことから<千歌繚乱>がシーンの中で着実に根づきつつあることを実感できたし、今回新たなあり方を提示したことで、同イベントがさらに面白いものになっていくことも予感させられた。今後の<千歌繚乱>にも大いに期待したいと思う。

取材・文◎村上孝之

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