fox capture plan、2マンツアー『PL
ANNING』の展望とは?――盟友・toc
onomaとインストバンド座談会

ピアノ・ジャズにポストロックもドラムンベースもダブステップも投入して、ジャズとロックの垣根を溶解/破壊しつつ疾走するバンドfox capture plan。ドラマ『カルテット』『コンフィデンスマンJP』『健康で文化的な最低限度の生活』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』などの劇伴で、お茶の間にもその音楽が侵入していることもしばしば。そのfox capture planが2マンツアー『PLANNING TOUR 2019』を6月から5バンドを迎えて開催する。

今回はインストバンド対決と称して仙台と埼玉で共演するtoconomaとの座談会をセット(今回は西川隆太郎&矢向 怜が参加)。お互いの印象やインストバンドならではのあるある話も含め、この企画の意味を探ってみた。
――まず、fox caputure plan(以下、fox)とtoconomaの交流のきっかけを教えてください。
岸本 亮(fox capture plan/P):俺らは出なかったんですけど、静岡のフェスが雨で中止になって、それで青木くん(toconomaのマネージャー)の思いつきで急遽PLUGでライブをやることにして。で、たまたま空いてたから出ることになったんです。いつ頃だったっけ?
井上 司(fox capture plan/Dr):2013年とか2014年とか。
――お互いの音楽はもちろん知っていて?
岸本:そうですね、知ってました。西川くんには東京でSOIL & "PIMP" SESSIONSのイベントの時にCD-Rをもらって。
西川隆太郎(toconoma/P):そのライブに遊びに行ってたんですよ。まだ、僕らアルバムを出してないときに自主で作ったものがあって、それを配ってた時期があって。そのCDを渡した時が多分、初めてなのかな。もちろん昔から知ってましたし、その界隈のバンドの人たちのことは知ってました。
――実際対バンで共演するようになったのは?
岸本:2年前、今回と同じく仙台のライブで。
井上:そうですね。tooconomaのツアーに誘ってもらって。
――今回は「仙台返し」ですね(一同笑)。
西川:もうfoxとtoconomaがやるんだったら仙台しかない、みたいになってきてますけど(笑)。
――では、音楽的な部分で共感するところと、自分たちにはない部分について聞かせてもらえますか?
岸本:ベーシックにジャムバンド的なサウンドはありつつの、ラテンジャズの要素とかが入ってて、うまくブレンドしてるバンドって他にいないんじゃないかなと思うんです。それがすごくtoconomaのオリジナリティだなと。
井上:お客さんの見方もちょっと違う感じがして。toconomaは“踊る”、僕らは“見る”というか。
岸本:ジャムバンドサウンドをベースにしながら、エレクトロ的な要素も果敢にチャレンジしてる感じとか、すごくリスペクトするなぁ。
岸本 亮(fox capture plan/P)
――逆にtoconomaから見たfox観は?
矢向 怜(toconoma/Ba):僕らは音色だったりなんだったりを曲によって変えたりして、いろいろとやりたい感じがあるんですけど、foxさんはストイックな感じがエモくてかっこいいなと思います。
西川:最先端っていう感じはしますけど、ライブを観ると熱いライブをやるイメージがあって。楽曲とはまた違うライブを観れるのが楽しいなぁと。
岸本:おー! 嬉しいですね。
――インストバンドをやってる人にしかわからないあるあるなんかもあったり?
井上:どこから歌が始まるのか?みたいな(一同笑)。「あ、歌ないんだ」って(笑)。
岸本:そういう風に聴く人いるみたいね。
カワイヒデヒロ(fox capture plan/Double Ba):オリジナルの曲とかは「今の終わり?」っていうのもあったり。キョトンとしてる人はいたよね(笑)。
――どこで拍手したらいいかわからない的な?
井上:全然今もありますけどね。キメとかがいっぱい出てくる曲だと。「ほんとに終わりなのか?」って。
岸本:それを無視して次の曲に行っちゃう時もありますけどね(笑)。仙台で……また仙台ですけど(笑)、4thアルバムの1曲目がライブの1曲目にあったんですけど、それが終わって結構曲の間をあけたのに、なんの反応もなくて(一同笑)。もう、次の曲行きましたけどね。
――拍手のタイミングが難しいんですよね。観てる方も悪目立ちしたくなくて。逆にtoconomaのライブは、歓声とかヤジみたいなものが多いなぁっていう。
西川:あははは(笑)。そうですね、リアクションはたくさん頂いている。
矢向:ありがたいですよね。
岸本:ワンマンは観たことないから観てみたいなぁ。
西川:ワンマンはもう……観せられない(笑)。自由演技、やりたい放題というか。前に、途中でベースアンプのジャックが抜けたんですけどそのままやって。もう一回、ベースアンプのジャック抜けたところから演奏し直して(一同笑)。それが許される空気がちょっとありがたいっていうのがあって、その空気に乗っかっちゃった感じになったんですけど。
矢向:許されてるのかどうか、わかんないけどね(笑)。
岸本:toconomaはアリな感じするよね(笑)。
西川:あたたかい方たちに支えられてます。
井上 司(fox capture plan/Dr)
――お客さんから「さっきのはあのままでいいのか?」っていう視線があるわけですよね?
西川:そうですね。そういうのをキャッチして……迷いましたけどね、2秒ぐらい(笑)。
岸本:でも人によってはレアなものが見れて嬉しいとかありますよね。
矢向:foxは今までに「やらかした!」っていうのはないんですか?
カワイ:大体、メルテン(岸本)はやらかしてて、メガネを2メートルぐらい飛ばして(一同笑)、めっちゃ探して、普通に「あれ? 次の曲、まだ?」みたいな(笑)。
岸本:あと、MCが脱線するよね?
カワイ:MC長かったり、椅子がいきなりガタン!ってなったりとか。こっちは笑って弾けないのに、そのまま無視して演奏し続けるから「ちょっと待って(笑)」って、曲を止めたことはあります。
岸本:次の曲を始める時の息が整ってない時とかありますよね。
カワイ:それ、自分のせいだから(笑)。
岸本:そういうのもあるから、最近MCの数が減ってきてんのかな(笑)。
カワイ:MCの後、動揺するって言ってたよね? 自分のMCに動揺してテンポがわからない時があるって(笑)。
西川:インストバンドのMCはなかなか大変だなと思いますけどね。
矢向:弾きながら喋ります?
岸本:完全に立ち上がって喋ります。
カワイ:だから、ボーカルか?っていう(笑)。
井上:まぁ、そのギャップがいいって来てくれる人もいるので、ありがたいですよね。
西川:いきなり普通に話し出すじゃないですか。バーン!と弾いた後に、「で、ですね~」って普通にMCするから(笑)、そのギャップが楽しいって人確かに多いかもしれないですね。
岸本:そっちの方がかっこいいんちゃうかなって。
カワイ:それはどうかな……(笑)。
岸本:熱いままいくよりも、「意外と冷静やん、こいつ」みたいな方が……まぁ、冷静じゃない時もありますけどね(笑)。
西川:曲の感じを引っ張って、そのままMC入ることはないんですか? 「どうもありがとう!!!!」みたいな。
岸本:あるけど、すぐ戻ります(笑)。
カワイ:モニャモニャ喋ってるから、何言ってるかわからないとかね。あと、次の曲始める時に「どうぞ!」つって、「いや、どうぞっつうか、お前が弾き始めるんだよ」とか(笑)。
井上:なかなか始まらない(笑)。
西川:それあるあるですよね、誰始まりかっていうの(笑)。
カワイヒデヒロ(fox capture plan/Double Ba)
――toconomaの場合、話を回し始めたら収拾がつかない感じが。
西川:そうですね。「曲やれよ」って思ってる人多いかなって思うんですけど、こっちも話し始めちゃったら面白くなっちゃったりして。
カワイ:話をまとめる人はいるんですか?
西川:あんまりいないですねぇ。厳密に言うとマイク立ってるのはフロントの二人なんですけど、マイク立ってないのにドラムとベースも割と話はする……まぁ、お客さんには届いてないんですけど(笑)。
岸本:それ、いいですねぇ(笑)。
――あと矢向さんがベースソロで前に出てくるところが面白くて。
矢向:あははは(笑)。こっぱずかしいんですけどね。
西川:インストバンドってボーカルがいないから、目立つところってあんまりなくて。さっきの話じゃないですけど、ライブでどういうふうに盛り上げたらいいんだろう?っていうことを散々話した結果、“ソロで前に出る”っていう極めて単純なところに行きついたんです(笑)。
矢向:ソロのある曲がありがたいことに何曲かあるんですけど、セットリストを決めるときに出る曲が連続とかになると、自分の中でざわついてるんですよ(一同笑)。
西川:残り3人はこのセットリストいいんじゃないかなと思ってるんですけど、ベース的にはここ3回連続で前に出るからちょっと変えようとか。僕ら的には3曲全部(ベースが)前に出なくてもいいと思うんですけど、もう“出る”ってなっちゃってるんで、そこは逆にセットリストを変えて調整するっていう判断ですね(笑)。
――本末転倒ではないのかという気もしますが(笑)。foxはトリオとしてのバランスが出来上がってるというか、空いたスペースはないですよね。
井上:そうですね。でも3人とも身動きが取れない状態なので、そこがやっぱ難しいところで。
カワイ:でもベースソロの曲はライブの中でいっぱいいらないし、なるべく続けたくないっていうのは共通してありますね。
矢向:セットリスト組むとき、波をどこに作るか決まってたりします?
岸本:ライブの尺にもよりますね。ワンマンやったら90分が目安になってるけど、対バンだったら40分か50分が多くて、その40分と50分でも結構違って。40分だとあんまり落とさずに、50分だったら逆に落とし所を二つぐらい作りますね。どういうイベントか?っていうところも考えつつ。
カワイ:結構ギリギリにセットリストを決めるから、たまに当日決まる時あるよね……スリリング(笑)。
岸本:基本的にはライブで盛り上がったり、初見の人は食いついてきそうな曲とか意識的に入れるけど。
井上:フェスとかだったら、一回落とすと他のところに行っちゃう可能性があるから、一気に食いつかせないとっていう。
――toconomaの皆さんはフジロックのとき、人がたくさん来た時とコアなファンの人だけのセットリストを両方考えたそうで。
西川:初めてだったんで、ちょっと万全を期したいなと思って。結果、ありがたいことにいっぱい来ていただける方のセットリストでやらせていただきました。
西川隆太郎(toconoma/P)
――話を変えるんですけど、toconomaは週末に集中して活動してるじゃないですか。それはfoxの皆さんから見るとどうですか?
井上:素晴らしいなと思います。
岸本:平日は全く音楽はやらないんですか?
西川:仕事終わって、家で……になりますね(笑)。
岸本:それはそれで大変ですよ。仕事は他に仕事があって、家に帰ってから少ない時間の中で曲を作ったり。モチベーション高くないとできないことだと思うので、すごいなと思います。
井上:音楽をやるために仕事をやらないとかじゃなくて、仕事をやりながらでも音楽ができるっていういいモデルケースを作り上げたなって。
岸本:音楽一本でやってる人とサイドワークとしてやってる人がいたら、必ずしも音楽一本でやってる人が優れてるとは限らない。むしろ面白いことを発信してくる可能性はあるんじゃないかなと思ってます。そういう人たちが堂々と社会に……は出てきてるんですけど(笑)、音楽シーンに出てくると、なにか変わってくるかもしれないですね。
――むしろ音楽を嫌いにならないようにというか、続けるためにやってる人は多い気がします。
西川:月~金で働いて「疲れたな」と思って、土曜日にリハとかやると結構楽しかったりするんで。それが続けられる秘訣というか、楽しみがずっと続いてる感じはあります。ライブもその延長みたいな感じもちょっとあって。そういう意味では、いい感じかなぁというのはあります。
――大人の部活感みたいなことを以前おっしゃってましたが。
西川:そうですね。放課後感っていう感じはあります。
矢向:でも、やっぱり良い面も悪い面も両方あるかなと思います。音楽一辺倒でやってる人を見るとやっぱりかっこいいなあって思うし。うちらが時間かかることをスッとできちゃうのはいいなぁって。
西川:リリースとかはいいなぁって思う。「また(CD)出るんだfox!」って(一同笑)、その辺は羨ましい感じはあります。
――今年……とはいえもう3月ですが、主にやりたいことはありますか?
岸本:今回のツアーも今年やりたいことの一つですし、新曲はなんらかの形では出していこうかなって思ってますね。CDでアルバムに10曲ぐらい入れてっていうのは、自分たちのベーシックな活動としてずっとやり続けてることではありますけど、そうじゃないことも挑戦する年なのかなって考えてますね。
――今は出来立てホヤホヤの作品も世の中にリリースできますしね。では、toconomaの今年の計画は?
西川:新曲は出していきたいなと思ってます。あと今年は海外のライブやフェスに積極的に出る感じにはしたいなと思って。もういくつか決まってるものもあるんですけど。そこで新しい経験を積みたいなぁと思ってます。
――ちなみに海外はどのあたりに行くんですか?
矢向:アジア圏ですね。
西川:中国とか台湾とか。香港には前行ったんですけど、中国は初めてなので楽しみです。
――foxは中国ツアーは?
カワイ:3回行ったかな。中国はどちらに?
西川:北京と上海ですね。
岸本:toconomaの音楽は中国でうけると思います。僕らよりもしかしたら合ってるかもしれない(笑)。なんとなくですけど、日本とは違う反応があるので。
井上:たまにステージに上がってきたりしますよね(笑)。
西川:だったらもう、そのままステージでピアノ弾いてもらおうかな(一同笑)。
カワイ:あと、最前でステージをバックにしてカップルで写真撮ってたりも(笑)。
西川:思い出の1ページ、光栄です(笑)。
矢向 怜(toconoma/Ba)
――では、最後にツアーの話に戻るのですが、今回の対バンはジャンル的にも様々で。
岸本:そうですね。ボーカルバンドはthe band apartNEIGHBORS COMPLAINとフレンズ。バックグラウンドにある音楽はいわゆるインストだけとか、ロックだけとかじゃなく振れ幅を持ってるバンドが多いなという感じがして。それは僕たちも3人集まった時点でちょっとミクスチャーな音楽性っていうものがあったので、出演してくれる5組はいずれもそういう部分も持ち合わせてるバンドなのかなと。特にジャズとかフュージョン、AORっていうんですかね、そういうテイストも感じるので。
――toconoma以外の4組に対して各々寸評をいただければ。どういうところが好きかとか、なんで対バンをオファーしたのかとか。
岸本:the band apartさんは地元にいた時からラジオとかで聴いてて。
井上:僕は1枚目のCDを出したあたりのツアーを普通に観に行ったりしてましたね。
岸本:いわゆるロックバンドと思えないかっこよさというか、曲作りのオリジナリティというものをすごく感じました。NEIGHBORS COMPLAINは、ギターのGOTTIとは前にバンドを一緒にやってたりもして。OTOくんはボーカル・キーボードですけど、キーボードのサウンドが肝になってるので、そういう共通点とかもあって。
井上:うん。今、勢いがあってこれから楽しみなんで、今回対バンしたいなって。
岸本:フレンズも曲が好きで。影響受けてるのが90年代の渋谷系っぽい雰囲気とかを感じるのは同世代だなと共感するものがありますね。あと、グッドラックヘイワさんは昔から対バンやってみたかったんですよ。以前、SOIL&“PIMP”SESSIONSのセッションで、めっちゃかっこいいドラム叩く人がいるなと思って、社長が「伊藤大地、フロムSAKEROCK」って紹介したときに「あ、伊藤大地さんだったんや」って後から気づいて(笑)。伊藤さんのドラムはすごいなっていうのもありまして。
――ちなみに今回の対バンの持ち時間は50分50分ぐらいですか?
井上:そうですね、各50分ぐらいかな。対バンのイベントでお客さんが疲れない&楽しんでもらうということを考えるとそれがベストかなって。
――この対バンツアーならではのセットリストは考えていますか?
岸本:そうですね。対バンによって選ぶ曲とか変わってくるかもしれないですね。それこそ5バンドと対バンするので、それぞれ違う選曲になる可能性も……7箇所全部変わってくる可能性も無きにしも非ず、です。ちなみに、toconomaはどういうセットリストで?
西川:もう完全にfox用の、バッチバチのセットリストを組もうかなと思っています……まだ全然決めてないですけど(一同笑)。

文=石角友香 撮影=大橋祐希
fox capture plan、toconoma

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