MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』
第十三回ゲストは佐藤良成(ハンバー
ト ハンバート)お互いの音楽に対す
る向き合い方、共通点とは

MOROHAアフロの『逢いたい、相対。』第十三回目のゲストはハンバート ハンバートの佐藤良成。インタビュー中に語られている通り、端から見れば音楽性が対極にいる二組。しかし、話が進むにつれて「アフロ君と俺はすごい似てると思う」と佐藤は話す。その発言が飛び出した一番の理由は、お互いの音楽に対する向き合い方である。僕にとってハンバート ハンバートは、誰とも競うことなくある種、達観した存在だと思っていた。しかし、佐藤は言う「音楽に勝ち負けはある」と。その真意は一体、どういうことなのか。そして今回は、両者のステージにかける思い、表現にかける姿勢を知ることができた。
●「今ご一緒するのはお互いにとって勿体無いと思う」というメールが嬉しかった●
アフロ:3月28日(『ECHOES OF TWO』)はよろしくお願いします! いやぁ念願です。
佐藤:またまた。
アフロ:昔からライブのオファーは自分が対応するようにしていて。それまではよく知らないバンドに誘われたときに「スケジュールが合わないため、今回は見送らせていただきます」と断ってきたんです。だけどハンバート( ハンバート)にオファーを出したとき、マネージャーさんが「まだメンバー2人がMOROHAの音楽をちゃんと知れてない状況で。今ご一緒するのはお互いにとって勿体無いと思う」というメールを返してくださって。俺はね、それがとびっきり嬉しかったんですよ。
佐藤:うんうん。
アフロ:他の方も本当にスケジュールが合わなくて断ったのもあると思うし、角が立たないように言ってくださった愛情もあると思うんです。だけど、ちゃんと音源を渡していた上であの返信は「本音を言うのに値する人たち」と思ってもらえたのかなって。それ以来、俺もオファーをもらったときは率直な理由を相手に手渡そうと思うようになりました。それは、ハンバートチームにオファーを出したときの返信がきっかけだったんです。
佐藤:それは俺らが偉いというか、マネージャーが偉いんだね。もちろんオファーをもらったことも知ってるし、お断りしたことも知ってるよ。俺らの共通の認識として、メールの文面で相手の姿勢は大概わかると思っているんだ。お誘いのメールに雑さが伝わってくることがあって、正直9割のメールは雑な誘いが来る。例えば名前が間違っていたり、俺らを誘う前に送った他の人の名前が残ってたりとかさ。まあ、それは論外としても「この人は自分の都合だけで誘ってきてるな」と思うメールがいっぱいあるから。その中で、気持ちがメールから伝わったんじゃないかなと思う。
アフロ:自分の相方(UK)は元々インターネットサイトを作るフリーデザイナーみたいなことをやっていたので、法人とのやり取りに慣れていて。そういう人からすると、俺の作る文面は素人くさいみたいで。
佐藤:難しいよね。俺も得意な方じゃないから、割とぶっきらぼうなメールをしてる。ちょっとね、良くないなと思ってる。
アフロ:LINEはするんですか?
佐藤:するよ。だけど必要事項だけ。
アフロ:顔文字は使わないですか。
佐藤:そろそろ使ってみようかなと思いつつ、まだ踏み切れないんだよね。スタンプも使ったことない。
アフロ:ハハハ、わかります。奥さん(佐野遊穂)にもまだ?
佐藤:まだないね。でも、そんな大したことじゃないよ。「昔気質だから」とかでもないし。
アフロ:そこにいろんな要素が含まっている気がしますよ。
佐藤:まだ「(笑)」も使ったことがなくて、それすらできないんだよね。それって自意識じゃん。だけどメールは「(笑)」をつけないとぶっきらぼうになっちゃうんだよね。難しいなと思いながら、まだ使ってなくて。
アフロ:わかります。この対談も文字起こしをすると「(笑)」が付いてるじゃないですか。そうすると、俺はライターに対して「甘えてんじゃねえ」と思うわけですよ。「お前ふざけんな」と。結局、会話のテンションとか体温みたいなのを文面にどうやって載せられるかっていう。でも、「(笑)」をつけたらマヨネーズみたいなもので、結局味が決まっちゃうんですよね。それをつけなくても伝わる方法はないものかと、考え続けたいのはあるんですよね。
佐藤:あとはライブの告知するときに使う「!」マークとかね。だけど、それって潔癖症なんだよ。ある程度、良い加減な方が良いのかなと思ったりするけど。
アフロ:こういうことが曲になったら良いなと思うんです。例えば「!」マークに頼らない話だったりとか、「(笑)」というもので自分の笑顔を手渡すんじゃなくて文面を使って笑いを手渡せた方が良いんじゃねえかな?って説教くさくない感じで表現できたらと思います。だけど我々の音楽は「生きるか死ぬか」みたいなところなので、日常の1つの気づきに焦点を当てることができていない。そんな中、「国語」という曲はまさにそういうような。
佐藤:そうだね。だけど言いすぎたかなって思ったりもする。そもそも俺は、意見を歌に入れてないんだけど「国語」は珍しく入れたんだよね。あれは長いこと歌うと思ってなかったから、いざ歌うとそれが邪魔になることも結構あって。思いっきりカントリーな曲調なのに、カタカナを否定するって変でしょ? そこが面白いかなと思って。思いっきりアメリカの音楽みたいなことをやってるのに、端から言ってる自分自体が馬鹿馬鹿しい。そういうミスマッチみたいな感じで作ったんだけど。どうしてもメッセージが強くて……まあ良いんだけどね、別に。
アフロ:恥ずかしながら、そのメッセージに俺は気付けてなかったです。
佐藤:いや、遊穂も気づいてないから気にしなくていいんじゃないかな。
アフロ:じゃあ遊穂さんは、その意味を知らないまま?
佐藤:知らないままというか、そういう話を一切しないね。
アフロ:「こう受け取ってくれ」というのはないんですか。
佐藤:自分で「いっか」と思っちゃうんだよね。「そんな別に良いんじゃないかな」って。
アフロ:言ってしまえば、ラップはスラングの世界じゃないですか。知識のある人しか楽しめない部分が結構あって。ラッパーが言う「ホーミー」って友達という意味で、「フッド」は地元のことを指すんです。そういう言葉って知っている人同士の秘密の会話として盛り上がったりするんですけど、初めて会った人に適さないよなって。ハンバートを聴くと、そこに対してカウンターを食らった感じがします。俺はコアなものじゃなくて、みんなに知ってもらいたい人なので。そこは気をつけないといけないなって。
佐藤:それは俺も思うよ。だから、なるべくみんなにわかる言葉を使うようにしてて。聴く人に教養を求めないというか、「こういうマナーでやっているんですよ」ということがわからなくても伝わるようにやっている。でも、何を言ってるかわからないけどカッコ良かったりもするじゃん。それが入り口になって「何かわからないけど知りたい」とか、秘密の暗号がきっかけになったりするから。まあ、どっちもありかな。
アフロ:まあ、そうっすね。難しいなあ。
●お二人のステージを観て、でっかいところでやるのは良いなと思ったんです●
佐藤:ところでアフロ君って、今いくつなの?
アフロ:31歳です。良成さんはおいくつですか?
佐藤:今年41歳。だから10歳違うんだね。
アフロ:31歳のときはどんな活動をされてました?
佐藤:それこそ「国語」を作った頃で、あとは子供も生まれたんだけど、あんまりきちんとしてなかった気がするな。調子に乗っていたというか。
アフロ:「調子に乗っていた」ということは、どこかで気づいたんですか。
佐藤:うん、あの頃の自分を反省してる。反省しない?
アフロ:反省しますけど、どこかでそんな自分を好きだったりします。
佐藤:それは良いなぁ。俺はそうやって思わないから、過去を思い出すだけで恥ずかしい。音楽で食えるようになったから、自己評価が高くなったんだろうね。今、聴くとあの頃に作った曲とか歌詞が偉そうな気がするもん。
アフロ:そうなんですか。
佐藤:作った以上は今もライブでやるけどね。
アフロ:ライブで言えば、俺が初めてハンバートを観たのは『やついフェス(YATSUI FESTIVAL!)』だったんですよ。O-EASTでやってて。
佐藤:あのときか。「出るんだったらO-EASTでやりたいです」と言った気がする。その時点でちょっと偉そうだよね。
アフロ:いやいや、良いじゃないですか。ちなみに俺は昨年出れてないですけど、やついさんに「MOROHA出てよ」と言われたから「O-EASTだったら出ますよ」って。
佐藤:アハハ、同じこと言ってんじゃん。多分、成長度合いが同じなんだろうね。
アフロ:俺はO-EASTでハンバートを観れて良かったと思っているんです。というのは2人組でああやってステージに立ったときに、余白がすごかった。それで「こういう美しさってあるな」と思ったんです。あの余白によって歌の寂しさが増したりして。
佐藤:うんうん、そこは利点だよね。
アフロ:お二人のステージを観て、でっかいところでやるのは良いなと思ったんです。だから、あのときに「O-EASTだったら出る」と言ってくれて良かったですよ。
●俺も最初はバンドをやりたかったんだよ●
佐藤:そっか。MOROHAは今後もバンド編成にはしないの?
アフロ:そっちの方がカッコ良くなると思えたらやりますけど、今のところはしないです。UKが肘でギターを叩いてドラムのような奏法を作ったのは、誰か入れようと思ったら生まれなかったと思うんです。
佐藤:そうだね。それは俺らも2人しかいないから、やっているうちに独自なものになっていったりする。
アフロ:ハンバートで良成さんが歌う曲と歌わない曲があるじゃないですか。歌うか迷うときもあります?
佐藤:曲を作ったら全部のパターンやってみるんだよね。まずは遊穂に歌ってもらって、ピンと来なければテンポやキーを変えて、それでも上手くいかなければ俺が歌ってみて、それで今度は遊穂がコーラスをやってみて……という感じで何往復もするから、全部やって決めるんだよ。
アフロ:遊穂さんのみのボーカル曲を聴いてるときも、もちろんすごく良いんだけど「もう1本刀があるのに抜いてない強み」を感じたりするんですよ。
佐藤:それはよく受け取りすぎだよ。
アフロ:この曲に自分の声が必要ないと思ったとき、寂しくなったりしないですか。
佐藤:ハハハ、それはないね。
アフロ:俺はめちゃくちゃ寂しくなったりするんですよ。MOROHAの曲でサビのメロディがめっちゃ良いと「そのギターのサビ良いね」と言って、めっちゃ頑張ってリリックを乗せるんです。だけど何も乗せない方がカッコイイと思った瞬間、ものすごい敗北感があるんですよ。
佐藤:もう少し年をとったら、そんなことを考えなくなるんじゃない? 俺も最初はバンドをやりたかったんだよ。自分で曲を作って、自分で歌いたくてさ。
アフロ:はいはい。
佐藤:それで大所帯のバンドを組んで、後ろに女子コーラス隊を従えてね。そのときに声をかけた女子コーラス隊の1人が遊穂だった。いざスタジオに入ったらみんな「遊穂の方が歌上手い」というから、それで遊穂が歌うようになったんだ。最初にCDを出したのが2001年だったんだけど、レコード会社にデモテープを持って行って「CDを出したい」と言ったら、その社長が「出すのは良いけど、佐藤くんが歌うのは3割以下にしてね。残り7割は彼女が歌うように」と言われた。
アフロ:そうなんですか。
佐藤:だけど自分が前に出たい欲があったから、ソロでライブをしたり、10年前は高校の同級生とロックバンドを始めたこともあった。だから昔は「俺が前に出て歌いたい」という気持ちはあったんだけど……今はないな。後ろで演奏するのも楽しいから、自分が前に出たい欲は無くなっちゃった。
アフロ:ハンバートはWフロントマンのイメージだから、どっちが前にいるイメージでもないんですよね。
佐藤:それは俺が出たかったから。放っておくと男女ユニットは女の子が真ん中で歌って、男はパセリみたいな感じになるじゃん。あれがすごく嫌だなと思って。センター分けにして2人でいるのは、そうしないと添え物に見えちゃうから。ほとんど遊穂がメインだけど、俺は俺でメインみたいな感じでやってきた。
アフロ:立ち位置の話じゃないと思いますね。俺はO-EASTで観たときからずっと2人が好きです。
佐藤:うんうん、ありがとう。
●どういうつもりで作ったかなんて、どうでも良いじゃん。その人がどういう風に聴こえたかで良いから●
アフロ:ちょっと話が変わっちゃうんですけど、「人が死ぬこと」って歌詞のカギになっているんですか。
佐藤:そうかもね、そうだと思う。
アフロ:『家族行進曲』の「真夜中」から「ひかり」の繋がりがめちゃくちゃ好きなんです。
佐藤:ふふふ、俺もすごい好き。
アフロ:音楽用語が詳しくわからないんですけど、「真夜中」の譜割はこの世じゃないものが語りかけてくる感じがして。
佐藤:すごい嬉しい。俺もメロディを作ったときにそう聴こえたから、あの歌詞が浮かんだと思う。言ってみたら漫画のコマ割りみたいなさ。Aメロ、Bメロがあってコマ割りの起承転結が全部決まっているんだけど、吹き出しの中だけ空っぽなんだよね。そこにちょうど良い言葉がないかなって、いつもそうやって歌詞を考えてる。だからちゃんと伝わって良かった。
アフロ:そして「ただいま」はお墓まいりの歌なんですよね。だから「真夜中」「ひかり」「ただいま」は「死の三部作」だと勝手に思ってて。3曲を立て続けに聴いたとき、良成さんは死を密接に感じながら歌詞を書いている気がしたんです。
佐藤:ああ、そうか。
アフロ:「おなじ話」はネットで得た知識なので、ご本人に聞くのは恐縮なんですけど。あれは亡くなった男性の<どこにいるの?>という問いかけに、残された女性が<君のそばにいるよ>と返しているんですよね。
佐藤:……いや、別にどういうつもりで作ったとかはない。
アフロ:(思わず体を後ろに反らして)そうなんだぁっ! だけど、みんなそう言ってますよね!
佐藤:そうそう。
アフロ:世間ではそういうことになってますよ。
佐藤:どういうつもりで作ったかなんて、どうでも良いじゃん。その人がどういう風に聴こえたかで良いから。歌詞の中で決定的なことを書いてて、解釈が違ったら「それは間違いだ」と言えるけど。何にも決定的なことを書いてないから受け取り方はなんでも良いんだよ。
アフロ:「そういう意味じゃない」と言ってしまうのもね。
佐藤:そうそう。せっかくみんなでドラマを作っているのに、それを壊しても何の得にもならないから。
アフロ:だけど嬉しいですよね。それが事実かのようにみんなで信じ込めるというのは、100の作品が120になる瞬間ですもんね。
佐藤:そうだね。
アフロ:俺は聞き手の想像力に委ねないというところで、曲を作っているんです。
佐藤:アハハ、面白いなぁ。
アフロ:歌って、そもそも字数が少ないけど、メロディがあることで、お客にそのまま渡しても遊んでもらえると思うんです。だけど、ラップは字数が多い分「ストロー」じゃなくて「ウーロン茶に差さっている、ちょっと曲がった黒いストロー」くらいまで言えちゃうんですよ。そうすると見えているものにより近づいていく。そこをどれだけ詳しく言い当てられるかを一生懸命やろうとしている中、良成さんの聞き手の想像力と離して曲を作るの方法はめちゃくちゃ羨ましいです。
佐藤:ラップとか小説は大変だと思うんだよね。それだけ具体的に、自分の中で考えて言葉を書かなきゃいけないでしょ。雰囲気で済まされないところが多い。
アフロ:まさにそうだと思います。
●歌詞の説明が必要なら、それは音楽として物足りてないんじゃないかな●
佐藤:今の「おなじ話」だって、聞かれるまで絶対に意図を言わないからさ。
アフロ:実際に意図を聞かせてもらうと、もっと感情がふくよかになるじゃないですか。その一方で聞かない方がいろんな解釈をできる。本当の答えを手渡すタイミングがいつなのか? それはすごく大事な気がしますね。
佐藤:一生しなくても良いんじゃないかな。対談を読んだときに「わかる人にだけ、わかれば良いなんて認めない」ってアフロくんが言ってけど、基本的にはその通りだと思うんだ。だけど、じゃあなんで曲の意図を言わないのかと言ったら、そもそも俺は歌詞を聞いてないから。特に洋楽なんてどんな歌なのかわからずに聴いて、カッコイイと思ったりする。それで良いし、音楽で伝わらないものを口で説明するのは邪道な気がして。
アフロ:なるほどなぁ。
佐藤:特に俳句はそういうところが嫌だなと思う。俳句とか短歌って、その横に説明文が必要だったりするでしょ。正岡子規の名作と言われているものは、「あの人が結核で病床にいる状況があってのコレなんですよ」という説明がないと成立しない。それって「五七五だけで説明できてねえじゃん」という話で。歌にしても歌詞の説明が必要なら、それは音楽として物足りてないんじゃないかなと思う。せっかくサウンドがあったり、メロディとかいろんな要素があって音が鳴っているんだから。もうそれで十分じゃないかなと思うんだよね。
アフロ:そうかぁ……ないものねだりなんでしょうけど羨ましい世界です。インストバンドを観ていると、なんて自分は野暮なことをやっているんだろうと思ってて。自分の扱っているものを悪く言いたくないんですけど、言葉を使うのは一番容易い。だけど、そこじゃないもので形を変えて、あえて回り道をして、その景色を楽しませて、伝えたいものに辿り着く。それってピクニックじゃないですか。回り道して途中の景色をどうやって見せていくのかで、想像力を膨らませる。俺の場合は自分の走りっぷりを見てもらうというか。
佐藤:どっちが良いとかじゃないと思うけどね。
アフロ:ハンバートのライブを観ると、帰り道で一回は落ち込むんですよ。「俺は間違っているかも」って。あとはZAZEN BOYSもそうっすね。自分のやっていることに疑問を持つ瞬間というか。だけど、そういう人と対バンしたいって思うんですよ。ああなりたいけどなれないというか。
佐藤:だけど、一生懸命やってもなれないのが「自分のらしさ」なんだよね。そういう話でいうと、過去の(『逢いたい、相対。』)対談を読んだの。MOROHAと俺らは作風があまりにも違うから、タイプも違うと思っていた。そしたらすごい似てるなと思ったんだよ。
アフロ:どういうところですか?
佐藤:全部同じなんだよ。「俺のがヤバイ」だって、俺は口にしてないだけで同じようなことをずっと思ってた。「世の中に溢れてるつまらない音楽を俺は蹴散らしたい」みたいなことを言ってたでしょ? 同じようなことを俺も思っていたなと思って。だからそっくりなんだよ。勝ち負けが大事だってことを俺も思ってるし。そういう価値観が似てるなと思って。その出し方が違うんだよね。
アフロ:言わずに保つってすごいですよね。
佐藤:口にしてないだけなんだよ。
●音楽って勝ち負けじゃないと思ってるかもしれないけど、勝ち負けだからね●
アフロ:「勝ち負けはある」と言ってましたけど、どういうときに感じますか。
佐藤:アレ(「勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ」)と同じだよ。だって勝てなきゃやめていくでしょ。曲を聴いて、そうだよなと思った。みんな音楽って勝ち負けじゃないと思ってるかもしれないけど、勝ち負けだからね。特にポップスは売れたモノ勝ちって、ルールがはっきりしてて良いなと思う。大抵の人って音楽は自由な表現だから勝ち負けじゃないと思ってるけど、負けは確実にある。
アフロ:負けかぁ……。
佐藤:負けはあるよ。ステージで「ここにいなくても良い音楽を鳴らしたら、確実に負け」でしょ。
アフロ:確かにそうですね。片手で数えられるくらいですけど「早く終わってほしい」「早く帰りたい」と思うライブはありました。
佐藤:そういうときは辛いよね。自分の曲が長く感じちゃったりとかさ、それは負けてるよ。ある程度、空気でわかるでしょ。空気を読むわけじゃなくて、ここまで良い感じだったのがフッと醒めちゃう感じ。そこに怯んじゃって焦ったら、もう取り返せない。
アフロ:俺の場合はぐわーっと行きすぎちゃって、お客が引いてるんですよ。だけど、俺はそこから引く勇気がないんですよ。だから本当に追うだけ追って、自分が力いっぱい声を枯らした満足感だけを片手に帰るというか。
佐藤:それはそれで良いんだけどね。俺はアフロ君みたいに、しがみ付いてまで追いかけることをやって来なかったなと思って。自分には出来ないと思って落ち込むよ。
アフロ:へぇ!
写真
佐藤:クリトリック・リスのスギムが、そういうことをよく言ってる。あの人はライブの良し悪しじゃなくて、とにかく印象に残らないライブがマズいから。お客さんが引いていたら、「とにかく追いかけて何でもいいから何かやらないと帰れない」と言ってて、偉いなぁと思う。
アフロ:スギムさんは感動しますよね。
佐藤:ね、そういうところに感動したりするじゃん。
アフロ:あの人のライブを観せられると、自分はもっと行かなくちゃいけないんだなと思うときがありますね。
佐藤:全身でぶつかって上手くいかなくても、もがきながらやりきるって俺は本当にできない。できる人に会うと滅入るから、なるべく対バンしたくないの。
アフロ:(驚いたように)あぁ。
佐藤:だからね、(MOROHAとの対バンを)本当はどうしようかなと思ってた。どういうことをすれば良いのかなって。
アフロ:あの……遊穂さんがラップする「おいらの船」ってあるじゃないですか。あそこのパートって今まで誰かラップで入ったことありますか?
佐藤:いや、ないね。……なるほど、それですか! 
アフロ:ないんですね。
アフロ・佐藤:(お互いの目を見つめながら、何かを察して)アハハ!
佐藤:(思いついたような表情を浮かべて)そうか、それだね!
取材撮影協力=propeller 東京都渋谷区恵比寿3-28-12OAKビル 1~2F
文=真貝聡 撮影=高田梓

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