Cö shu Nieが「絶体絶命/Lamp」に込めた願いとは?

Cö shu Nieが「絶体絶命/Lamp」に込めた願いとは?

Cö shu Nieが「絶体絶命/Lamp」に込
めた願いとは?

忍び寄る危険

まずは、『絶体絶命』の歌詞から見ていきましょう。
夕焼けでしょうか?いつも見ていた空なのに、真っ赤に染まる空が不穏に感じられるのは、それを見る人の心理状態を映しているからです。
「朱」は血を連想させる色。作品では、人間の子供たちが「出荷」され、化け物に食べられてしまいます。主人公のエマたちが赤ん坊の頃から過ごした場所は、何も知らなければ楽園だと思えた施設。しかし、子供たちを育てて化け物の餌として差し出すという、本当の姿を知ってしまうことで、世界が大きく変わります。
真実を知らないことは幸せなことでもあるのです。とはいえ、エマたちの場合には、知らずに過ごしていたらいつか食い殺されていたことでしょう。知らなければ幸せに過ごせても、それはつかの間のこと。遅かれ早かれ、絶望はやってくるのです。
「暖かい灯火」とは、子供の命にも重なります。燃えていた命の火が、ある日、突然に奪われてしまう。そんな理不尽さを感じながらもがく、エマたちの姿を上手く表現しています。
幼い頃から身寄りがなく、施設で暮らしてきたエマたちにとって、そこは楽園であり、一緒に暮らす人たちは家族でした。この幸せが、大人たちの優しい顔が真実だと信じていた日々は、遠い過去。今目の前にあるのは、残酷な現実だけです。
自分が助かるために、子供たちを化け物に差し出す大人。自分の命を守るために、罪のない子供を騙して殺してしまう。心をなくし、自分のことだけ考えれば簡単かもしれません。しかしエマにはそんなことはできませんし、大人たちにも化け物にも、負けるわけにはいかないのです。負ければそこには、死しかないから。
幸せな日々には戻れない

愛されていると思っていたあの頃。そこには愛があり、自分たちは家族だと信じて疑いませんでした。でも、そんな夢はとっくに壊れてしまったのです。今更嘆いても、どうにもなりません。愛を欲しがるのはやめて、とにかく生き抜かなければ。そんな極限状態が、子供たちを強く、たくましく成長させます。
運命に逆らう強さ

何も知らずに生きていた、子供だった時代は終わりました。命の危機に瀕して、そして大切な仲間を失ったことで、エマたちは子供ではいられなくなったのです。子供だからといって、無抵抗のまま殺されるわけにはいきません。子供だって意志を持って生きている、子供だって本気になれば大人に対抗できる。そんな姿を、エマたちは身を以て証明しています。
何度失敗しても、生きることを諦めはしない。強かに、闘志はそっと隠して、バレないように少しずつ。子供たちが知恵を振り絞って大人たちに立ち向かう様は、見ていて感動します。力がないからといって簡単に諦めてはいけない。生きる勇気を、困難に立ち向かう勇気を教えてくれるのです。
絶望の先に見えた光
ここからは、もう1つの主題歌『Lamp』について見ていきます。

大切な仲間を失う辛さ、死と直面する恐怖。普通に暮らしていたら、子供どころか大人でさえも味わうことのない感覚に、エマたちは日常的にさらされ続けます。足取りが重くなるのは、楽園だと思っていた地獄から抜け出すことが簡単でないことを知っているから。もがけばもがくほど、監獄の壁が果てしなく高いことを思い知らされます。
作戦を立てては失敗し、大切なものを失うこともある。それでも前に進むのは、これ以上失いたくないからです。立ち止まって運命を受け入れたら、皆殺されてしまう。絶対にそんな未来は来させるわけにいきません。だから苦しくても、明日が真っ暗な闇でも、前に進むしかないのです。
捧げる側の大人からしたら、誰でもよかったのかもしれません。自分さえ食べられなければ、生きながらえることができれば。しかし、子供たちからすれば、誰でもよかったその子は、大切な友達であり、妹のような存在だったことでしょう。かけがえのない人を、いとも簡単に殺される理不尽さ。悔しさ。やるせなさが滲んだ歌詞です。
やられっぱなしでは終わらない。必ず反撃して、大切なものを守る。そんな決意が伝わってきます。もう純粋な子供ではいられないから、目の前の敵と戦う子供たちの心には、子供らしからぬ汚い感情も入り交じります。
しかし、憎しみで視界が歪み、大切なことを見落としてはいけません。仲間を奪われた憎しみや悲しみは胸に抱きながら、"必ず地獄のようなこの世界を抜け出してみせる"という目的は見失わない。激情と冷静な視点が入り交じった歌詞が、まさにアニメ世界とリンクしている箇所です。

汚れながらも信じた道を突き進む覚悟

汚れてしまったのは心でしょうか。純粋に大人を信じ、自分たちが身を置いている施設が楽園だと思い込んでいた頃には戻れません。この世界の闇を知り、知恵を振り絞り、大人たちを騙しながら、生きるために戦います。生きるために手段は選べませんから、汚い嘘もたくさんついたことでしょう。その身が汚れてしまっても、生きるためには前に進むしかありません。
もう、子供という立場に甘んじてはいられない。力がないなら結束し、知恵を集めて突破口を探すしかないのです。「進まなくちゃ」という短い言葉の中に、エマたちが胸に抱いた覚悟の大きさが感じ取れます。
子供たちが徒党を組んで大人たちに立ち向かい、自分と仲間の命を守ろうと躍起になります。過酷な道だからこそ、振り返ってしまうこともあれば、迷い立ち止まってしまうこともあります。選んだ道が正解かどうかは、きっと本人にも分かっていないのです。
それでも、自分たちを閉じ込める監獄のような世界=施設から抜け出し、自由と命の安全を手に入れることを夢見て、前進していきます。道を間違えて不安になっても、立ちはだかる現実に押しつぶされそうになることがあっても、仲間がいるから頑張れる。"みんなで手を繋いで、この地獄を抜け出そう"そんな声が聞こえてきそうです。
絶望の中でも希望を捨てない主人公たち
このように見てみると、『絶体絶命』でも『Lamp』でも、主人公たちは希望を捨てていません。夢のような毎日から、地獄のような日々への暗転。元気に生きていると信じていた仲間が実は殺されていたこと。
どんなにしっかりしていても、エマたちは子供です。本来ならば大人たちに守られ、愛され、大切にされるべき存在です。そんな子供たちが『絶体絶命』で絶望の淵に立たされ、もがいて自ら道を作り、『Lamp』で行く先にわずかな光を探し求める。命がけの攻防の先には、一体どのような未来が待っているのでしょうか。
2曲とも、進んだ先に見いだす光を、エマたちが自分の力で切り開き手に入れる未来を、一緒に応援したくなるような楽曲に仕上がっています。
TEXT:岡野ケイ

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