【ツーマン前哨戦 対談】圭[BAROQUE
] × 都啓一[Rayflower]、「何も宿っ
ていない音楽には意味がない」

BAROQUE主催による<kiss the sky I>が3月27日、マイナビBLITZ赤坂にて開催される。同イベントは2人体制によるBAROQUEが2019年に立ち上げた初ツーマン企画となるもの。その第一弾として迎えられたのがRayflowerだ。先ごろ、怜[BAROQUE]と田澤孝介[Rayflower]のヴォーカリスト対談をお届けしたばかりだが、今回のツーマン前哨戦対談は音楽的な要となる圭[BAROQUE]と都啓一[Rayflower]に登場してもらった。
両バンドが2017年3月22日にLIQUIDROOM ebisuで行われたRayflower主催イベント<Rayflower presents Night which GLORIOUS>で初共演を果たし、2年ぶり二度目の共演となる今回は招く側と招かれる側が逆転してツーマン開催されることは、怜と田澤の対談でも語られた通り。

圭と都による対談は、それぞれのバンドの音楽的な舵を握る者同士、バンド運営の方法や楽曲制作の根底にあるモチベーション、そして表現者とは?という究極の命題にまで行き着いた。ヒザを交えてじっくりと話をすることは初めてとなる2人だが、大いに共感して<kiss the sky I>の成功がもはや約束されたも同然。ツーマン前哨戦となる圭と都の深いトークセッションをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■Rayflowerのメンバーが若ければ
■今みたいにはやれてない。絶対無理

──3月27日にBAROQUE主催ツーマンイベント<kiss the sky I>が開催されますが、Rayflowerをお招きした経緯を教えてください。

圭:2年前に開催されたRayflower主催ツーマンイベント(<Rayflower presents Night which GLORIOUS>)にBAROQUEを呼んでいただいて。皆さん大先輩ですし、尊敬してるんですよ、ミュージシャンとしても人としても。その時に打ち上げも誘っていただいて、ジンギスカンを食べながらいろいろとお話しさせてもらったんです。プレイヤーとしても一流の方々だから、一緒にライヴをするとすごく勉強になるし、いろんな刺激を受けたので。その時にもう「またいつか、どこかいいタイミングでやりたいね」という話をしていたんですね。僕らも今年はいろんなバンドと対バンしたいと思ってて、“ツーマンライヴを始めよう”という企画が持ち上がった時に、やっぱり最初にRayflowerさんが頭に浮かんで、お声掛けさせていただきました。

都:ありがたいです。前回、僕らのツーマンイベントにお誘いした時も、気持ちよく受けていただいて。今回、「BAROQUEさんからお誘いがあるんですけど」とスタッフから聞いた時、「やろう!」って即答するぐらい「ぜひぜひぜひ!」という感じでした。
▲BAROQUE

圭:要所要所で、YUKI (G / Rayflower)さんやSakura (Dr / Rayflower)さんにお会いする機会もあって、そのたびに対バンの話は出ていたので、実現できて本当に良かったです。光栄です!

都:しかも新生BAROQUE主催イベントの、記念すべき第一回目ということですから。

──前回の対バンの手応えはいかがでした?

都:対バンする前に“どういうバンドか?”をいろいろと調べたところ、やっぱりライヴが素晴らしいんですよね。僕からすると世代的にちょっと後輩のバンドですけど、その中でもエネルギッシュやったし。もしかしたら僕が観たのはたまたまそういうセットリストだったのかもしれないけど、ちょっとパンクっぽい要素もあったり。

圭:そうですね、ルーツにあります。

都:そうですよね? そういうのもちゃんと音楽性に活かされているなと。だけど、バンドの名前はBAROQUEじゃないですか(笑)?

圭:ははは。

都:“うん、なるほど”とか思いながら(笑)。あと、サポートメンバーを迎えつつも、ちゃんとBAROQUEの世界観とかバンド感もあって。それがツボにハマる感じでしたね。もちろん、実際に対バンをして“僕らも頑張らな!”という刺激をもらえるバンドでしたし。

圭:嬉しいですね。
▲<Rayflower presents Night which GLORIOUS>2017年3月22日@LIQUIDROOM ebisu

──圭さんには、Rayflowerの音楽的な特徴や魅力はどう映っていますか?

圭:メンバーさんそれぞれのスキルが素晴らしいのはもちろん、いわば皆さん、このバンドでデビューしたというのとは違うじゃないですか? 後から組んだバンドって、普通またちょっと違う気がするんですよ。バンド感というか……言ってることのニュアンス、分かります?

──他にも活動拠点があって、このバンドでデビューしました!という集合体ではないですもんね。

圭:大人になってから組むバンドって難しいと思うんですよ。でも、それをあまり感じないというか。メンバーさんの距離感もバンドっぽいんですよね、本当に。それが不思議で“なんでだろう?”って。

都:そう思ってもらえるのはありがたいですね。メンバーがある程度さまざまな経験してるっていうのは大きいと思う。だからいろんなことも割り切れるし、逆に言うと、いろんなことに熱を持ってできる。

圭:逆にそうなんですね。なんか冷めた感じがないんですよ。経験があるからこそ、冷めた感じでやってるバンドさんもいるじゃないですか? Rayflowerさんには経験があるからこそ熱を持って、というのを一番感じますね。

都:そこはRayflowerというバンドを立ち上げて続けていく上で、大事なことでした。今は毎年全国ツアーを回るようになったけど、回るたびに結束を強めていって。そういう、音楽的なこととはちょっと別の部分も大切にしてきたんです。

圭:それぞれのメンバーさんがプロとしていろんなところで忙しく仕事をされているからこそ、Rayflowerというバンドがすごく純粋な場所なんだなって思いましたね、いちバンドマンとして。

都:嬉しいですね、そういうふうに見えてることが。
▲Rayflower

──スキルの高いベテランが集いつつ、ピュアなバンドっぽさも保っている。そのバランスを取るのは至難の業じゃないでしょうか?

都:僕も含めてですけど、若かったら絶対できてないと思う。例えば「こういう楽曲をやろう」と言っても、「いや、俺はこうやりたい」「ああやりたい」ってなっただろうし。その一方で今、「Rayflowerをこういう方向性にしたい。そのためにファンとの交流の場所を作ろう」とか「こういうライヴのやり方で」という意見を出したとして、そこに積んできた経験がそれぞれにないと「ノー」という言葉が簡単に出てしまうと思うんですよ。でも、僕がそういった提案をした時にメンバーは、「じゃあ、もっと面白くするためにこうしようか」とか「もっとこういうセットリストにしていこうか」とか言ってくれるから、本当に感謝してるんです。

圭:なるほど。皆さんが様々な経験を積んできたからこそですね。

都:BAROQUEさんが楽曲制作とかするときは、2人で話をしながらやっていくと思うんですけど、その時に意見が分かれたとして、“どっちも正解だろうな” “どっちも間違ってはいないな”ということもあると思うのね。そういう時、“いや、絶対こっちにしよう”って独裁的に言う人がいるバンドもあるだろうし、若い頃は特に「いや、俺のほうが合ってる!」って言いがちじゃない?

圭:そうですね。

都:ライヴに向かう姿勢も、楽曲制作の姿勢としても“絶対これは売れる!”という気持ちでやらないと無理だし。そういうエネルギーも、時にはすごく必要で、すごく大事なことなんだけど、それで衝突することもあって。

圭:“将来こうなりたい”というヴィジョンが、たぶん一人ひとりにあるし。

都:そうそう。もしかしたらメンバー内で“俺はアイツのこと、ちょっと無理やわ”という不和も出てくるかもしれない。そういういろいろなことを、うちのメンバーはそれぞれに経験してきたと思うんですよ(笑)。だから、Rayflowerでいざ何かをやるとなった時、話が本当にまとめやすい。Rayflowerのメンバーが若ければ、今みたいにはやれてない。絶対に無理(笑)。
■人生をどこまで音楽に反映できるか
■すべてが“その人”に直結している

圭:意見がぶつかったり、すれ違ったりした時には落としどころをどう見つけるんですか?

都:「こういうことをやろう」というのはだいたい僕が言い出しっぺなんだけど、基本、メンバーのうち誰か1人でも「イヤだ」と言ったら、「じゃあ、それはやめよう」ってことになるのね。

圭:なるほど。全員一致じゃないと進めることがないんですね。

都:そう、みんなが納得したことだけをやろうと思ってる。ただ、それでもバンドとしてやらなければならない大事なこともあったりするじゃない? 制作だけじゃなくてビジネス的なことも含めて。そういう時は説得材料を持って話すようにしてます。メンバーがRayflowerとして集まる時は、できるだけ気楽な気持ちでいられるような環境にしておきたい……というのも、変な表現ですけど(笑)。

圭:バンドが、ヘンなことでストレスになってしまわないように、ですよね。それはやっぱり、いろいろな経験値があるからこそですよね。Rayflowerさんは、バンドの“いいとこどり”をしてるんですね(笑)。

都:たしかにそうだね(笑)。でも、みんながそういう気持ちになってくれるには、やっぱり時間が掛かったかな。最初はアニメ主題歌の作曲オファーが僕のところにて、そのタイアップ企画のために立ち上げたバンドだったので。
▲圭 [BAROQUE]

圭:メンバーさんとは、それ以前から面識があったんですか?

都:実は僕、IKUO(B / Rayflower)さんだけ面識がなくてね。SakuraさんがIKUOさんのことを知っていて、連れて来てくれたんです。

圭:バンドを作ろうと思った時に、最初に思い浮かんだメンバーは誰だったんですか?

都:最初に話をしたのは、Sakuraさん。次に、一度セッションをした時「機会があったら一緒に何かやりたいね」って電話番号を交換していたYUKIくん。で、IKUOさんはSakuraさんがセッションしたことがあって、その時の印象が強烈に残っているベーシストだったそうで。実は最後までヴォーカルが決まらなかったの(笑)。楽曲もできて、「さあ、どうする?」となった時、たまたま僕のインストユニットで仙台のイベントに出たんですよ、サポートドラムがSakuraさんで。スリーマンだったんですけど、その対バンのひとつが田澤くんのバンド。田澤くんのことはSakuraさんも僕も昔から知ってたけど、ずっと思い浮かばなくて。リハを観た時、「Rayflowerのヴォーカル、ここにおった! 東京戻ったらすぐ連絡するから」となったんです。

圭:へー! 田澤さんはRayflowerの中では世代的に少し後輩ですもんね。年齢的には僕らのちょっと先輩だと思うんですけど、BAROQUEとWaive(※2005年の解散後、現在再演中の田澤を擁するバンド)はほぼ同期なんです。で、Rayflowerとして音源を作った時のメンバー間の感触は良かったんですか?

都:全然悪くはなかったけど、今よりもっとドライな感じだったかな。僕自身も正直、そうだったし。その後、アニメのオープニングとエンディングを2クールやったから、計4曲ができて。「ミニアルバムを作っていいよ」ってレコード会社が言うから制作して。最初は、「1回ぐらいライヴしたいね」というぐらいの感じだったんです。

──そこから今の魂のこもったバンドになるには、どういう変化があったのでしょうか?

都:ひとつはやっぱり僕が病気になった、というのは大きかったかも (※2010年3月、ろ胞性リンパ腫罹患を発表。SOPHIAはツアー終了後の4月、ライヴ活動を休止。2011年8月に復活ライヴ開催)。Rayflowerのデビューシングル「裏切りのない世界まで / 蒼い糸」(2010年5月発表)のミュージックビデオ撮影現場が、5人が初めて揃うタイミングだったんですけど、そこで「ごめん、実は……」と僕が病気を告白して。結構な衝撃だったんだけど、その時はSOPHIAの活動もあったし、“もしかしたら、Rayflowerの活動が病気のためにできないかもしれないけど、1回でもライヴをやりたいね”という想いがあったのかな。その後のレコーディングでもメンバーにはすごく助けられたし、変な話だけど、病気になったことも今ではものすごくプラスに考えていて。もし病気になっていなかったら、今みたいな感じでRayflowerをやってなかったんじゃないかな? 本当にいろんな偶然が重なったなって思うんですよ。
▲圭 [BAROQUE] / <Rayflower presents Night which GLORIOUS>2017年3月22日@LIQUIDROOM ebisu

圭:ある意味、必然ですよね。……病気の話なので、お聞きしていいのか分からないんですが。

都:いや、全然。なんぼでも聞いて。

圭:人生においての大きな苦難とか、健康の問題を経て、人生観や生き方に対する考え方は変わりましたか?

都:ひと言で答えると、変わる。やっぱり病気になる前と後では全然違って、まず一つは“絶対、みんな死ぬ”ということを実感するんです。

圭:そうですね。

都:死はすべての人に等しく訪れることで。ということは、そこまでの時間の使い方が重要なんですよね。やりたいことをやったほうがいい。たとえば、特に日本人は、“忙しくしているほうがいい”ということを美徳とされているじゃないですか? でも、サボることにも一生懸命になったほうがいいと思うんです。“やる時はやる。で、とことん遊ぶ。せっかくの人生なんだから”という考え方に変わったんだよね。それは今のRayflowerの動きにも反映されていて、“これをやろう!”と思い立ったら、次々と実現させたり。“「生きてる」というエネルギーを放出しないと”っていうことは思ってますね。

圭:“有限だ”ということを実感しているからこそですね。

都:うん。それまではそんなこと考えてなかったから。もちろんそれ以前も作品に対して熱を持って作っていたけれど、レコーディングが終わった後には“次はもっといいものを”と思ってただけで、“もしかしたらこれで終わりかも”という実感をともなってなかった。音楽をやれていることの喜びをより感じるようになったかな。

圭:最近よく思うことがあって。音楽は競争じゃないから順位は決められないですけど、同じくらい技量の優れたプレイヤーが2人いたとして、“その何が違うか?”と言ったら、結局、“その人が何を経験してきたか? 何を見たか?”だなって思うんです。つまり、人生をどこまで音楽に反映できるかということで、曲作りにしても演奏にしても、すべてがその人に直結しているというか。

都:そうだよね。プレイの上手下手よりもすごく重要なこと。だからこそ人の心を打つことが出来るような気がする。

圭:はい。ミュージシャンの方と話すと、その人の生き方が一番気になるんです。素晴らしいミュージシャンって、やっぱり音を聴いても、話しているのを聴いた時も、同じような印象を受けるんですよね。出ているものが一緒だから。楽器を演奏するということも自己表現ですし、人生を代弁していると思うので。

都:そうだね。ステージに立つということは“自分をどれだけ出せるか”ということで。そこで出せないメンバーがいたりすると、ちょっと冷めた“エネルギーが届かない”感じに見えたり、バンドの一体感が欠けて見えてしまうかもしれない。クールに弾くのもいいんだけど、そういうこととはまた違ってね。

圭:逆に、若い時は特に“自分と同じ高いモチベーションでメンバー全員にやってほしい”と思っちゃったりもしますよね(笑)。

都:そうそう。まぁ、若い頃は“俺が!俺が!”になるやろうし、そのエネルギーも大事なんだけど。そこから徐々に一歩出るよりも一歩引いたほうがいいことを覚えたり、全体を見ることの大切さに気付いたり。バンドはそうやってひとつの形になっていくんだよね。

圭:コミュニケーションですからね、バンドは。
■もしRayflowerに何かあった時に
■僕が一番の被害者になっていい

──BAROQUEというバンドもいろんな変化を経て今、2人体制になったと思います。長い付き合いである圭さんと怜さんは、「“言わなくても分かる”部分もありつつ大喧嘩も経て、しっかりと考えを伝え合ういい状態になった」と前回の対談で怜さんがお話されていました。圭さんからご覧になって、バンドの今の状況はどうですか?

圭:僕が中学3年生ぐらいの時、怜が高2年ぐらいの時に出会って。やっぱり、これだけ付き合いが長いといろいろなこと染みついているというか、もうしゃべらなくても良くなってくるというか。お互いのツボとかがメチャクチャあるから、何を言ったら喧嘩になるかとかも分かるんですよ。

都:うん、分かるね(笑)。

圭:そうすると争いを避けるようになっていくんですね。別に仲が悪いわけじゃないですけど、プライベートで僕ら2人だけで会う機会は減った。でも、ぶつかることを怖がっていると、本当に距離が出来てしまう。若い頃は2人でしゃべっていたことが、誰か通して話をするようになると、曲がって伝わったりもする。それでいつの間にかに心が離れたり……いろんな時期がありました。やっぱり、“言わないといけないところ”もあるんです。僕らは2人だけなので、全てがそこからスタートするわけで。たとえば、サポートミュージシャンを迎え入れることって、僕らの家に招待するようなものなので、家の状態が殺伐としてたら、空気も音も殺伐としたものにしかならないんですよ。僕ら2人がお互いらしくいられる状態を作っておくことが一番大切なんです。それには努力も必要なのかな?と思ってますね。だから、言いづらいことも言って。ぶつかったら1時間でも2時間でも話し合う。そこに愛があればいいのかなと思ってますけどね。
▲都啓一 [Rayflower]

──他に類のない、特別な2人の関係性ですね。

圭:2人の場合、どちらかが気を遣ってるケースも多いんじゃないですか? BAROQUEは年上の怜が、たぶんいろいろ気を遣ってくれてますから(笑)。

都:ははは。2人って、何かあった時に相談するメンバーが他にいないから、すごいよね。Rayflowerは5人だから、「ちょっとこれ、やりたくないな」と1人が言ったとしたら他のメンバーに相談できる。そこで、「どう思う? やっぱりこれキツいかな?」「いや、キツいんじゃないですか?」という意見を参考にできるし。その相談相手が、一緒にステージに立ってないスタッフだとまた違うでしょ?

圭:そうですね。BAROQUEの場合は、どちらかと言うと僕のほうが何かを提案したり作ったりすることが多いんですね。基本的に彼は、すごくイヤなことに対しては「NO」を言うんですけど、その度合いが分からない時もあって。内心ちょっと微妙だと思ってるけど「いいよ」と言ってる可能性もあるじゃないですか? それは僕、すごく気にしますね。その状態でやっても上手くいかないですから。結構、スタッフにも聞きますよ「あの話、怜は大丈夫そうだった?」みたいに(笑)。

都:分かる。「大丈夫だと思いますよ」というリアクションだった時は、「本当かな?」と思ったりね(笑)。その時に「いいよ」と言ったにもかかわらず、1週間くらいに「やっぱりあれさぁ……」と言われたとしたら、「じゃあ、最初から“NO”って言ってくれよ!」って思っちゃうからね(笑)。Rayflowerは大人やから、それを言わないのでラクなんだけども(笑)。ちょっと語弊があるかもしれないけど、もし何かあった時に僕は、Rayflowerの中で一番の被害者になっていいと思ってるんですよ。俺が抱えればいいっていう想いで、ずっとやってる。その覚悟みたいなものはメンバーに感じてもらってるかもしれないですね。

圭:分かります。だから、最後に信じてもらえるかですよね。信じてくれるんだったらやろうと。

都:これはいい話やな~、ヤバイな(笑)! そういう部分って音に乗るし、プレイに影響する。音楽的な方向性がどうとかいうよりも、そこが上手くいかないとね。
▲都啓一 [Rayflower] / <Rayflower presents Night which GLORIOUS>2017年3月22日@LIQUIDROOM ebisu

圭:BAROQUEはどちらがリーダーと明確に言っているわけじゃないんですけど、都さんはRayflowerのリーダーじゃないですか? バンドに人生を賭けてくれてるメンバーがいるわけですよね。そこへの責任感みたいなものもありますよね?

都:そこは裏切りたくないですね。そのためにも僕の場合、相談事や連絡事項はメールやLINEで済まさないようにして、だいたい電話を掛けますね。話さないと伝わらないことが多いので。

圭:たしかに文面だけだと、ニュアンスが分からないですもんね。すごく冷たい文に読めたりもするし。

都:そうそう。メンバーだけのグループLINEがあるんだけど、「明日は〇時集合です」ぐらいの連絡はそこで伝えればいいんですよ。でも例えば、「セットリストを考えました。これどう?」という提案はまずそこに出して、「あ、ここはちょっと」というやり取りになったら、すぐに電話するんだけど、5人だとちょっと大変かな。全員に電話するから(笑)。

圭:素晴らしいですね!

都:そこはちゃんとやらないとね。たとえば、ギタリストとかベーシストはチューニング違いとかで楽器の持ち替えもあるから、そういう流れを意識してのセットリスト作りもあるし。それもこれまでにいろいろと経験してきたからかな(笑)。逆に言うと、連絡がないと「大丈夫かな?」って不安になるんですよ。だから、ツアーを回ってる時が一番いい。フラットに付き合えて、すぐ話ができるでしょ。普通に5人でご飯も食べに行くし、「今日はちょっとやめとくわ」「分かった」みたいな感じで踏み込まないので。前々回から本数が多いツアーを回るようになったんだけども、ツアーから帰ってきて「もうツアーはええわ」となるメンバーがいるかもって、結構不安やったのね。

圭:ツアーって諸刃の剣なところがありますもんね。長いと特に。

都:そうそう。だけど、メンバーから「まだまだもっと回りたい」という声が出たから、「あ、これは上手く行ってる」と感じて。そういうバンドの状態はすごく嬉しかったね。

──都さんがホスピタリティーを発揮して、居心地のいい場所を作っていらっしゃるんでしょうね。

圭:それは前回のツーマンで対バンさせていただいた時に思いました。最近はイベント後に打ち上げが催されることも少ないですけど、その時は打ち上げの場を設けていただいて、すごく僕らのことを気遣っていろんなことを話してくださったんです。主催者の責任感を感じましたし、見習わないといけないと思いました。
■共同作業は怜としかしてないし
■バンドは向いてないんです(笑)

──そういった人間力が音楽に直結していくということですが、圭さんのギターサウンドもどんどんエモーショナル度が増してる気がします。より曝け出していこうという想いがあるんですか?

圭:そうですね。もともと4人とか5人いたメンバーが減って、今、2人になったからというのもあります。自分はバンドを構成している一部じゃないですか? たとえば、5人なら5人のある種のテリトリーみたいなものがあるんです。そこからはみ出るとちょっとバランスが崩れるという。そのテリトリー内で自分の個性を出すのがバンドだと思うんですけど、2人だけになった時に以前と同じようにやっていたら、お客さんが“何かが欠けていると思ってんじゃないか”と感じたんですよ。“完全じゃないもの”にお金を払って観に来てもらうのは失礼だし、表現の仕方を変えないといけない。2人の主張が音楽の中でもっと濃いものにしないといけないのかなって。

──なるほど。

圭:以前は4人の中の1人として表現できていれば良かったんですけど、それを2人で成立させないといけないと思ったんです。ならば、今までは曲全体で伝えようとしてたことを、ギターの一音だけで自分の人間性や考えていることまで伝えられるようになりたい。そうするにはどうしたらいいのかな?って何年か考えましたね。だから、たとえリハーサルだとしても、音楽をやる時は常に“表現してるんだ”ということを考えて。無駄打ちしないじゃないですけど、そうしないと何も成長してる気がしない、というか。

都:それも分かる(笑)。
▲圭 [BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018「FALLING FOR // YOU」>12月25日@渋谷ストリームホール

──常に全身全霊で。

圭:そうだし、それが楽しいということもあります。たとえば同じ曲を演奏するとしても、“今日は悲しい感じでやってみよう”とか“今日は楽しい感じでやってみよう”とか、極端に言ったらそういう試みだけで音の何かが変わるんですよ。言葉では説明できない違いなんですけど、ファンの人には意外と伝わったりする。ツアーに何度も来てくれるようなファンって、そういうのをキャッチするのが上手いですから。だからステージ上で気を抜くことはないんです。

都:たしかにセットリストが一緒でも、“今日はこの曲、何となく良かったな”とかいうメンバー間の感想はあって。それを一番感じてるのは常連のお客さんなんだよね。本人たちとしては“えっ? 昨日と今日、そんなに違った?”って思うことがあるくらいだし(笑)。いやいや、圭くん、素晴らしいですね。なかなかそこに気付かないものだから。

圭:さっきの都さんがおっしゃったように、僕も“人生は有限”ということを心掛けているんです。ありきたりですけど、僕たちにとってはツアーの10数本の内の1本でも、その日しか観られないファンもいるし、その日を最後に僕がもう演奏できないという状況が起こりうるかもしれない。長くやればやるほどライヴが日常になってしまうんですけど、それはもったいないなって、年を重ねるごとに思うようになりました。話が少し逸れますが、病気になった僕の友だちは、「病気になって初めて世の中が美しく見えた」って言うんですよ。別れを意識しないと気付けないこともあって、音楽をやっていてもそれを感じています。

都:桜って年に一度だけ咲くじゃないですか。闘病中は、また春に桜が見られるかなって……いろいろと思うことがあったんですよ。そうすると“死ぬ寸前でもなんでもいい、失敗してでもいいから何かやろう”と思えたんですよね。後悔したまま死にたくない。人間って絶対失敗するもんやし、失敗があるから成功もあるわけやから、恐れる必要がないんですよ。それなら行動することのほうが大事で強いもので。それはRayflowerを動かす上でのエネルギーとしてずっとあるかもしれない。
▲圭 [BAROQUE] / <BAROQUE TOUR 2018 IN THE ATMOSPHERE>2019年1月19日@札幌SPiCE

──では、ツーマンイベントについてうかがいますが、対バンはワンマンとは違うお客さんとの出会いの場でもあります。ステージに臨む上で何か違いはありますか?

都:違いを演出できるほど器用じゃないかもしれないです(笑)。それよりも自分たちの持っているものをとにかく出そうという感じかな?

圭:BAROQUEは去年30数本というツアーを回って、2人体制で初めてというくらいライヴをたくさんやった1年だったんです。そこで、2人でのワンマンライヴのカタチがやっと見えた気がして。“それならば、対バンの時はどうなんだ?”ということを知りたいから、ツーマンイベントを始めたのかもしれないです。プロとしては、いつでも同じ表現ができたほうがいいんでしょうけど、ツーマンだときっと変わることもあるだろうし。何が違うのか自分たち自身が知りたいというのはありますね。

──となると、イベントタイトルの<kiss the sky I>にはどんな意味があるのでしょうか?

圭:ツーマンライヴだと分かるようなタイトルにしたいと思っていたので、“キス”という言葉を遣いたかったんですね。

──どういう時に浮かんだ言葉なんですか?

圭:「決めて」と言われて考えました(笑)。ツアータイトルも曲タイトルも、日頃何となく生きていて、自分に引っ掛かる言葉というのがあるので。

都:分かる(笑)! 特にツアータイトルは、早い段階で決定しないとチケットの販売も含めて発表事が進まなかったりするからね。

──曲を作られる時はキーワードが先にあることが多いですか? それともイメージがまずあって、そこに言葉が生じてくる感じですか?

圭:両方ありましたけど、これまで様々な曲を作ってきて“何か題材がないとできない”ということが自分で分かってきたんです。外部から楽曲制作を依頼される時って、ある程度テーマがあるんですけど、そのほうが作りやすくて。それがないと、音を選ぶのも難しいじゃないですか。悲しい曲であれば悲しい音色を選ぶし、全てのゴールが決まるから。題材なく作った曲も昔はあったりしましたけど、伝わらないことも少なくないんですよね。最初に怜に聴かせるんですけど、そういう曲の反応を見てイマイチだったりすると“あ、やっぱりな……”って落ち込む(笑)。後から考えたら、“これはテーマがハッキリしてない”とか、その反応の理由は自分でも分かる。だから最近は“この曲はこれ”っていう明確なタイトルとかテーマを持って作ります。

──怜さんのリアクションから思いがけないものが生まれることもありますか?

圭:BAROQUEの場合は、基本的に2人で同じゴールを目指すので、全く違う反応がくるということはあまりないんです。だから僕ら、あまりぶつからないんですよ。10代から一緒にいて同じものを見てきたというのもあるし。それに僕、コミュニケーション能力というか、協調性がないので。

都:あはは! そうなん(笑)?

圭:誰かとの共同作業は怜としかしてないし、できないんですよね、きっと(笑)。自分1人で音楽を作るのは好きで、近くに怜がいるからバンドを続けられているというだけで。僕はバンドをやっても必ず何年かするとそこからはみ出るタイプ。バンドは向いてないんです(笑)。
■今はバンド同士が一緒になって
■何かすることがすごく大事やと思う

──都さんは曲作りの時、キーワードを設定されますか?

都:僕も圭くんと一緒で、何かテーマがないと作れないですね。テーマを見つけられたら大丈夫なんですけど、そこまでがもう大変。テレビを観てて閃くこともあるし、人と話して刺激をもらうこともあるし、ミニアルバム『ENDLESS JOURNEY』のテーマもタイトルもファンレターからヒントを得て書いたものなんですよ。もちろん、“こういうリフ、カッコいいな”と作ったものが楽曲制作の入り口になることもあるし、“ハネたリズム”とか“エイトビートでゴリゴリ”というアプローチからスタートする曲もあるけど、実はそれはさほど重要じゃない。それよりも“このテーマについて書こう”と始めたほうが中身のあるものができるんですよね。

圭:音楽をやればやるほど、音楽じゃないことのほうが重要になるなぁと思ってるんですよ。さっきの演奏の話もそうですけど、何も宿っていない音楽には意味がないというか。

都:「どんな曲でもいいから書いて」と言われたら、いくらでも作れるんです。ただし、「本当にいいの? 俺も満足しないものになるけどね」って。外側だけ形作ることに意味を感じないんですよね、そこに中身がなければ。

圭:不思議ですね。ふとした音色からテーマが浮かぶこともありますし。その音色から“この感情っぽい”とか“この風景っぽい”ということに導かれて。

都:そういうのってどこに落ちてるか分からないから、いつでも自分で探しに行きますね。
▲都啓一 [Rayflower] / <extreme the music -session4->2019年2月24日@マイナビBLITZ赤坂

──では最後に、3月27日に向けた意気込みをお聞きしたいのですが、2バンドによるセッションもあるんでしょうか?

都:僕、呼ばれたらステージに出ますよ(笑)。ショルキー持って、BAROQUEのステージに飛び入りとか全然やります。言ってもらえればいくらでも。

圭:お! マジですか? そのお言葉を聞けたので、ちょっとわがままを言わせていただいて……(笑)。

──先ごろ公開した怜さんと田澤さん対談では、「セッションとかの予定は、この後の対談(※都啓一 × 圭)のときに、「何か仕込んでるんですか?」ってBARKSさんから聞いていただいて」という発言もありましたが。

圭:ははは。Rayflowerさんとのツーマンを喜んでいるファンがいっぱいいるので、何かできれば嬉しいですね。BAROQUEのファンの人にもRayflowerさんを観てもらいたいし、Rayflowerさんのファンの人にもBAROQUEも観てもらいたい。楽しみですね。

都:それはウチも。本当に誘われて嬉しいですよ。しかも第一回目でしょ? なんだったら第二回目もぜひ(笑)!
▲都啓一 [Rayflower] / <extreme the music -session4->2019年2月24日@マイナビBLITZ赤坂

──最後に、本日の対談のご感想をお願いします。

都:話してみて、圭くんはミュージシャンでアーティストだということを改めて感じましたね。今回のツーマンでまた僕らも新しい刺激をもらえるはず。今の時代って1990年代とは違うじゃないですか。当時はワンマンが主流で、そこで自分たちの世界観を作っていくことに重きが置かれていたと思うんですよ。だから、バンドの横の繫がりってあまりなかった。でも、今はバンド同士が一緒になって何かすることがすごく大事やと思う。今日、こうして対談させてもらったことをきっかけに、長く仲良くしていただいて、ご飯とかも一緒に行きたいなという気持ちです。素晴らしい話ができました。今日はありがとうございました。

圭:こちらこそ、ありがとうございました。都さんの優しさと強さは、前回のツーマンでお会いした時にもすごく感じたんですけど、今日じっくりとお話させていただく機会を得て、その理由がよく分かりました。僕らの大先輩なので、音はもちろん生き方も含めて得るものってメチャクチャ多いんです。対談やツーマンは本当に全部が全部勉強でしかない。そういう機会をいただけたことがありがたいです。だから、思いっきり突っ込んでいきたいですね(笑)。

都:ぜひセッションしたいので、話を進めてくださいね。今日この対談で言っちゃったし(笑)。

圭:本当ですか!? Sakuraさんとは一緒に演奏したことあるんですけど、やっぱり一緒に音を出すとすごくいろんなことが分かるので。それが一番、僕たちにとっても勉強になるし、刺激になるので、本当にありがたいことです。

取材・文◎大前多恵

■BAROQUE主催ツーマン<kiss the sky I>

2019年3月27日(水) マイナビBLITZ赤坂
open18:15 / start19:00
出演:BAROQUE / Rayflower
▼チケット
1階S席:¥6,800 (税込・D代別)
1階A席:¥5,800 (税込・D代別)
2階指定席:¥9,800 ※GOODS付 (税込・D代別)
※S席=A列~L列、A席=N列~V列 ※演出の都合上、変更がある場合がございます
一般発売日 2019年3月2日(土)〜
イープラス https://eplus.jp/baroquexrayflower19/
ローソンチケット https://l-tike.com/search/?lcd=72573 / 0570-084-003(Lコード:72573)
チケットぴあ https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1907078 / 0570-02-9999(Pコード:144-091)
(問)NEXTROAD 03-5114-7444


■BAROQUEホールワンマン<VISIONS OF // PEP>

2019年4月30日 (火・祝) 東京・日本橋三井ホール
open17:30 / start18:00
▼チケット
前売S席:¥10,000 (tax in) 前方指定席、特典付
前売A席:¥6,500 (tax in)
※全席指定 ※S席/A席 共にドリンク代別
(問)NEXTROAD 03-5114-7444


■圭(BAROQUE)ソロワンマン<10th Anniversary live「beautiful emotional picture.」>

2019年3月30 (土) 東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
open17:00 / start17:30
出演:圭(BAROQUE)
▼Support Members
Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS)
Drums:秋山タカヒコ(downy, THE MORTAL)
Keyboard&Manipulator:中村圭作
▼Special Guest
Ken (L'Arc-en-Ciel)
DURAN
怜 (BAROQUE)
▼チケット
1階S席(前方席):¥14,000 (tax in) 限定音源CD&特典付
1階A席(後方席):¥8,120 (tax in)
2階S席 (前方席):¥14,000 (tax in) 限定音源CD&特典付
2階A席(後方席):¥8,120 (tax in)
※全席指定 ※S席/A席 共にドリンク代別
※S席限定音源CD=『4 deus.』未収録曲
一般発売:3月9日(土)AM10:00〜各プレイガイドにて


■<Rayflower TOUR 2019 “Re:〜Endless Journey〜”>

※自身初の全公演異なるセットリストにてデビューからの全曲を網羅
5月20日(月) 東京・初台LIVE-BAR-The DOORS
open18:30 / start19:00 ※Official Fan Club“Shining GARDEN”会員限定公開ゲネプロ
5月21日(火) 埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
open18:30 / start19:00
5月23日(木) 愛知・名古屋E.L.L
open18:15 / start19:00
5月24日(金) 大阪・味園ユニバース
open18:15 / start19:00
5月28日(火) 東京・東京キネマ倶楽部
open18:00 / start19:00
5月29日(水) 東京・東京キネマ倶楽部
open18:00 / start19:00
▼チケット
前売5,500円(税込・ドリンク代別途必要)
※未就学児入場不可
一般発売:3月10日(日)AM10:00〜各プレイガイドにて

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