鳥越裕貴&高橋健介が語り合う 桃太
郎と鬼は親友同士!? 舞台『桃源郷
ラビリンス』 

「桃太郎が現代に転生したら──」という作者の妄想から生まれた小説「桃源郷ラビリンス」を原作にした本作で、主人公の吉備桃太郎を演じる鳥越裕貴と大和尊(鬼)を演じる高橋健介。すで舞台に続き映画化も発表されているメディアミックスなこの意欲作について、物語では時空を超えた親友同士、実生活でも多くの現場を共に過ごす“仲間”として親交を深めるふたりが、ざっくばらんに語り合った。
ーー“新たな桃太郎伝説”。舞台ではさらに原作小説の先が描かれるとのことですが……。
鳥越:そうですね。小説から始まって舞台で物語がふくらみ、さらにそこから映画に続くような感じにはなるんですけど……おそらくここふたりの関係性が舞台後半で「あっ!」ってなって、映画で「わ、こうなるのか!」っていう(笑)、ほんとに展開としては小説、舞台、映画とたたみかけて愉しんでもらえるような作品になったらいいな、したいな、と思っているところです。
高橋:映画の台本はまだいただいていないのであくまでも今のメージではありますが、舞台はお客様に『桃源郷ラビリンス』ってこういう世界観で、こういうキャラクターたちが出てきて……っていう全体像を提示する場。で、さらに映画で、より一人ひとりのパーソナルな部分を掘り下げていくのかなぁと。僕らの関係もまずは舞台で大きく把握してもらって、面白かったな、じゃあ映画はどうなるの?? って余韻を残していくカンジですね。
鳥越:うん。うまいことみなさんの心に引っかかればいいし、「続きが気になる」って感じで先へとつなげられたらいいよね。
ーー鳥越さんが演じるのはあの誰もが知っている桃太郎の転生体である吉備桃太郎。高橋さん演じる大和尊とは幼なじみの大親友です。おふたりは共演の機会も多いですし、実生活でも仲が良いとお聞きしてます。「はじめまして」からはどのくらい経つんですか?
鳥越・高橋:3年ぐらいですかね。
ーーすごい。ユニゾン。
鳥越:まあ……させたんですけどね(笑)。
高橋:「ぐらい」から、ちょっと気持ち入ってた(笑)。
鳥越:こんなカンジなんで、桃太郎と尊はもうちょっと鳥越と健介がうっすら滲み出るような……このふたりが演じるからこそのテンポだったり、つつき合いはしてみたいなとは思います。ただ、リアルでの僕は健介からの電話はちょいちょい無視しようかなっていう方向ですけどね。
鳥越裕貴
高橋:そう! この前も共通の知り合いの役者仲間と一緒にいたとき、「鳥ちゃんも呼ぼうよ」って電話したら、「お前と電話してる時間はもったいないから切るわ」って言われまして。
鳥越:本当にそのとおり。
高橋:これ、絶対書いていただきたいなぁ(笑)。
鳥越:「一回周りに代わってくれ」って一人ひとりと話して、「楽しそうだなあ、ちょっと行けないなあ」。そこから健介に代わって「あ、お前と話してる時間もったいないから切るわ」って(笑)。
高橋:ツンデレなんですよね〜。みんなの前だとこういう感じになっちゃうんですけど、ふたりきりだとやっぱり普通というか、いいお兄さんなんですよ。
鳥越:……というふうに、彼は思っているそうです。
ーー確かに強めのツンデレですね。
高橋:(笑)。ふたりきりのときとかは全然いい人になる。仕事の話もしますし、プライベートの部分の話もしますし……僕が話を聞いてもらうことのほうが多いですけどね。だから、あんまり鳥ちゃんの悩みとかは聞いたことないかも。
鳥越:「こんなやつに話しても」って。
高橋:(笑)。とにかく、自然と一緒にいるカンジです!
ーーそのあたりは幼なじみ設定とクロスオーバーする部分がありますし、劇中の関係を創っていくのもおもしろそうです。
鳥越:そうですね。まあ今回共演がわかったときも「まじか」と思いながら、「しょうがねえかぁ」。変な話、腐れ縁……じゃないけど、そういうのもいいよなって。
高橋:(笑)。
(左から)高橋健介、鳥越裕貴
ーー『桃源郷ラビリンス』はメディアミックスではありますが、いわゆる2.5次元の舞台とはまたちょっとニュアンスが違って役づくりに関しても活字からスタートし、カンパニーのみなさんがゼロから作っていく演劇です。桃太郎といえば……のお供のみなさん、“犬”の転生者・犬養津与志役の杉江大志さん、“猿”の転生者・楽々森類役の遊馬晃祐さん、“雉”の転生者・珠臣樹里役の山本一慶さんも揃っていますし、座長としては?
鳥越:まず、ご飯はみんなといろいろ行きたいなとは思いながら……やっぱりそこがキャラクターにも出てくるかな、という気もしてます。
高橋:そう。なのでこのふたりの関係もですけど、僕はその“桃太郎チーム”での見せ方も楽しみなんです。会話劇も結構多いし、稽古していく中で本人をみてもらい、もしかしたらちょっとずつ当て書きとかになっていくのかも? ビジュアルもですけど、自分色が強く出ちゃいがちなキャラクターじゃないかとは思いますし。そこがいいバランスで出つつも、また違う高橋健介だなっていうふうになってもらえたら嬉しいですね。そっちのほうが嬉しいかも。
ーー尊のキャラクターは「優秀な頭脳、外国の貴公子のようなルックス、穏やかで包容力のあるリーダータイプ」。
鳥越:本人からは全部外れてる。
高橋:ホントに。全部違うんです(笑)。でもまぁ、そうありたいなっていう人物像ですね。
ーー桃太郎はカフェ桃源郷のオーナー。店に集まってくる個性的でワケアリな人々の気持ちを救ってあげるお兄さん的存在で。
鳥越:本当にいい子だから……そこにね、舞台だからこそのちょっとクスッと笑える面白さなんかも出していけたら。いい子なだけじゃなく、ちょいちょいお客さん目線で突っ込めたらいいですよね。健介も言ってたけど、やっぱり会話劇だし、やりとりのテンポをうまいことやりたいです。
ーーそして、演出と脚本は菅野臣太朗さん。
高橋:鳥ちゃんは臣太朗さん、何回目?
鳥越:今回で3回目とかかな。
高橋:怖い?
鳥越:全然怖くない。
高橋:僕はまだ脚本でしかご一緒したことがなくて、だからやっぱり違うのかなと思って。脚本家のときの顔と、演出家のときの顔が。
高橋健介
ーー菅野さんならではの現場の雰囲気や手法、みたいなことはなにかありますか?
鳥越:そうですね。ミザンス(※役者の立ち位置のこと)は結構最初からつけてくる感じの人ではあるなって思います。たぶん明確な「画」があるんでしょうね。だから、逆にそこを崩していくところまで深められたらおもしろいな、とは思いますけど。
ーー今回は桃太郎の故郷、岡山での公演も決定しました。
鳥越:楽しみですね。できれば美味しい地酒を飲んで……地元のおっちゃんと一緒に。で、「舞台と映画やるんですよ〜。桃太郎なんでよろしく〜」とか盛り上がりたいかな(笑)。
ーー地域密着ですね。
鳥越:実は僕、ずっと思っているんです。余生は沖縄でカフェバーを開いて、地元民だけで飲みながら暮らせる、そんな余生がいいなと。
高橋:この前沖縄に行って、すごいよかったって。だいたいそういうときの写真って「ほら、これ美味しそうじゃない」とか「この景色よくない」だと思うじゃないですか。知らんおっちゃんとの写真とかを見せられて!
鳥越:気づいたら、知らんおっちゃんにチューされてた(笑)。
高橋:僕、それ見ても「沖縄いいなー」ってならないですけどね(笑)。
鳥越:やっぱり沖縄のウチナータイムだったり、人の良さっていいから。僕もあんなふうにずっと楽しく生きてたい。
高橋:僕は逆に地方公演でも東京公演でも、スタミナがないからほんとに外に出ないんですよ。「寝たい」って。でも岡山公演ってなかなか機会がないので、僕も地元の方と触れ合ってみたいですね。鳥ちゃんにいいお店を見つけてもらって、2日目から行こうかなって思います(笑)。
鳥越:いや、もう店は探してるから。ネットで。
高橋:この人、お店探しもすごいんですよ! 「☆4つだから」って、結構星信じすぎですけど。
鳥越:でも外れたことないでしょ! いや……一回だけあるか。
鳥越裕貴
高橋:ある。唯一、本人も認める唯一が(笑)。でもそれ以外はほぼほぼアタリだよね。
鳥越:それはもうメニューと写真でしっかりチェック……って、☆の話はもういいから!
高橋:(笑)。
鳥越:地元で桃太郎の作品をやるということで、ホントにこの舞台、ハズせないぞって思います。ちゃんとリスペクトがありつつ、オリジナルの作品だからこそおもしろいというのがお見せできたらいいですね。
ーーちなみに本作は「転生」した人たちがたくさん集まるお話なので……例えばおふたりは自分が誰の転生体だといいなって思いますか?
鳥越:歴史上の人物だったら、豊臣秀吉は役でもやったことはありますし、自分に合ってるし、あんな成り上がれたらおもしろいなって。
ーー気性とか考え方とかが一致する?
鳥越:そうですね。そこは結構。
ーー天下を取りたい。
鳥越:取りたいですね。
ーー役者としても?
鳥越:いや、役者としてはもうそこそこでいいんで(笑)、この仕事を通じて人間として世の中の社会人として、天下を取りたいですね。大きい感じ、グローバルな感じで生きたい。
高橋:あの、まだ生きていらっしゃる方でもいいですか? 僕……明石家さんまさんになりたいんです。

高橋健介

ーーそれは大変そうですよ。
鳥越:つらいぞ。寝てないよ〜。自分の出てる番組も全部見てるからね。
高橋:いや、でも、それがすごいなって。今なんてたぶんもうちょっとゆとりをもってもやっていけるポジションと年齢なのに、いくつになっても常に仕事を全力でやられている姿とか、番組を見たらおもしろいし、なにより人に好かれているじゃないですか。いじりつつも嫌われるいじりじゃないから、そういうのも素敵だなと思うんです。
ーーコミュニケーション能力に魅かれる?
高橋:はい。本当にすごい素敵だなと思います。あと、寝ないでお仕事したいんです。
鳥越:あんだけ「寝たい」とか言ってるのに?
高橋:そう、自分が寝ないとダメだから、さんまさんみたいなショートスリーパーにも憧れが。時間の使い方を真似したい。
ーーウチナータイム派とショートスリーパーのコンビ。
鳥越:まさに対照的なふたりですね(笑)。
ーーそんな好対照なおふたりから……最後に改めて、本番を待っていてくださるお客様へメッセージをお願いします。
鳥越:『桃源郷ラビリンス』、ここから立ち上げていくということで、作品としてもたぶん、ちょっといろんなことが難しいと思うんですけど、そういうところもこのキャストでうまいことほぐして創り上げていけたら、と。舞台、映画と展開していく中、常に繋いでいける作品にしなくては。そのためにやれることは全部やれたらと思っています。楽しみにしていてください。
高橋:桃太郎ですし、お客様にはなんとなく先入観で「こんな感じじゃないかな」って物語にイメージを持たれやすいところもあるかと思います。でも僕らはそのイメージを凌駕し、越えていきたい。頑張ります。
(左から)高橋健介、鳥越裕貴
取材・文=横澤 由香 撮影=荒川 潤

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着