ミュージカル『イヴ・サンローラン』
開幕! 「モードの帝王」を描く日本
発のミュージカルが誕生

2019年2月15日(金)東京・よみうり大手町ホールでミュージカル『イヴ・サンローラン』が開幕した。初日直前に行われた公開ゲネプロ(通し稽古)の模様をお届けしよう。
本作は、約40年にわたりフランスはおろか世界のファッション業界をリードした「モードの帝王」ファッションデザイナー、イヴ・サンローランの生涯を描いたオリジナルミュージカル。荻田浩一が作・演出を、音楽はクライズラー&カンパニーのメンバーとしても知られる斉藤恒芳、そして本作で最も重要な存在となる衣裳は『エリザベート』ほか数々の作品の衣裳を手掛けた朝月真次郎が務める。
イヴ・サンローラン役をWキャストで演じるのは東山義久と海宝直人。この日のゲネプロは東山が出演した。
ステージ上には白い階段状のセットのみ。青白い光で照らされる中、物語が始まる。イヴの生涯のパートナー、ピエール・ベルジェ(上原理生)は、ストーリーテラー、あるいは狂言回しのルル(皆本麻帆)の導きのもと、クリスチャン・ディオール(大山真志)、ココ・シャネル(安寿ミラ)、エルザ・スキャパレリ(伊東弘美)らが語り合う不思議な世界に誘われる。そしてそこでイヴ・サンローランのデザイナーとして、また一人の人間としての人生を辿っていく。

白い階段はときにはイヴとピエールが暮らしたマラケッシュの石畳となり、またある時はファッションショーのステージなど、様々な顔に変化する。そこで描かれるイヴ・サンローランという人物は「モードの帝王」という呼び名とは真逆の、繊細で傷つきやすい青年。後に出会うピエールがイヴを献身的に支えていく事になるが、時折イヴが両腕を広げ、後ろからピエールがイヴの両腕にそっと自分の手を添える仕草を見せるが、あたかもその姿はまるで飛び立とうとするイヴをピエールが支えてあげようとしているかのようにも見えた。
イヴを演じる東山は、これまでミュージカルやダンスパフォーマンスのステージなどで見せる熱さ、もしくはコミカルなキャラクターからは想像できないくらい弱々しく、眼鏡越しであっても他人の目をまともに見る事ができない、常に少しうつむきがちなイヴに変貌し、好演。さらにこんなに歌える人だったか! と驚くくらい情感がこもった美しく伸びのある歌声を響かせていた。一方でダンスパートではさすが東山、と思わせるスピードとキレ、そして色気のあるしなやかな動きを見せる。Wキャストの海宝直人が同じ役を演じることとなるが、このダンスパートをどう魅せるのか、気になるところだ。
そしてイヴを支えるピエール役の上原。『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役に代表される情熱的で躍動感溢れる青年役のイメージが強かったが、ここにきてあたたかさと頼もしさを内包する大人の男に上手くシフト出来ている事を嬉しく感じられる演技だった。もちろん心の機微、イヴのためにすべてをなげうつくらいの激しい想いも持ち合わせており、時にその想いの強さに涙腺が刺激された。
本作の中ではイヴの人生と共に、同時代を生きたファッションデザイナーそれぞれの人生やファッション哲学、功績、時にはライバル関係も浮かび上がらせる。
イヴをモードの世界に導いたクリスチャン・ディオール役の大山真志は、堂々とした体躯から放つ歌声とコミカルな仕草が魅力的。前衛芸術と何よりショッキング・ピンクを洋服に取り入れたエルザ・スキャパレリ役・伊東のセレブ感溢れる演技は時に笑いを誘う。そしてモノトーンが魅力のココ・シャネル役を演じた安寿はクールに、だが自信いっぱいに時代を見つめていた。伊東のスキャパレリ、安寿のシャネルは共に男だらけのファッション業界ですっくと立ち、皆と対等にふるまう心地良さを感じさせた。
スーツ姿の男性、そして黒い服装が多い女性が多く出演する本作で、真っ赤なパニエをふわふわとさせながらステージのいたるところに出現するルルの存在にも注目いただきたい。ルルを演じる皆本のくるくる変わる豊かな表情とよく通る声がステージに活気と彩りを与えていた。
舞台終盤、ステージライトが一時的に客席に向く瞬間がある。そのとき、よみうり大手町ホールの厚みと艶のある背もたれに光が反射し、ファッションショーのステージを飾る無数のライトのように輝いていた。それはまるでイヴの人生に拍手を送っているかのようだった。

最後に初日を前にした東山と海宝のコメントを紹介しよう。
■東山義久
昨年10月30日にフランス大使館で制作発表をさせて頂いてより3か月、キャスト、スタッフの皆様とのリハーサルを重ね、本日初日を迎えることができました。期待と不安が共存する日々でしたが、濃密で素敵な時間を過ごした感謝と自信をもって初日に臨みたいと思っています。自身の身体を通し、少しでもイヴ・サンローランの魅力をお伝えできるよう、この素敵なカンパニーと共に輝きたいと思います。
■海宝直人
実在のファッションデザイナー、イヴ・サンローランの実像に迫りながら、ファンタジックなミュージカルならではの表現でファッションの世界が鮮やかに描かれます。演出の荻田さんが創り出す世界観を皆様にしっかりとお届けできるようにイヴ・サンローランという人物を繊細に表現していけたらと思っています。
取材・文・撮影=こむらさき

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