【インタビュー】ルーサー「無理矢理
カテゴライズしたら、おそらくパブ・
ロック」

デンマークのロック・バンド、ルーサーの2ndアルバム『ゴースト・タウン』が2月8日にリリースされた。

本国デンマークでは、ビールのCMに起用されるほどの活躍を見せるルーサーだが、ハードロック、パンクを核にしながらも、レゲエやモータウンをも飲みこんで北欧の哀愁で味付けしたルーサーの音楽は、我々日本人の感性にもピタリとフィットする。このアルバムをきっかけに日本での知名度もアップすることを願いながら、ラッセ(Vo、B)、アンダース(G)のボグマーク兄弟と、ジョナサン(Dr)、クリストファー(G)が、メンバー総出でインタビューに応えてくれた。

──ニュー・アルバム『ゴースト・タウン』は、デビュー・アルバムと比べてどのような点が、進歩、変化したと言えるでしょう。

クリストファー:俺だね。

ジョナサン:(笑)。確かにクリストファーが加わったからね。やりたかったことは、2018年にいた位置から一歩踏み出すことだった。何か違うことにチャレンジしたかったんだ。以前よりももっと色々な影響を採り込みたかった。このアルバムでは、音楽自体にどのような方向に進むべきか指示させたんだ。どういう音楽が良いのかを頭で考えて探るのではなくてね。そこがファースト・アルバムと最も異なる点だと思う。

──タイトルの『ゴースト・タウン』には、どのような意味が込められているのですか?

クリストファー:俺たちは、それぞれみんなコペンハーゲンの郊外で育ったんだ。クリストファーは、また別のところの郊外だけれども。だからゴースト・タウンというのは、俺たちが育ったところのことなんだよ。アルバム・ジャケットには、バックにデカくて退屈で陰鬱な建物が写っているよね。あれは、実にコペンハーゲンの郊外らしい建物なんだ。

──歌詞の内容はどのようなものですか?

ラッセ:例えばタイトル曲は、コペンハーゲンの中心地に住んでいないとアウトサイダーという感覚になるということについて歌っている。だけどそれを悪く取るのではなく、自分の育ったところを受け入れるということだよ。退屈なところかもしれないけれども。基本的に、このアルバムの歌詞はルーサーについて…ここ数年俺たちが経験してきたものについて語っている。そして同時に、それはミュージシャンと自分たち自身という2つの顔のコントラストについてでもある。つまり「自分 vs 自分の化身」みたいな2人の人間についての物語なんだ。歌詞は、人生の中で化身が優勢になっていく状況を巡って展開していくんだ。正しいこと、良いことをするということに関する闘いに勝ち、できると思っていたことを乗り越えて行くという描写だよ。

──クリストファーが2人目のギタリストとして加入したのはどういう経緯ですか?

ジョナサン:そもそもは、ライヴ・パフォーマンスをより良いものにしたいと思ったんだ。サウンドをもっとマッシヴにしてね。3人だけではそれは難しかったから。それでとても仲の良かったクリストファーに声をかけた。彼はずっと「もしセカンド・ギタリストが必要だったら声をかけてくれ」って言っていたし。最初はライヴ・ギタリストというつもりだったのだけど、1年くらい一緒にプレイして、正式にメンバーになってもらったんだ。
──今回のアルバムでは、ハードロックからパンク、レゲエに至るまで、さまざまなスタイルの音楽からの影響が感じられますが、無理やりカテゴライズするとしたらどう呼びますか?

ジョナサン:おそらくパブ・ロックと呼ぶのが良いんじゃないかな。やっぱりカテゴライズするのは難しいよ。さっきも言った通り、自然に湧き上がってくる音楽に従ってできたアルバムだからね。

──そもそもメンバーの音楽的バックグラウンドはどのようなものですか?

ジョナサン:俺は子どもの頃クラシックをやっていたんだ。オーケストラに入っていた。だけど譜面を見て演奏をするというのにうんざりして、ロックをプレイするようになった。それでこのメンバーでバンドをやるようになったんだ。

ラッセ:俺も似たようなものさ。放課後に、ユースセンターのようなところでギターを弾いたりバンドをやったり。マイクとかレコーディング機材も揃っていたからね。

クリストファー:俺はハードロックやメタルがバックグラウンド。コペンハーゲンに引っ越してきたあとは、グラム・メタルのようなバンドをやったりしていた。今はルーサーにいる(笑)。

──影響を受けたバンドは?

ラッセ:今回のアルバムに関して言うならば、トゥウェンティ・ワン・パイロッツ、イマジン・ドラゴンズ、それからデンマークのニュー・ポリティックスとかだね。何か新しいものを作りたかったし過去を振り返るのではなくロックンロールの未来を見据えてアルバムを作ったから。だから最近のバンドから影響を受けている。もちろんAC/DCのような古いロックンロール・バンドからの影響も受けているけれど、モダンなサウンドもミックスするようにしているよ。

──タイトル曲はレゲエっぽいですが、これはザ・クラッシュあたりからの影響なのでしょうか。

ラッセ:そうだね、やっぱりクラッシュからの影響はある。だけど「この曲はクラッシュっぽくしよう」みたいに意図的に作ったわけではないよ。

──モータウン・サウンドからも影響を受けているとのことですが。

ラッセ:モータウンからの影響は大きいね。自分たちのサウンドを広げる上で、俺たち自身が好んで聴く音楽を採り入れているわけだけど、中でもモータウンは重要な要素だと思う。インスピレーションを得るために、ちょっと違う音楽も聞いてみたりしているんだ。20曲もロックンロールを書けば、たいていアイデアは尽きてしまうからね。「ミラー・オブ・ア・マン」みたいな曲を聴いてもらえばわかるけど、モータウンの音楽は非常に新鮮だったよ。色々と採り入れるアイデアがあった。行ったことのない土地に行くような経験だったね。

ジョナサン:もし俺たちがシンプルなロックの曲だけを書き続けたとすると、何枚かアルバムを出したところでインスピレーションは尽きると思う。俺たちはエアボーンみたいな新しいロック・バンドも好きだけれど、彼らはもう5枚も同じ内容の作品を出してるよね(笑)。

アンダース:ちょうど良いタイミングだと思うよ。デビュー・アルバムをリリースして、みんなが"Second Coming"(=キリストの再臨)を待っている。デビュー作の延長になるのか新しい方向性になるのか、いずれにせよね。俺たちは変化を選んだのさ。

──元ホワイト・ライオンのマイク・トランプのバックバンドを務めていたとのことですが、どのような経緯だったのでしょう。

ジョナサン:俺たちが「ディスコから影響を受けている(笑)」と書いたレーベルが、彼らはたくさん良いこともしてくれてるんだよ。マイクと引き合わせてくれたということもそのひとつだから。ある日俺たちのリハーサルスタジオに、レーベルのオーナーが来たんだ。「サプライズがあるよ、シークレットゲストを連れて来た」って。まあ、俺たちはそれが誰なのかわかってたけど(笑)。マイクは俺たちの演奏を聴いて気に入ってくれて、それ以来彼が俺たちの師匠であり、コーチになった。それから確か半年くらい経って、マイクのバンドがツアーに出ることになった。それで、若いバックバンドを試してみたらどうなるだろうということで、俺たちが選ばれたんだ。とてもうまく行ってね、結局丸2年も彼のバックバンドを務めたのさ。とても良い経験になったし、マイクのファンが俺たちのファンにもなってくれた。

──ルーサーの音楽は、デンマーク的だと思いますか?
ジョナサン:デンマークは寒くて暗いからね(笑)。故意にスカンディナヴィア風にしようとは思っていない。特に1stアルバムでは、スカンディナヴィアっぽい部分は多かったと思うけど、わざとではないんだ。だけど、周りの人間や気候から影響を受けないというのは容易なことではないだろうからね。暗くて青いアルバム・ジャケットは、確かにスカンディナヴィア風かもしれない(笑)。

──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ラッセ:俺は日本の漫画やアニメが大好きなんだ。ワンパンマンの第2シーズンを楽しみにしてる。あれは最高だよ。

ジョナサン:やあみんな、俺たちはデンマークのルーサーだよ。ぜひ日本でプレイしたい。『ゴースト・タウン』、ぜひ聴いて見てくれ。タイトルトラックのビデオは、俺たちのホームタウンで撮影されたんだ。

取材・文:川嶋未来
写真:Jakob Muxoll

ルーサー『ゴースト・タウン』

2019年2月8日 発売
【完全生産限定スペシャル・プライス盤CD】 GQCS-90682 / 4562387208555 / ¥1,800+税
【通常盤CD】 GQCS-90683 / 4562387208562 / ¥2,300+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.インデストラクティブル
2.ゴースト・タウン
3.クレイジー
4.ミラー・オブ・ア・マン
5.ザ・ナイト・ザ・ミュージック・ダイド
6.パーティー・ライク・ア・ロックスター
7.ヤング・プリティ・ステューピッド
8.ザ・グッド・ライフ
9.キラー
10.カリフォルニア

【メンバー】
ラッセ(ベース、ヴォーカル)
アンダース(ギター)
ジョナサン(ドラムス)
クリストファー(ギター)

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