【South Penguin インタビュー】
2カ月連続配信シングルで打ち出す
独特のポップ観
クオリティーも上がって
生々しく人間的な感じになっている
2016年7月にデビューEP『alaska』をリリースした直後に『FUJI ROCK FESTIVAL '16』のROOKIE A GO-GOに出演しましたが、その頃には東京の新世代インディーシーンのニューカマーと注目を集め始めていたと。
アカツカ
集めたかどうかは定かではないです(笑)。正直言って、そういう実感は全然ないんですよね。
そして、2017年7月に2nd EP『house』をリリースするわけですが、リリースの1カ月前の台湾公演を最後にアカツカさん以外のメンバーが全員脱退してしまったんですよね?
アカツカ
辞めさせたんです(笑)。正確には当時のメンバーが忙しくて活動があまりできなくなったので、心機一転を図ろうと思って一旦解散して、それからはサポートメンバーをその都度迎えながらライヴを始めたんです。
そこでニカホさんと宮田さんが加わったと。
ニカホ
僕は『house』のレコーディングに参加したのがきっかけでした。最初はレコーディングだけで、何本かライヴに出られればいいかなぐらいの気持ちでいたんですけど、なんかズルズルと関わり続けることに…(笑)。
宮田
僕とドラムの礒部は2018年の3月とか4月とかでしたっけ? もともと大学時代からの知り合いの宮坂がパーカッションとしてSouth Penguinに参加していたんですが、アルバムを作るからってことで誘われました。
どんなところで意気投合したんですか?
アカツカ
僕はもう、生き別れの兄弟ぐらいに思ってます。
アカツカ
前のメンバーは関係性が薄いところから始まっていったんですけど、今のメンバーは共通の知り合いもたくさんいるし、年齢も近い。前は結構離れていたから“お願いします”って感じでやってもらってたんですけど、今はサポートメンバーも入れ替えずにバンドとしてやっているので、前よりは一緒にいる時間も長いし、リハーサルの回数も倍になりました。
メンバーそれぞれの嗜好、センスはSouth Penguinのサウンドに反映されているんですか?
アカツカ
結構されていると思います。以前は僕がガチガチに決めてからやってもらうことが多かったんですけど、今はライヴもレコーディングもリハーサルも同じメンバーでやっているんで、“好きにやってください”ってそれぞれに任せています。今回のシングルもそうですね。
そのシングルですが、今回は2カ月連続配信リリースという方法をとったのは、どんなところからの発想で?
アカツカ
今、アルバムを作っているところなんですけど、その間、何も活動していないみたいになっちゃうのもなと思って。配信だったら手軽にリリースできるし、バンドがちゃんと動いているということを見せたかったんです。
アルバムを作っているんですね。
アカツカ
絶賛制作中なんですけど、レコーディングがすごく楽しいんです。
アカツカ
そうだね。今までは音の素材を組み合わせて音楽にするって感じだったんで。
ニカホ
録るだけ録って、全然使わずにエディットしまくってたからね。
アカツカ
僕らのプロデューサーの岡田拓郎さん(ex.森は生きている)がポストプロダクションの鬼なので(笑)。もちろん、そういうやり方で作った作品も良かったんですけど、今回はその頃よりも演奏のクオリティーも上がっているし、生々しいというか人間的な感じになってますね。前はどっちかと言うと無機質な感じだったので。
アルバム用に作った曲の中から、今回は1月31日に「idol」と2月27日に「alpaca」を配信リリースするわけですね。この2曲を選んだのはどんな理由から?
アカツカ
「idol」はスタジオでやっている時にメンバーが“いいね”と言ってくれたので、“じゃあ、そうしようかな”って(笑)。僕は全曲シングルにできると思っていたのでどれでも良かったんですけど(笑)、「idol」が先に決まったので、歌モノの「idol」と対になる感じで、アルバムの中で一番エキセントリックな「alpaca」を持ってきました。
「idol」はどんなところが良かったんですか?
ニカホ
スタジオで合わせた時に手応えがあったんですよ。
宮田
今の音楽の潮流にもちょっと乗りつつというか、最初のデモにニカホさんがコード進行を加えたんですけど、それによってメロウさが増したというか。今までのSouth Penguinにはないメロウさがある曲だなと思いました。
ニカホ
この曲だけ、バンドでアレンジする前に僕が“こうしたほうがいい”ってコード進行を変えたんですよ。それによって今までのSouth Penguinっぽくないポップさが生まれたのかな。宮田くんが泣けるギターのフレーズを持ってきてくれたので、“これはもうリードトラックだな”って思えたんですよ。
アカツカ
誰かひとりが大活躍しているわけではなくてきれいにまとまっているなって。“こういうバンドになりました”っていうアンサブルとしては、みんなが美味しい。誰かが目立つとか誰かの力に頼るっていう楽曲ではないですね。
「idol」は“偶像崇拝”がテーマになっているそうですね。
アカツカ
そうですね。部屋でずっとアイドルの写真を見ているオタクの曲なんですけど、MVも含め、偏った愛を表現しています。雪見みとちゃんっていう美しい女の子を起用していて、妄想主観デートみたいな映像の中に監督のPennackyのセンスが光る謎映像が挟み込まれる不思議なMVなんですが…。とにかく雪見みとちゃんがいい子で可愛くて、撮影が最高に楽しかったです。
アカツカさんもそういうタイプなんですか?(笑)
アカツカ
僕は部屋にいるのは寝る時だけで、ほとんど外にいますけどね。この曲は女性アイドルだけについて歌ったものではなくて、世の中のヒーロー的なもの…僕にしたらコナンはアイドルだし、そういうものも含めての“idol”なんです。
ニカホ
僕はアイドル好きなわけじゃないけど偏愛があるタイプなので、歌詞を読みながら分かるところもあるんですよ。だから、“アカツカ、すげぇいい歌詞書くじゃん”って思いました。まぁでも確かに、アカツカは歌詞みたいなタイプではないかもね。
一方、「alpaca」はグルービーかつメズマライズで。
アカツカ
歌モノと言うよりは、もうちょっとトライバルなものをやってみたかったんです。それこそさっきも話したTalking Headsの『Remain In Light』みたいなアフロな要素もありつつ、トライバルでミニマルな感じを出せたんじゃないかな。
歌詞はフェティッシュに思えてきますね。
アカツカ
いや、「alpaca」は本当に意味がないんですよ。僕が着てた服がアルパカの毛を使っていて、それがすごく温かくて。“心地良いな”って思いながら、“アルパカってあんなにかわいいけど、結局は毛を刈られる動物なんだよな…”って。それだけですね(笑)。
さて、2カ月連続でシングルを配信リリースしたあとはどんな活動をしていこうと?
アカツカ
バンドで頑張りたいという気持ちが前よりもあるんですよ。制作中のアルバムも納得できるものになってきているし、メンバーの関係性もかなり良くなってきたという実感もあるので、バンドとしてがっつり活動していこうと思っています。
取材:山口智男
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配信シングル「idol」2019年1月30日配信開始
Luuv Label
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配信シングル「alpaca」2019年2月27日配信開始
Luuv Label
サウスペンギン:2014年7月に東京で結成。16年7月にデビューEP『alaska』をリリース。それに伴いライヴ活動を開始し、同月の『FUJI ROCK FESTIVAL '16』に出演を果たした。17年6月、初の海外公演である台湾でのライヴをもってアカツカ以外のメンバーが脱退し、その後はサポートメンバーを迎え活動。同年7月に2nd EP『house』をリリースし、18年春には中国を代表する野外フェス『Taihu Midi Festival』を含む全4カ所を巡る中国ツアーを敢行。19年1月30日には1st配信シングル「idol」、2月27日に2nd配信シングル「alpaca」を2カ月連続リリース。South Penguin オフィシャルHP
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『South Penguin “idol / alpaca” release party.』
「idol」MV