レッチリが最初の頂点を迎えた
『ブラッド・シュガー・
セックス・マジック』

本作『ブラッド・シュガー・
セックス・マジック』について

『母乳』の成功で、レッチリはこれまでとは比べものにならないほど真剣に音楽と向き合っていた。それを知ったルービンはプロデュースを引き受け、メンバーとともにロスの大きな古屋敷にこもり、新作に向けたリハーサルを重ねた。半年に及ぶリハーサルを行ない、フルシアンテもスミスもグループ内で自分が何をすべきか掴んだようだ。91年9月、新作となる本作『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』はリリースされた。彼らの代表曲のひとつ「ギブ・イット・アウェイ」がシングルとしてリリースされるとビルボードモダンロックチャートで自身初の1位を獲得し、続いてリリースされた「アンダー・ザ・ブリッジ」は彼らにしては珍しくセンチメンタルな曲だが、ビルボードホット100で2位まで上昇している。翌年のグラミー賞では初の受賞を果たし、他のシングルも軒並みヒットを記録するなど、本作は1200万枚を売り上げ彼らの名前は世界中に知られることになる。

本作の特徴は柔軟さにあると言えるだろう。彼らが得意とするゴリゴリのファンクナンバーはもちろん、新しい試みとしてアコースティックな切ないバラードがバランスよく配置されていて、ルービンの聴き手への配慮が実に行き届いているのである。フリーのベースプレイは、スラップを多用していた前作に比べて曲の隙間を埋めてしまわないように考えられている。フルシアンテとスミスに関しては、彼ら本来の本能的なプレイが冴え渡っていると思う。特にスミスのシンプルで的確なドラムパフォーマンスはここにきて完成したと言えるだろう。

収録曲は全部で17曲、そのうちカバーは「ゼイアー・レッド・ホット」(ロバート・ジョンソン)のみで捨て曲は1曲もなく、ファンク、ヒップホップ、グランジ、メタル、オルタナティブ、パンクなど、さまざまなロックのスタイルをミックスした彼らの音楽は、誰にも真似できない強靭さを持っている。まさしく90年代のロックシーンをリードする革命的なサウンドを本作で創りあげたといっても過言ではないだろう。90年代ロックを代表する圧倒的な傑作である。

フルシアンテの脱退と復帰

本作の後、レッチリがあまりにも大きな人気になってしまったがゆえに、フルシアンテは嫌気がさし、92年の日本公演の途中で突然脱退、アメリカに帰ってしまう。もちろんツアーの途中だったから、残っていた京都と東京公演は中止となった。彼の後釜には元ジェーンズ・アディクションのデイブ・ナヴァロが参加している。そして、99年にはフルシアンテが復帰し、7作目となる『カリフォルニケイション』をリリース、このアルバムは1600万枚を売り上げる彼ら最高のヒット作となり、2度目のグラミー賞受賞も果たしている。

なお、2月に行なわれる今年の第61回グラミー賞受賞式では、ラッパーのポスト・マローンと一緒にステージに立つことが決定している。

TEXT:河崎直人

アルバム『Blood Sugar Sex Magik』1991年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. パワー・オブ・イコーリティ/The Power of Equality
    • 2. イフ・ユー・ハフ・トゥ・アスク/If You Have to Ask
    • 3. ブレーキング・ザ・ガール/Breaking the Girl
    • 4. ファンキー・モンクス/Funky Monks
    • 5. サック・マイ・キッス/Suck My Kiss
    • 6. アイ・クド・ハヴ・ライド/I Could Have Lied
    • 7. メロウシップ・スリンキー・イン・Bメジャー/Mellowship Slinky in B Major
    • 8. ライチャス & ウィッキド/The Righteous & The Wicked
    • 9. ギヴ・イット・アウェイ/Give It Away
    • 10. ブラッド・シュガー・セックス・マジック/Blood Sugar Sex Magik
    • 11. アンダー・ザ・ブリッジ/Under the Bridge
    • 12. ネイキッド・イン・ザ・レイン/Naked in the Rain
    • 13. アパッチ・ローズ・ピーコック/Apache Rose Peacock
    • 14. グリーティング・ソング/The Greeting Song
    • 15. マイ・ラヴリー・マン/My Lovely Man
    • 16. サー・サイコ・セクシー/Sir Psycho Sexy
    • 17. ゼイアー・レッド・ホット/They're Red Hot
『Blood Sugar Sex Magik』(’91)/Red Hot Chili Peppers

OKMusic編集部

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