女たちの生きざまを描く『母と惑星に
ついて、および自転する女たちの記録
』待望の再演が実現

 2016年7月に旧パルコ劇場の最後の新作として上演され、話題を呼んだ『母と惑星について、および自転する女たちの記録』の待望の再演が、2019年3月に実現する(4月地方巡演あり)。劇作家・蓬莱竜太と演出家・栗山民也のコンビは、2009年に『まほろば』でタッグを組み、女たちの生きざまに確かな眼差しを注いだその作品で、蓬莱が岸田國士戯曲賞を受賞した。その蓬莱✕栗山コンビが次に送り出したのが『母と惑星について……』で、蓬莱は第20回鶴屋南北戯曲賞を受賞することとなった。
2016年公演より 撮影:引地信彦
 長崎出身の美咲、優、シオの三姉妹は、トルコのイスタンブールを思わせる異国へやって来ている。彼女たちの母、峰子は死んだばかりで、その母の遺骨を携えての旅である。エキゾティックな旅の情景と共に三姉妹の脳裏にフラッシュバックする母の記憶は、お酒に溺れ、男に溺れ、子供たちにときに非常につらく当たり、かなりエキセントリックで自由奔放な一人の女性の姿である。そして、そんな母のもとで育ったことが原因で、三姉妹はその内面にそれぞれ異なる悩みを抱えている。結婚に踏み切れない長女。しがないバンドマンと結婚しながらも専業主婦であり続けたいと望む次女。そして、三女は……。絨毯を詐欺的に売りつけられたり、ラマダーン(断食月)であるにもかかわらず街中で飲食したり、身近にテロを体験したり、さまざまな旅の珍道中と会話とを重ねながら、姉妹はそれぞれの心にいる母、そしてそれぞれの心、それぞれの人生と向き合うこととなり――。
2016年公演より 撮影:引地信彦
 今回の再演では、初演から続投のキャスト2人に加え、新たなキャスト2人が加わっての上演となる。長女役の田畑智子、そして、次女役での演技が評価され、第24回読売演劇大賞・最優秀女優賞を受賞した鈴木杏の二人は初演に続いての登場だ。そして、三女役を演じるのは、これが舞台初主演となる芳根京子。母役を演じるのはキムラ緑子となる。初演時も、活気あふれる長崎弁で繰り広げられる母と三姉妹の丁々発止がはずんでいたが、新たな出演者を加えてどのような化学変化が生じるのか、期待したい。舞台経験も豊富な田畑と鈴木に対し、芳根はこれが舞台二作目となるが、栗山の確かな演出が彼女からいかなる新たな魅力を引き出すこととなるのか、楽しみなところだ。また、再演であり、決して宛書ではないにもかかわらず、戯曲を読んでいるだけで、キムラ緑子演じる母峰子が脳裏に浮かびそうになるほど。ジャストフィットの役柄でどんな演技を見せてくれるのか、注目される。人それぞれの中の、母。人それぞれの、人生。女性、男性問わず、ちょっと立ち止まって自分の日々の営みを見つめ直したくなる、そんな舞台を楽しみにしたい。
文=藤本真由(舞台評論家)

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