東方神起 激しさとディープさを硬派
かつセクシーに表現する絶対的な魅せ
方、東京ドーム公演を振り返る

東方神起 LIVE TOUR 2018 TOMORROW

2018.12.4(TUE)東京ドーム
2017年に全国5大ドームツアーで再始動し、2018年6月にはアーティスト史上初の日産スタジアム3daysを行った東方神起。彼らを待ち望んだオーディエンスで埋め尽くされた客席の景色と、ユンホとチャンミンが魅せたブランクを感じさせることのない完全体なパフォーマンスと、見る者を引き寄せた歌唱力は、改めて東方神起という存在を絶対的なものとして印象付けた。
そして彼らは、9月にリリースした最新アルバム『TOMORROW』を引っ提げ、全国8カ所24公演のアリーナ&東京ドーム4公演、京セラドーム大阪5公演の全33公演におよぶ全国ツアーへと向かった。9月26日のさいたま公演を皮切りに、一気に福岡へと場所を移し、広島と攻めた後、さらに北海道へとさらに大きく場所を移し、福井、新潟、そして愛知、宮城と全て3days公演でまわり、東京へと辿り着いた。
12月3日から東京ドームで行われた東京公演は4日間。
12月4日。東京ドーム公演の2日目に行われたライブを観た。
東方神起
ツアーも中盤を過ぎ、アルバムの楽曲たちもすっかり体に馴染んだと感じたそのライブは、いつも以上に力強く、確固たるステージを魅せてくれた。
始まりは「Yippie Ki Yay」。2人はメインステージの上段から登場すると、歓声の中、華やかにこの曲を届けた。メロディアスな曲調ながらも、これまでの東方神起には見られなかった楽曲の方向性であると感じたこの曲は、ライブの広がりを感じさせるオープニングナンバーとなった。間髪入れずに届けられた「Showtime」では、スケールの大きなVJをバックに、ディープなサウンドにキレのあるダイナミックなダンスと歌を乗せステージを繰り広げ、3曲目の「Something」では骸骨マイクを用い、少しレトロなSHOWへとオーディエンスを導いた。それぞれのソロのダンスパートでは、客席から彼らの韓国名での掛け声が上がり、楽曲を盛り上げていった。
東方神起
ライブ全体を観た後に、こうして改めてライブを振り返りながら書き進めていると、「Get going」「I Don't Know」と続けて届けられていったこのブロックは、ライブの序章を担う位置として置かれた助走的な楽曲が集められていたと感じさせられる。まさに、ウォーミングアップとでも言おうか、オーディエンスの熱をとても上手く操っていたように思うのだ。
そう感じさせたのは、VTRを挟んで届けられた「Jungle」からのブロックだ。アルバム『TOMORROW』の中でも特別異彩を放っていた、深い未開の地を思わすこの曲は、序章のステージの印象をガラリと変えていった。燃え上がる炎の中で届けられた怪しげな世界が漂うサウンドに、独自の世界観を重ね、新たなる東方神起を見せつけたのだった。
東方神起
洋楽要素の強いリズミックな「Electric Love」から、重心の低いクラシックなロック「呪文-MIROTIC-」をノンストップで届けたこのブロックでは、オーディエンスが一番望んでいる東方神起のスタイルでのライブであったことだろう。激しく、ディープな世界観を、ここまで硬派かつセクシーに表現しきれるグループは他にいないと言っても過言ではない。
コーラスワークが美しいことでも注目されてきた彼らの魅力を見せつけたのは、この後に続けられたブロックだ。
再びVTRを挟んだ後、2人は会場の後方に設置されたセカンドステージに身を移すと、ピアノイントロから柔らかな空気が会場に広がっていった「I love you」に、そっと歌を乗せた。高くせり上がったセットの上で、2人はオーディエンスの一人ひとりに歌い掛けるかのように、そこに綴られた歌詞を一言一言大切に歌い上げていった。
東方神起
椅子に座って語りかけるように届けられた「Telephone」から繋げられた「明日は来るから ~TOMORROW Version~」では、紡いできた東方神起という歴史を改めて感じさせられる歌声を聴かせてくれた2人。
音楽というものは実に不思議で。その曲と出逢った時に一気に気持ちが引き戻されるものである。彼らが古くから歌い続けている曲でも、聴き手がその曲と出逢った時から、その人とその曲との想い出は始まる。彼らがこの曲を4枚目のシングルとしてリリースしたのは、今から13年も前のこと。まだ、日本語の理解も少し困難だった時代に、そこに綴られた日本語の意味を必死で理解しながら、そこに想いを乗せて歌っていた当時の彼ら。この日、ここで響かせたその歌には、自然にそこに込められた深い感情が伝わってきた。この曲を今、“TOMORROW Version”として歌う彼らの姿を、とても感慨深い気持ちで見届けた瞬間でもあった。
<こうしてふたりが出会えた偶然 奇跡と呼びたいこの気持ちを 君だけに伝えたいよ>
そう歌われるこの曲の意味は、当時とはまた違う、今歌うからこその意味として受け取れる。この後に続く<ふたりが歩いたこの道のり それだけが確かな真実>というフレーズも、歩み続けてきたからこそ歌える意味だと受け取った。
<必ず明日はくるから>と歌われるラストのフレーズに、少し長めのブレイクを用いていたアドリブも、その言葉を大切に想うが故のこと。まさしく、そんな想いは、今回のアルバムタイトル『TOMORROW』にも、このツアーに込めた想いにも繋がっていたことだろう。
彼らはMCで、今回のツアーがなぜ『TOMORROW』なのかということに触れた。それは、「ここにいるみなさんと僕たちで、素敵な明日に向かって、今を大切に生きていこう」「もし、不安な日があったとしても、互いに信じあって、未来を築いていこう」という意味であったという。
東方神起
東方神起
後半戦ではそれぞれのソロも披露。ユンホは軽やかかつ、しなりのあるダンスで、スタイリッシュなソロステージを魅せ、チャンミンはアコースティックギターを持って登場すると、美しいアルペジオを響かせ、その上に柔らかな歌声を乗せた。
2人の魅力を最大限に活かした東方神起としての魅せ方とはまた異なる、それぞれの個性を存分に活かしたソロコーナーでは毎回違った表情で楽しませてくれる彼らだが、今回のソロでは、それぞれがさらに自らの個性を色濃く表現した時間になったと感じた。
本編を締めくくったブロックでは「Jealous」「Trigger」「“O”-正・反・合」といった、中盤でも魅せた“オーディエンスが一番望んでいるだろう東方神起のスタイルでのライブ”で魅了したのだった。
やはり、この激しさとディープさを硬派かつセクシーに表現する絶対的な魅せ方は、右に出るものはいない。このスタイルは、彼らが音楽シーンに現れてから、後のダンスボーカルシーンに大きな影響を与えることとなったと言っても過言ではない。
東方神起
絶対的な地位を築いた彼らは、完璧なライブを届けた本編を終えると、アンコールではTシャツにジーンズというラフなスタイルに着替え、トロッコに乗り込みカラーボールやフリスビーを客席に投げながらオーディエンスに目線を合わせ楽しませてくれたのだった。
ますます磨きのかかった彼らのステージは、この先もきっと想像を超える変化と進化を魅せてくれるに違いない。そう感じさせてくれた夜だった。

取材・文=武市尚子
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