浜田麻里

浜田麻里

【浜田麻里 インタビュー】
今回の武道館には
ひとつのストーリーがある

ステージで歌いたくなくなった自分が
再びステージで歌う幸せを感じている

そして、このベストアルバムが出た4日後には大阪フェスティバルホールでのライヴが控えているわけですが、もう構想とかはあるのですか?

結構悩んでバンドメンバーやスタッフとも話し合ったりしたんですけど、結果的には『Gracia』のツアーと4月の武道館の間という感じですね。本当は武道館に寄せようと思っていたんですけど、そんなに時間がない…ステージが大きいから演出に凝るということで、そっちの制作をすぐに始めないといけないというところで、『Gracia』のツアーの流れはそのままで、内容を少し変えるくらいかなと思ってます。って、実はセットリストをまだ作っていないんで、みんなも内心は怒っていると思うんですけど(笑)。

えっ、もう1カ月を切ってますよ。

そうなんですよね。ただ、“この曲もやると思います”というのは送ってあるので、ちょっと怒っているくらいだと思います(笑)。

基本的には『Gracia』のツアーの延長だと。では、4月の日本武道館は?

35周年のスペシャルっていう打ち出し方はせずに、『Gracia』のツアーの最後になること、新バンドのミュージシャンもテクニカル系の方たちが集まっていますし、そういう意味でも観応えのある近年のものを中心にしたいと思ってますが、いろいろ考えます。もちろん35周年のファイナルという想いも込めて。…まだこれから作っていくんで、それ以上のことは言えないんですけど(笑)。

1993年以来、26年振りの武道館ですが、89年の初武道館のことは覚えています? 

はい。それまでにイベントとかで武道館には2〜3回立ったことがあったので、初めてのステージっていう感じではなかったです。“武道館、やったー!”とかではなく、“やっと来れた”という感覚でしたね。2デイズだったので、それなりの重みは感じていましたけど。すごく長いツアーの大詰めだったんで、変な気負いや緊張もなくやれた記憶があります。

やはり武道館は特別な場所ですか?

そうですね。本当に何もない状態からデビューして、ひとつひとつ積み上げていって、なんとかここまで来れたっていう納得の場所ではあったと思います。ただ、武道館が目標っていう感覚は持ったことはないですけど。デビューして6年で辿り着けた…成功したっていう気持ちが持てたくらいですね。それ以前はまだ存在的にはマイナーだったとはいえ、動員はあったのでもう少し早くできたとは思うんですけど(笑)。そういう意味でも、“やっと来れた”って感じでした。

そんな日本武道館に35周年記念で立たれる心境というのは?

やっぱりひとつのストーリーがあるというか、かなりドラマチックなものになっているんですけど、そう思っているのは自分だけみたいで。誰も何も言ってくれないんですよ(笑)。正直言うと、26年前…1993年6月だったと思うんですけど、その時の武道館も即完するくらい一番勢いがあったのに、それを最後に1996年にライヴ活動を休止してしまったんですね。いろんな理由があったんですけど、端的に言えばステージで歌うことが辛くなったんです。その自分が時間を掛けて、再びステージで歌う幸せを感じている、そのドラマ性をすごく感じるんですよ。

復活した頃に立ったのが、麻里さんにとって想い入れの強い中野サンプラザホールで、そこから再び日本武道館に戻ってきたというドラマがありますよね。

そうなんですよ! そういうふうにみなさんも思っていただければいいんですけど(笑)。ライヴ活動を休止したとはいえ、その期間も作品は一生懸命に作っていましたし、制作者としてのこだわりはずっとあったので、歌うことだったり、音楽に対してやる気がなくなったことは一度もないんです。でも、当時はステージというのがあまりに辛かったんです。今も辛いのは辛いんですけど。

えっ、今も辛いんですか!?

やっぱり厳しい体調管理をしているので。同業の方はみなさんそうだと思うんですけど、メンテナンスをしっかりとしないといけないので。それでも“あ〜、やっちゃった”ってなる時もありますし、ここのところ多忙で体調を崩すことも多かったので、そういう緊張感をいつも持っていないといけなんですよ。それこそ昔は3連チャンやって1日休んで、また2連チャンっていう、若いからこそできたスケジュールでやってましたけど、その中である程度のレベルを保ってライヴをこなすというのは本当に大変なことだったんです。今思うと幼かったのかもしれないですけど、その努力をスタッフが分かってくれなかったりして、当時はプチンと何かが切れちゃったんでしょうね。周り…特にファンの方からは“どうしてライヴをやらないんですか?”や“ライヴをやってください!”って言われ続けた中で、その有難さを感じ、気持ちが変わっていったんですけど。

キャリアを重ねると年齢的にも体調管理は、さらに大変になっていきますよね。

歳を取ったから丸くなるとか、メロウになるとか、そういうのと逆行した自分でいたいっていうのが、どこかにあるのかもしれないです。声帯の医師から言われたんですけど、“あなたは完全にアスリートと一緒だから”って。それは私自身も感じていて、やっぱり自分を限界まで追い込まないと、本番でのいいパフォーマンスにつながらないんですよね。でも、一歩間違えると怪我をしてしまうっていう。万全のつもりでも、今まで何度かそれを繰り返してきました。レコーディングだったらそんなに気にしないんですけど、ライヴってなると今の自分の耐久力を意識しながらトレーニングを続けないといけないので、その過程ですよね、気を遣うのは。例えば、曲で何オクターブに挑むとか一切思わないんですよ。よくそういうふうに書かれるんですけど(笑)。むしろ、コーラスになるとかなり高いんで、ミックスの時に下げているくらいで。ただ、ライヴの完成度、耐久度を上げていくためには、それこそランナーが走り込むのと同じで、歌い込まないといけないんです。私の場合はスケーターのような技の瞬発力も必要です。

まさに今は大阪公演に向けて喉というか、体を作っているところですね。

これから作っていく感じですね。多忙で立ち上がりが遅れて焦ってばかりいます。この35年、ずっとそうでした。ちょっと気負いすぎかな(笑)。

OKMusic編集部

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