ヴァイオリニスト荒井里桜が生み出し
た清新な音色の魅力

「サンデー・ブランチ・クラシック」2018.11.25ライブレポート
クラッシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう!小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK!そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート「サンデー・ブランチ・クラシック」。11月25日に登場したのは、ヴァイオリニストの荒井里桜だ。
5歳よりヴァイオリンを始め、東京藝術大学附属音楽高等学校を経て、現在、東京藝術大学2年在学中の荒井里桜は、第15回東京音楽コンクール弦楽器部門第1位・聴衆賞をはじめ、数々のコンクールで入賞ののち、2018年10月、第87回日本音楽コンクールで第1位の栄冠に輝いた期待の新鋭ヴァイオリニスト。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団と共演や、東京、名古屋にてのソロリサイタル、NHK FM「リサイタルノヴァ」出演等、多彩な活動を続けている。
そんな荒井がサンデー・ブランチ・クラシック初登場の第1曲目に選んだのは、クライスラーの「美しきロスマリン」。「愛の喜び」「愛の悲しみ」と共に、ヴァイオリンとピアノの為の小作品として非常に良く知られた楽曲だ。荒井の演奏には軽やかな中にも芯の強さがあり、高音の歌い方が素晴らしい。中間部もたっぷりと聴かせ、早くも「ブラーヴァ!」の喝采が飛んだ。
演奏のあと改めて自己紹介をした荒井が、今日のピアニストで「私の先生です」と谷合千文を紹介。谷合は「見てお気づきと思いますが、今日は子供と一緒のステージです」と新たな命を育んでいることを語りながら、荒井を「ちょっと天然なところもあります」と紹介し、和やかな笑いがeplus LIVING ROOM CAFE & DININGを包んだ。
続いての2曲目は同じクライスラー の「プレリュードとアレグロ」。ヴァイオリン学習者は必ずと言っていいほど学ぶ曲だが、荒井はたまたまタイミングを逸して、このサンデー・ブランチ・クラシックのステージの為に、初めて取り組んだという大変希少性の高い演奏に。力強いメロディーから、一転して哀愁に満ちたパートも自在に歌い分けていき、楽曲の流麗さが際立つ。アレグロ部分の速いパッセージの演奏も華やかで、重音が殊に美しく、ピアノとの息もピッタリ。カデンツァを一気呵成に弾き切り、堂々としたフィニッシュになった。
そこから「雰囲気をガラリと変えます」とのことで、チャイコフスキーの「感傷的なワルツ」を。亡き人を思っているかのような、哀切に満ちたワルツだが、荒井が弾くことで清新な魅力が加わり、ワルツを踊るロマンティックな乙女の感傷にも感じられるのが新鮮。低音から高音まですべての音色が美しく響き渡った。
「最後の曲は派手に」というコメントに、「えっ?もう最後の曲?」という気持ちになるほど荒井の演奏がeplus LIVING ROOM CAFE & DININGに余韻を残す中のラストはサン=サーンスの「ワルツカプリス」。ピアノ曲をヴァイオリン曲に編曲したもので、冒頭から非常に華やか。そこからどこかコケティッシュな演奏へと、表現も多彩でダイナミズムがありつつ瑞々しさもあり、テクニックの鮮やかさと共に若竹のような伸びやかな演奏に、大きな拍手が贈られた。
その喝采に応えてのアンコールは、ポンセの「エストレリータ」。小さな星という意味のそもそもは歌曲だが、20世紀を代表するヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツによる編曲が世界的に有名で、ヴァイオリンコンサートのアンコールピースとしても知られている。荒井の演奏はメロディーを滔々と歌う豊かな表現が魅力的で、名残惜しいような時間が過ぎていった。
荒井里桜
伸び盛りの清々しい魅力が振りまかれた30分間だった。
演奏を終えた荒井にお話を伺った。
ーー今日の演奏で感じたeplus LIVING ROOM CAFE & DININGの雰囲気や、手応えはいかがでしたか?
渋谷にはよく遊びに来ていましたが、こちらに来るのも演奏するのも初めてで、とても雰囲気の良い場所でお客様も温かくて弾きやすかったです。
ーー皆さんが喜んでいらっしゃるのが伝わって来ましたね。選曲に当たってはどんな工夫を?
演奏時間が30分というコンパクトなものだったので、聞き馴染みのあるクライスラーの小品をいくつか入れようとまず考えました。そこからやはりソナタ等の重いものよりも、小品で揃えた方が楽しんでいただきやすいかな?と思って、小品を4曲という構成にしました。
ーーその中でクライスラーの「プレリュードとアレグロ」は初めてお弾きになったということでしたが。
ずっと弾きたかったのですが、小さい頃にタイミングを逸して、今となって弾くということがなかったので、今回演奏するのも本番のステージで弾くのも初めてでしたから、自分としても良い機会になりました。
ーーそういうタイミングを失する曲というのは意外にありますよね。特にコンクール等に臨まれていると、大曲に取り組むことが多くなるでしょうから。
コンサートもたくさんさせていただいていて、先週もコンツェルトを弾いたので、それが終わってからすぐ集中して練習しました。譜読みはすぐできたのですが、本番は初めてだったので緊張しました。
ーーとても素晴らしい演奏でした!こういう小品を集めてみてご自身ではどんな感触を?
私は小品がすごく好きなのですが、さっきも言いましたようにここ最近は大曲に臨む機会が続いていたので、1曲ずつ拍手をいただけるのが心地良くて、とても楽しかったです。
荒井里桜
ーーまた遂先日、日本音楽コンクールで素晴らしい成績を納められましたが、コンクールに向けた時間や、また受賞後等、コンクールを経た後で変わられたと感じていることはありますか?
コンクールまでの時間は、あと3週間、あと2週間という感じで、自分を奮い立たせていました。受賞後はまず演奏会がとても増えましたし、やはり多少なり自信がついた部分はあります。今まで本選は聴きに行く立場で、憧れの舞台でしたから、そこに立つというのはどういう緊張感や、どういう心構えが必要なのかな?と思っていましたが、その舞台に立てたことそのものがとても嬉しかったので。
ーーこれからますますご活躍されることと思いますが、今後の活動への夢やビジョンなどは?
ヴァイオリンに携わる仕事をしていきたいということは明確なのですが、それがソロ活動になるのか、オーケストラに入るのか、教えるのか、留学するのかも含めて、まだ細かくは決めていないません。でもずっと親の脛をかじっている訳にはいかないので(笑)、ソリストとしてプロになるのならば、今のコンクール歴ではとても足りないなと感じています。ただ、コンクールの為だけの演奏にはなりたくないと思っていて、点数にこだわるとやっぱりミスが出てはいけないとか、そちらばかりに神経がいってしまうので、やはり自分のやりたい音楽をきちんと追求していきたいです。それができれば、コンクールでも結果がついてきてくれると思いますし、今は、いただいているコンサートのお仕事一つひとつに丁寧に向き合って、自分の音楽が聴いてくださる方の心に届いたら良いなと思っています。
ーー今後のご活躍に期待しています。今日はありがとうございました。
(左から)谷合千文、荒井里桜
取材・文・撮影=橘涼香

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