オメでたい頭でなにより インタビュ
ー 多くのことに挑戦し成長を遂げた
彼らが1stフルアルバムに込めたもの

オメでたい頭でなによりが、1月9日に1stフルアルバム『オメでたい頭でなにより1』をリリースした。多くのメッセージを詰め込まれた「ザ・レジスタンス」、元々タイアップ用に作っていたデモの1つだったと言う「鯛アップ(TVサイズ)」、ウェディングソング「ピ」などバラエティに富んだ楽曲が並んだ今作。そんな今作についての制作秘話や制作を通して成長したことについてたっぷりと語ってくれた。
──初のアルバム『オメでたい頭でなにより1』はどんな作品にしようと思っていましたか?
赤飯:実は、最初からゴールが見えていた感じではまったくなくて。
324:どんな曲を入れようかってなんとなく考えながら曲を書いていたんですけど、あとから“こういう感じになったんだ”って納得したというか。
赤飯:うん。頑張って作った結果、こうなりましたっていう感覚が強いですね。
──完成したことでアルバムの全体像が見えた曲とかはあるんですか?
赤飯:324なんか言うてなかった? この曲があれば間違いないっていう。
324:ああ。1曲間違いないものができれば、このアルバムは大丈夫だろうって安心する部分があるんですけど、「ザ・レジスタンス」がそうでしたね。
赤飯:1曲目でリードトラックです。
324:この曲は堀江晶太くんとのコライトなんですけど、もう10年ぐらい経つのかな。お互い高校生の頃からの付き合いで、彼は今PENGUIN RESEARCHをやっていて、僕はオメでたい頭でなによりをやっているけど、このタイミングで何か一緒にやれたらおもしろいんじゃないか?っていうところからオファーをして。そのデモをアレンジしていたときに、このアルバムは絶対にかっこよくなるから大丈夫だなって思いました。
赤飯
──「ザ・レジスタンス」の共作はどう進めていったんですか?
324:まず、彼がオメでたい頭でなによりというバンドに対して持っているイメージそのままを投げてもらって。そのデモが、バンドスタイルでちょっとシンセが入っているぐらいの簡単なものだったんですけど、「ザ・レジスタンス」というタイトルにもなった通り、集団とか軍団とか、何か反抗心を持ったものをテーマにしようと。そのイメージを共有してから(赤飯に)作詞に入ってもらって、アレンジもイントロを軍隊っぽい感じにしたり、最後にオーケストラのセクションを入れて、靴を鳴らす音を入れたり、いろんなことを話し合って進めた感じでした。
──赤飯さんとしては、曲のイメージがしっかりあったのもあって、筆の進みは速かったですか?
赤飯:いやあ、めちゃめちゃ時間かかりました。この曲の仮歌詞みたいなものを書き始めたのって結構前だったんですよ。
ぽにきんぐだむ:「鯛獲る」とかそれぐらいのときだっけ?
324:確か(去年)2月の末にデモをもらった気がする。
赤飯:だから3月ぐらいか。いいのが一個も出てこなくて、ゴミクズみたいな歌詞だったんですよ、ほんとに(笑)。
──これだ!っていうものが出てこなかった?
赤飯:そうです。漠然としていて芯がなかったんですよね。
324:反逆っていうテーマが出てきたのも結構遅かったよね?
赤飯:最初は「校歌」って言ってたもんな? それでメンバーが校歌の歌詞によく使われている言葉をまとめた論文とかを送ってくれて、それを僕なりに解釈して書いてたんですけど、その縛りの中で書いていくとほんまに何が言いたいのかわかんなくて。
324:だからもっと俺らの根本にあるもの、自分達に寄り添っているものにしたほうがいいんじゃないかって、白紙に戻すまではいかないけど。
赤飯:でもまあほぼ白紙やな。もうタイムリミットがどんどん迫ってきてたんですけど、その中で思ったのが……それこそ「鯛獲る」もそうなんですけど、今まで我々って、“夢を見ているやつを全力で応援するぜ!”っていうスタンスでやってきていて。バンドの根底に、ネガティブをポジティブに変換してアウトプットをするというものがあるし、それを信じてやってきたんですよ。でも、我々の楽曲とか姿勢って、本当に落ち込んでいる人、つらいと思っている人に対しては毒になるというか。勇気付けるどころか、逆にしんどくなるし腹が立つこともあるなんてことを小耳に挟んだり。夢を見ている人を応援と歌っているけど、“じゃあ夢を見ていない人は?”っていう。
──なるほど。
赤飯:そもそも我々がこの活動で本当にやらないといけないことは、もやもやしたものを抱えていて、言葉にできない思いがあったり、しんどい思いをしていたりする人に寄り添うものを作ることで、その人を救うというか。人々の生活に寄り添うのがアーティストの本来の仕事なのに、それができていないのは本末転倒だと思って。だから夢を見ている人も、夢を見ていない人もしっかり肯定しないとダメだと思ったんです。夢を持っていること、持っていないことに良し悪しはないし、優劣もない。その両方を、すべてを抱きしめられるようなメッセージにしたいなと思って。
ぽにきんぐだむ
──歌詞の根底にはそういう思いがあると。
赤飯:そこから想像を膨らませていったんですけど、“お前は夢がないからダメなんだ” “夢を見ているお前はバカだ”って、お互いがいがみ合う想像から始まったんですよね。で、お互いの手をとって形になるものにしたいなと思っていたんですけど、我々のライブって、最後にみんなでダブルピースをするんですよ。そのピースを象徴とか武器として使いたいなと思って。で、なんかないかなって、夜中に真っ暗の部屋で、カーテンから漏れてくる光のところで、なんかこう(右手をいろんな形に動かしながら)いろいろとやってたんです。そのときに、ピースって人差し指と中指やなと思って。“お前はダメだ”って人に指差す人がいて、それに対して中指を立てる人がいて……。
──おおー! 綺麗ですね。
赤飯:これならそれぞれが対立しているもの組み合わさって、武器に変わるみたいなものが書けるなと。そこからそいつらが自分達のレジスタンスに参加してくれるようになって、一緒に戦ってくれるようになったと。その戦う相手というのは……実はこの曲、結構いろんなメッセージがあるんですけど(笑)。
──そうですよね。本当にいろんな思いが込められてるなと思いました。
赤飯:そうなんです。本当の敵は自分自身の中にあるというのも大事なテーマで。僕は、自分の考え方や心の持ち様で、目の前にいる人が敵になるかどうか決まるんじゃないかなと思っていて。たとえば、ライブでも“なんでこいつこんなに当たってくんねん!”とか、ちょっとぶつかったときに“いや、しらんし”みたいな態度でいると、周りに嫌な気持ちがどんどん伝染するし、歪みが生まれていくじゃないですか。でも、思いやりを持って、みんなと一緒にこの空間を作り上げていくんだっていう気持ちでいれば、周りは敵じゃなくて味方になるぞと。そうやって自分自身の中で革命を起こして、自分の道を切り開いていこうと。2A(メロ)は。結構大風呂敷を広げたような歌詞ですよね。テーマがでかいというか。「We Are The World」的というか。
──<肌の色や 言語 生まれた場所>なんて関係ないという。
赤飯:でも実は、ここにもっとパーソナルな意味を込めるために、大風呂敷を広げていて。
──パーソナルなもの?
赤飯:我々は元々の活動が動画サイト出身なので、色眼鏡で見られることが多いんですよ。中途半端な気持ちでやってるんだろうとか、どうせ遊びでやってるだろうとか。それで曲すら聴いてもらえなかったりするし、“バカにしていい対象と見なしていいだろ”っていう見られ方をすることもあるんですよね。そのことを歌詞の<生まれた場所>に込めていて。だから、ここだけコーラスを厚くしてるんですよ。
324:全員分の声を録ったんです。赤飯の声を重ねればよくない?って言ったら、“いや、録れや”って(一同笑)。
赤飯:お前らの声がここに入ることで、この言葉の意味が出るからって。
324:渾身の<生まれた場所>を録りましたよ(笑)。
赤飯:まあ、卑屈と捉えられてもしょうがないですけど、でもすごくポジティブな気持ちを込めた歌詞ですね。
──確かに、優しくて強い歌詞だなと思いました。<自分達の居場所>に来てくれた人達の生き方を否定しない優しさであり、様々な気持ちをすべて受け入れる強さがありますよね。
赤飯:ありがとうございます。
mao
──maoさんとしては、歌詞を読んだり、コーラスを録ったときに印象だったことというと?
mao:あ、いや……なんか、今ふたりが話してるのを聞いてたら、この歌詞いいなってさらに思っちゃって(一同笑)。
ぽにきんぐだむ:確かに、俺らが何かを補足する必要のないぐらいの話だったもんね?(笑)
mao:そうそう。マジでいい歌詞だなと思ってしみじみしてました、すみません(笑)。
──いえいえ(笑)。そういうめちゃくちゃエモい曲もありながら、楽しい曲もたくさんあって、個人的にうまいなと思ったのが「鯛アップ(TVサイズ)」でした。バトルもののアニメのオープニングテーマみたいな雰囲気があって、曲尺もそれこそテレビサイズの90秒で作っているかと思いきや、最後に5秒ぐらいなんか時間稼ぎしてるっていう。
メンバー:はははははは!(笑)
ぽにきんぐだむ:この曲は、元々タイアップ用に作っていたデモの1つだったんですよ。なので、タイアップということ自体をネタにした曲にしようって。
赤飯:歌詞も最初はアニソンっぽい熱血な感じで書いてたんですけど、あんまおもんないなと思って。じゃあいっそ開き直って、企業にプレゼンする歌詞にしようってマインドが変わった途端一気に書きあがりました。
ぽにきんぐだむ:もしこの曲のフル尺が聞きたいのであれば、お客さんも率先して企業に売り込んでもらえれば(笑)。
324:実際にタイアップ取れなかったらフル尺は作らないので(笑)。
──フル尺という流れだと、「終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)」も気になりますね。この曲は通常バージョンは存在せず、ライブバージョンで完結なのかという。
ぽにきんぐだむ:これはもう完結してますね(笑)。
──ははははは(笑)。ラウドな曲が続く中で、突然ソウルやファンクを下地している90年代J-POPな雰囲気の曲が飛び出してきますけども。
赤飯:我々のライブって、頭からお尻まで全力疾走でずっと濃い肉を食わされてる感じだから、箸休め的な曲も必要だから作ろうっていうところから始まったんですけど。
324:最初は横ノリで手拍子できる歌を作ろうと思って、ロックバンドっぽいところをリファレンスにしていろいろ書いてたんですけど、なんか違うなと思って。メンバーに聴かせてもやっぱり違うねってなったときに、急にこういうイントロが流れ出したらおもしろくない?っていうところから走り出した感じですね。
ぽにきんぐだむ:でも、それをそのまま作ってしまうとただのいい曲になってしまうので(笑)、なにかボケなきゃいけないっていう。
赤飯:で、2番は普通にやるんじゃなくて、もうメンバー紹介をしちゃおうっていう。でも、できあがった後に、僕がこの音源すごく気に入りすぎて、2番の歌詞を追加で書いちゃったんです、15分で。
──歌わないのにわざわざ(笑)。ただ、この曲を作ったこともそうですけど、この演奏をさらっとやるのもすごいなと思って。
ミト充:僕らっていろんなジャンルをやってますけど、この曲をレコーディングしてたときに、324に“ミトさん、これが一番得意なジャンルなんじゃないですか?”って。
324:すげえ合うんですよ、この曲とミトさんのグルーヴの感じが。ミトさん、これじゃん!って。
ミト充:え、俺の本職、これ!?って。
mao:入るバンド間違えた?(笑)
324
──(笑)。でも、本当に極上の箸休めができましたね。
324:一番予算かかってますからね(笑)。友人のミュージシャンにサポートお願いしてますし。
mao:あと、途中に入っている歓声は、Zepp DiverCityでやったときのお客さんの声なんですよ。いい歓声だったのでそれを使ってますね。
──あと、意外だったのが「ピ」でした。かなり爽快感があって、歌詞は控えめに言っても激甘というか。
赤飯:あっはっはっはっ!(笑)
──結婚式での定番曲を引用していますけども、なぜまたウェディングソングを作ろうと?
ぽにきんぐだむ:結婚式ってオメでたいじゃないですか。だから初期の頃からやろうと思っていたテーマとしてあったんですよ。
赤飯:婚礼ブレイクダウンとかやってたんですよ。パーンパーカドーーーン!みたいな。で、今回結婚式の曲をやることになったときに、はたして本当に婚礼ブレイクダウンは必要なのか?っていう(笑)。それこそ人々の生活に寄り添いたい気持ちが本当に強くなってきたから、そのためにはブレイクダウンを捨てることも正しい選択だと(笑)。そういう冷静な判断ができるようになってきましたね。
mao:でも、そこにストレートなタイトルをつけるとウチのバンドの色が死んでしまうので、「ピ」という。
赤飯:この「ピ」ってなんやと思います?
──いろいろ考えてたんですけど、2番の歌詞に雨が出てくるなと思って。韓国語で雨って「ピ」じゃないですか。で、雨もそうだけど、「ピ」って血という意味もあるから、雨と見せかけて実は血で、結婚は血の誓いみたいな……。
赤飯:おおー!
ぽにきんぐだむ:これ、「好きピ」の「ピ」です。
──あ、なるほど!(笑)
324:これ、若い方は結構すぐにわかってくださるんですよ。
──ジェネレーションギャップ……!
赤飯:でも、「雨」っていうのは、後付けで考えたやつと一致してましたよ。血の誓いみたいなのは初めて聞いたんで、今後のインタビューで早速使おうと思います(一同笑)。
──なんか、爽やかな曲なのにすごい邪悪な発想してました……(苦笑)。
赤飯:いやいや、でもそういうので全然いいと思うんですよ。歌詞の捉え方は人によって自由なんで。
ミト充
──歌詞は赤飯さんとぽにきんぐだむさんの共作になっていますね。
赤飯:7時間✕3みたいな感じで、2人でずーっと面と向かってやってたんですけど、結局保留になったんですよ。
ぽにきんぐだむ:やっぱりウチらのバンドの色というか、そもそも赤飯のキャラクターとして、ラブソングってあまり作らないというか、避けてきたというか。
赤飯:そもそも興味なかったからね、全然。
ぽにきんぐだむ:でも、歌詞って作らなきゃいけないと言ってできるものでもないじゃないですか。気持ちが前に向いてないと出てこないし。そのために必要な材料をどんどん集めて、そっちのほうに向けていくっていう作業でしたね。
──こういうのはどう?みたいな提案をしていくというか。
ぽにきんぐだむ:そうです。たとえばフェスにいく男女にしたらどうか?とか。でも、なかなか右ストレートが来なくて。
赤飯:で、置いといた結果、タイムリミットが来てしまって。でもなんか、脳汁が出たんでしょうね。ブワー!って一気に書けました。彼がデモで出してきてくれたフレーズでハマりが良かった部分も使ってるんですよ。<今日気づいた>とか。音と言葉のハマりの重要性も意識しないといけないなと“今日気づき”ました(笑)。
──あと、歌詞はエモいものやおもしろいものといろいろありますけど、アルバムトータルして、気づきも多いなと思いました。
赤飯:やったああああああ!!!!
──特に「HELL“O”」の<地獄にひとつ エン結んで 君を呼んだ>とかいいなと思って。
赤飯:(服の袖をまくって)ほら! 褒められたの嬉しすぎて鳥肌立ってる!(一同笑)
ぽにきんぐだむ:そこは赤飯がずっと言ってたところなんですよ。そう思ってもらえるといいよねって。
赤飯:いつもね、324に“もっと気づきの部分があったらいいのに”って言われてたんですよ。
324:フックがあると印象が全然変わるよねって。でも確かに、今回の歌詞があがってきたときに、そういう気づきのコメントが多かったなと思う。
ぽにきんぐだむ:気づきの入れ方を学んだのかもね、このアルバムで。
──大充実の1枚になりましたけども、2月からは初の全国ワンマンツアー『オメでたい頭でなにより“1”マンツアー ~今 いくね くるね~』が決定しています。ツアーを踏まえつつ、2019年はどんな1年にしたいですか?
赤飯:2019年は、また改めてもう一度下地づくりというか、本当に飛ぶべき瞬間のためのジャンプ台を作ろうと思っていて。やっぱり我々がいきなり世間のすべてを代弁するような曲とか、時代を歌う曲を出したところで、意味がわかんないと思うんですよ。でも、最終的にはそういうことも歌っていきたい気持ちがものすごく強くて。そのためにも、今回のアルバムでいろんなチャレンジをしたことが将来に繋がっていくと思うし、今回のワンマンツアーも、今まで以上にもっと幅広いものが見せられるようにしようと思ってますね。頭からお尻まで全速力で走り抜けるライブはもちろん好きだけど、それ以上のものを我々は表現したいので。それをちゃんと形にしていく1年にします。

取材・文=山口哲生 撮影=菊池貴裕
オメでたい頭でなにより

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