生駒里奈、松田凌らが「演劇で世界を
変える」! 20周年を迎えた少年社中
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年
の夢〜』ゲネプロレポート

20周年を迎えた劇団「少年社中」の第36回公演『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』が2019年1月10日から池袋・サンシャイン劇場で開幕した。毛利亘宏の脚本・演出のもと、乃木坂46を卒業した生駒里奈、数々の舞台で活躍する松田凌、劇団を支えてきた井俣太良らが熱演している。初日を前に行われたゲネプロ(総通し舞台稽古)と、会見の様子を写真とともにお伝えしたい。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
1998年2月、毛利亘宏、井俣太良を中心に、早稲田大学演劇研究会(早大劇研)のアンサンブル劇団として旗揚げされた少年社中。2002年に早大劇研から独立し、年に2〜3本の作品を発表し続け、時代を駆け抜けてきた劇団だ。
   
今回の物語は、遠い未来のお話。世界を統治する「トゥーランドット姫」のもと、人々が感情すら失う厳格な管理社会になっていた。平和を脅かす危険な思考を持つ者は姫の命令のもと、その場で処刑される……。そんな世界に疑問を感じ始めていた姫は、「カラフ」という少年と出会う。カラフは管理社会を打ち壊そうと、はるか昔に禁じられた「演劇」を再び蘇らせ、世界を変えようとしていた。2人は世界を変えるために、「トゥーランドット姫」と「カラフ」という名前の主人公が出てくる物語『トゥーランドット』を、仲間とともに演劇として上演しようとして……というあらすじだ。
 
有名なオペラの『トゥーランドット』がベースにはあるが、SF的な設定と「演劇で世界を変える」という重要な要素を物語の中に組み込むことで、オリジナリティーが生まれている。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
「演劇で世界を変える」という挑戦的で、インパクトの強いメッセージ。演劇とは何なのか、演劇に何ができるのか、自分にとって演劇とはどんなものなのか。キャスト・スタッフが一丸となって考え抜いた結果が、この作品に込められていると感じた。言い換えれば、作品で貫かれているのは、演劇に対する溢れんばかりの愛とひたむきな情熱。劇団20周年という記念すべき年を締めくくるのにふさわしい作品だろう(少年社中のこれまでを振り返るようなシーンが印象的だ)。 
脚本・演出をする毛利亘宏も「私としてはこの作品を作るために20周年やってきたんだなと、そう強い手応えを感じております。質の高い作品に向けて、研鑽を積み重ねてこれました。あとは演劇にとって一番大切な、お客様という最後のパーツをお迎えした時、この作品が本当に爆発するのではないかと、すごい作品になるのではないかと。自信を今、確信に変えております」と述べている。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
生駒里奈は、トゥーランドット/ケツァールを演じる。会見では「『演劇で世界を変える』というスローガンのもと、稽古からたくさんのことを考えて、たくさんのことを作ってきた。見てくださった皆様に、それが伝わるといいなと思っています」と意気込んでいた。
 
セリフ量も運動量も多い役柄だが、堂々と舞台で演じてみせた生駒(ダンスもキレッキレでさすが!)。会見であなたにとって演劇とは? と問うたところ、「宇宙」というなかなか粋な言葉が返ってきた。「役のことを考えると、何故宇宙に来たんだろうというところに行き着く。演劇はそれぐらい、縦も横もないし、奥もないし、上も下もない。だけど見えるものだと思うので、宇宙かなと思います」。ひと回りもふた回りも成長した女優としての生駒を見てほしい。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
松田凌はカラフを演じる。最初から最後まで舞台を駆け回り、熱量のこもった芝居。そのまっすぐさと、ほとばしるストレートな感情表現が魅力的だった。生駒と松田を軸に、劇団員らのチームワークの良い芝居が光る。
  
プロジェクションマッピングを使ったり、中華風ながら個性的でカラフルな衣装とヘアメイクだったり、スタッフワークにも「愛」を感じる。見終えた後、観客の1人として「私も演劇が好きだ!!!!!」と、「!」が5つ付くぐらい、改めて気付かされたし、不思議と多幸感に包まれる舞台であった。
 
「これまで少年社中としてやってきて、演劇で世界をどれぐらい変えられたか?」と問われた毛利が、会見で「演劇で世界は変わらないと思うんです。変えられるのは、たった一人のお客さんの心。来ていただいたお客様の気持ちが少しでも動いてくれたら。すごく大きなことを言っていますが、たった一人のあなたに何か感動してほしくてやっているという感じです」と語っていたが、まさに狙い通りの舞台に仕上がっていたと思う。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
以下、記者会見の様子を一部お伝えする。
ーー初日を迎えるにあたり、意気込みをお願いします。
生駒:ついに初日を迎えるんだなというワクワクしています。「演劇で世界を変える」というスローガンのもと、稽古からたくさんのことを考えて、たくさんのことを作ってきて、そのことについてみんなで一生懸命にやってきた。それが、見てくださった皆様に、思いとして、形として伝わればいいなと思います。それがしっかりできたらいいなと思っています。
 
松田:生駒ちゃんも言ってくれたように、「演劇で世界を変える」という大きなものを掲げて、今回はサンシャイン劇場という板の上に立つわけなのですが、ご来場していただいたお客様に、少しでもいいので、何か変化を与えられる芝居になればいいいかなと思います。そして、新年一発目の芝居なので、世知辛い世の中ですけど、明るく、ドカンと、祭りのように、みんなに楽しんでもらって、みんなに涙してもらって、持ち帰ってもらえたらいいな。そのために自分たちは全てをかけてお芝居しますので、ぜひとも一度ならず二度ならず、劇場にまずは足を運んでいただけたらと思います。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
井俣:20周年記念のファイナルという形でやらせていただいて、ずっとみんなと稽古をしてきました。本当にすごいものが出来上がったんだなという強い手応えを感じています。「演劇で世界を変える」という、挑戦的かつでもシンプルなメッセージです。本当に(生駒と松田という)少年少女の彼ら2人が、感情をほとばしらせて、走り回る姿がすごく愛おしくて、僕も本当に感無量の気持ちでおります。
毛利:本作は少年社中20周年記念のファイナルとして行いますが、私としてはこの作品を作るために20周年やってきたんだなと。そう強い手応えを感じております。高いモチベーションで全員稽古に臨みまして、質の高い作品に向けて、研鑽を積み重ねてこれました。あとは演劇にとって一番大切な、お客様という最後のパーツをお迎えして、この作品が本当に爆発するのではないかと、すごい作品になるのではないかと。自信を今、確信に変えております。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
ーーご自身の役柄や稽古の日々を踏まえて注目のポイントを教えてください。
生駒:様々な見所があるんですけど、私自身が演じるトゥーランドットの気持ちの変化が見所かなと思います。私の気持ちが変わるということも「演劇が世界を変える」という部分につながるのではないかなと思うので、そういうところも楽しみに見ていただけたらと思います。
松田:僕、今、すごく幸せな気持ちになってきて。演劇に対してもお芝居に対しても、幸せな思いを持った人たちが作り上げた舞台はめちゃくちゃいいなと思っています。見所しかないですね。強いていうなら、ダンスがあります! 生駒大先輩を筆頭に、我々は鍛錬を重ねました。今回は3名の振り付け師の方に素晴らしい振りを付けていただいたので、そこもぜひ注目していただけたらと思います。
井俣:お芝居の根幹は2人のほとばしる芝居なんですけど……少年社中が積み重ねてきた物語の一つひとつであったり、美術、衣装、ヘアメイクなど、ずっと僕たちの世界観を支えてくださっているスタッフさんたちのスタッフワークにも注目いただきたいです。今回、最高峰を作ってくださったなと思うので、見ていただきたいなと思います。
ーー20周年を迎えられて、今の心境はいかがですか?
井俣:10年目の時は続いていくような雰囲気ではなくて、劇団ってただただ辛いんだなと。でも、自分たちのやってきていることをずっと信じ抜いた結果、今がある。今回の設定はSF感があって、複雑な設定だなと最初は思うんですけど、描いていることは実はシンプル。演劇というか、人間が生きていて、感情があって、それに気づいていく。少年社中が描きたかったことが迷いなく抽出されているのではないかなと思います。
『トゥーランドット〜廃墟に眠る少年の夢〜』のゲネプロの様子
ーー過去にも少年社中の作品に出られていますが、劇団の雰囲気はどういうものですか?
生駒:実家……そう言っていいですか?(笑)
毛利:言っていいですよ(笑)
生駒:ただいま~(笑)。いつも助けていただいている。前回出た時も今回も、まだまだ教えていただくことばかり。素敵な場所だなと思います。
松田:僕にとっては人生の節目ですね。少年社中はいつも節目を与えてくださっています。この劇団に出会って、この作品に出会って、僕は確実に進化していると思います。
ーーご自身にとって演劇とは一言で表すと、何ですか?
井俣:今の僕の中では、祭り。みんなが集まって、楽しくやって、集まってくる人も楽しんでもらえるから。
松田:命ですかね。軽々しいと思われてしまうかもしれないですけど、毎日いつどうなるかが分からない中で、唯一自分が本当に命を懸けられるものは何ですかと言われたら、ここしかない。
 
生駒:宇宙。役のことを考えると、なぜ宇宙に来たんだろうというところに行き着く。縦も横もないし、奥もないし、上も下もない。だけど見えるものだと思うので、宇宙かなと思います。
毛利:人間だと思います。作る側・見る側たくさんの人間が、人間を理解するために集まってくる。そういう場所なんだろうなと思います。
脚本・演出の毛利亘宏、生駒里奈、松田凌、井俣太良(左から)
ーー「演劇で世界を変える」という言葉が印象的ですが、少年社中を始められてから、今、何%ぐらい世界を変えられていると思いますか?
毛利:あぁ、それは言おうと思っていたことなんですけど、演劇で世界は変わらないと思うんです。それゆえにこのテーマを掲げたと言っても過言ではなく。変えられるのは、たった一人のお客さんの心。ここに来ていただいたお客様の気持ちが少しでも動いてくれたら、少しでも明日、その人が出会う人たちが幸せになってくれるかもしれない。そうしたらそれが広がっていくかもしれない。すごく大きなことを言っていますけれども、たった一人のあなたに何か感動してほしくてやっているという感じ。大言壮語を吐いてみましたが、やりたいことはものすごくミニマム。あなたの明日を世界を変える。それが世界を変えるということにつながったらいいなと思います。
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