東京スカパラダイスオーケストラ、大
阪城ホールのアリーナ中央に円形のス
テージを組んだ360度ライブ『スカフ
ェス in 城ホール』

東京スカパラダイスオーケストラ『スカフェス in 城ホール』2018.12.24 大阪城ホール
12月24日、大阪城ホールにて、東京スカパラダイスオーケストラの『2018 Tour “SKANKING JAPAN”ファイナル公演 “スカフェス in 城ホール”』が行われた。ライブ中の加藤隆志(ギター)のMCによると、同会場でスカパラがワンマンをやるのは2007年以来二度目で、約12,000人が集まり、チケットはソールドアウト。2017年2018年にスカパラとコラボしてきた4人のボーカリスト、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、TOSHI-LOW(BRAHMAN/OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)、峯田和伸(銀杏BOYZ)、宮本浩次エレファントカシマシ)がゲスト出演した。
この日のライブの模様は、WOWOWで生中継された。また、入場時に配られたステッカーの裏のQRコードを終演後に読み込むと、この日のセットリストが手に入る、各サブスクリプションサービスでそのプレイリストを聴くことができる、という特典もあり。アンコールの「メンバー全員順番にMCコーナー」で、そのことを説明した大森はじめ(パーカッション)によると、「来てくれたみんなへのプレゼントとして企画した」とのこと。
東京スカパラダイスオーケストラ
大阪城ホールのアリーナ中央に円形のステージを組んだ、いわゆる360度ライブ。中央にドラムの茂木欣一が陣取り、他の8人がぐるっと外を向いて立つという基本フォーメーション。ただし茂木&沖祐市(キーボード)がボーカルをとった22曲目の「メモリー・バンド」のみ、メンバー全員が内側を向いてプレイした。
なお、途中でステージが回転することで、「東」「西」「南」「北」をそれぞれ同じくらいの時間ずつ向いて、ライブが行われる。最初のMCで、谷中敦(バリトンサックス)、「今日はスカパラ360度、東西南北パラダイスの扉を開けっ放しにしにするんで、思いきりこっちになだれ込んで来てくれ!」とオーディエンスを煽り、「戦うように楽しんでくれ!」とおなじみのセリフを決める。
12曲目の前でMCを担当した茂木は、「歓声が前からも後ろからも横からもきこえる! 大好きな人の名前を叫んでくれ!」と求め、オーディエンスの「欣ちゃーん!」の声に「ものすごい人気者になった気分だ!」と喜んでみせた。
東京スカパラダイスオーケストラ
その円形ステージの下の台の部分はLED画面になっていて、オープニングの映像(ドラマの出演者みたいにメンバーひとりずつ紹介していく)、効果映像、歌詞などが、曲によって映し出されるほか、ゲスト・ボーカルの登場時にはステージの模様が大映しになる。
また、21曲目にあたる沖のピアノ独奏曲では、初期から現在までの、日本や世界各国でのスカパラのヒストリー写真を次々と映し出すことで、29年を振り返る、という演出も。当然、今は亡きクリーンヘッド・ギムラと青木達之の写真もあり、オーディエンスそれぞれ、スカパラの歴史に思いを馳せた。
ステージの東西の方向には、長く花道が伸びており、メンバーやゲストはそこを通ってステージに出て来るし、それぞれ見せ場になるとそこへ移動してパフォーマンスする。電飾が仕込まれた銀ラメコートを羽織ったNARGO(トランペット)のピアニカ・ソロで始まった13曲目「SKA ME CRAZY」では、中盤、NARGOと大森がステージを下りて客席を走り、オーディエンスを狂喜させた。
東京スカパラダイスオーケストラ
谷中→大森→茂木→加藤、とMCが変わっていったり、6曲目=メドレーの頭の「The Movin’ Dub」では川上つよし(ベース)がトースティングを入れたり、12曲目「銀河と迷路」では途中から茂木がドラムを打ち込みにまかせてハンドマイクで歌ったり、15曲目「星降る夜に」ではGAMO(テナーサックス)がボーカルの旋律を担当したり、というふうに、メンバー9人の見せ場が均等にある(言い換えれば自分がその場をひっぱらなければいけない瞬間が全員にある)構成。
沖がハンドマイクで踊りまくった5曲目「JON LOAD」では、谷中・NARGO・GAMOはステージからはける──というふうに、全員で演奏しない曲もある。その「JON LOAD」でスケボーに乗り、花道やステージで滑りまくった北原雅彦(トロンボーン)は、8曲目の「恋してCha Cha Cha」とアンコールの「全員順番MC」で「きたっちです!」と、なぞかけを披露した。二度とも思わず感心するほどハイレベルな出来栄えで、オーディエンス一同、笑うのも茶化すのも忘れて、思わず唸る。しかし北原、実はなぞかけのネタはねづっちに作ってもらったものであることを明かす。みんな納得。
前半の5曲目のあと、「ルパン三世’ 78」「Come On!」など7曲をまとめたメドレーで、ライブは最初のピークを迎える。続く7曲目で最初のゲスト、TOSHI-LOWが登場。スカパラの曲の中でもトップレベルにハイスパート、かつトップレベルに緩急の激しい「野望なき野郎ども」で自在なボーカルを聴かせて拍手喝采を浴びるも、歌い終わった瞬間、全力疾走で花道を駆け抜けてステージを去る。
次のゲストは11曲目で斎藤宏介、「白と黒のモントゥーノ」が始まるやリード・ギターをガンガン弾きながら花道を歩いて来る、という登場のしかた。ホーン隊を従え、ギターを弾き続けながら歌う姿がとても新鮮。
東京スカパラダイスオーケストラ
3人目は18曲目「ちえのわ」、峯田和伸。ペットボトルの水を坊主頭にぶっかけながら走り出て来て、花道の途中ですっ転ぶ、という、実に峯田らしい登場のしかた。スーツの下は裸、パンツはサスペンダーで止めているという出で立ちで歌いきり、帰りも花道を走って去ろうとするもまたすっ転んだ、と思ったらパッと土下座。そのアクションの見事さに360度から拍手が降り注ぐ。
そして4人目、20曲目「明日以外すべて燃やせ」、宮本浩次。テレビ出演はあったが、ライブでスカパラと共演するのはこの日が初めて。花道の端に立った宮本のどアップがパッとLEDに映る、という登場に、大阪城ホールが悲鳴のような歓声に包まれる。そして、歌いだした宮本のケタ外れな声のボリュームに「うわ、でかっ!」とみんな息を呑んだ。
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さらに、「クリスマスカ」で始まったアンコールでも、ゲスト4人が再登場。宮本浩次が歌ったのは「俺たちを結びつけるきっかけの曲」である「俺たちの明日」。エレファントカシマシのトリビュート・アルバムでスカパラ✕高橋一生でこの曲をカバー、それを聴いた宮本が「うらやましいです」と伝えたことで谷中が「これは一緒にやってくれるのでは?」と考え、コラボをオファーしたそうだ。
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次は斎藤宏介。花道で宮本からマイクを受け取り、そのままハグされる。宮本が去ったあと、ひとこと「やった! 宮本さんとハグした!」。「ご挨拶したのも今日が初めてなんです。前に、新幹線の後ろの席が宮本さんだったことがあって、東京まで背もたれを倒せなかったです」。客席に笑いが広がる。曲は「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」、間奏で加藤とふたりで東西南北のお立ち台に順番に上がり、ギター・ソロを弾きまくる。
次のTOSHI-LOWは、スキンヘッドのカツラとサングラスと羽のストールでクリーンヘッド・ギムラに扮している。加藤「僕はギムラさんとはステージに立ったことはないんですけど」TOSHI-LOW「うん、疑似体験してもらおうと思って」谷中「なんでTOSHI-LOWがこの格好なのか、曲を聴けばわかるから」というやりとりから披露されたのは、かつてギムラが歌った「ジャングルブギ」だった。
東京スカパラダイスオーケストラ
出て来るや否や、そのTOSHI-LOWにカツラとサングラスをつけさせられた峯田は、「すごい空間だと思います。俺ももうちょっとがんばって、こういうふうになりたいです」とスカパラを讃える。「スカパラは聴いてたけど、一緒にやるなんて当時は露ほども思ってなかった。俺、幸せ者なんですよ」。2日前にガンで闘病中の仲間のミュージシャンと一緒にイベントをやった、最後に1曲だけ歌おうということになった、彼はベースを持つのもつらそうだったのに、演奏を始めたらすんごい元気になった、音楽ってほんとすげえなと思った、みんなもスカパラを観てそうなってると思う──という話もする。「そういう話をスカパラのステージでしてくれるのは本当にうれしいです」と答える谷中の目が潤んでいる。そして「俺が初めて作詞した曲を、俺のコーラスで、峯田くんに歌ってもらおうかなと思います」。峯田が曲紹介し、「スカパラ✕ボーカリスト・コラボ」の最初の曲である「めくれたオレンジ」(2001年、ボーカル:田島貴男)をふたりで歌う。
ツアー・ファイナルであること。来年デビュー30周年、ここまでの歴史の総決算であり、30周年に向けてのキックオフでもあるイベントだということ。2017年から2018年にかけてコラボした4人を招いて、「ワンマンだけどフェス」として開催したこと。そして──最初のMCで谷中が言葉にしていたが──シンガポールやメキシコや南米に行きながら春夏と秋冬の二度の国内ツアーを行い、その合間に各コラボ曲を書いてレコーディングし、高橋一生と一緒にエレカシのトリビュートをやり、関ジャニ∞と一緒に「無責任ヒーロー」を演奏し、国内の夏フェスにも出てテレビにもいっぱい出て、日米野球のオープニング・セレモニーにも出て──と、ワールドワイドもドメスティックも含めて過去29年でもっともアクティヴでありハードだった2018年という年の締めくくりだったこと。つまり、この日を目指して2018年を駆け抜けて来た、ということ──。
と、あらゆる方面で本当に大きな意味を持っていたのが、この大阪城ホールだけあって、ライブが終わりに近づくにつれ、ステージの上にも下にも、何かもう「万感の思い」としか言いようのないものがどんどん広がっていった、そんな、本当に特別な時間だった。
峯田、「終わるのがさみしいですね。ライブ、やっちゃうとあっという間なんですよね」と漏らす。「これ、夢の中だもんね」と谷中。「終わりたくないね」と加藤。
自分が最初にスカパラのライブをやったのが1988年のクリスマスだった、そこから30年続けて来れたうれしさを噛み締めながら一音一音演奏した。何よりもうれしいのは一回も活動を停止しなかったこと──そんな話をしたNARGOは、2000本以上やってきた締めくくりにふさわしいライブだった、平成の間にやって来た中でこんなすばらしいステージに立てて、最高に幸せでした──と、支えて来てくれたスタッフと、応援して来てくれたファンに、改めて感謝の気持ちを伝えた。
東京スカパラダイスオーケストラ
「最後はスカパラだけでやります!」という谷中の言葉で始まった、アンコールのラストは「Are You Ready To Ska?」。LEDにステージの様子が映されるのは、ゲストの登場時だけだったが、この曲で初めてスカパラの9人だけの姿が映し出された。
バンドって不思議なものだ、家族でもないし、兄弟じゃないし、友達でもない、でもただの仕事仲間じゃない、脱退したわけじゃないのにいっちゃったメンバーもいる、でもこういう大きなステージには、彼らも一緒に立っている気がする──22曲目「メモリー・バンド」の前にそんなMCをし、オーディエンスに「おまえら全員メモリー・バンドのメンバーなんだよ!」と呼びかけた谷中は、終演直後に、メンバー&ゲスト13人の写真と共に、改めてその言葉をツイートした。
この日以降のスカパラのライブは、12月28日幕張メッセのフェス『COUNTDOWN JAPAN 18/19』、年が明けて3月22日にはメキシコのフェス『PA’ L NORTE 2019』、そして3月29日にはチリで行われる『LOLLAPALOOZA CHILE』に出演する。2011年から続くチリの『LOLLAPALOOZA』に日本人が出演するのは初めて。ケンドリック・ラマー、アークティック・モンキーズ、サム・スミス、レニー・クラビッツ等と共演する。
東京スカパラダイスオーケストラ
取材・文=兵庫慎司 撮影=青木カズロー、鈴木公平、Takimoto"JON..."Yukihide

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