『アニー』クリスマスコンサート201
8レポート、2017アニーズ卒業!~【
THE MUSICAL LOVERS】Season 2 ミュ
ージカル『アニー』【第29回】

【THE MUSICAL LOVERS】

Season 2ミュージカル『アニー』【第29回】
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「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2018」(通称:クリコン)が、2018年12月22日(土)・23日(日・祝)に行われた。上演された最新年(2018年)とその前年(2017年)のアニー&アニーズ(孤児たち、ダンスキッズ)がショーを担当、最後に翌年(2019年)のアニーズをお披露目するコンサートで、今回で20回目を迎える。筆者は22日(土)18時の回を鑑賞した。
今回は2017年・2018年・2019年のアニー&アニーズ、そして2017年・2018年・2019年ウォーバックス役の藤本隆宏、2010年ハニガン役の森口博子が出演し、華やかなショーを展開した。ミュージカル『アニー』の本編と同様に、佐橋俊彦が音楽監督を、福田光太郎が指揮をつとめた。構成・演出は小川美也子、振付は小山みゆき、タップ振付は藤井真梨子。前半はミュージカル『アニー』の曲を中心に、後半はクリスマスの曲を中心に華やかなショーが展開された。
【セットリスト】
1.「ダンサブル・トゥモロー(Tomorrow)」
2.「ハードノックライフ(It's The Hard-Knock Life)」
3.「メイビー(Maybe)」
4.「リトルガールズ(Little Girls)」
5.「N.Y.C.」
6.「フリードレス(Fully Dressed Without A Smile)」
7.「アニーアニー~2人でいればいい(I Don't Need Anything But You)」
8.「Funky Jingle Bells」
9.「恋人がサンタクロース」
10.「クリスマスメドレー(1) ポップス(「Santa Claus is Coming to Town」「ママがサンタにキッスした」「All I Want for Christmas Is You」「Winter Wonderland」)」
11.「ジャズ コーラススキャットメドレー」
12.「We Wish You A Merry Christmas」
13.「クリスマスメドレー(2) 讃美歌(「もろびとこぞりて」「あめには栄え」「もみの木」「ひいらぎかざろう」「荒れ野にみ使い」)」
14.「Verry Merry Xmas」
15.「トゥモロー・アニーver.(Tomorrow)」
16.「ニューディール・フォー・クリスマス(A New Deal For Christmas)」
17.「トゥモロー(Tomorrow)」

ヒップホップ調のリズムに乗せた「ダンサブル・トゥモロー(Tomorrow)」で開幕した2018年クリコン。2017年アニー&アニーズ、2018年アニー&アニーズが紹介され、カラフルな掃除道具での「ハードノックライフ(It's The Hard-Knock Life)」が展開される。
「メイビー(Maybe)」の前には、プレゼントよりも親のぬくもりを求める孤児たちそれぞれの気持ちが、モノローグで吐露され、それを受け止めるように4人のアニーたち(2017年アニー野村 里桜・会 百花、2018年アニー新井 夢乃・宮城 弥榮)が、「メイビー(Maybe)」をしっとりと歌い上げる。昨年のクリコンで披露され、好評につき2018年物販CDにも収録されたアレンジだ。アカペラのハーモニーから、それを支える最小限のベルや弦楽器の音が優しく響く。
続いてゲスト・森口博子の登場だ。森口は、アニー役が中原櫻乃(スマイル組)・澤田真里愛(トゥモロー組)だった2010年に孤児院長ハニガン役を演じた。当時のポスターを思わせる黒い衣裳で登場、久々の「リトルガールズ(Little Girls)」は大迫力! そして2010年のハニガンと、現在の孤児たちが出会うという感動! なんでも森口は、「今回オファーをいただく前から、未だお家で時々、ハニガンの歌を真剣に歌ったり、セリフを言ったり、踊ったりしてた」(森口博子オフィシャルブログより)とのことで、道理で世界観がブレていない。2017年・2018年・2019年ウォーバックス役の藤本とのトークでは、「役作りのために、ミス(独身)でいました!」「子どもたちの歌声で、やさぐれた心が綺麗になりました」と、会場を笑わせるサービス精神も旺盛だ。
藤本のリードボーカルでの「N.Y.C.」では、4人のアニーが順々に「未来のスター」のソロ部分を担当、四者四様の個性が楽しめる。
次いで「フリードレス(Fully Dressed Without A Smile)」で「キッズが贈る、笑顔のタップ!」と、出てきたキッズのセーラー衣裳は、2016年以前のジョエル・ビショッフ演出時代、つまりは森口がハニガンだった時代へのリスペクトだったのだろうか。
「アニーアニー~2人でいればいい(I Don't Need Anything But You)」の前には、アニーたちが、それぞれの明るい言葉で会場にとびっきりの笑顔を向ける。「(アニーは)お日様みたい」という歌詞にピッタリの演出だ。
続く「Funky Jingle Bells」では、ダンスキッズがそれぞれの得意技を見せ、会場をグルーヴ感で包みこんでゆく。観客も手拍子で応えるそのリズムは、2018年に大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』でおなじみQUEENの「WE WILL ROCK YOU」を彷彿させる。
「恋人がサンタクロース」では、センターで歌う森口(純白のウェディングドレス姿!)に、キャンディステッキでハートマークやクリスマスツリーを作って盛り上げるサンタ服のダンスキッズ。
「クリスマスメドレー(1) ポップス」は、どこのアイドルグループかと見まごう、はつらつとしたパフォーマンスを披露。緑の揃いの衣裳に身を包むアニーズの圧倒的なカリスマ性。
新井夢乃を囲むように出てくるモリーサンタたちの図も、これまたとってもキュート! 指揮の福田をはじめ、楽団メンバーたちもサンタ帽子をかぶって、可愛らしさをアピール。
「お楽しみいただいていますか?」と出てきたのは2018年アニーの新井・宮城。新井が「大きなキャンディステッキが、ステッキでしたね!」とダジャレで会場を和ませる。2人はMCとして、このコンサートで使われている楽器について解説を聞くべく、楽団の奏者にインタビュー。その技術を間近で目の当たりにさせられた2人の驚きが、そのまま客席にも伝わって来るようだった。
「新しいことに挑戦するのがこのクリコン」ということで今回披露されたのが、2017年アニーズによる「ジャズ コーラス スキャット メドレー」だ。ビング・クロスビーの「WHITE CHRISTMAS」や、おなじみの「ジングルベル」を、ジャズのスキャット(歌詞ではなく「ラララ」「ルールー」「ドゥワー」」など意味を伴わない音で歌う手法)で聴かせる。曲の終盤にはスウィング感あふれる「ダバダバ」コーラスの中から、旧世代の人間には懐かしい日テレ深夜番組「11PM」のテーマの一節が飛び出してくるのも御愛嬌だ(もちろん歌っている少女たちはそんなこと知る由もない)。
続く「We Wish You A Merry Christmas」はケルト音楽風のアレンジだ。随所に、アイリッシュ・ダンスを下半身だけで踊るダンスキッズがステージをよぎっていくのが楽しい。「クリスマスメドレー(2) 讃美歌」は教会風の鐘を鳴らしての厳かなスタートで、音楽監督・佐橋俊彦の技が光る。『アニー』本編で洗濯屋のバンドルズが「あめには栄え」を歌いながら去ってゆくことでもわかるように、アニーはクリスマスまでの2週間を描いた物語だ(第一幕:1933年12月11日~19日、第二幕:1933年12月21日~25日)。だから本編終盤でも「ひいらぎかざろう」が歌われるわけだが、これをクリコンで聴くと、どうしても筆者は「こいつも共犯、ラララ♪ラララ♪ラララ♪」と、『アニー』本編でウォーバックスの歌うパートを続けたくなってしまう。『アニー』ファンの性(さが)というべきか……。
そのウォーバックスを演じた藤本がせつない美声で東方神起の「Verry Merry Xmas」を歌い始める。共に歌うアニーズがやがて客席に降りてきて、運のいい観客にはクリスマス・プレゼントが手渡たされた。プレゼントの中身はもちろん、協賛企業である丸美屋食品からの「ふりかけ」だった。
2017年アニーの会(百花)がひとりアコースティック・ギターを手に登場し、弾き語りで「トゥモロー・アニーver.(Tomorrow)」をソロで歌い始める。静寂の中に染み入ってくる、こんな「トゥモロー」も実に素敵じゃないか。そこへ、会と同じく2017年アニーだった野村が登場、さらに2018年アニーの新井・宮城も加わり、爽やかで美しいハーモニーを響かせる。2017年アニー&アニーズが、このコンサートで卒業となることがふと思い返されて、感傷がこみあげてきた。
藤本と森口が会のギター演奏と、アニーたちの歌声を拍手で迎える。新しいチャレンジとしてギターを毎日練習したという会に、「手にマメができたんじゃない?」などと気持ちに寄り添ってくれる森口ハニガン。優しいじゃないか……。
昨年のクリコンではモリーたちの中心に立っていた野村だったが、今年は「背が伸びてお姉さんたちの歌に入れてうれしかった」とのこと。「里桜ちゃんは英語ができるんだよね? Do you love Annie?」と森口に振られた野村は即「Yes!」と元気よく英語で答えていた。
演技や歌の経験はあったが、「MCは初めてなのでドキドキした」と語る新井。「ステッキのギャグ、良かったよ」「笑顔で堂々としていたよ」と、バラドルとしても歌手としても活躍する森口に褒められ、とっても嬉しそう。
「タップキッズに憧れていたので、座内オーディションで頑張ってタップのメンバーになった」という宮城には、「ここまで来るのにオーディションがあって、また受かってからもオーディションがあるの?!」と、森口が観客の気持ちを代弁。それぞれのアニーたちの新しい挑戦を、藤本と森口、そして観客が拍手でたたえた。
コンサートの大詰めは、「ニューディール・フォー・クリスマス(A New Deal For Christmas)」。森口がウォーバックスの秘書グレースのパートを担当。ハニガンと正反対のキャラクターだが、「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」や数々のヒット曲を持つ森口の澄んだ歌声が、このナンバーに実にピッタリだった。
2019年のアニーズも紹介され、「また、アニーに会いに来てくださいね!」というアニーたちの声に、心の中で「はーい!」と元気よく返事する筆者(44歳)。最後はやっぱり「トゥモロー(Tomorrow)」が会場全体で歌われて、2018年クリコンが終演。出口にて丸美屋食品お土産セットをもらい、さっそく来年のカレンダーに「『アニー』観劇」の予定を書き込む筆者だった。
『アニー』は春・夏の本公演だけではなく、年末にも『アニー』の世界を再体験できるのが嬉しい。アニー&アニーズのより一層の成長に、アニーになりたい歴31年の筆者でさえも、「みんな大きくなったなぁ……」と、すっかり親戚気分だ。お土産の「丸美屋食品セット」を手に、寒さも忘れてホクホクと家路についた。
文:ヨコウチ会長  写真:©NTV

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