Best Tracks Of 2018 / Yuya Tamura
キュレーター、Yuya Tamuraの2018年
ベスト・トラック!
5. nothing,nowhere. / ruiner
4. Snail Mail / Heat Wave
「今年は彼女の年だった」と言っても過言ではないかと思いますが、このローファイなギター・フレーズに乗せた若さゆえの等身大なリリックからは、Lindseyの急激な環境の変化に対する不安や葛藤だけでなく、その中にある前向きな心情も強く伝わってきます。ひとりのエモ・フリークからしますと、彼女の活躍は90’s以降の新しいエモの形をメインストリームに提示したなと感じましたし、そんな等身大なリリックをいい意味でぶっきらぼうに歌い上げるギャップもまた、本楽曲の中毒性の高さを際立たせていますね。昨年のJulien Bakerに続いて〈Matador Records〉とサインを果たし、今年の女性SSWの存在感をより強める存在となりました。見事ソールドアウトした今年の来日公演も素晴らしかったですし、今後も数多くのライブをこなしてより成熟したローファイ・エモを聴かせてほしいところ。
3. Turnstile / Generator
Rage Against The MachineやBeastie Boysを彷彿とさせるヒップホップのエッセンスを取り入れたサウンドで、一気にハードコア・シーンのトップに躍り出た彼らですが、今年の彼らはそんなアンダーグラウンドなシーンを飛び越えてメインストリームにまでリーチを果たしました。この「Generator」はこれぞハードコアとも言わんばかりの重たいギター・リフで始まったかと思いきや、ハンド・クラップが入ったりとポップな一面も垣間見せる振り幅の大きい楽曲。なおかつ、なぜか違和感なく一曲のハードコア・トラックとしてまとまっていて、僕はこの楽曲によって彼らがハードコアとポップの架け橋となる唯一の存在になったと言っても過言ではないなと思っています。現に11月に行なわれたTyler, The Creator主催のフェス“Camp Flog Gnaw 2018”への出演も果たしましたし、シーンを飛び越えた今後の活躍も非常に楽しみな存在です。僕自身も足を運んだ9月の来日公演の熱量120%な ライブ・ビデオ(https://youtu.be/2Zmx5EpchC4) もぜひチェックを。(もうこのキャパで観れることはないでしょうね……)
2. Courtney Barnett / Charity
1. Basement / Be Here Now
Comment
今年は昨年に引き続き、女性SSWの動きが活発で一年を通してコンスタントに良盤が生まれていた気がします。特にエモ/インディ・ロックを鳴らすSnail Mailはシーンに新しい風を吹かせてくれましたし、徐々に頭打ちになっていて、いい意味でも悪い意味でも再結成ばかりが話題になってしまうUSインディ/エモ界隈を変えてくれるキッカケになるのではないかと思っています。聴く音楽の幅が広がってもやはり自分にとってはこの辺りのシーンから生まれるロック・サウンドが核となっていて、今作も文句なしの傑作を生み出して活躍の幅を広げたBasementや、リリースを重ねるごとに進化し続けるDeath Cab For Cutie、そしてTitle Fightフォロワーとも言えるパンク/ハードコア要素をたっぷり詰め込んだオルタナ・ロックを鳴らすTeenage Wristのデビュー・アルバムなど、今年も良い作品との出合いが沢山ありました。
番外編マイ・ベスト
「ベスト・ライブ」
ライブ自体はパンク・バンドらしく熱量に溢れているのですが、彼らが鳴らす深いリバーブを効かせた切ないギター・フレーズが心を浄化してくれるというか、そんな特別な空間でしたね。大手プロモーターの公演はもちろんですが、やはり個人招聘を続けている人たちがあってこそだなと思いますので、皆さんもぜひ多くのライブやクラブ・イベントに足を運んで、自分が愛するシーンを盛り上げていきましょう。
Spincoaster
『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。