L→R HIDE-ZOU(Gu)、Tsunehito(Ba)、ASAGI(Vo)、Ruiza(Gu)、HIROKI(Dr)

L→R HIDE-ZOU(Gu)、Tsunehito(Ba)、ASAGI(Vo)、Ruiza(Gu)、HIROKI(Dr)

【D インタビュー】
如何に自分の欲望に抗いながら
精神を保てるかという部分を
描いてみたかった

想像のキャラクターだったのに
みんな実在しているかのよう

どうして“ヴァンパイア”をモチーフとしたのかを改めておうかがいしたいと思います。ASAGIさんにとって“ヴァンパイア”とはどういうもので、そのどんなところに惹かれるんでしょうか?

ASAGI
ヴァンパイアって人の血を吸って生きているので、悪の象徴とも言えますよね。僕は“ビジュアル系だから何となくヴァンパイア”とかそういう単純な考えはしたくなくて。人はどんな偉大な人でさえ不完全な存在なんですよ。その中でさまざまな経験を積むことで、理性と本能のバランスがとれていると思いますし。ただ、ヴァンパイアは生まれながらに悪の因子が強く引き継がれています。その中で如何に自分の欲望に抗いながら精神を保てるかという部分を描いてみたくなったんです。僕自身、自分の中にある嫌な部分と抗って生きてますしね。人が判断する善悪と、神の目から見た善悪は異なるので。例え呪われた体であっても全てを投げ出し、諦めて絶望の中を生きるのか、例え僅かな可能性であろうとも全力を尽くすのか。その差を僕は描きたい。生まれや環境は大事だけれど、本当に大事なのは自分の心構えなんだと。ヴァンパイアは神に愛される存在ではありませんが、どのような過去があってヴァンアパイアと成り果てたのか、そこをきちんと書きたかったという部分もあります。出てくる人物それぞれに生き様があって、同じ生き方はひとつもないんです。もちろん物語ですけど、実際の世界でも人を“見る”には今だけを見るのではなく、過去をも見る必要があると思うんです。ヴァンパイアの王であるドライツェンがヴァンパイアになった元である不死の秘薬、これには13代遡った過去…ヌルとアインスが関わっています。本来であれば見ることのできない過去も描けるのが物語の良いところだと思いません? これらは長くなりそうなので、また別の機会に…(笑)。

ASAGIさん以外のメンバーには“ヴァンパイアストーリー”、あるいは“ヴァンパイア”のどんなところにシンパシーを感じながら楽曲制作に取り込んでいらっしゃるのかも、この機会にぜひおうかがいしたいところです。

Ruiza
最初は1stアルバム『NEW BLOOD』に収録されている「Vampire Missa」からスタートしたんですね。それはヴァンパイアの王の最期の場面を描いてるんですけど、それと同じ時期にASAGIくんは「弾丸」という曲も持って来たんです。それはヴァンパイアの王の息子がアンデッドだったりを狩っている曲で、そのふたつが結成当初からありまして。

つまり、“ヴァンパイアストーリー”の王の最後と、そこからつながるその息子の物語ですね。

Ruiza
それが最初の時点からあったんです。Dを結成する時から。それがめちゃくちゃ面白いと思って。“何だ、このストーリーは!?”と(笑)。終わりから描くのもすごいと思ったし。ASAGIくんの中に最初からあってそれが出てきたと思うんですけど、それが今でも印象に残ってて。共感というよりも、最初から引き込まれてファンになったという感覚ですね。なので、ASAGIくんから出て来る曲は全部に“すごいなぁ”って思ってたし、最初からしっかりとイメージもできましたし。例えば、「弾丸」なら“きっとジャスティスはこんなふうに動いてるんだろうな”みたいな。

「Vampire Missa」には《ここで太陽に焼かれよう》《灰になろう 思い出に包まれたまま》という歌詞がありますが、確かにバンドの立ち上がりとしては異例な感じではありますよね(笑)。

Ruiza
ははは。あと、どのキャラクターが出て来てもしっくりしますし、早く先を読みたくて仕方がない感じでした(笑)。
ASAGI
確かに一番最初なのに、太陽に焼かれて終わるの!?って感じですよね(笑)。イメージとしては、映画のようなニュアンスで物語を進めていきたくって。映画って最初に衝撃的な映像が来て、その後、過去に遡って真実が明かされたりするじゃないですか。正直言って15年前はここまで壮大な物語になるとは思っていなかったんですけど、今は登場人物も増えましたし、各々にまつわるエピソードも増えてきましたので、無限大に描ける気がします(笑)。実際、パッと聴いた感じでは“ヴァンパイアストーリー”だって分からない曲もいっぱいありますしね。想像のキャラクターだったのに、最近は日に日に生気が感じられて、みんな実在しているかのように感じられます。

他のみなさんはどうでしょうか?

HIDE-ZOU
そもそもヴァンパイアは世界各地で表現されていて、良くも悪くもいろいろだと思うんですけど、ASAGIさんが描くヴァンパイアは人を襲わないし、そこに美学があって。あと、葛藤というか、ヴァンパイアならではの辛さや苦しみも表現されているし、完全なオリジナルストーリーですね。各キャラクターの設定も曲が生まれるごとにできてきて、それがまたつながって絡んで…というストーリーの広がりが、まるでパズルのピースをはめ込むような感覚だったりするし。自分が“ヴァンパイアストーリー”の曲を意識して作る時もそのキャラクターを意識してそこに入り込んで、それこそキャラクターに成り切って作って…歌詞の世界を作るわけじゃないですけど、自分がイメージするものを表現して、そういうエッセンスを入れようとはしていますね。時間的にも何百年間というストーリーだし、第二章では近未来になっているからサウンドも変わってきてますし。
Tsunehito
“ヴァンパイアストーリー”の歌詞やストーリー、ASAGIさんが描くものを見ていて、自分でも考えさせられることはたくさんありますね。例えば、復活してからの1作目である「Revive ~荒廃都市~」であれば、主人公がヴァンパイアから人間になっていて、再び人間からヴァンパイアに覚醒するところが描かれていたりするし。ラファーガであれば、もともと人間だったのが、理由があってヴァンパイアになりたいと願ってヴァンパイアになっていたり、自分のカーバンクルというヴァンパイアであれば、生まれながらにしてヴァンパイアだったりするんですけど、それぞれのキャラクターの背景や生立ち、そういうところからも“人とは?”や“愛とは?”と考えさせられる事もあって。それぞれが悩み苦しむ人生を進んでいっているというのが、共感もあり感慨深いです。シングル「Deadly sin」(2018年11月発表)に収録曲の「The Secret Rose Garden」ではカーバンクルがお腹に子を宿しているストーリーだったりして、キャラクターもそうですし、“ヴァンパイアストーリー”そのものもそうですし、バンドの進んでいる年月もそうですけど、全部がリンクして物語が進み、それぞれのキャラクターが人生を歩んでいっているというところがあるので…それはDならではのこと、Dだけが描いているものなんだということはすごく感じています。

確かに、その活動を通じてこうした世界観を紡いでいるバンドってDの他には思い浮かばないですよ。

Tsunehito
ASAGIさんが描いている壮大な部分ですよね。
Ruiza
コンセプトアルバムとかはあったりしますけど、Dのような作り方をしているバンドは思い浮かばないですね。
ASAGI
他のアーティストさんがどのような意図で描いているかは分からないんですが、僕は少なからず、こういうコンセプトをすれば評判がいいだろうとかは一切考えてなくて。表現したくもない世界観を狙って作ることが好きではないんですよ。だから、自分が経験してきた環境や得た感情が自然と世界観としてつながったのだと思います。

アルバム1作品で終わりではない部分。そういう意味ではDは世界に類を見ないバンドだと思います。HIROKIさんは“ヴァンパイア”に対するシンパシーはいかがですか?

HIROKI
漠然と“ヴァンパイア”と言ってもいろんなヴァンパイアがあると思うんですけど、ASAGIくんの思い描くストーリーの中では“義なるヴァンパイア”…人を愛したことによって人を殺めないと誓ったヴァンパイアで、それに賛同した自分たち四騎士がいるので、そういった心に決めた意志の強さというものにすごく共感するところがあります。Dというバンドも自分たちにしかできないものであって相通じるところでもあり、ストーリーに関しても各々のキャラクターの意思や想いも踏襲されているので、そういったところは曲ができるたびにわくわくしますね。あと、本当に小説のような感じですし、ストーリー展開が気になる楽曲もたくさんあるので、その先の広がりを自分自身も楽しみにしていますね。

ASAGIさんが作ってきた各メンバーが担当するキャラクターがありますが、歌詞の内容からご自身が影響を受けることもあるんですか?

HIROKI
ASAGIくんがDのHIROKIというイメージを踏襲してキャラクターに変換してくれているので、自分のウィルダネスというキャラクターは男らしい感じだし、それが楽曲にも強く出ているのですんなり入っていける感じですし、自分自身もウィルダネスのようにありたいと思っています。

その辺は他のみなさんも同じですか?

HIDE-ZOU
そうですね。近いものがあるというか、ASAGIさんが描く理想のキャラクター像とそれぞれの個性も加わって…という感覚ですね。個人的にもラファーガというキャラクターもすごく大好きですし、理想的な自分の姿でもあります。
Ruiza
まんまではないと思うんですけど、僕たちのことを見て、それをアイディアとしてキャラクターの設定に入れてもらっているところもあるので、すごく共感できる部分もたくさんありますし、“そう! こういうふうなのが理想です”と感じてすごくしっくりくるところもありますね。

Dの各メンバーに“ヴァンパイアストーリー”に登場するキャラクターが設定されているのは、そうすることでバンドに何らかの効果を与えたいというASAGIさんの意図があったのでしょうか?

ASAGI
メンバーが扮するキャラクターはまったくそのままの性格ではないですけど、メンバーそれぞれの良い部分だったり、僕が好きな部分を用いている部分はありますね。実際の世界で存在するメンバーがファンタジーという異次元に存在していたとしたら、今のみんなとはちょっと違うけどこんな感じかなって。Dのメンバーって素直なんですよ。でも、そういう部分ってなかなかライヴとイベントだけでは伝わりにくいじゃないですか。だから、“ヴァンパイアストーリー”を通してファンの方にももっと魅力を知ってもらえるといいなぁって思います。僕の役柄としては普段の性格的にはもしかしたらジャスティスが一番近いかもしれませんが、ひとたびアーティストモードに入ると途端にドライツェンに近づくし、オフの時は吟遊詩人のゼファーのような感じです(笑)。

取材:帆苅智之

アルバム『Vampire Chronicle~V-Best Selection Vol.2~』2018年12月19日発売 HPQ
    • 【初回生産限定盤(2DVD付)】
    • YICQ-10408~9/B~C ¥10,000(税抜)
    • ※豪華写真集28P付
    • ※12inch LPサイズ特殊仕様BOXパッケージ
    • 【通常盤(2CD)】
    • YICQ-10414~5 ¥3,000(税抜)

『D結成15周年 メジャー10周年Year Grand Final』

12/21(金) 東京・豊洲 PIT 

D プロフィール

ディー:2003年4月、ASAGIとRuizaを中心にバンドを結成。2005年に現メンバーとなる。世界観を重視した、ドラマ性を持った作品を次々に発表し、08年にメジャーデビュー。ASAGIの独特の世界観を重視した、ドラマ性を持った作品が特徴。そんなDの作り出す唯一無二の独特の世界観は、ティム・バートン監督にも愛されている。D オフィシャルHP

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