ボン・ジョヴィ 5万人を熱狂の渦に
巻き込んだ一夜 ーー11度目の東京ド
ーム公演をレポ―ト

『BON JOVI THIS HOUSE IS NOT FOR SALE 2018 TOUR』2018.11.26(MON)東京ドーム
東京ドームが揺れた……、大げさでもなんでもなく、本当にあの巨大な東京ドームが揺れた。2018年11月26日、開業の1988年以来コンスタントに東京ドーム公演を行ってきたボン・ジョヴィにとって、このステージに立つのはなんと11度目のこと。もちろん海外アーティストでは最多出演となる。全米アルバム・チャート初登場1位を記録した最新アルバム『ディス・ハウス・イズ・ナット・フォー・セール』のタイトルを冠にしたワールド・ツアーでの来日、東京公演は5年ぶりの東京ドームだ。
開演定刻直前、およそ5万人に埋め尽くされた会場は、いつにも増して異様な熱気に包まれていた。ジョン・ボン・ジョヴィと長年連れ添ったギタリスト、リッチー・サンボラが不在の中でのツアーだからなのか、5年というインターバルが生んだ渇望からなのか……、しかしその異様な熱気は、ジョンとバンド・メンバーたちが定刻通りにステージに登場したと同時に、ドームの屋根を突き抜けて天空まで届くかのような歓声に変わった。
撮影=土居政則
オープニングを飾ったアルバムのタイトル・トラック「ディス・ハウス・イズ・ナット・フォー・セール」から、ステージ上のバンド・メンバーはもちろんのこと、アリーナから2階席の一番後ろまでの観客が一丸となってフル・スロットル・モードに突入。大会場特有の、大きな波に飲み込まれるような独特な雰囲気も相まって、ただただ圧巻されっぱなし状態に。バンドにとって初の全米ナンバーワンとなった「禁じられた愛(You Give Love A Bad Name)」(86年)が始まると、早くも3曲目にして会場のテンションはマックスとなった。
大陸的でアーシーなアメリカン・ロックの傑作「ロスト・ハイウェイ」を挟んで、「バック・トゥ1983!!」の掛け声とともに「夜明けのランナウェイ(Runaway)」のイントロが! このボン・ジョヴィのデビュー曲は、本国アメリカ以上に(当時のビルボードのシングル・チャート最高位39位)ここ日本において大きなヒットになった作品だっただけに、80年代からのファンにとっては特別な思い入れが込められている。どことなくこの曲の演奏中は、ドーム全体の雰囲気がより温かくなったように感じたのは気のせいだろうか。
撮影=土居政則
本編では「ボーン・トゥ・ビー・マイ・ベイビー」、「レイ・ユア・ハンズ・オン・ミー」、「バッド・メディシン」といった全米ナンバーワン含むトップ10クラスの80年代ヒット、「キープ・ザ・フェイス」、「ベッド・オブ・ローゼズ」、「アイル・スリープ・ホエン・アイム・デッド」といった90年代ヒット、「イッツ・マイ・ライフ」、「フー・セズ・ユー・キャント・ゴー・ホーム?」、そして最新アルバムから「ホエン・ウィ・ワー・アス」といった2000年代以降のヒット・ソングを披露。大ヒット・ソングだけに偏らず、特定の時代にも偏らず、絶妙なサジ加減で各時代の代表的なヒット・ナンバーを配したセット・リストも、35年にわたってショウビズ界の第一線で活動してきたベテラン・バンドならではの妙味であろう。
撮影=土居政則
特にベテランの域に達してきた00年代以降も、本国アメリカで全米ナンバーワンをキープしてきた要因のひとつに、カントリー・チャートを席巻した「フー・セズ・ユー・キャント・ゴー・ホーム?」(05年)や「ロスト・ハイウェイ」(07年)といった作品の存在があったからこそ。アメリカン・ロックのルーツに敬意を表したこの手の楽曲を、(懐メロ・バンドに陥りがちなベテラン・アーティストになることなく)オン・ゴーイングなロック・バンドというプライドを垣間見せながら披露する姿に、90年代までには受けることのなかった感動を覚える。誤解を恐れず言うならば、こと2010年代以降のボン・ジョヴィは、ひと回りもふた回りも懐が大きくなり、良い意味での円熟味を増したロック・バンドになったことをあらためて認識できた。そんな彼らを、東京ドーム全体が暖かな目で包み込む……。

撮影=土居政則

ボン・ジョヴィにとって東京ドームはまさしくホームグラウンドであると、確信した瞬間だった。
それにしても本編およそ2時間、長いMCもなく立て続けに歌い続けたバンド・フロント・マン、ジョン・ボン・ジョヴィ56歳。大きなスタジアム・クラスでそれをやり続けるには、並大抵ではない努力と切磋琢磨が必要なのは言うまでもない。もちろん確たる実力を備えたバンドであることは間違いないし、それは80年代から証明され続けている。そして30年にわたって東京ドームに出演してきたという事実に感服すると同時に、大いなる敬意を表したくなったのは筆者だけではないだろう。
撮影=土居政則
アンコールは「ウィ・ワーント・ボーン・トゥ・フォロー」、「ブラッド・オン・ブラッド」を経て、80年代の大ヒット「アイル・ビー・ゼア・フォー・ユー」、「ウォンテッド・デッド・オア・アライヴ」の連発! 会場が再び熱気に包まれる中、ラストはもちろんバンドにとって2曲目の全米ナンバーワンとなった「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」。この日いちばんの大歓声と最高潮がおとずれ、東京ドームは大団円を迎えた。
取材・文=KARL南澤 撮影=土居政則

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