BRADIOの音楽的・人間的成長を見せつ
けた新作『YES』ツアー・ファイナル
を目撃

BRADIO「YES Release tour 2018〜ORE to OMAE de BOOM BOOM BOOM〜」2018.11.22 at NHKホール
メジャー1stアルバムにして通算3枚目のアルバム『YES』を携えた「YES Release tour 2018〜ORE to OMAE de BOOM BOOM BOOM〜」。前半はOKAMOTO’ SやBLUE ENCOUNTらとの2マン・ツアー、そして後半はワンマンで巡ってきたトータル21本のファイナル公演が自己最高キャパのNHKホールで開催された。
いい意味でロックシーンとの接地点の上で表現していたファンクネスから、より太いグルーヴ、いわばBRADIOのルーツに立ち返った上で新しい楽曲に挑んだ『YES』が「育ってきた」成果を見せるファイナルでもある。セットリストもアレンジもどう出るか?期待値も緊張感も高い。
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高低差のあるステージ上は、段上がドラム、キーボード、ホーン隊、コーラス隊のセッティング。客電が落ちる前に段上のメンバーが現れ、グッと重心を落としたビートが鳴らされ、巨大なベンドロゴの電飾がスルスル降りてくると自ずとテンションも上がる。三方から真行寺貴秋(Vo)、大山総一(Gt)、酒井亮輔(Ba)が登場すると、新作を象徴する図太いミディアムチューン「Funky Kitchen」でショーの幕開けだ。
BRADIO / 真行寺貴秋(Vo)
真行寺のハイトーンのシャウトもラップもいきなり全力。さらにアカペラの歌始まりにライブアレンジした「スキャット・ビート」。ロカビリー調という近年のBRADIOにはなかったロッキンなナンバーだが、満場のファンは本当にアルバムを聴きこんでいるのだろう。演奏しながら軽快なステップを踏む大山、酒井に負けず劣らずのダンスとハンドクラップで思い思いに踊る。さらに横ノリを増幅するようにライブの鉄板曲「スパイシーマドンナ」では伸びやかなサビでの真行寺のボーカルがNHKホールの3階の奥の奥まで踊らせる。
BRADIO / 酒井亮輔(Ba)
思わず胸が熱くなる光景で、メンバーの思いはいかほどのものか?とライブ冒頭から、ちょっと心配になるほど。一つのブロックが終わるたびに最敬礼する真行寺。その長さに彼の感極まった心情を察する。それぐらい爆発的なオープニングだったのだ。
BRADIO / 大山総一(Gt)
さらに大山のフュージョン/AOR志向が洗練されたギターの音色、削ぎ落とされたアンサンブルで表現された「Feel All Right」で明確に伝えられ、真行寺がこだわったコーラスワークをライブでも見事に実現した「きっと遠く キミともっと遠く」も、今回のツアーならではの新たな体感だった。ホーン・アレンジもより自然。ホールのキャパシティに見合った11人編成ではあるけれど、同時に『YES』というアルバム・リリース後の彼らには必然的なメンバー構成にも思えた。セクシーな大人のラブソングがアップデートされて再び登場した新作とシンクロするように、少し前のナンバー、「Step In Time」「Sexy Lover」の2曲をセットしたのもうなづける。
BRADIO
「気持ちいい〜っ!」と本音を大声で放った真行寺。ステージから言える光景はもちろん、今のバンドアンサンブルで表現するセクシーなグルーヴに相当、手応えを感じている様子だ。そこからガラッとムードを変えて、「作った時は出してどうなるんだろう?っていう気持ちだった」という、掛け値無しに親への感謝を素直な言葉で綴った「ギフト」をじっくりと聴かせてくれた。ステージ上のライトは最小限に、この場にいる人の心の中で想像を巡らせながら、各々の心の中にあかりが灯るような静謐な演出も素晴らしかった。さらにウォームで何気ないミディアムチューン「Sparkling Night」。大山も酒井もシンプルで豊潤なフレーズで、難しいアンサンブルを滑らかに心地よく聴かせていた。
BRADIO / 真行寺貴秋(Vo)
テンションを上げるだけじゃない、じっくり聴かせるブロックも果敢に取り込み、さらにハードボイルドな認識とサウンドを持つ「Shout To The Top」へ。大山のアコギのスパニッシュなニュアンスのカッティング、乾いたスネアなど生音でのヒップホップ的なアプローチ。ほぼ唯一と言っていいほどコードストロークで引っ張るギターロック的な側面を持つ「INAZUMAジャケット」と、新作の中でもBRADIOの音楽的レンジを知らしめる2曲は、同時に今を生きる人としての強い意志も漲り、さらに強い存在に育つ伸び代を感じた。さらにそこにおなじみの「感情リテラシー」につなぎ、ソリッドでエッジの立ったバンドとしてのBRADIOを印象付けた。
BRADIO / 真行寺貴秋(Vo)
BRADIO
高いテンションを保ちつつ様々な音楽性を繰り出してきたメンバーの表情は満足感に溢れて見える。そこで真行寺が長めのMCの中で「2マンに出てくれたバンドも、そのスタッフもみんな『BRADIOのお客さん最高だよな。ライブやりやすいよ』と言ってくれた」と、今目の前にいる“FPP(Funky Party People)”を自慢げに讃える。確かにこんなにNHKホールの客席がみっちり埋まって見える感覚はなかなかない。椅子席であることがわからないほど皆、踊ったり自由に動いているせいだからだろうか。いい意味で実際のキャパシティより狭く感じられたのだ。そこにFPPを讃える一言がさらに起爆剤になって、ステージ上と客席のエネルギー交換が増して行く。

BRADIO / 大山総一(Gt)、酒井亮輔(Ba)

BRADIO
最新のディスコナンバー「きらめきDancin’ 」では大山と酒井のバトルも火花を散らし、ライブの超鉄板曲「Flyers」では、大山のギターソロはかっこいいを超えて、限界を突破するがごとく動き、弾きまくる。さらに新たなコール&レスポンスのスタイルが確立した「Boom!Boom!ヘブン」では、ラテンテイストに火を注ぐ(?)かのようにステージ上で火柱が上がる演出も相まって、タオル回しやクラップなど、会場中で曲をさらい立体的に盛り上げる。山あり谷ありな選曲のバリエーションを堪能させてくれるバンドもすごいが、どんなニュータイプにも振り落とされないどころか余裕で乗ってくるオーディエンス。さすがFPPである。
BRADIO / 大山総一(Gt)
ホーリーナオルガンの音色に乗せて、真行寺が改めて感謝を述べ、このツアーに関わるあらゆる事柄、人たちに向けた言葉にFPPが大声で「YES!」と応える。中でも「ポジティヴなことだけじゃなくて、ネガティヴな思いも全肯定できることに」い対する力強い「YES!」は、BRADIOがさらに厚い信頼関係をこのツアーで築いたことの証に見えた。本編ラストは、このパーティがずっと続きますようにと祈るような気持ちがきっと本質に流れているであろう、「人生はSHOWTIME」。ポップなグルーヴナンバーだが、そんな優しさや尊さを感じる楽曲に説得力を持ち得た今のBRADIOは、確実にステージアップした。
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サイリウムを振りと「LA PA PARADISE」をアレンジして歌うFPPのアンコールに応えて、再登場した11人。最後の最後は全員で楽しめる振り付けがある「Back To The Funk」。横ノリのライブ、ファンクやソウルに対する敷居を下げ、音楽的に満足させたBRADIOの妥協なき、「好きなことをやる」スタンス。その伝播力はまだ発揮され始めたばかりでもある。

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「また今日みたいに、今日よりすごい音楽やろうぜ!」と高らかに宣誓した真行寺の熱量。それに応えるFPPの度量。アンコール時に発表された、来年実現する全都道府県ツアーでより密なコミュニケーションを各地で実現してくれることだろう。
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取材・文=石角友香  Photo by=ヤマダマサヒロ

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