桑田佳祐が55曲を熱唱!大泉洋との“
共演”や、西城秀樹さん・さくらもも
こさんへの哀悼も 『ひとり紅白歌合
戦』が第三回にして完結 

11月29日(木)、 12月1日(土)・2日(日)の3日間にわたり、桑田佳祐が神奈川県・パシフィコ横浜で『Act Against AIDS(AAA)』コンサート『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』を開催。合計で約1万5千人を動員した。
同コンサートは、2008年、2013年に続く、『ひとり紅白歌合戦』の5年ぶり、第3回目の開催。2020年の7月末のAAA活動終了に伴い、桑田の『Act Against AIDS(AAA)』コンサートも完結することとなった。
これまでのひとり紅白同様、今回もボリュームたっぷりのステージを展開。桑田は、古くは戦後間もない昭和20年代の名曲から、最近の平成のヒット曲に至るまで、アンコールも含めた全55曲を熱唱した。どんな時代のどんな歌手の曲でも、どんなジャンルのどんな曲調の曲でもすべて自分のものとしてしまう力量は、国民的歌手・ミュージシャンとしての桑田の面目躍如。『ひとり紅白歌合戦』自体が桑田の発案による企画だが、桑田にしかできない企画であることが改めて明らかとなった。4時間弱にもわたるステージの中では数多くのエンタテインメントを披露し、さまざまなメッセージも発している。
序盤ブロックで歌われた「涙くんさよなら」は、昨年末、本家『紅白歌合戦』内で放送された朝ドラ『ひよっこ』のスピンオフドラマの中で、桑田が浜口庫之助に扮して歌った曲。昨年が浜口庫之助の生誕100年の年であったことから、彼へのリスペクトも含めて歌われた楽曲だ。今回は、桑田の唄に合わせてバンドのバックメンバーがひとりひとりステージに登場し、会場は大きな歓声に包まれた。
「フォーク&ニューミュージック対決」と題したコーナーでは、松山千春の「大空と大地の中で」、加藤登紀子の「知床旅情」を続けて歌唱。曲紹介では「今年、大きな地震があった北海道。みなさんへ歌でエールを!」とナレーションが流れた。その選曲、パフォーマンスからは、桑田の細やかな気遣いも垣間見えた。
桑田は93年のAAA発足当時から、ライブを中心に様々な形でその活動に携わってきた。その完結編としての意味合いももつ今回のコンサートの中では、もちろんエイズ啓発に対するメッセージも随所で発している。「世界の国からこんにちは」では、「巡り会い 愛し合う 時が来たなら 大切な 大切な 人を守ろう」「お互いに お互いにエイズを 知〜ろ〜う!!」とフレーズを変化させた。さらに、洋楽のヒット曲「Havana」では、「真剣に もっと大切に愛し合い パートナーを大切に」「性はもっと豊かなもので思いやりの気持ちを持って互いの命を守ろうよ それが愛というものなんだ」と替え歌でメッセージを伝えていた。
撮影=西槇太一
桑田は前川清の長年のファンであり、過去二回の『ひとり紅白歌合戦』でも、“内山田洋とクール・ファイブ”の曲を披露している。その際は桑田がコスプレし、クール・ファイブのそれぞれのメンバーに扮した映像で会場の爆笑を誘うという演出が定番となっていた。今回も期待通り「中の島ブルース」で、五人五役を演じた“ヅラ山田洋とクールファイブ”が画面に登場。さらに、映像の途中からは、同様のコスプレをした大泉洋も登場。ユーモアたっぷりの表情で、「五人」の桑田と絡み、一際大きな笑いが会場中に巻き起こった。まさに“ヅラ山田洋と大泉洋とクール・ファイブ”誕生の瞬間であった。
コンサート中盤、紅組でも白組でもない「特別枠コーナー」として、法被姿のサザンオールスターズのメンバーが、ザ・ドリフターズのテーマと共に登場。ドリフのメンバーも顔負けのギャグを織り交ぜつつ、「いい湯だな」をメンバー全員で歌い終わると、メンバーから「来年はツアーでお会いしましょう!」といううれしい言葉も。飛すると、「サザンオールスターズ来年もよろしくお願い致します」というメッセージがビジョンに映し出され、会場全体が大きな歓声に包まれた。来年の全国ツアーに向けたファンの大きな期待の高まりがうかがわれた瞬間だ。
本編終盤では、今年惜しまれつつ亡くなった西城秀樹さんの名曲「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」も。会場全体が、「Y.M.C.A.」の振り付けと共に大盛り上がり。一方で、ビジョンに映された西城さんの姿に、哀惜の念を禁じえなかった人も多かったはずだ。さらに「Y.M.C.A.」の連呼が「M.O.M.O.K.O」に変わり、「YOUNG MAN」からメドレーでつながったのが、さくらももこさんが詞を書き、桑田が曲をつけたTVアニメ『ちびまる子ちゃん』のテーマ曲「100万年の幸せ!!」。ビジョンに映ったは、まる子ちゃんをはじめとした、さくらももこが生み出した数々の登場キャラクター。極上にショーアップされた歓喜の中に、亡き人たちへのリスペクトを込める、桑田ならではの哀悼表現である。
撮影=西槇太一
アンコールが始まると、桑田自身の声でのナレーションが流れ始める。「流行歌。ヒット曲」という出だしで始まったその口上は、現代社会と流行歌・ヒット曲の関係、そして“大衆音楽作家”としての自分の役割を、冷静に俯瞰しているかのような内容。そして、次のような表現で締められていた。「Act Against AIDSの活動自体は2020年に終焉を迎えるが、世の中にはその他にもさまざまな問題が山積みとなっている。流行歌。ヒット曲。大衆と、ほどよくがっぷり四つに組み、新たな音楽を作り続けていくことを、私は辞めないだろう。そして、そうした問題にこれからも向き合っていこうと思う。平成三十年というひとつの時代の節目に、私はそう思いを新たにするのだ」ひとり紅白歌合戦を完結させ、AAA活動にひとつの区切りをつけつつも、桑田佳祐の新たな決意表明が今回のステージから滲み出ていた。
なお、今回のコンサートの模様は、12月25日(火)19時からWOWOWにて放送される。

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