L→R tomo(Dr)、yu-ki(Vo&Gu)、an(Key)

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【She, in the haze インタビュー】
She, in the hazeの
新しい幕開けを感じる最新作

初の日本語歌詞の「Mirror」とポップな「Last Dance」を収録するニューシングルについてyu-ki(Vo&Gu)に語ってもらった。

1st ミニアルバム『Mama said』、EP『Paranoid』、EP『Last forever』と半年ぐらいのペースでコンスタントに出したきましたが、今作は前作から11カ月振りという。それだけ時間をかけて作ったということですか?

今までは新しい作品をコンスタントに出したいという目標があってリリースしていたんですけど、今回は初心に戻って制作した作品になっていて。自分が出したいもの、作り出したい世界観を作品にすることを目的としていたので、時間をかけてそこにこだわりました。

なぜこのでタイミングで初心に戻ろうと?

She, in the hazeを始めた頃に比べると、圧倒的に自分たちのことを好きになってくれている人が増えたんですね。求められるものや期待されることが増えた中で…当然、人によって好きな曲は違うだろうし、僕らを知ってくれたきっかけの曲も違うだろうから、誰に向けた作品を、そして誰が喜ぶ作品を作るべきなのかって自分の中で葛藤が生まれてしまって。で、全員に喜んでもらえる曲って作れるわけがないってところに辿り着いて、She, in the hazeを始めた時の気持ちに戻ったというか…ファン1号は自分なんですよ。そもそもは自分が聴きたいと思う曲、自分がカッコ良いと思う曲を作ることを目的としていたので、もう一度そこに戻って取り組んだんです。

「Mirror」は初の日本語曲なのですが、いつかは日本語で歌おうと思っていたのですか?

洋楽を聴いてきたから英語の響きや譜割りが好きだということで、これまでは英詞だったんですけど、別に日本語を避けていたわけではないんですよ。日本語が合うような楽曲が生まれた時には日本語で歌おうと思っていました。だから、「Mirror」を作っている時に“あっ、これは日本語が合う”と思ったので日本語にしたという経緯ですね。

日本語の歌詞を書いてみてどうでした?

すごく新鮮でしたね。英詞だと短い言葉の中でも意訳ができるメリットがあるんですけど、日本語の場合は言葉がそのままじゃないですか。なので、短い文章でも情景が伝わる言葉選びをしないといけないってところで、いい意味で抽象的になるように…でも、抽象的すぎるとよく分からないものになってしまうから、そのバランスが苦労したところではあるんですけど、自分の中の狙いはちゃんと押さえられたと思います。

そもそも「Mirror」はどんな曲を作ろうと?

どちらの曲にも言えますが、完全にファンタジーです。自分の思いを表現するのではなく、物語を作りました。

それはこれまでの楽曲もそうですよね。

そうですね。自分のメッセージを入れているアーティストの方はたくさんいらっしゃいますけど、僕の場合はいちリスナーとして、いちファンとして、自分の作品に接していたいので、僕が思っていることを書いたところで僕は知っているし、自分の想いやメッセージを伝えたいがために曲を作ってるわけではないんです。楽曲はあくまでも作品であって、プライベートな感情の発散場所にはしたくない。なので、自分の中で完全に物語を作って…“こういう映画があったら面白いな”とか“こういう小説があったら怖いな”とか、そういうスタンスで今回の曲も作りました。ストレートなハッピーエンドの曲は嫌いではないんですけど、僕はあまり心に残らないというか…やっぱり脆さや弱さ、どろっとした部分とか、そういう人間の本質が描かれたもののほうが強く残るので、そういう楽曲になりましたね。

「Mirror」は幼少期の虐待体験が作った凶暴な人格と、まだ残る理性との葛藤が描かれているわけですが、シリアルキラーのことを歌った「Mama said」にも通づるものがあって。

そうなんですよね。自分が描きたい世界というのは初期の頃から変わってないことが改めて分かった作品でもあります。

それをサウンドでどう描いていくかですね。

だから、サントラを作るような感じですね。その感情や情景をどういう音で表現するのかっていうのが僕の楽曲制作のスタイルなので、作る世界観は同じでも音は全然違ったものになる。

まさに「Mirror」はサウンドでも二面性が描かれていて、リフが切り込んでくるスリリングで緊張感の高いAメロに対して、サビはやさしくて切ないっていう。

二面性がコンセプトでもあるので、それを音でも作りたかった…もちろんAメロがあって、Bメロがあって、サビでさらに盛り上がる曲は聴いていて気持ちが良いんですけど、僕が大事にしたいのは世界観を音で表現することなので、この曲は自ずとこういう展開になりました。

サビの後ろでは小鳥がさえずっていたりして歌詞ともリンクするので、想像力が掻き立てられるアレンジになっていると思います。しかも、Dメロでのグロウルは主人公の悲痛な叫びになっているし。

主人公の感情はひとつじゃないので一曲の中にいろんな表情が入っているのは当然のことだし、僕自身が“えっ、ここでシャウトがくるの!?”みたいな展開が好きっていうのもありますけど、世界観を忠実に出すためには、いい意味で統一性のないものが一番人間らしいのかなって。

2曲目の「Last Dance」はポップなダンスチューンなのですが、これは「Mirror」が緊張感の高いものだから、それとは違うものを入れようと?

そういうわけではなく、たまたま出したいものが「Mirror」とは対比的な曲だっただけです。

これはどんな曲を作ろうと? 

この曲も完全にファンタジーで、狂気的な物語を作りました。今までって世界観をストレートに音で表現している曲が多かったと思うんですけど、少し捻りを加えたくて。明るい曲なのに悲しく感じるとか、明るい音なのに儚く聴こえるというのを作りたかったんです。それはそれですごくリアルな表現の仕方だと思うので。

確かに。明るくポップなサウンドが主人公の狂気的な純粋さの怖さを増幅させますね。

内容が怖くて音も怖いっていうのは当然ありだと思うんですけど、内容が怖くて音がやさしいっていうのは逆に怖さを引き出すと思うので、それがこの曲では表現できたと思います。

それにしても、この主人公は怖い! 純粋すぎるだけで、そこに殺意はないわけですからね。

歪んだ愛情を持った男による純粋かつ身勝手な心中の物語です。純粋すぎるがゆえの、本人にとってはこれが結ばれた瞬間というか、ハッピーエンドなんです。常識では間違いとされる行動も、人の心情次第で正解に捻じ曲げてしまえるという、人間らしさが表現されていると思います。今までの曲でもそうですけど、そうなってしまった主人公の背景に、なにか物悲しさや埋まらない心の隙間を感じて、人はいかにシンプルかつ複雑な生き物なのかを考えさせられます。

では、今作はどんな作品を作れた実感がありますか?

初心に戻れたというのが一番大きいですね。日本語の曲や明るい曲だったりして、2曲とも新鮮に思えるだろうから、She, in the hazeの新しい幕開けを感じていただけるのかなと。あと、この2曲で振り幅が広がったことで、自分の作りたい世界観の幅も広まった…さらに自分の表現の仕方に素直になれるというか。今後の作品にも期待していてほしいですね。いい意味でそれを裏切り続けたいと思ってます。

レコ発ツアーが決まってますが、どんなライヴになりそうですか? 初心に戻ったことでライヴも変わってきます?

“初心に戻る”っていうのは制作に関してだけで…要は自分に重きを置くというのは作品に関してだけなので、ライヴはまた別なんですよ。作品は作品、ライヴはライヴと目線を分けているつもりではいるので、来てくれる人が期待しているもの以上のものは与えたいし、楽しんでもらえるものにしたいと思っています。ライヴまで作品っていうことを意識してしまうとライヴ感が失われるし、ただ観ているだけのものになってしまう。ライヴはお客さんと一緒に作り上げるものだから、そこを大事にしてツアーは回りたいですね。差し色となる今回の2曲が加わることで他の楽曲の印象も変わってくるだろうし、より表情豊かなライヴになると思います。

取材:石田博嗣

シングル「Mirror」2018年12月5日発売 SITH records
    • DDCB-94022
    • ¥500(税別)
    • ※TOWER RECORDS一部店舗限定販売(数量限定)

『She, in the haze “Mirror” tour 2018』

12/14(金) 愛知・名古屋HeartLand
12/20(木) 大阪・心斎橋VARON
12/23(日) 東京・渋谷SPACE ODD

She, in the haze プロフィール

シーインザヘイズ:“漂う音に浸る幻想的な空間を作りだす”をコンセプトに、楽曲・映像制作、レコーディング、デザイン、ステージ演出、衣装、アパレル等の全てのブランディングと制作をアーティスト自らが手がけるクリエイター集団。エレクトロニックでオルタナティブなサウンド、メランコリックでメロディアスなヴォーカル、“人間の心に棲む美と狂気”をテーマに攻撃的かつ儚く耽美な世界に魅了されるロックファンが日本はもちろんのこと海外にまで拡大中。She, in the haze オフィシャルHP

L→R tomo(Dr)、yu-ki(Vo&Gu)、an(Key)
シングル「Mirror」

「Mirror」MV

シングル「Mirror」トレーラー

OKMusic編集部

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