【ASIAN KUNG-FU GENERATION
インタビュー】
やっぱりここだよなっていう気持ち
この街がホームタウンだよねって
いよいよ待ち侘びていた時がやってくる。12月5日、実に3年半振りに世に放たれるオリジナルアルバム『ホームタウン』。ストレイテナーのホリエアツシらが参加したコラボレーション曲も話題の今作について4人にとくと語ってもらう。
ベスト盤のおかげでピントが合った
パワーポップのアルバムを作ろうと
オリジナルアルバムとしては3年半振りのリリースですね。今作を具体的にイメージされたのはいつ頃から?
後藤
常にアルバムを作ろうとは思ってるんですよ、1枚作り終わるたびに。“1枚終わった。じゃあ、次に作る曲からまた次のアルバムのタームに入るんだな”って感覚ではいるので。
前アルバム『Wonder Future』を作り終えた頃から気持ちとしては次を見据えていた?
後藤
そうですね。ただ、今回はアルバムうんぬんを考えるより先に、シングルでタイアップが決まったりしたこともあって、どうしたもんかなと思ってて。
その色が強いとアルバムとしての世界観を統一するのはなかなか難しいかもしれませんね。
喜多
出してからのタームも長くなっちゃいましたからね、「Right Now」も「ブラッドサーキュレーター」も。間に『ソルファ』の再録があったりしたし。
後藤
だったら、もうバラエティーに富んじゃうしかないかなと。それで最初はいろんなアーティストとのコラボ曲とかもたくさん入ったアルバムを作ろうとしてたんです。でも、そっちも予定にはちょっと間に合わなかったというか、もう少し粘りたかったので、まずはベスト盤(『BEST HIT AKG 2(2012-2018)』『BEST HIT AKG Official Bootleg“HONE”』『BEST HIT AKG Official Bootleg“IMO”』)を出そうということになって。結果的にそのシングルたちを収録できたのが大きかったです。おかげで気持ち的にいろいろ整理がついて、改めて今作に向かうことができたので。ベスト盤が出たことで、それまでに作ろうと思っていたアルバムの構想を一回ばらしたと言っても過言ではないですから。
そんな経緯があったとは。確かにコラボ曲も入っていますけど、作品全体のオリジナリティーはさらに濃いものになっていますよね。つまり、ベスト盤以降にアルバムへの意識が今のかたちへとシフトしていったと。
後藤
はい。自分の作りたいアルバムにすごくフォーカスできたというか、ピントが合ったんです。“だったら、パワーポップのアルバムをちゃんとした音で録ろう”って。前からパワーポップのアルバムを作りたいと思ってたんですよ。でも、そういうコンセプトのあるアルバムって狙って作らないと作れない。制作タームの入口がタイアップものからだと難しいんです。だから、今回は無理かなと思ってたんだけど、ほんとベスト盤のおかげですね。
喜多
コラボをお願いした曲が出揃うにつれ、どれもいい曲だったので、だんだんゴッチ(後藤の愛称)も自分で書きたくなってきたんでしょうね。結果オーライっちゃオーライです(笑)。
では、伊地知さんが今回の制作で感じていたことは?
伊地知
最初は不安なところからの始まりだったんですよ、大丈夫かなって。いろんなアーティストの方に書いてもらった曲を、まずは僕と建ちゃんと山ちゃんの3人がスタジオに入ってアレンジするんですけど、なかなか自分たちのものに落とし込めなくて、これはちょっとマズいぞと。でも、建ちゃんのギターとゴッチのヴォーカルが入ったらすごくアジカンになったのでホッとしましたけど(笑)。
後藤
みんな不安に思ってたみたいですよ、本当にこれはアルバムとしてまとまるのかって。山ちゃんもずっと気にしてたって噂を聞きました(笑)。
山田
いろんなタイプの曲があるっていうのが大きかったんですよ。どれも作ったその人の“節”が強くて、自分の中でも各“節”への歩み寄りに違和感みたいなものを感じていたし。ディレクターに相談しては“気にしなくて大丈夫”と言われつつ(笑)、ゴッチもいろんな案を出してくれたので、それを自分でも照らし合わせつつ。最終的にはまとまると思ってましたけど、ちゃんと落ち着くところに落ち着いたなって。
後藤
まとまるさ、人のバンドもまとめてきてるんだから。
おっ、プロデューサーらしい発言(笑)。
後藤
そもそもコラボをやろうと思ったのはバラエティーに富んだものにしようっていうのもあったけど、一方で自分たちが演奏すればどんな曲もアジカンになるんじゃないかって…それは今でも思ってるんだけど。さっき潔が建さんのギターと俺の歌があればって言ったけど、潔のドラムも記名性が高いし、山ちゃんのオブリガードも山ちゃんだとしか思えないし、そういう意味でもこのメンバーでやればアジカンの音にきっとなる。バンドって作曲だけじゃなく、演奏装置としても機能しているものだと思うから。
ちなみに“パワーポップ”がキーワードだとして、“ちゃんとした音で録ろう”というのは?
後藤
未だかつてない音の良さでやろうっていう。音についてはプロデュースとかをしながらもずっと研究していたことなので、アジカンで絶対に間に合わせたいと思って頑張ってたんです。ほんとギリギリだったけど。ただ、音がこれまでとどう変わるかっていうところで、それをメンバーに飲み込んでもらえるかはちょっと不安だったんですけどね。
不安?
後藤
“ユニークな音になるよ”“めちゃくちゃローを出すよ”っていう。でも、それがこれからのスタンダードに変わるから、みんなにも意識を転換してほしいなと思って。
喜多
たぶんゴッチのスタジオの環境がリニューアルしたっていうのも大きかったと思うんですよ。“聴きに来い。全然違うから!”って言われて(笑)。
行ってみて、いかがでした?
喜多
っていうか、嬉しそうに語るゴッチを見ちゃいましたね(笑)。(巻き舌っぽく)“いいだろぅ?”って。
後藤
ははは! “いいだろぅ?”の“ろぅ”が“LOW”なんでしょ?低音が好きすぎて語尾全部がLOW(全員爆笑)。
それぐらい低音が肝なんですね。
後藤
“みんなが低音だって言ってるところは低音じゃない”っていう話からしましたからね。“俺が言ってるのはもっと低い”って。そこは大胆にいきました。
喜多
こんなにローが出てていいのかって一時は心配になりましたけどね。僕らでは新しい試みだったので。
後藤
大丈夫、こんなにちゃんとした音で録ってるバンドって日本では他にいないよ。たぶん一番良い音。音が良きゃいいんです、曲はいいって決まってるから。