【インタビュー】ライズ・オブ・ザ・
ノーススター「メタル/ラップ/ハー
ドコア、そしてマンガのクロスオーヴ
ァーさ」

日本のマンガが好きすぎて、学ラン不良スタイルでステージにあがるフランスのライズ・オブ・ザ・ノーススターが、セカンド・アルバム『SHIの伝承』をリリースした。
メタル/ラップ/ハードコアがクロスオーバーされた音楽性だが、そこにマンガが大きく影響を与え日本文化が色濃く反映されている。東日本大震災のときにはチャリティー曲を発表、寄付までしてくれた彼らのニューアルバムはどのような作品となったのか?
──ニュー・アルバム『SHIの伝承』は、デビュー作と比べてどのような点が進化していると言えるでしょうか。

ヴィティア(Vo):今回は良いプロダクションを得るのにとても時間をかけた。これは以前のアルバムにはなかったことだよ。それに今回初めて7弦ギターを使ったんだ。アルバムの半分の曲で7弦ギターを使ったから、とてもヘヴィな仕上がりになっているし、とても暗い雰囲気がある作品になっていると思う。それにこのアルバムは、初のコンセプト・アルバムなんだ。収録曲のうち4曲がストーリーに沿った内容で、とても世界観のある作品になっている。日本のマンガを参照するだけでなく、俺自身の人生のストーリーも盛り込んであるんだ。これも初の試みだよ。

──タイトルはどのような意味なのですか?「SHI」とは何を意味しているのでしょうか。

ヴィティア:1、2、3、SHIだよ(笑)。SHIというのは主人公の名前なんだ。アルバムのストーリーは、俺自身と主人公であるSHIの絆についてさ。SHIが俺に憑依をして、そのSHIとの関係を通じて自分自身を発見していくという内容なんだ。一体憑依をしているのはどちらの方なのか、というのが最終的に導かれる疑問になっている。

──「SHI」には、師/士/四/死/詩など、たくさんの意味がありますからね。
ヴィティア:まさにポイントはそこなんだよ。だからこそ主人公の名前を「SHI」にしたのさ。「SHI」をどう解釈するかはリスナー次第なんだ。「SHI」に複数の意味があることに気付いてくれたのはとてもうれしいよ。

──ストーリーに沿った4曲というのは、どの曲ですか?

ヴィティア:1曲目の「ジ・アウェイクニング」でストーリーが始まる。これは幼少期のことだよ。この曲の最後に、サムライの声が聞こえるだろう?これがSHIの目覚めだ。それから「爆発が起きた」で、俺とSHIの関係を語っている。だからこれをファースト・シングルにしたんだ。デビュー作『Welcame』と、今のライズ・オブ・ザ・ノーススターの間の話さ。この曲では俺たち自身、そしてSHIについて歌っている。この曲のビデオにはSHIも登場するよ。それから「小僧」。この曲ではさらにストーリーの深い部分へと入っていって、エンディングは俺とSHIの会話になっている。これはライヴでも俺とSHIの掛け合いとして再現される予定だ。「皆は一人の為に」は、俺とSHIの闘いだ。憑依をしているのはどちらなのか。この4曲がストーリーに関わっているんだ。つまり1、2、3、SHIということ(笑)。

──「爆発が起きた」には、「テンシマト」という日本語らしき単語が出てきますが、これはどういう意味ですか?

ヴィティア:(笑)。『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』というマンガに出てくるキャラクターが使う技の名前だよ。

──「熱血」では渋谷という地名が出てきますね。
ヴィティア:2008年にバンドを始めてから、ずっと「渋谷」という地名を使い続けてるんだ。渋谷というのは、若者が集まる非常にダイナミックな場所だろう?バンドを始めたときから、ずっと渋谷に行きたいと思っていたんだ。だから今でも歌詞の中に渋谷を登場させるようにしているんだよ。

──「小僧」とは何を指しているのですか?

ヴィティア:SHIは何世紀も生きているキャラクターという設定だからね。彼の目から見れば、俺は「小僧」だという意味さ(笑)。

──「不良の到来」には、1910という数字が出てきますが、これは?

ヴィティア:言葉遊びだよ。1910年にパリで大きな洪水があったんだ。言葉のフロウ(言い回し)と、洪水における水のフロウ(流れ)をかけているんだ(笑)。

──この曲には「サイタマ」という言葉も出てきますよね。

ヴィティア:『ワンパンマン』だよ。主人公がサイタマという名前なんだ。このマンガでは、サイタマがワンパンチでどんなやつも殺してしまう。だから俺も同じように「ワン・パンチライン」(注:パンチラインはヒップホップ用語。決め台詞のような意味)でみんなを殺るっていうわけさ。ライズ・オブ・ザ・ノーススターはメタル・バンドだけど、ラップからも大きな影響を受けているから、パンチラインがたくさんあるのさ。

──なるほど。日本人は「サイタマ」と聞くと、まず「埼玉」という東京の隣の県を思い浮かべてしまうんですよ。

ヴィティア:(爆笑)。なるほど。確かに埼玉県ってあるね(笑)。
──今回のアルバムでも、さまざまな日本のマンガからの引用が見受けられますが、具体的にどんな作品が使われているのでしょう。

ヴィティア:たくさんありすぎて、すべての歌詞を見ながらでないと思い出せないよ(笑)。ぜひ自分たちで何の引用なのか、見つけ出してほしいね。

──バンド名は、どのように決めたのでしょう。

ヴィティア:『北斗の拳』という日本のマンガの英語タイトル「フィスト・オブ・ザ・ノース・スター」からインスパイアされた。日本からインスピレーションを受けて、アメリカ音楽をプレイするフランスのバンドだから、俺たちの名前にぴったりだと思う。

──バンド名に『北斗の拳』を選んだとういことは、これが一番お気に入りのマンガということなのでしょうか。

ヴィティア:最も気に入っている作品のひとつではあるね。お気に入りはたくさんありすぎるから(笑)。

──『北斗の拳』はどのようにして知ったのですか。テレビでしょうか。

ヴィティア:最初はフランスのテレビで見たんだ。だけどその後マンガを読んで、それで大ファンになったんだよ。

──フランス版のテレビ・アニメは、かなり改変されていると聞いたことがあるのですが。
ヴィティア:そうなんだよ。テレビ版は検閲されていて、いくつかのシーンがカットされたり、血が赤ではなく紫になっていたりね。テレビで『北斗の拳』を見たのは、4歳の頃だった。フランスのアニメ・チャンネルで、ほかのアニメに混じって放送されていたんだよ。まあそんな小さい子まで見るわけだからね。さすがに暴力シーンがカットされるのも仕方がない。だけど紙のマンガの方は、オリジナルと同じものだった。

──日本の文化に興味を持ったきっかけは何だったのですか?

ヴィティア:テレビで日本のアニメを見たのがきっかけだね。そこからマンガであるとか色々と日本の文化に興味を持つようになったんだ。日本の文化のおかげで絵を描くということにも目覚めた。グラフィック・アーティストを目指していたこともあって、有名なグラフィックの学校にも通っていたんだ。『Welcame』も今回のアルバムも、ジャケットなどをデザインしたのは俺なんだ。バンドのマーチャンダイズもデザインしているよ。

──学ランがあなたたちの衣装ですが、このアイデアはどのように出てきたのでしょう。

ヴィティア:『スラムダンク』や『ROOKIES』といったマンガからインスパイアされたのだけど、学ランを着ることは俺にとってとても自然なことだった。学ランを着てステージに上がるというのは子どものころやりたいと思っていたことだからね。
──ライズ・オブ・ザ・ノーススターの音楽を、無理やりにでもカテゴライズするとしたらどうなりますか?

ヴィティア:アルバムに入っている曲のタイトルどおりだよ。「This Is Crossover」。メタル/ラップ/ハードコア、そしてマンガのクロスオーヴァーさ。ここでも4つの要素が出て来る。4(SHI)というのは、今回のアルバムにたびたび出てくる要素なのさ。

──音楽的に影響を受けたバンドというと?

ヴィティア:バンド全体ではなく俺個人ということになるけれど、Rage Against Machine、Wu-Tang ClanMachine Headのファースト、Biohazard、ロスのdownset.。Slipknotはバンドみんなが好きだね。それからフランスのラップ・グループNTM。

──日本には何度も来られていますよね。

ヴィティア:バンドとしては3回行っている。

──実際に日本に来てみて、それまで抱いていた印象と変わった部分はありますか。

ヴィティア:初めて日本に行ったときから、一度もがっかりさせられたことはないよ。あまりに期待が高すぎたゆえに、がっかりさせられてしまうことってあるだろ?日本にはもちろん高い期待を持っていたのだけど、実際にその期待に応えてくれたよ。ますます日本が好きになったね。

──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

ヴィティア:また日本に行くのが待ちきれないよ。デビュー・アルバムは、ただのイントロダクションでしかなかったからね。今回のアルバムで、ぜひもっと多くの人に俺たちのことを知ってほしい。日本という国は、フランスと同じくらい大好きだから、ぜひまた日本でプレイしたい。

取材・文:川嶋未来
フォト:Ben Berzerker

ライズ・オブ・ザ・ノーススター『ザ・
レガシー・オブ・シ~SHIの伝承』

2018年11月2日 世界同時発売
【50セット通販限定 直筆サインカード付きCD】 WRDZZ-784 / ¥3,500+税
【CD】 GQCS-90641 / ¥2,300+税
※日本盤限定ボーナストラック収録/Northcard付き/日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ジ・アウェイクニング
2.爆発が起きた
3.熱血
4.小僧
5.青春の怒り
6.一歩一歩
7.これぞクロスオーバー
8.冷たい真実
9.皆は一人の為に
10.不良の到来
11.SHIの伝承

【メンバー】
ヴィティア(ヴォーカル)
エヴァ-B( ギター)
エール・ワン(ギター)
ファビュラス・ファブ(ベース)
ファントム(ドラムス)

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