誰にでもある大切なもの。その輝きは絶望の中で真実になる。DASEINの二人に見る絶望と真実の輝き。

誰にでもある大切なもの。その輝きは絶望の中で真実になる。DASEINの二人に見る絶望と真実の輝き。

誰にでもある大切なもの。その輝きは
絶望の中で真実になる。DASEINの二人
に見る絶望と真実の輝き。

そんなDASEINというバンドをご存じだろうか?と聞いてみても、知ってる!と答えてくれる人はあんまりいない…かな…
けれども!こう聞けばどうだろう?仮面ライダーの主題歌などを担当する唯一のオフィシャルバンド「RIDER CHIPS」の現ボーカリストで「仮面ライダー剣」の後期主題歌ELLMENTS等のボーカルを執ったボーカリストであるRicky。

他にもテレビアニメ「鋼殻のレギオス」のために結成されたバンド。Chrome ShelledのボーカリストRicky。
DASEINに話を戻せばアニメとのタイアップ曲が多く存在する。映画版ONE PIECE珍獣島のチョッパー王国の主題歌「まぶしくて」。
キャプテン翼4thのエンディング「BREAK OFF!!」など、挙げてみれば記憶にある方もいるのでは?・・・いてほしい!

そして、ボーカルのRickyと共にDASEINを縁の下から支えるドラムのJOE。
彼はDASEINの活動前はSPEED STAR SYPAN JOE名義で、愛媛のみかんが世界一である事を愛媛生まれのリーダーが高らかに歌う「SEX MACHINGUNS」のドラマーとして活躍していた。

このドラマーであるJOEが陥った音楽人生最大の絶望が、のちに多くの人の心にある困難や傷にそっと寄り添い癒してゆく、一つの美しい歌になる。
そして、その絶望は出逢いという奇跡を生み後にまた様々な悲しみ絶望に寄り添いながら美しく花を咲かせるという運命を辿る。

その運命は『絶望の花』と名付けられた歌になり、DASEINの数ある楽曲の中でも群を抜いて大切にされている。
この絶望の花に込められたメッセージと、過去と現在、未来をつなぐ不思議な因果を歌詞と共に読み解きたい。

ざっとDASEINを知らない人へDASEINのプロフィールを紹介させて頂くと。HYPER BEAT ROCKと称して生み出した楽曲を手に、2000年~2004年1月7日までの丸3年間の活動を経て解散。
それぞれの音楽活動を続けていく中で、DASEINへの想いが募り、デビュー10周年を迎えた2010年3月24日にマキシシングルを発売。
翌月4月10日に復活ライブを行う。復活までの個々の活動も並行しながらDASEINの活動を開始。シングル、アルバムリリースやライブツアーなどを行い現在に至る。

このDASEIN。始まりはいつも「絶望の花」なのだ。この二人の出逢いを歌詞にしている部分をまず見ていきたい。

DASEIN「絶望の花」

この部分がDASEIN結成のきっかけを歌っている。解釈するとこうなる。
ドラムのJOEはSEX MACHINGUNSでドラムを叩く中で持病である椎間板ヘルニアが極度に悪化してしまう。
この状態を無視してドラムを叩き続ければ、歩行困難になり通常の生活が困難になると医者から宣告される。

ちょうど、その頃マシンガンズはメジャーデビューしたての頃。バンドとしても、まだまだ上に向かっている最中だったこともあるが、何よりも愛するドラムを叩けなくなるかもしれない。
ドラ息子なんて自分を謳ってしまう程のドラム愛を持つJOEにとって、その宣告はある意味での余命宣告だったと思う。

もちろん、メンバーからもファンからも本当に本当に惜しまれてJOEはSEX MACHINGUNSを脱退。その経緯が『いつも傍に在るはずの全てが消えてしまった時』となる。

そして、音楽から離れざるを得ない辛く寂しい時間。そして、リハビリを続けてもドラムを叩くのは難しいと医師から告げられた暗く希望を見いだせない絶望の中。とある一本のデモテープと出逢う。
そのデモテープからは暖かみを帯びたまあるく柔らかい歌声が流れた。JOEはこの歌声を「ハートウォーム(Heart Warm)」と呼んでいる。
そんなハートを暖める歌声の持ち主がJOEの心を射抜き、JOEが一緒に音楽をやりたい!と心から射抜いたボーカリストのRickyなのだ。

その出逢いはまさに『絶望の底に残ったものは始まりだった』のだ。
この出逢いを経て、JOEはドラムを叩くのは難しいと言われていた状態で凄まじい努力でリハビリに挑み音楽人生へ奇跡の生還を果たした。
絶望の淵で見つけたRickyの歌声、JOEのドラムの音
この一節は、音楽生命を絶たれ全てを失いかけたJOEが絶望の淵でRickyの歌声と出逢う事で見いだした、
音楽への情熱とその情熱で無理であろうと言われていた音楽人生を取り戻した全ての奇跡の先を歌っている。
奇跡の先、それはDASEINのメジャーデビューの事。
『止めども無い涙が零れて』
一見、先の見えない辛いリハビリの事や音楽を取り戻せるのか。という絶望への苦しみの涙にも取れるが、そうではない。その絶望の苦しみの中で見つけた『幸せという扉』。
メジャーデビューという形で新たに音楽が生み出せる事。そして絶望の底まで落ちたからこそ、出逢えたRickyの歌声とたくさんの人が待つステージへ立てる事。
これからのDASEINが作り出す未来への期待と喜びに満ちた涙の事。
『信じるべきもの等ない荒野の彼方』。この歌詞が、『止めども無い涙』を絶望ではなく、未来への期待と喜びである事を感じさせる。
デビューをする事。アーティストであれば誰もがそれを夢みるはず。
私の様な、いちオーディエンスからではただの推測でしかないが。たくさんの大人に囲まれ「夢」と引き換えに「自分」を大人に引き渡し、人でありながら商品として売り出される。
商品になってしまえば「自分らしさ」なんてないも同然。商品なのだから、当たり前に売れるように仕立てられていくのだ。
自分でありながら自分ではない、誰かに仕立てられた商品が、あたかも自分であるかのように演じていかなくてはならない。
きっと「商品」として生きる事は、夢と引き換えに差し出した「自分」を規制されるのだ。
その規制は本来の自分の心にある欲求と商品である自分との間に疑問を生み、本来の自分の心を消費し疲弊させるのではないのだろうか。
『幸せの扉』を絶望の淵から奇跡と努力でこじ開けたすぐ先にはメジャーの世界という荒野が広がっていたのだ。
『信じるべきもの等ない』厳しいメジャーの世界。音楽の才能、こればかりは努力ではどうしても手に出来ない運を手にした人は全てライバル。
才能や運で蹴落とされる可能性が付きまとうだろう。いつだって気を抜けない。疑心暗鬼の世界。
しかし、信じるベきもの等ない疑心暗鬼で満ちた『荒野の彼方で』二人が見つけたもの。それは『無邪気に揺れている花』だった。
この『花』の存在。それはRickyの歌声、JOEのドラムの音。
二人の作り出すHYPER BEAT ROCKがあれば、そこが荒野であろうと、はたまた緑豊かな場所でもいつだってどこでだって「無邪気に揺れていられる」私たちオーディエンス、DASEINのファンであるザイナーの事。 
そして、絶望を奇跡に変えた先に待ち受けていた荒野を。規制され消費し疲弊させながら進む中に改めて見つけた「自分」の存在。
ザイナーの無邪気さという純粋な愛を前に見いだした、大切な人の笑顔を「自分」はどうしたら引き出し守れるのか。荒野の中で生きる為に見つけた「強さ」という『花』の事。
私から見た二人のザイナーに対する愛情と感謝。それは解散を経た復活後の二人の活動を現在も見届ける中で、新たに生み出される楽曲に。
MC含み幾度となくライブで届けられる音と創意工夫。そして二人の姿勢から感じ取る事が出来る。
DASEINとザイナー。出逢った時はそれぞれでも、共に歩いてきた時間をJOEがいつかの下北沢でのライブでこう表現した。「こんな僕らと一緒に歳を重ねてくれて本当にありがとう、幸せです」と。
そしてRickyはそのJOEの言葉の隣で、多くは語らず後の歌に、最大の感謝と愛をボーカリストとして私たちに届けてくれた。
自分の持つ大切な物は絶望の中でも変わらず輝きを失わない
このDASEINの絶望の花という曲は、本当の絶望の中でしか見いだせない自分の中の真実。
そして例え絶望という暗闇に飲み込まれてしまっても、自分の持つ大切な物はどんな闇の中でも『変わらずに』輝きを失わないという事を歌っている。
そして17年間。DASEINとしてデビューし、一度は解散を選び10年間を別々に歩んだ二人。しかし別々に歩んでいた道は、DASEIN結成を作った奇跡である他ならぬ「音楽」の道。再びDASEINという音楽が二人を繋いだのだ。
そして、ずっと心にDASEINという花を枯らさない様に大切にしてきたザイナーを繋ぎ、DASEINとザイナーの真ん中で咲く音楽への愛情と感謝の花に、種が実り芽を出し増え広がっていくザイナーの笑顔の花。
この歌が今も美しく咲き誇っているのは、二人が音楽を選び変わらずにその道を歩いていた事。
そして絶望からすら音楽をすくい上げ出逢いの奇跡を起こしてくれた事で生まれた結成、解散、復活があったから。そう思うと最後のこの歌詞。
絶望的な経験も、自らを強くし奇跡に変えていける真実に
この歌詞を、絶望の悲しみの先にある「今」と「未来」に。自分が持つ偽りのない大切なものへの愛情と感謝。
それが在るという幸せと喜びに必ず出逢える。その為に『戦い続けて行くしかない』と、絶望を強く誇らしく奇跡に変えて行けると思えるようになるのだ。
絶望の花。それはDASEIN自身が歌う絶望と奇跡が織りなした歴史と、その中で生まれた愛情と感謝に溢れた美しい花を描いた歌なのだ。
私は、この曲を聴く度にこんな美しい花を心に咲かせてくれたDASEINと同じ時代に生まれて生きる事が出来てとても幸せだと想うのだ。
TEXT:後藤 かなこ

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