ストレイテナー 重ねた歳月と名曲の
数々が導く、20周年のハイライト――
『My Name is Straightener TOUR』初

My Name is Straightener TOUR 2018.10.17 横浜Bay Hall
「俺たちストレイテナーっていいます!」
アンコールでようやくホリエアツシ(Vo/Gt/Pf)が口にしたいつもの自己紹介が、やけに誇らしく輝かしく聴こえたのは、それだけこの日のライブにストレイテナーというバンドの何たるかが詰まっていたということの証左だろう。ツアータイトルもそのまま『My Name is Straightener TOUR』。初日、横浜Bay Hall公演を観た。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
同日にリリースされた、ベストアルバム2作『BEST of U -side DAY-』『BEST of U -side NIGHT-』とともに廻る今回のツアー。年内ずっとツアーが続くので詳述は避けるが、セットリストとしては当然ベスト盤収録曲が中心のライブとなっており、さらにベスト盤の収録楽曲のほとんどはファン投票によって選出された曲である。ということは、2時間以上にわたってみんなの好きな曲、聴きたい曲が次々に連打されていくという流れは容易に想像できる。冒頭からフロアのテンションが異様に高いのは必然だ。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
「全然心配いらないね、行こうぜ横浜!」
ホリエからの最初の投げかけは、おそらく日向秀和(Ba)が先日に足を負傷したことと、それに対する声援を受けてのもの。この日は椅子に座った状態でのプレイとなった日向だが、普段から全身でリズムとグルーヴを表現するスタイルの彼だけに、動きが制約される環境ではどうなるのだろう?と思っていたら、全然問題なかった。遠目のシルエットこそベテランのブルースマンみたいになっているが、放つ音は相変わらずエゲツないし、上半身の動きや表情でしっかり観客をノせていく。なお、「無理しなきゃロックなんてやってられねえんだよ」「(自由に動けないぶん)余計に伝えようと思うから燃える」とやけにかっこいい名言が飛び出していたのは、着座スタイルが「カッコよくいかねえとカッコ悪いんだもん」との理由らしいです。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
ベスト盤にも収録された新曲「Braver」は、夏フェス等で既に披露されていたものの、ワンマンのセットリスト上に組み込まれた状態で聴くとまた一味違った印象を受けた。憂いを帯びたピアノのリフで始まり、ナカヤマシンペイ(Dr)の叩き出す重厚なリズムに合わせて会場全体がクラップ。大山純による情感豊かなギターの音色もよく効いていて、熱量もバンド感も増していたし、一言で言えばとてもエモーショナル。エモさが溢れんばかりなのはこの曲に限った話ではなく、ナカヤマに「今日のセトリはみんなが選びました。……みんなの思うストレイテナーって、こんなにエモいんだな」と言わしめた通り、演る側も観る側もどんどん音に没入すると同時にフィジカルな興奮も味わえ、場そのものが熱を帯びていくような容赦ない展開が、ライブ全体を通して続いていった。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
その一方で、「みんなの声が聴きたいです、一緒に歌おうぜ!」(ホリエ)と演奏され、盛大なシンガロングが轟いたのは、代表曲のひとつ「Melodic Storm」。この曲が出た当時は、シンガロングを促したり自体ほとんど無いようなスタイルだった彼らだが、今では伝えるべき言葉をストレートに伝えるようになり、積極的なコミュニケーションが生まれ、MCでのフリーダムな脱線ぶり(この日はいつも以上にバランサー不在でカオスでした)までもが見どころのひとつになっていたりする。それは意図的にキャラ変更を図ったということではなく、結成から20年、デビューから15年、現在の4人編成になってから10年間という歳月のなせる技であり、その歴史こそが今の彼らを形作り、今日のライブスタイルを生んだ。そんなシーン一つとっても、メモリアルな今回のツアーにおいてはなかなか感慨深く思えてくる。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
この時期、しかもこういう海沿いの立地で聴くと特に味わいが増す「シーグラス」などを経て、ライブはクライマックスへ。ここで「演奏すると寿命が縮む」らしい、普段はあまりライブ披露されない楽曲が聴けたのも、ファン投票の結果があってのことなのだから最高だ。さすがはテナーファン、よく分かってる。日向が特製の法被で登場したり、ホリエが客席に向けてビデオカメラを回したりと、和やかに始まったアンコールでも場内のテンションは冷めやらず、さらにはWアンコールまで飛び出す完全燃焼ぶりで、最後は「行ってきます!」と締めくくったツアー初戦。これから全国各地で、彼らの歴史と今とが交錯しながら、さらなる熱狂と幸福感を生み出していくのだろう。
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]
「続けようと思ったことはないんだけど、仲良く楽しくカッコよくあろうとする気持ちだけで、これからも続いていくんだと思います。よろしくお願いします」(ホリエ)
ちょっと気が早いが、年明けの幕張イベントホールワンマンへ、そして21年目のネクストステージへと向かうストレイテナーは、ますます仲良く楽しくカッコいい、無二のバンド像を究め続けている。

取材・文=風間大洋
ストレイテナー 撮影=Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]

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