go!go!vanillas 驚きのオープニング
から新曲初披露まで、オーディエンス
との距離を縮めた初野音ワンマン

go!go!vanillas「秋のハーベストツアー」〜野音狩り編〜

2018.9.22 日比谷野外大音楽堂
約1ヶ月間で全国をまわるgo!go!vanillas『秋のハーベストツアー』。全12公演中10公演は“ハンター編”と称した対バン公演だが、ツアー初日にあたる9月22日は東京、その翌週の30日(台風の影響により10月14日に延期)は大阪での野外ワンマン公演として開催された。以下のテキストでは、9月22日・日比谷野外大音楽堂での模様をレポート。天気予報は外れ、雨粒一つ落ちることのない絶好の野音日和。開演時刻を迎えた時点で既に日は落ちていたものの、やや蒸し暑く、銀杏の香りがほのかに漂っていた。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
バニラズにとって初の野外ワンマン。いったいどんなライブになるのだろう――。立ち見エリアまで満員状態、たくさんのオーディエンスが開演を待つなか、その時は予想外の形で訪れた。なんと、客席中央後方にあるセンターステージに牧 達弥(Vo/Gt)がふらりと現れ、そのまま弾き語りを始めたのだ。キャップ着用&黒系の服装の牧は一見スタッフに見える出で立ちだったし、ステージに上がってからも何となくそれっぽい動きをしていたため、ほとんどのオーディエンスは気づいていない状況。そうして「グッドドギー」が始まると、長谷川プリティ敬祐(Ba)、ジェットセイヤ(Dr)、柳沢 進太郎(Gt)が客席内の通路を歩いて登場。メンバー4人が揃い、最初の2曲はアコースティック編成で届けた。担当楽器はというと、「グッドドギー」は牧:ボーカル&アコースティックギター、セイヤ:タンバリン、柳沢&プリティ:コーラスで、「ラッキースター」は牧:ボーカル&タンバリン、柳沢:アコギ、プリティ:アコースティックベース、セイヤ:カホン。前者は歌声のハーモニーを堪能できるようなアレンジになっていて、後者は弾むようなリズム隊のサウンド、アドリブセッション的な温度感のアウトロなどから遊び心が垣間見えた。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
このアコースティック編成が準備体操のようなもので、ここから本格的にライブが始まるようなイメージだろうか。「さあみなさん、こっからはそっちのステージでぶちあがるぞ!」(牧)と呼びかけると、4人がメインステージに移動し、いつものSEがスタート。「カウンターアクション」以降は通常の編成で演奏された。イントロ開始と同時にステージ上でCO2が噴き出すと客席からは歓声。牧はその噴出口より前に出る勢いでオーディエンスの方へ駆け出していっているし、曲中に叫びオーディエンスを煽るプリティも、笑顔全開でガシガシ弾きまくる柳沢もハイテンションな様子。セイヤはその場で立ち上がると、腕をぶん回しながらドラムを叩き、同曲を豪快に締め括った。続いては「SUMMER BREEZE」だが、“今シーズン最速のサマーチューン”と銘打ち5月末にリリースされたこの曲、今の時期だとメロディがより切なく聴こえるから不思議である。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
こうして始まった序盤ブロックでは、7月25日に突如配信リリースされた新曲「チェンジユアワールド」も初披露。オーディエンスの手拍子やシンガロングによって生まれた音を交えながら、会場全体でアンサンブルを楽しんでいくような空気が流れていた。「(野音は)フェスと違うなあって思ったんですよね。なんか、距離感近くない?」「みんなの愛か! ずっとここにいたいなって思いました」と、牧は飾らない言い方でその感触を伝える。先に触れておくと、終盤で初解禁されたもう一つの新曲は、ライブに来るオーディエンスに対する気持ちを歌ったものらしく、みんなで歌いたくなるようなサビのメロディが印象的。バンドのやりたいこと、その時々のモードが曲自体に分かりやすく反映されているのがこのバンドの愛すべきところだ。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
セイヤの刻むバスドラのテンポがグッと落ち、中盤では、「スタンドバイミー」「Penetration」「なつのうた」など、ミドル~スローナンバーを中心に演奏。オーディエンスのノリ方も縦から横に変わった印象だ。バンドの演奏は音の響きを丁寧に聴かせるようなアレンジにシフト。ステージ上のミラーボールが回り、夕闇に星を散らした「トワイライト」の光景は特に美しく、最後に鳴ったギターが鈴虫の音(ね)と混ざっていく様子も風情があった。また、場の雰囲気を壊さないためだろうか、ここでの4曲はほぼ連続で演奏。曲間の繋ぎも工夫を凝らしたものになっていた。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
そして稲妻のような照明が走る演出のあった「ヒートアイランド」からは再びアッパーチューン中心に。この終盤ブロックでは、初めて来た人もいるだろうからと、メンバー紹介と称してソロ回しを披露する場面があった。振り返ればこの日のライブは、バニラズのことを慕い集まってきた人たちに対し、ありとあらゆる手で自分たちのことを伝え、さらに仲を深めるためのライブだったように思う。その結果、会場は最終的に
牧「共有したいなって思える人と一緒にライブできてる気がしてて。おじいちゃんみたいな気持ち。正月みたいな」
プリティ「親戚一同集合、ってことね」
と言わしめるほど温かな空気になっていった。宇宙規模の話を持ち出しながらみんなでひとつになりたいと伝えるセイヤ、セイヤの長崎弁につられて若干訛りが出ている牧、ゲームの話になると熱が入って早口になるプリティ、それらをニコニコと見守る柳沢――と、いつになく素が出ちゃっているMCも微笑ましい。全体的に4人ともいい具合に肩の力が抜けるようになっていて、それによりバンドとして最良のパフォーマンスを発揮できるようになり、同時に、オーディエンスとの距離をグッと縮めることができるようにもなった。本編ラストの曲、柳沢のギターの音が出なくなるトラブルをポジティブな気持ちで乗り越えた場面にも、その変化は表れていた。いつの間にかこんなに頼もしくなっていたのかと、ちょっとだけ感慨深くなってしまったくらいだ。
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ
ここから始まる『秋のハーベストツアー』を経て、go!go!vanillasというカルチャーの元に集まる人々、つまりメンバー4人とオーディエンスの関係性はより親密なものになっていくことだろう。オーディエンスのシンガロング&メンバーのコーラスによる歌声の層を突き抜けて、「みんな愛してるよー!」という牧の叫びが夜空の下で響きわたったのだった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=ハタサトシ
go!go!vanillas 撮影=ハタサトシ

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