フーテンのDTCと申します。以後お見知りおきを! イラスト:Chacco

フーテンのDTCと申します。以後お見知りおきを! イラスト:Chacco

【レビュー】DTCは“現代の寅さん”
? カメ止めとの共通点も!『DTC -湯け
むり純情篇- from HiGH&LOW』見どこ
ろ解説

「HiGH&LOW」ファンも、初見でも楽しめる! スピンオフ映画『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』を、ネタバレなしで詳細レビューします。

「HiGH&LOW」シリーズファン必見! いよいよ、スピンオフ映画『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』(以下『DTC湯けむり』)が、9月28日から3週間の期間限定で公開されます!
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「HiGH&LOW」シリーズなのにアクション無し?という異色作を極力ネタバレなしでレビューしたいと思います。では、行ってみましょう!
本当にアクションはゼロ! それでも『DTC』は、まぎれもなく「HiGH&LOW」「HiGH&LOW」ファンなら血がたぎる! 名曲と名シーンのオンパレード
「HiGH&LOW」シリーズと言えば、まずはアクション。想像を絶するような肉弾戦の連発が特徴のひとつです。スピンオフ映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』も、本編に負けず劣らずのアクションシーンが売りでした。雨宮兄弟の駆使するゼロレンジコンバットには驚かされました。
それに対して今回のスピンオフ、『DTC湯けむり』は、“アクションゼロ”が特徴。劇中でも、ダンによって<ケンカ0、笑い80、感動20>と宣言されています。配信ドラマではお馴染みだったものの、映画という長尺でアクション無しというのは、個人的にちょっと心配でした。
ですが、映画が始まるとその不安は一掃されます。鳴り響く名曲の数々、差し込まれる名シーン。「HiGH&LOW」ファンなら、大名曲『HIGHER GROUND feat. Dimitri Vegas & Like Mike』のイントロが聴こえたと同時に身体が反応してしまうこと間違いナシ。
これまでに見てきた数々の作品が一気にフラッシュバック。ああ、「HiGH&LOW」ワールドに帰ってきたんだ!という感慨で、胸がいっぱいに。「HiGH&LOW」シリーズにハマり、作品を追いかけまくった日々を懐かしく感じました。この感覚は、劇中で、激闘の日々を振り返るDTCの面々とシンクロするようです。
DTCとカメ止め、共通点を発見
「HiGH&LOW」の華はキャラ立ち! DTC&縦笛兄弟だけじゃない。あの重要人物も?
こんな感覚にさせてくれるのは、「HiGH&LOW」シリーズの魅力のひとつである、個性豊かなキャラクター造形があってこそ。ぶっ飛んだ設定や展開の中で、人間味あふれるキャラクターが息づいています。
今作も、「HiGH&LOW」シリーズを通して形作られてきた、ダン、テッツ、チハルそれぞれの“らしさ”が全開。これも、「HiGH&LOW」ワールドに帰ってきたという感覚に浸れるポイントです。
女好きを前面に出していながらも、結局はいちばん人情味に厚いダン、なんだかんだ言ってモテるアイドル性の高いテッツ、そして一度こうと決めたら、形はどうあれ貫こうとするチハルと、キャラクターの魅力がストーリーの中に存分に活かされています。
もうひとつ特筆すべきなのは、シリーズを印象づけるナレーターの立木文彦さんが、俳優として参加していること。このキャスティングにも驚きました。
厳つさの中に優しいまなざしが見えるルックスに、渋くてカッコイイ声。さらに美声を活かしたシーンが盛りだくさんなんです。あの名フレーズを活かしたシーンもあって、めちゃめちゃ楽しいですよ!
印象的なワンカットシーン! 思い出すのはあの大ヒット作ワンカットのダンスシーンは絢爛豪華! 脳裏をよぎるのは…
LDH所属のアーティストや俳優が大挙して出演する「HiGH&LOW」シリーズは、歌とダンスも見どころのひとつ。アクションのない『DTC湯けむり』でも、しっかり魅せてくれます。
中でも、ワンカットで撮影された豪華絢爛なダンスシーンは印象的。キャストとスタッフの皆さんの、音楽に対する強い愛情を感じるシーンです。
このダンスシーン、物語の中でも非常に重要な意味を持っているのですが、見ながら思い出した映画があります。それは、現在大ヒット中の『カメラを止めるな!』(以下『カメ止め』)。
たった2館だけの公開から始まり、全国累計200館以上、数々の映画賞を獲得したこの映画も、ワンカットで撮影された劇中作が、非常に大きな意味を持っています。
公開のタイミングから考えて、『DTC湯けむり』と『カメ止め』の間には、偶然のシンクロニシティが起きたのでしょう。この2作、もうひとつ共通点があるんです。
『カメ止め』と『DTC湯けむり』、共通するのは“シンプルなメッセージ”
『カメ止め』と『DTC湯けむり』に共通すること、それは、伝えたいメッセージがとてもシンプルで、それがストレートに伝わってくること。
『カメ止め』は、非常に特徴的な構成で話題になっていますが、ここまで大ヒット作になった理由は、そこだけではないでしょう。伝えたいメッセージがシンプルで、全編見終わるとしっかりと胸に届いてくるところも大きいのではないでしょうか。
その点は、『DTC湯けむり』も共通しています。後半は、まさしく王道の人情もの。見ていて思わず目頭が熱くなるんです。心が温かくなる、まさしくハートウォーミングなストーリーになっています。
「HiGH&LOW」シリーズという枠の中で、とても大事なメッセージを、シンプルに届けてくれます。その点で、「HiGH&LOW」シリーズ初見の方の涙腺も崩壊させる底力を秘めているんです。
シリーズ化に期待したい理由
懐かしいのに新しい! 『DTC』は新時代の寅さん?DTCに流れる、昭和な男のDNA! 思い出すのは映画史に残る名シリーズ
『DTC湯けむり』は、流れものの男性が、旅先でマドンナにひと目ぼれするけれど、どうやら片思い。そして、そのマドンナの幸せを実現するためにひと肌脱いて奮闘する、という流れです。
そして、オープニングテーマのタイトルは『FUTEN BOYZ』。この時点で、映画史に残る名シリーズ『男はつらいよ』が頭に浮かびました。
DTCの3人は、けんかっ早くて女好き、うまく生きられないけれど、人情に厚くて義理堅い…。渥美清さんが演じ続けた名キャラクター、フーテンの寅さんのポジションなんですよ。
鑑賞後にブックレットを読み込むと、監督・脚本の平沼紀久さんが、「脚本執筆の段階で『男はつらいよ』を何度も見返している」と語っていらっしゃいました(公式サイトにも掲載されています)。まさしくビンゴ。
マドンナが笛木優子さん、番頭役に駿河太郎さんという手堅い配役も、新時代の『男はつらいよ』感があります。しっかりとした演技力を重視した、素晴らしいキャスティングです。
長寿シリーズ化も?『DTC湯けむり』は長い旅の始まりだ
以前の記事でも触れましたが、「HiGH&LOW」シリーズは、痛快でエネルギーに溢れた昭和時代のエンタメ作に一脈通じています。東映やくざ映画シリーズや、ゴールデン・ハーベストの香港アクション映画、石原軍団大暴れの西部警察あたりは、「HiGH&LOW」のルーツと言えるでしょう。
こうした作品群に共通するのは、昭和のハンパない熱量。「HiGH&LOW」のコアです。そういう意味で、人情ものという方向性で豪速球ストレートを投げ込む『DTC湯けむり』も、紛れもなく「HiGH&LOW」シリーズの一作なんです。
DTCの旅路が「男はつらいよ」をリスペクトした長寿シリーズになる可能性、期待したくなります。DTCそれぞれのキャラクターがしっかりしていて、次の街でどんな珍道中を繰り広げるのか、なんだかワクワクするんですよね。
ファン必見であることはもちろん、初見の皆さんでも楽しめ、さらには長寿シリーズ化も期待できる…。『DTC湯けむり』は、スピンオフという枠を超えた一作です。
最後に少しだけ…。思わず口がポカーンとなる縦笛兄弟のライブは必見!そして、「HiGH&LOW」シリーズ次回作への布石もありますので、シリーズファンはお楽しみに!
そうそう、「HiGH&LOW」ファンなら大好きな、あのヌードルを食べるシーンも楽しいですよ。盛りだくさんの『DTC湯けむり』、是非劇場でご覧ください!
映画『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』
9月28日(金)より3週間限定ロードショー

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