【インタビュー】wyse、手塚アニメへ
の愛とコラボ作品を語る「後世に自慢
できる一生もの」

wyseが9月26日、手塚プロダクションとのコラボシングル「ヒカリ」をリリースする。全3タイプのシングルのジャケット画像は“wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力”企画として手塚アニメとwyseメンバーの融合が実現したもの。アートワークのみならず、楽曲は漫画史に燦然と輝く手塚作品をイメージして書き下ろされていて、表題曲の「ヒカリ」は手塚治虫が描き続けてきた世界観に通じる“光と影”をモチーフに制作されたナンバーだ。カップリングに収録されているのは「僕のヒーロー」(鉄腕アトム)、「Link」(ジャングル大帝)、「Blue Moon」(リボンの騎士)で、それぞれの作品から受け取ったイメージをwyseのフィルターを通して楽曲として昇華した。
今回のコラボを「夢のよう」「後世に自慢できる」と語るメンバーに手塚治虫氏への愛をたっぷり語ってもらいつつ、この企画が実現したからこそ生まれたメッセージとロマンあふれる曲たちについて裏エピソードを含めて聞いたインタビューは1万字以上。4人の想いが溢れ出すものとなった。なお、wyseは9月29日を皮切りに<wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR「ヒカリ」>と題して全国ツアーを開始。ライブも含めてのコラボ企画となり、4ヵ所8公演に来場した方には、それぞれの会場でコラボレーションツアーを記念した限定グッズが配布されることになっている。

   ◆   ◆   ◆

■人生レベルで普通に考えて
■ありえないことだと思う

──手塚プロダクションとのコラボシングル「ヒカリ」は「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」をモチーフにした作品となっていますが、この特別な企画が実現したいきさつを教えてください。

TAKUMA:来年wyseが20周年を迎えるに当たって、いろんな方たちと出会う中、音楽を通して新しい取り組みをしてきたんですけど、「もっと何かできないかな」と思っていたんですね。そんな中、手塚プロダクションさんがいろいろな方やモノとコラボしていることを知って「何か一緒にさせていただけるってあり得るのかな?」っていうところから始まったんです。で、オファーをしたら、絵を描いてくださることになったんですね。しかもwyseのメンバーの絵を描いて手塚さんの世界とコラボしたものを作ってくださる流れになって。「だったら、その絵をジャケットにしてCDを作りたいよね」っていう話から、結果、4作品も描いていただけることになったんです。
▲月森(Vo)

──今回のジャケットの案はメンバーから提案したんですか?

MORI:承諾を得てから僕と月森でまず手塚プロダクションさんに打ち合わせに行かせていただいたんです。それでこちらから、“こういうものを作りたいんです”って月森がラフ画を持っていって、僕はロゴやパッケージを提案させていただきました。

月森:そう。メンバーを描いていただけるというお話だったので、雰囲気がわかるラフ画を僕が持っていったんです。「鉄腕アトム」のアトムや「ジャングル大帝」のレオ、「リボンの騎士」のサファイアを描いていただけるなら、wyseのメンバーとどんなふうに絡んで遊ばせてもらおうかなって。

──名作の主人公とメンバーが絡んでいる絵になっているのが夢があるというか、手塚治虫ファンもうらやましいのではないかなと。

TAKUMA:光栄というか、夢のようというか、単純に嬉しいですね。人生レベルで普通に考えてありえないことだと思うので。

月森:僕はTAKUMAからオタクと言われるほどマンガやアニメが好きで、ずっとwyseでアニメのタイアップをもっとしたいなと思っていたんですけど、このタイミングで漫画界のトップレベルの手塚治虫先生とコラボできるなんて、これ以上の周年はないだろうなと思いました。

──日本のマンガを変えた巨匠ですものね。

月森:もう恐れ多くもあり。しかも楽曲をリリースして終わりではなく、ツアーを含めてのコラボレーションですからね。
▲<wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力>

──「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」「リボンの騎士」をリアルタイムで読んだり見たりしたのはもっと上の世代だと思いますが、メンバーみんな手塚さんの作品に触れていたんですか?

TAKUMA:月森もHIROもMORIもどっぷりだし、リアルタイムではないですけど、例えば「鉄腕アトム」ってすごく身近な存在なんですよね。深いファンの方に比べると当然無知である僕が、それでもアトムのオモチャやグッズは持っていたし、Tシャツも好きで着ていたし、手塚作品には小さい頃からとても自然に触れていたんです。

HIRO:ファミコン世代なので僕は“火の鳥”のゲームソフトを持ってましたね。手塚治虫さんのマンガは普通に教材として学校の図書室にあるものだったんですよ。それぐらい身近で。

TAKUMA:親が好きだったり、本当に自然と自分たちの生活に入り込んでいたし、HIROが言ったように学校にある時点で、当時、僕らが見ていたアニメやマンガとは少し違う立ち位置にある印象でしたよね。

HIRO:だから、今回のコラボが決まったときには率直に「嘘でしょ?」って思いました。絶対に断られると思っていたから、「え? しかも絵まで描いてくださるんですか?」って。自分たちまで手塚作品のタッチで描かれているって「これは一生ものだな」って。後世に自慢できる(笑)。

月森:頑張っていれば、いいことがあるんだなって思いました。

──「ジャングル大帝Disc」なんて主人公のレオがドラマーとしてwyseに参加していますもんね。

HIRO:そうなんですよ。親や友人にすぐ報告しました(笑)。ビックリして、うらやましがられました。それだけにコラボレーションが決まってからはプレッシャーしかなかったですけど(笑)。作品を汚さないようにって。

──MORIさんにとっての手塚治虫さんは?

MORI:僕が小学校を卒業するかしないかの頃に手塚先生が亡くなられたんです。それで愛蔵版であったり、文庫サイズのマンガがたくさん発売されていたので、触れやすかったのかもしれないですね。あと子供の頃は勧善懲悪モノみたいなマンガが好きだったんですけど、中学生ぐらいになると背伸びしたくなって、手塚先生のディープでダークサイドを感じるマンガに影響を受けましたね。

──ちなみにどんなマンガですか?

MORI:僕は「きりひと讃歌」っていうマンガが好きなんですよ。人間の残酷なところもピュアなところも描かれているんですけど、影があった上での正義というテーマがすごく刺激的で。

月森:僕も「きりひと讃歌」は中学生のときに読んでいちばん好きかもしれないですね。

MORI:今回のジャケットに描かれている3作品はとてもイメージしやすいものだと思うし、「鉄腕アトム」を読んだことがない方でもアトムは知っていると思うんですよ。それぐらい有名な作品ですよね。でも、3作品にも悲劇的な部分があって、だからこそ輝いていたりするんですよね。

月森:そう。「鉄腕アトム」もわかりやすい“アトム”というアイコンがあって、子供が楽しめるマンガなのに、大人が見ても考えさせられるっていう。深いんですよね。

HIRO:「鉄腕アトム」は国産アニメの第1号の作品なのでリアルタイムでは見ていなくても再放送で見ていたし、アトムの主題歌はみんなが知っているレベルじゃないですか。そういう作品とコラボレーションするに当たって楽曲でどうアプローチしていくかっていうのがさっきのプレッシャーの話に繋がるんです。wyseはwyseらしくっていう部分を押し出すだけではコラボレーションの意味がないと。詳しくは曲を作ったTAKUMAが語ってくれると思います(笑)。
■「なぜヒカリという言葉を選んだのですか?
■ピッタリの言葉です」と手塚さんが

──では、お願いします。3作品に収録されている曲は全てTAKUMAさんが作詞作曲を手がけていますが、これは最初から決まっていたんですか?

TAKUMA:決まっていたわけではないんですが、自然とそうなりました。3作品共通の表題曲が「ヒカリ」で、例えばカップリングはMORIやHIROのオリジナル曲が入っていてもいいんですけど。

HIRO:そういう作り方もできたんですけど。

TAKUMA:例えば、コラボではないwyseの新曲や旧曲が入っていてもいいけれど、それだとコラボさせていただく意味がないと感じるようになって、それぞれの手塚作品のテーマや世界観を自分たちのフィルターを通して楽曲で表現することにチャレンジしようということになったんです。HIROの言うプレッシャーはすごくありましたけど、逆にいうとすごくやりがいがあるし、何をすべきかが明確に見えていたので。
▲TAKUMA(Vo&B)

──ということはメンバーとのやりとりをはじめ、いつもと作り方が違ったわけですね。

TAKUMA:そうですね。表題曲の「ヒカリ」を含めてwyseの曲ではありますが、wyseとしての新曲を作るというよりも「こういうテーマを元に曲を作ってみたんですけど、どうでしょう?」っていう。

──手塚治虫ファンも手にとってくれる可能性があるシングルですものね。

TAKUMA:そうですよね。先日、手塚るみ子さん (手塚治虫氏の長女であり、手塚プロダクションの取締役)と対談して、いろいろお話させていただいたんですが、作品のテーマを背負って曲を書くというより、僕たちが思うイメージを表現して、聴いていただいた時になにかピンとくるものがあったり、繋がるものがあったら嬉しいなという想いはあります。20年前には僕は高校生で手塚さんの作品とコラボする未来が来るなんて思いもしなかったんですけど、そう考えるとこれまでの月日がこの作品を作るための準備だったのかなと思えるぐらい。そういう意味でもスイッチが入って「やるぞ!」という気持ちになったし、これまでやってきたことをフルに活かして、wyseらしいかどうかよりもwyseが作る手塚さんとのコラボ作品としての、一つの答えを目指したい気持ちがありましたね。

──表題曲「ヒカリ」には“10年前の僕等が 今を描けなかったように 想像するそのさらに 向こうへ歩いていこう”という歌詞が出てくるので、TAKUMAさんが今言ってくれたことと通じていますね。

TAKUMA:コラボが決まったその時くらいから、タイトルは「ヒカリ」に決めていたんです。

──ちなみにその理由は?

TAKUMA:僕たちが生きている世界は光だけではなく、対極にある影があって成立していると思うんですね。例えば近くにいる誰かが影の世界に居続けてしまっているなら、どうにかその人の為に、その人を照らせる光になってあげたい。自分自身はどちらかというと影のサイドの人間なので努力をしないといけないけれど、その人の為でなら僕はその努力をしてでも光となって照らしたり、導いてあげたい。その結果、その影から抜け出せたならば、今度は光と光とでは共存することはできないから僕が影になって、その人がより輝けるうように、という精神論が自分の中にあるんですが、そういう光と影に通じる世界観が手塚先生の作品にあるんじゃないかと思ったんです。なので、僕にしては珍しくタイトルは最初から「ヒカリ」に決めていました。

HIRO:曲もできてないのに「ヒカリ」だって言ってて(笑)。

──捉え方としては、表題曲「ヒカリ」に手塚作品全体に通じるテーマがあるということなんですか?

TAKUMA:手塚さんの作品がそうだとは僕は言える立場にはいませんが、僕たちなりに感じ、繋がったものがそうであれば、それは嬉しいことだなと、そう思っています。手塚るみ子さんも曲を聴いて、今回の3作品以外でも手塚先生が描かれてきたものの核と通づるものがあるとおっしゃってくれて。

HIRO:手塚先生は戦後の暗闇の時代を過ごされて、復興に向かっていく中、街の灯りが1つずつ点いていく様を見て「僕はこれを描く」って漫画家を目指されたそうなんですよ。なので、「なぜ“ヒカリ”という言葉を選んだのですか?」と向こうからおっしゃってくれて。

TAKUMA:ありがたかったですね。

HIRO:「ピッタリです」っておっしゃってくれて。
▲鉄腕アトム Disc「ヒカリ / 僕のヒーロー」

──聴かせていただいて、どの曲も素晴らしいですが、「ヒカリ」はメロディラインがいちばんwyseらしいと感じたんです。

MORI:コラボのいちばんのキーワードが“ヒカリ”だったので、演奏にしてもwyseらしい色に落とし込みやすかった曲ですね。手塚作品のファンの方たちにとってはwyseに出会うスタートラインになる楽曲だと思うし、アトムが入り口になってくれることはすごく大きいですね。

HIRO:最初に原曲を聴いたときはコラボすることが決まったからこそ、生まれた曲なのかなって思いましたね。「wyseの新曲、作ります」「どういう曲にしようか」って話してできる曲じゃないなって。原曲の時点ではタイトルと曲だけだったんですけど、歌詞がなくてもメッセージが伝わってきて、ギターのフレーズもすぐに浮かびました。僕自身、「ヒカリ」がいちばん好きなので、「wyseらしいね」って言っていただけるのは嬉しいです。自分たちの中では“らしさ”は意識していなかったので。

──ギター録りにもいつもと違う意識で臨んだんですか?

HIRO:そうですね。原曲から受けとったイメージを崩さずにシンプルに。それは今回の4曲に通じることかもしれない。曲に込めた想いをそのままトレースする形で弾けたらいいなって。余計なことは一切してないです。

TAKUMA:トゥルトゥルトゥルとか?(笑)。

HIRO:僕の色は出さない。

TAKUMA:ギターソロでちょこっとだけ出てくる(笑)。

──ははは。控えめな速弾きが?

HIRO:でも、短くしてます(笑)。

──ギターに対するアプローチというところで同じくMORIさんは?

MORI:僕は自分が得意なことをやってますね。楽曲に沿うという意味でいったらそういうギターがスッとハマってくれた曲なので、プレッシャーというよりも「楽しいな」って。

月森:「ヒカリ」に関しては、タイトルを聞いたときにポジティヴな印象を受けたのと手塚プロとのコラボの表題曲なので、“がんばっていこうぜ”っていうわかりやすいものになるのかなと想像していたんですけど、そうではないなと。曲を聴いて幸せの絶頂にいる人より、辛かったり悲しい経験をしてきた人のほうが希望が見えるし、望むんだろうなと思ったので、いろいろなことがあったからこういう声になって、こういう歌になるんだろうなって感じられるものにしたいと思って響きや息遣いに気を配って歌いました。今の年齢だから歌える「ヒカリ」があると思ったので。

──いつもと違うプレッシャーはありましたか?

月森:うーん、手塚ファンが聴いてくれるかもしれないと考えたらプレッシャーですけど、これを機会にwyseをガンガン押していろんな人たちに知ってもらいたいという気は全然なかったんですよ。4曲の中では「ヒカリ」はいちばんwyse寄りかもしれないですけど、今回はコラボということが大事だったので、全曲、wyseらしくて同時にらしくないことをやっていると思います。
■子供から大人まで歌える
■こんな曲をやるロックバンドはいない

──確かにチャレンジしていますよね。「鉄腕アトムDisc」に収録されているカップリング「僕のヒーロー」は出だしの“きらきらきーら きーらら”っていう歌からして驚きました。子供たちが歌える曲調だし、サウンドも夜空とか流星のイメージで。

TAKUMA:「ヒカリ」を作ったあと、いちばん最初に絵が浮かんで、方向性が決まったのが「僕のヒーロー」です。サウンドのイメージは近未来的で電子的なんだけど、キャッチーでポップで、聴き心地がいいメロディ。そこにひっかかりがあって少し物悲しくなるような歌詞を載せようというのがテーマでした。例えばまだ幼い頃、5歳くらいのときにはアトムを見たり、オモチャで遊んでいたとしても、15歳くらいになったらオモチャも手からは離れて、見ているアニメも変わって生活スタイルも変わっていく。だけど、どれだけ大人になったとしてもアトムは自分たちの中心で支えになってくれる存在で「いくつになっても僕のヒーローはアトムだよ」って。と同時にどれだけ時間がたってもアトムも「変わらず、いつまでも僕がついているよ」って、そう思っていてくれるような、そういう存在、関係性を、世界を描いたものが「僕のヒーロー」ですね。
▲HIRO(G)

──“君のその頑張り いつもそばで見てるよ”っていう歌詞も出てくるし、アトム視点からの曲なのか、逆なのかどっちにも捉えられますものね。

TAKUMA:そうですね。どちらの解釈もできるように。例えば80歳になったとしても、その感覚は変わらない。いつまでたっても励ましてくれるような。そこを描いてみました。

月森:「僕のヒーロー」は最初に聴いて歌詞を見たときに「この詞はアトムのどんなところを歌っているんだろうな」ってすごく考えましたね。wyseは「この曲はこういう想いで書いたんだ」って話すバンドではないので、自分で想像しながら歌うんですけど、絶対的な信頼、無償の愛、繋がりみたいなものを感じたので、あえて気持ちの部分だけを歌いました。アトムがモチーフになっていることを知らなくても友達だったり、親だったり、子供だったりに当てはめても聴けるような。

──そばにいなくても繋がっていると思えるような?

月森:そうそう。何年経っても距離が離れても変わらない気持ちを歌に入れられたら曲の輪郭がよりハッキリしてくるのかなと思って。

HIRO:僕はアトムの中に僕らがいて一緒に遊んでいるジャケットのイメージや楽曲がポップなので、そこを意識して制作に取り組みました。ギターの音使いやフレーズも今までにない感じですね。すべての曲に言えるんですけど、こんなチャンスがなければ、こういうギターは弾いていなかったと思います。

──子供から大人まで歌える曲だし。

HIRO:そうなんですよ。そこは大事にしたかったですね。「こんな曲やるロックバンドっていないでしょ?」って。

MORI:この曲はシンプルなギターで支えるという気持ちで取り組みました。さっきTAKUMAが歌詞では物悲しさも表現したかったって話してましたけど、アトムの突き抜けた明るい部分だけを切り取ったら、親しみやすくはなるかもしれないけど、この深みは出ないだろうなって。

TAKUMA:その通りなんです!

MORI:今、僕がしゃべってますから(笑)。手塚作品は大人になって、ふとしたときに読み返したくなったり、手元に置いておきたいものだと思うんですよ。「ヒカリ」もそうなんですけど、光と影が同居している。小さい頃のアトムはスーパーヒーローですけど、年齢を重ねて読むとアトムの悲しい生い立ちや、それゆえの優しさや強さなんだってことがわかってくるんですよね。この曲も初めて聴いたときの印象と、年月が経って聴いたときとでは感じることが違うかもしれない。淡白に作った曲はすぐに飽きてしまうけれど、「僕のヒーロー」はライトなのに、きちんと重厚な部分も入っている。僕が思うアトムが凝縮された曲ですね。

TAKUMA:僕も、突き抜けた王道の曲と歌詞ができても「こっちじゃないな」っていう気持ちがあったんですよ。「僕のヒーロー」は例えば子供番組とかで流れるような、そういうサウンドイメージで、そこにどんなメッセージを込めるか、そこがとても重要だなと。
▲ジャングル大帝 Disc「ヒカリ / Link」

──「ジャングル大帝Disc」に収録されている「Link」はジャングルビートが取り入れられていて、サウンドにもメッセージが感じられます。

TAKUMA:この曲は作る前からビート感、スピード感、力強さを大事にしたいと思っていて、イントロのリズムは「これしかないだろう」って。でも、この曲も「僕のヒーロー」と同じで、リアルタイムでは手塚先生の作品を見る世代ではなかった僕たち、そんな僕たちがその中で受け取った、感じ取ったものを表現してみました。若さ、蒼さではないですが、歌やギター、ベースのアプローチも勢いがあるというか、落ち着いてはいない感じが曲のスピード感などにつながればと。それと曲が始まったときに太陽や空や風、自分がその世界にいるかのような空気感を表現できたらいいなと思いました。

──主人公のレオが住んでいる森をイメージできるような?

TAKUMA:そうですね。それと同時に環境保全に対するメッセージも感じられるような、そんな曲にしたかった。歌詞の中の“僕”と“君”は“現在”と“未来”という意味も含んでいるんです。今の僕たちが生きていることが未来にリンクすると思うし、環境問題は自分たちが現実の社会の中で問われていることだと思うんですよ。例え小さなことでも行動を起こすのか、起こさないのか、気づくのか気づかないのかが数十年後に大きな変化となって現れてくる。人も繋がっていけば身近に感じるわけで。ただ、こういう話だけを描くと少し重くなり過ぎるし、もしかしたら手塚さんの作品、イメージとも離れてしまうかもしれないとも思ったので、その辺りをうまく調和させて描けたらなって思いました。

──“森を駆け抜けるあの姿 白く真っ直ぐなイメージ”という歌詞にも情景が浮かびます。

TAKUMA:“白”っていうワードがあるだけでレオが連想できるぐらいに、やはりレオはすごいんですよね。レオの魂は僕たちの中にも生きているんじゃないかと思って書きました。

MORI:「Link」は4曲の中でいちばんバンドサウンドが前に押し出された曲ですね。疾走感があってビートが跳ねていて。ギターの音もたくさん入れました。

──ワウを使った音だったり?

MORI:そうですね。TAKUMAも言ってましたけど、僕らがやれることを背伸びせずにやることが大事で、それっぽいことをやったら嘘になるなって。あと、月森が話したように今回のコラボシングルはwyseであってwyseではないところがあると思うんです。だから、僕は“wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力”というロゴがアーティスト名ぐらいに思っていて、演奏面もwyseだけでは収まらない部分を出せたかなって。

HIRO:僕はこの曲もジャケットを見ながら聴いてほしいですね。

TAKUMA:俺ら、ドラムいなくて良かったなって(笑)。実はジャケットとは同時進行だったんでそれを見ながらの制作とはいかなかったんですけど、結果、「なるほど!」と思うものに仕上がって。

HIRO:リンクしたんだね。
■変化しながらブレないメッセージを
■伝えていくことが大事なのかもしれない

──「リボンの騎士 Disc」の「Blue Moon」は映画音楽のような美しさもあり、確かにメロディやアプローチからしてwyseとは違うテイストですね。

TAKUMA:この曲がいちばん難しかったですね。ギターサウンドで「リボンの騎士」の世界を感じさせようとするのは、今回は少し違うかなと思ったので、ピアノとストリングスを軸に考えて少しずつ構築していきました。
▲MORI(G)

──「リボンの騎士」は凛々しい面もありますが、この曲ではロマンティックなところに焦点を当てていますね。

TAKUMA:そうですね。この作品は妹が見ていたから、世界観はなんとなくではありますが知っていたので。でも、今回、改めてDVDを買ったり、資料を読んだりして、今実際に感じたことと自分の記憶の中に残っている想いを合わせるような形で制作に入りました。大事にしたかったのは「リボンの騎士」に描かれている2面性。主人公のサファイアの中に男のコと女のコの心が同居しているもどかしさを描きたいと。なのでポイントごとに歌い分けて、僕と月森のダブルボーカルで2面性を表現できればというような試みも行なっています。

月森:コラボがなかったら絶対にwyseからは出てこなかった曲ですね。歌い方にしてもそうだし。

TAKUMA:だって楽曲提供だとしたら、女性に歌ってもらっていると思う。

月森:そう。最初聴いたときには「これ俺が歌う曲じゃないな」と思ったんですよ。

TAKUMA:キーもいつもより高いんですよ。

月森:で、自分が歌うならどうやって歌えばいいんだろうってすごく悩みましたね。「女の人が歌えばいいのに」と思われたくなかったので。

TAKUMA:声、変えてね。

月森:そうそう(笑)。いろいろな歌い方を試して。でも、今聴くと僕、「Blue Moon」がいちばん好きなんですよ。男性とか女性とか意識せずに聴ける曲になったし、この曲を60歳になっても70歳になっても歌える人間でいたいなと思えた曲です。

──総合して、「ヒカリ」をはじめとした全曲に、未来へと想いを繋げていきたいというメッセージが感じられました。

TAKUMA:大人になったことで、子供たちがまだ感じ取れないような、受け取れないようなメッセージを感じられるのであれば、それを僕たちが次の世代に繋ぐものとして、上手く変換したり発信していかないといけない。年を重ねたからこそ受け取れるものをどう表現するのかが問われているのかもしれないですね。手塚るみ子さんは「今、「リボンの騎士」を描いたら当時と違うテイストになるだろう」とおっしゃっていましたけど、時代の中で表現方法が変化していくこともすごく大事だし、流行り廃りという意味ではなく、僕らも変化しながらブレないメッセージを伝えていくことが大事なのかもしれないなと思いました。

──なるほど。

TAKUMA:それと今回のコラボシングルを作る上で、僕らはドラマーがいないので、MOTOKATSUさんとLEVINさんが参加してくれたことで、新しい魂を入れていただいたと思っていますし、アレンジャーとして炭竃くんが参加してくれたことによって、僕たちはもう1つ新たな、才能ある脳を持つことができた。それこそ皆さんから光をもらえたので、サポートしてくれた方々がいたからこそ作り、残すことのできた作品だと思います。
▲リボンの騎士 Disc「ヒカリ / Blue Moon」

──ツアー<wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR「ヒカリ」>では新たな試みもあるんですよね。

TAKUMA:はい。やりたいことはいろいろあるんですが、2DAYSずつのツアーなので1日目はwyseが再始動してからの曲だけで構成したいと思っています。で、2日目はwyseが今まで発表してきた曲をフルに使って見せていこうと。今までやったことがないステージになると思うし、20周年に向けて僕たちが歩んできた道を紐解くことにも繋がっていくのかなと。

──なるほど。1日目と2日目では内容が全然違うんですね。

TAKUMA:そうですね。1つ共通しているのは、メインになるのは今回のコラボシングル「ヒカリ」なので4曲をどうセットリストに組み込んでいくのか。このツアーがコラボのゴールでもあり、僕たちが20周年に向けてやってきたことのゴールでもあるので、楽しむことはもちろん、僕たちが未来に向かって進んでいくためのものを探して、提示しないといけないとも思っています。

HIRO:コラボシングルがキッカケでwyseのことを知って、初めて足を運んでくださる方もいると思うので“こういうバンドなんだ”って伝わるアプローチをしないと。

──それとジャケットのようにライブでも何らかの形でコラボするんじゃないかなと想像するんですが。

HIRO:まずは自分たちがちゃんとライブで表現しないとコラボの意味がないと思うので。その上で映像があるとさらにいいかなとか。

TAKUMA:そうだね。

HIRO:ひとつ決まっているのは初日のさいたまには手塚るみ子さんがご挨拶に来てくださいます。

TAKUMA:あと勝手に思っているのは「鉄腕アトム」のあの主題歌を僕たちのスタイルとして、なにか良い形でカバーすることはできないかな?とも考えてみたりはしています。それもひとつのリスペクトの形なのではないかと。ただカバーするだけではなく、どこかにちゃんとメッセージが残るものとして表現できたら意味があるものになるかな、そう思ったりもしています。

──ちなみに4ヵ所8公演に来場した人は限定グッズがもらえるという企画もあるんですよね。

月森:手塚プロダクションさんとやりとりしてクリアファイルを作りました。

HIRO:ツアーグッズでもコラボしてるんだよね?

TAKUMA:そう。Tシャツとか、単純に欲しいよね。ウチの親も欲しがってますから(笑)。

取材・文◎山本弘子
■wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION Single「ヒカリ」

▲鉄腕アトム Disc「ヒカリ / 僕のヒーロー」


▲ジャングル大帝 Disc「ヒカリ / Link」


▲リボンの騎士 Disc「ヒカリ / Blue Moon」


2018年9月26日(水)リリース
※3形態での発売 各2,500円(税別)
・鉄腕アトム Disc「ヒカリ / 僕のヒーロー」
・ジャングル大帝 Disc「ヒカリ / Link」
・リボンの騎士 Disc「ヒカリ / Blue Moon」

【コラボシングル「ヒカリ」購入特典】
・新星堂全店「アウトストアLIVEイベント招待券」(CD1枚購入で1つ)
・タワーレコード各店(対象外店舗有)「オリジナルコラボトイレットペーパー」 ※全3種いずれか1つランダム配布(CD1枚購入で1つ)
・HMV各店(対象外店舗有)「オリジナルコラボトイレットペーパー」 ※全3種いずれか1つランダム配布(CD1枚購入で1つ)
・ライカエジソン全店 「オリジナルコラボデザインプレートA」 ※3タイプ同時購入で1つ
・マジカルスクエア「オリジナルコラボデザインプレートB」 ※3タイプ同時購入で1つ
・ブランドエックス「オリジナルコラボデザインプレートC」 ※3タイプ同時購入で1つ

【コラボシングル「ヒカリ」インストアイベント】
09月25日(火) 19:00 HMV渋谷(トーク&撮影会)
09月26日(水) 19:00 青山RizM アウトストアLIVEイベント
09月30日(日) 11:00 HMV大宮 5F(CDサイン会)
10月21日(日) 11:00 タワー難波(トーク&CDサイン会)
11月04日(日) 11:00 HMV栄(トーク&サイン会)
11月24日(土) 11:00 ライカエジソン名古屋店(トーク&CDサイン会)
11月25日(日) 12:00 タワーレコード梅田NU茶屋町店(トーク&CDサイン会)


■<wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR「ヒカリ」>

09月29日(土) さいたま新都心VJ-3 (wyse祭) ※GUEST:RYO/Junichiro(from KING)、石月努
OPEN 14:30 / START 15:00
09月29日(土) さいたま新都心VJ-3 (FC chain会員限定)
OPEN 18:00 / START 18:30
09月30日(日) さいたま新都心VJ-3
OPEN 16:00 / START 16:30
10月20日(土) OSAKA MUSE
OPEN 16:30 / START 17:00
10月21日(日) OSAKA MUSE
OPEN 16:00 / START 16:30
11月03日(土) 名古屋SPEAD BOX
OPEN 16:30 / START 17:00
11月04日(日) 名古屋SPEAD BOX
OPEN 16:00 / START 16:30
12月07日(金) 新宿ReNY ※Support Dr:LEVIN
OPEN 18:30 / START 19:00
12月08日(土) 新宿ReNY ※Support Dr:MOTOKATSU
OPEN 16:00 / START 16:30
▼チケット
各公演 前売 5,000円
2DAYS通しチケット各会場 9,600円
https://ticket.yahoo.co.jp/tour/00003152/

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