結ばれるのではなく、誰かと結ぶ「蝶々結び」

結ばれるのではなく、誰かと結ぶ「蝶々結び」

結ばれるのではなく、誰かと結ぶ「蝶
々結び」

Aimer 蝶々結び

紐が結ばれ解ける様な音に、吸い込まれそうな感覚を覚えるイントロが一瞬止まると、ピアノの伴奏と共にAimerの切なくて甘い歌声が聞こえてくる。

「蝶々結び」の結び方の説明で曲は始まっていく。今は当たり前に出来ている「蝶々結び」でも、はじめは皆こんな風に誰かに結び方を教わったものだ。だから耳を傾けている間に、昔の記憶が引っ張られて妙な懐かしさが込み上げてくる。“一人で靴紐を結べるようになったのは、いつだろう?”なんて、思い返してみたりする。
この楽曲の中で「蝶々結び」は、人との繋がりに例えられている。
蝶々結び」のように、人との繋がり方を誰かに教えてもらう

幼い頃の「蝶々結び」は意外と難しい。通したはずなのに紐が通っていなかったり、せっかく苦労して”結べた!”と思っても変な形になっていたりする。でも、何度も結び直す度にコツを掴み、一人で結べるようになっていく。
きっとこれは、人との繋がりにも言えることだ。「蝶々結び」のように、人との繋がり方を誰かに教えてもらうことはないかもしれない。でも色んな人と繋がることで、分かってくることがある。人に出会い、別れることを通して学ぶものが確かにあるのだ。

“早く綺麗に結べるようになりたいな”と幼い頃、「蝶々結び」を練習するように、”誰かと心から繋がりたい”と思うからこそ、何度でも人は出会い、誰かと繋がろうとするのだろう。そして大切な人と繋がる度に、この繋がりが永遠で、強く解けないものであればと静かに祈っているのだ。
繋がりの結び目はほどけてしまう

「蝶々結び」は結べば華やかなのに、片方の紐を引っ張るだけで簡単に解くことが出来る点がとても有能だ。でも、それが人との繋がりとなると、非常に厄介な点になってくる。少しでも2人が違う方向に進み始めれば、嘘のようにするりと繋がりの結び目はほどけてしまうからだ。
離れていくお互いの心が目に見えれば、覚悟も決まるし、軌道修正もできるのに。残念ながら心は目に映らない。
だから同じタミングで心を決めて、お互いに別れを告げるのはとても難しい。どうしてもどちらかの心が遅れをとってしまう。多くの人と繋がり、様々な形の別れを経験すればするほど、別れの難しさは身にしみて分かってくるはずだ。
この曲の主人公が言う「分かってるよ」はたった一言だが、そこには、たくさんの別れの経験と想いが詰まっているように思う。
とても寂しいことだが、相手を思ってやったことが仇になったり、想いが伝わらなかったり、気づけば独りよがりになっていたりすることは、良くあるものだ。
だから、人と繋がることの素晴らしさだけではなく、人と繋がっていく上での、どうしようもない不器用さや歯がゆさも歌ってくれるこの曲は、聴き手を大きく包み込んでくれるのだ。
どんな縁も結ばれているのではなく、自分達が結んでいる
「蝶々結び」は片方の紐の端だけでは作れない。両方の紐の端が必要で、両方が絡み合わなければ結び目を作ることは出来ない。
人の結び目も同じで、友達になるにも、恋人になるにも、自分が思うだけでは不可能だ。相手の思いと意思、時には自分の思いと意思が必要になる。
だから、どんな縁も結ばれているのではなく、自分達が結んでいるのだ。繋げているのだ。
Aimerの沁みる歌声が1つの魅力となっているこの曲は、RADWIMPSの野田洋次郎の楽曲提供&プロデュースで製作されている。
野田自身もコーラスとして、またハナレグミもギターとコーラスで楽曲に参加しており、深く柔らかい彩りを添えている。
「蝶々結び」はAimer、野田洋次郎、ハナレグミ。3人のアーティストの繋がりで生まれた楽曲だ。3人が織りなす「蝶々結び」の紐の端は聴き手まで伸び、私達の心と優しく繋がろうとしてくれる。
TEXT:柚香

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