【清水ミチコ・山人音楽祭 2018】モ
ノマネ……、いや憑依芸で観客を楽し
ませまくった清水ミチコ。

山人音楽祭 2018【妙義ステージ】 清水ミチコ
フェスに芸人が出演するのは珍しい時代じゃなくなったが、音楽ネタをやり続ける清水ミチコがフェスに出るのは極自然な事。今年フェスで彼女のライブレポートをするのは2回目なのだが、前回、「ネタをやります!」と言ってから始めたのが、とてつもなく潔くて、カッコ良かった。今回もハンドマイクを片手に元気よく丁寧に挨拶しながら、ゆっくりじっくり温めていく。
『山人音楽祭』への初出演を「最初で最後になるか、レギュラーになるかはあなたたち次第です! 助けあっていきましょう!」と言い、「向こう歩いてる人はBRAHMAN行く人ですよね! ここにいる人はBRAHMAN行かなかった人ですよね!」と、ちゃんと裏のステージに誰が出ているかも把握している。ちょっとした事なんだろうが、こういう細かい気遣い、痒いところまで手が届くような言動が大事だと改めて思う。まだ何もしてないのに、これだけで観客が一気に心奪われている事がわかる。キャリア30年以上ある方なんで当たり前なのかも知れないが、逆にキャリア30年以上ある方が、ここまで丁寧に進めている事に感動してしまう。
清水ミチコ
妙義ステージだけに「私の妙技を楽しんでください! さっき考えました(笑)」なんておっしゃってから、10代から100代(歳)の10世代の有名人モノマネをピアノ弾き語りで披露していく「100年の声の歌」へ。旬の大坂なおみから黒柳徹子、瀬戸内寂聴、懐かしのきんさんぎんさんまで登場するが、ただモノマネするだけでなく、ちょっとした毒があったりするのもたまらない。「Twitterなどに書かないでね!」とひとこと付け加えるだけで、余計に盛り上がる。ライブならではの現場に来て生で観たからこその共有感。完全にひとつになっている。芝生の斜面のとこまで人はみっちりいるし、全員が青空の下で笑っている。あまり簡単に使いたくないが、こういう光景こそピースフルな光景なんだと思った。
清水ミチコ
いわゆる芸能人だけでなく、政治家からプロレスラーまでが、童謡やディズニー楽曲にのせて歌われていく。そして、もちろん笑いが絶えない。最後は「山人に来れなかったミュージシャンを私の体に降ろしていきます!」と言ってから、メドレーへ。以前、矢野顕子が清水ミチコと共演した際、単なるモノマネではなく、これはひとつの芸なんだと絶賛した事を未だに思い出すが、その矢野からメドレーは始まる。井上陽水中島みゆき研ナオコ美輪明宏森山良子松任谷由実秋川雅史と、そうそうたる面子が登場したが、やはり忌野清志郎の時は、どうしても必要以上に聞き惚れてしまう。清水が本気で清志郎を好きなのがわかるからこそ、本気で降りてきているというか……、モノマネはモノマネなんだが、本人も降ろすといったように、まさしく憑依芸というか……。
最後は明日のコンサートの告知や年明けの日本武道館の告知をしっかりして、ほっこりした雰囲気に。そんな中、年齢も関係なく、その場にいたフェスキッズたちがみんな「すごかったね!」と言いながら、笑顔で帰っていく姿が、とても嬉しかった。

文=鈴木淳史 撮影=タマイシンゴ

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着