尾上松也×大原櫻子 ロングインタビ
ュー! 「俺は夫人の指の先で転がさ
れるランダムスターになるね」新感線
☆RS『メタルマクベス』disc2

2018年7月23日(月)から絶賛上演中の「ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』 Produced by TBS」。東京・IHIステージアラウンド東京を舞台にdisc1、disc2、disc3の3チームに分かれ、年末まで連続上演される。
『メタルマクベス』とは、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『マクベス』を、劇団☆新感線の主宰であり演出家のいのうえひでのりと人気脚本家・宮藤官九郎とがタッグを組み、大胆に脚色が施されて生まれた新感線の代表作の一つ。2218年の人類が衰退した世界と、空前のバンドブームに沸く1980年代の日本を行き来しながら、ヘヴィメタルサウンドと共に、いのうえ✕宮藤流『マクベス』が描かれる。
9月15日(土)から始まるdisc2にて、作品の主人公・マクベスとマクベス夫人(本作ではランダムスターとランダムスター夫人)を演じるのは、人気歌舞伎俳優・尾上松也と、同じく人気アーティストの大原櫻子だ。二人とも新感線は初参加。加えて松也が33歳、大原が22歳と最年少コンビで本作に挑むこととなる。二人が今、どのような『メタルマクベス』の世界を描こうとしているのか。話を聞いてみた。
■何度観ても新しい発見があるのが『メタルマクベス』
ーー先に行われた『メタルマクベス』製作発表時の松也さんのテンションの高さが今も忘れられません! 松也さんがシャウトするイメージがそれまでなかったものですからあのライブは本当に驚きました(笑)。
松也 あれでもまだ出し切ってないんですよ(笑)。本当に楽しくて! あの日僕は歌舞伎の公演に出演した後、会場にギリギリで入ったので、それなりに緊張もしていたんです。櫻子さんはご自身で普段コンサートなどで歌う機会があるかと思いますが、僕なんてあんな場所で歌う機会なんてないですから、単純に楽しくて、もう2、3曲やりたかったくらいです(笑)。あの時ステージでご一緒したメンバーはほぼ初対面で、健ちゃん(浦井健治)くらいしかお話したことがなかったんです。櫻子さんも歌番組ですれ違ったときに「今度よろしくお願いします」とご挨拶したくらいですし。あの会見に出演したメンバーでまた何かやりたいね、ってお話をするくらい楽しかったんです。
尾上松也
大原 本当に楽しかったですよね。あの日は会見とは別でいろいろな取材もしていただいたんですが、皆さんと一緒にいるのが本当に居心地がよかったんです。
ーー今まさに上演中の『メタルマクベス』disc1はご覧になっていますか?
松也 僕はまさに今日観に行くんですよ!
大原 私はもう観に行きました。360°客席が回り、4つの舞台に分かれていて。一つひとつの世界観が存分に味わえる、それがスムーズに観ることができておもしろいなあって。映像もゲームの世界のようで「今は〇年のどこ」って表示されるので分かりやすかったです。橋本さとしさんと濱田めぐみさんが演じるランダムスター夫妻を観て「私たちが演じるとまた全然違う夫婦像になるんだろうなあ」って思いましたね。
大原櫻子
ーー初演は映像でご覧になったそうですが、その感想もお聞かせいただけますか?
松也 最初拝見した時は面白かったのですが、少し分からない所もありました。何度も観ると次々と新しい発見があって。何度観ても飽きないのがこの作品の面白いところだと思います。
ーー改めて、新感線に初めて出演できる、と決まった時、どんな気持ちになりましたか?
松也 僕は新感線に前から出演してみたいと思っていましたので、とても嬉しかったです。「ようやく来たか!」って思いました(笑)。ですがもし僕が出演させていただけるのならそれこそ『髑髏城の七人』の様な時代劇になるのでは、と勝手に想像していたんです。それなら歌舞伎の要素もたっぷり使えますし……。ところが、その要素がほぼゼロの『メタルマクベス』に出演することになり(笑)! まったく想定外でしたが嬉しかったです。プライベートの趣味のほうが近くなりましたね。
大原 私は不安でいっぱいでしたね。どんな作品でも不安ですけど。劇団☆新感線は以前から何度も拝見していて、同年代の女性も出演しているイメージだったので、いつか出てみたいなあと思っていましたが。まさかのマクベス夫人役で「え、私がマクベス夫人?」。意外な作品が来たなあって思いましたね。
(左から)大原櫻子、尾上松也
ーー出演するにあたり、例えば新感線経験のあるご友人に相談したりしましたか?
松也 僕は(生田)斗真が何度か出演しておりましたので、彼から話をよく聞いていました。また『髑髏城の七人』には(小栗)旬くんも出演されましたし、(中村)七之助くんも『歌舞伎NEXT 阿弖流為<アテルイ>』で出演されていますから、皆から新感線がどんな感じなのか聞いてはいました。ですが実際に稽古場に入ってみたらやはり想像とは違う感じでしたね。やってみないと分からないものですね。
いのうえさんはご自身の中で一つひとつのお役がどう動いてほしいのか、ビジョンが細かくあって、どういう言い方で、どんなニュアンスで演じてほしいのかを、頭からきっちり決めて作っていくものだと思っていたんです。ですが実際にはその場で皆で考えながらやってみようという作り方でした。いのうえさんがその時にひらめいた事を具現化し、そのなかで自分でも工夫していく作り方でしたね。
大原 私は成河さんなどから新感線の事を教えていただきました。以前から親しくさせていただいているので『髑髏城の七人』を観に行ったときも、また『メタルマクベス』に出演が決まったときも「へー! 楽しいよー! いっぱい遊んじゃえばいいよ!」って言ってくださったので、きっと楽しい現場なんだろうなって思ったんです。
ーーちなみにお二人の「初・新感線」観劇はどの作品ですか?
松也 TOKIOの松岡(昌宏)さんが主演していた『スサノオ-神の剣の物語-』でした。斗真が初めて新感線に出演するということで観に行ったのが僕にとっても初めての新感線でした。『スサノオ』を観たとき、衝撃を受けました。僕は当時歌舞伎以外の舞台をほぼ観たことがなかったですし、歌舞伎とは全然違いましたから。そもそもミュージカルがあまり好きではなかったんですよ(笑)。舞台を観て「なんじゃこりゃ!」って思いました。ヒーロー戦隊もののようにも見えて、大の大人たちがこういうことを一生懸命やっている不思議な空間って思っていましたね(笑)。
大原 私の家は家族全員お芝居を観に行くのが大好きだったので、小さい頃からいろいろ観に行っていたんです。だから新感線で最初に観たのがなんだったのかもはや分からないくらい。でもこの世界に入り「いつか新感線の舞台に出たい」と自覚してから観に行ったのが『乱鶯』(みだれうぐいす)でした。真剣に勉強しようと思って観に行った記憶があります。新感線の舞台って、殺陣のイメージが強くあり、それ以上に音楽のイメージも強く、観る作品観る作品、すべて違う印象があるのがすごいと思いました。
大原櫻子
■どうなる!? 二人が描くランダムスター夫妻の未来予想図は
ーーそんなお二人がこの秋、『メタルマクベス』に出演されることになりました。歴代でいちばん若い夫婦という事になり、いろいろな点で「未知数」さを感じるのですが、今の段階でどのような夫婦を作っていこうとしていますか?
松也 あまり意識してないですね。このままで大丈夫だと思います。なぜかと言うと櫻子さんがすごくしっかりしているから。先日右近(健一)さんと話していたのですが、「なんだか櫻子ちゃんってどっしりしているよね。俺の方がチャラチャラしているのに櫻子ちゃんは落ち着いていて頼もしいよね」って。そこでもうランダムスター夫人のキャラクターの方向性が見えてるよね、それでいいんじゃないか? って。年下の、頭がキレる、可愛い奥さんに振り回される俺っていうイメージ。俺が櫻子ちゃんに身を委ねればそれで成立するんじゃないかな。
ーー夫人の尻に敷かれるランダムスター…!?
松也 そんな甘いもんじゃないです。こう、手のひらではなく指の先で転がされるレベルです(笑)。尻に敷かれるなんてそんな大きい存在じゃないんですよランダムスターは。
尾上松也
大原 (笑)。私もまだどういう方向性で夫人役を作っていこうかと考えている最中ですし、いのうえさんもいろいろ考えていらっしゃるようです。実際のところ、やってみなけりゃ分からない、という気持ちでいます。松也さんはさっき逆の事をおっしゃいましたけど、私は松也さんに身を委ねていこうとしています。自分がやるべきことをやるだけかな。
私はこの仕事をする前から周りの人に「さくちゃんの歌って怨念があるよね」って言われていてどういう事なんだろうと(笑)。どうも私の歌って何かを訴えたり魂の叫びがこもっているそうなんです。確かに『メタルマクベス』の楽曲はしっくりくるんです。こういう楽曲を歌いたかったなあって感じますね。
ーーそもそも、お二人のこれまでの人生に「メタル」は存在していましたか?
松也 僕は一時期ありましたね。ロックが大好きでその延長線でメタルも聴き込んでいました。ジューダスやAC/DCメタリカ、ガンズ・アンド・ローゼズなど……そんなに詳しい訳ではないですが、そういう音楽を流しながら生活をしていました。昨日も稽古場でいのうえひでのりさんがジューダス・プリーストのTシャツを着ていたのですが、その姿をいいなあって思いながら見ていましたね。シャウトを人前でできるっていいですよね。
大原 私は自分では正直聴く機会がなかったんですが、整体の先生がいつも整体をしながらメタルをガンガンかけているんです。
松也 何それ!? すごい!
大原 整体の先生がプライベートでメタルバンドをやっていて、ボーカルを担当されているそうなんです。だから脚のツボなどを押しながら「ンアアアアア!」ってシャウトしているんですよ。月一で通っていますので、月一で全身メタルに浸っています(笑)。
松也 先生がメタルのリズムに乗りながら施術してそうだよね。ズーンズーンジャーン!(深くツボを押す仕草)って(笑)。
大原 (笑)。
二人でメタルポーズ!!
■disc2はあの人が演じるあの役にご注目!?
松也 disc2は、僕たちだけではなく、他のメインキャストの方も新感線初が多いんです。オカケン(岡本健一)さんも原(嘉孝)くんも、浅利(陽介)さんもそうですし。オカケンさんがバンクォー役をされるなんて想像できないですよ。僕の中では橋本じゅんさんのイメージですから「じゅんさんがなさったあのバンクォー役を、あのオカケンさんが!? あれ、3枚目の部分が非常に強いでしょう? オカケンさん、あんなお役をされた事ないのでは?」って。今ではオカケンさん、相当面白い事になってます(笑)。“新しい岡本健一さん”が見られそうで、僕も楽しみです。
大原 はたから見ていると、松也さんと岡本さんのやり取りに「なんでこの二人は知り合ったんだ?」って思いますね(笑)。
大原櫻子
松也 レスポール王以外、他のメインキャストは皆若いんですよ。そこに一人飛びぬけて年長の方がいる状態ですから。でも僕とオカケンさんは親友。僕がわーってやっているところにオカケンさんが「オウッ! オウッ!」って絡んでくる情景……それだけで頭がおかしくなりそうですよ(笑)。
大原 二人のやり取りは観ているだけで本当に面白いんですよ!
ーー岡本さんもさることながら、松也さんが舞台上で変顔をするイメージもないですよ。歌舞伎でそんな顔をすることもない訳ですし。
松也 変顔とかやってみたかったんですよ(笑)! 歌舞伎だと僕も若い方なのでどちらかというときれいめなお役をさせていただくことが多いのですが……そういうお役が実は苦手なんです。もうずーっとふざけたかったんです(笑)。昨日稽古中に変顔の練習をしてみたのですが、皆が笑ってくれるのが気持ちいいですね! でもオカケンさんの変顔はもっとすごいですよ!
■体力勝負の『メタルマクベス』初日にむけて
ーー今回上演する会場、IHIステージアラウンド東京ですが、これまでの出演者が口を揃えて「ステアラダイエット」というくらい体力を使う劇場と聞いています。
松也 disc1のさとしさんが「これは体力つけなあかん」ってケータリングを食べまくったら太ったって言ってました(笑)。でも劇場に入って痩せたんだろうなあ。
尾上松也
ーー初日前会見の時に、さとしさんの顔の輪郭が明らかに鋭くなっていましたしね。お二人は稽古と共に体力作りもしていく予定でしょうか?
松也 僕はこの稽古が始まる前からジムに行き出したんです。体力作りというよりは身体にぴたっとして胸の谷間などが露わになる衣裳を着るので引き締めようかと。でも昨日立ち稽古をした時に「あ、これはやばい」と思いましたね。やはり体力作りは必要かなって。
大原 私は体力はある方なんです。先日自分のツアーが終わったところなんですが、ツアーって半端なく体力を使うんですよ。だから週5日ジムに通っていたので、ツアーで付いた体力のまま舞台に乗れたらなあと思っています。

大原櫻子

ーーお二人が初日までにどのような身体を手に入れるのか、楽しみにしています! では、最後にこんな質問を。もし、ランダムスターと夫人以外の役もやっていいよ、と言われたら、どの役をやってみたいですか?
松也 俺はやっぱりバンクォー。大好きなんですよ、あのキャラクターが。
大原 私は冠(徹弥)さんがやっている報告係をやってみたいです。
松也 え!?
大原 「かーしこまりましたアアアー!」って思いっきり叫んでみたいんです。シャウトをしたことはないんですが、あれができたら気持ちいいだろうなって。
松也 じゃ、いのうえさんに「夫人にもシャウトを入れて」ってお願いしようか(笑)。
大原 (笑)。
(左から)大原櫻子、尾上松也
取材・文=こむらさき 撮影=荒川 潤

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