『エヴァンゲリオン交響楽』ジャケット画像

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作品と同様、実験精神に溢れた企画盤
としての魅力−−−【エヴァンゲリオ
ン サウンド・クロニクル <参>】前

1997年7月19日、『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生』に続くエヴァ劇場版第2弾『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』が公開された。誰もが待ち望んでいた“完結作”。一体どのような結末を迎えるのか、それこそ日本中のファンが固唾を飲んで見守っていたのだが——。その結末はまたしても多くのファンの予想や想像、理解を超えてしまったばかりか、むしろ観た者をより一層悩ませてしまうくらいに衝撃的なものだった。作品として一度は終わりを迎えたはずのエヴァは、各々の心の中で、どこかモヤモヤとした感情とともに“終わらない物語”として存在し続けることに…。今回は、そんな劇場版第2弾の公開以降にリリースされた企画アルバムやベストアルバムの中から代表的なものをピックアップしながら、その魅力を振り返っていこうと思う。

まずは、1997年11月リリースの『〜refrain〜 The songs were inspired by“EVANGELION”』(1997年11月6日発売)から。このアルバムでは、高橋洋子が歌うテーマソング&イメージソングのリミックスを中心に、新曲やシークレットトラック(「FLY ME TO THE MOON(On the Street)」)を含む全14曲が収録されている。より明瞭かつ迫力の増した音像となった「残酷な天使のテーゼ(Ambivalence Mix)」をはじめ、ダンスミュージックとしての側面が強調された「心よ原始に戻れ(Sublimation Mix)」など、これまで幾度となく聴いてきた名曲が装いも新たなサウンドで楽しめる。また、「Prologue de Refrain」「Forbidden Gene」「Epilogue de These」といったインスト曲が要所要所で挿入されていたりと、アルバム全体としての構成がよく練られている点も注目すべきところだろう。もちろん、シンガー・高橋洋子のアルバムとしての完成度も申し分ない。
同年12月には『EVANGELION-VOX』(1997年12月3日発売)と『エヴァンゲリオン交響楽』(1997年12月22日発売)の2作品がリリース。『EVANGELION-VOX』では、劇伴や劇場版挿入歌を手掛けた鷺巣詩郎がそれら楽曲群に自らリアレンジを施し、英詞によるラップ&ヴォーカルを付けたUKソウル・R&Bサウンドが堪能できる。新たな解釈によって奏でられるエヴァサウンドはなかなかに刺激的で、あの名劇伴「DECISIVE BATTLE」や、劇場版を彩ったパッヘルベルの「カノン」にラップを乗せるという革新的かつ意欲的なトラックが聴けたりも。参加アーティストには、「THANATOS-IF I CAN'T BE YOURS-」でもお馴染みのLOREN&MASHをはじめとする豪華な面々が名を連ねているほか、エヴァのキャラクターたちによる印象的なセリフも随所に挿入されている。それまで劇伴担当という立場でエヴァと向きあってきた鷺巣氏が、自身のアーティスト活動からフィードバックされた音楽性を遺憾なく発揮して作り上げたエヴァのアルバムとしても、非常に興味深い1枚といえるだろう。

『エヴァンゲリオン交響楽』は、1997年7月に渋谷Bunkamuraオーチャードホールで行われたコンサートの模様を収録したライヴアルバム。音楽監督は鷺巣詩郎が務め、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団のほか、ゲストミュージシャンが担当している。鷺巣氏が手掛けた代表的な劇伴からエヴァで使用されたクラシック曲まで、全26トラック、CDは2枚組でのリリースとなった。「NERV(A-3)」から「A STEP FORWARD INTO TERROR(E-9)」にかけての“戦闘組曲”の圧倒的な迫力や、「Rei I(A-1)」におけるピアノの残響音が醸し出す独特の悲哀感などを満喫できるのは、まさに本作ならではの醍醐味といえる。また、楽曲以外にも、長沢美樹(伊吹マヤ役)、緒方恵美(碇シンジ役)、宮村優子(惣流・アスカ・ラングレー役)、山口由里子(赤木リツコ役)、林原めぐみ(綾波レイ役)、三石琴乃(葛城ミサト役)ら声優陣による、軽妙な中にも品のあるMCが聴けるのもファンには嬉しい限り。ライヴならではの臨場感、オーディエンスによるレスポンス、さらには場内アナウンス等々、当時まさに絶頂を迎えていたエヴァブームの“空気そのもの”を感じ取ることができるという意味においても、聴くべきところの多いアルバムとなっている。(text by center)

OKMusic編集部

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