luz「みんなと叶えたい夢を見つけま
した」 悩み、苦しみ、葛藤し、その
うえで宣言されたひとつの大きな夢

luz 3rd TOUR -SISTER- 2018.7.27 Zepp Tokyo
宿命だとか、運命だとか。安易にドラマティックな言葉で飾り立ててしまうには、あまりにluzの人生は波乱に満ち過ぎているのではなかろうか。
今春にしばしの活動自粛期間を経て、5月に完全復帰を果たしたluz。初のメジャー1stシングルとなった「SISTER」がそのあらたな門出を飾るアイテムとなったわけだが、このたび行われたツアーもまた、それと連動する『luz 3rd TOUR -SISTER-』として行われたのだった。ここでは、その最終日となったZepp Tokyoでのライブについて、お伝えしようと思う。
スタイリッシュかつセクシーな雰囲気の漂うコスチュームに身を包み、粋にハットをかぶったluzがおもむろにステージ上へとあらわれると、今宵の格別なるスターターとして彼が我々に供してくれたのは、今年の春アニメとして放送されていた『Cutie Honey Universe』のエンディングにも起用されていた「SISTER」だ。
「おまえら、ツアーファイナルだからな。後悔するなよ。暴れろ!」
しょっぱなから高いテンションでオーディエンスを煽るluzの姿や、堂々としたボーカリゼイション、もはや貫録さえ感じる立ち居振る舞い。それは単なるボーカリストとしてのものというよりも、ステージを司る支配者として、そこに君臨しているように見えたのは何も筆者だけではないはず。
luz
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「どうもこんばんは、luzです。お待たせしました、今日は東京でのツアーファイナルです! やっとこの日が来ました。今回のツアーは各地で10本やらせていただいたんですが、こんなに時間が経つのが早いと思ってませんでした。今日で最後だなんて、僕は思いたくないくらいです(笑)。でも、今は今で全力でいきたいと思います。どの場所でも全力を尽くしてきましたが、その集大成をここでみせたいと思います!!」
歌っている時はあくまで俺様モードなluzが、ひとたびMCでしゃべりだすと途端に謙虚なモードへと切り替わってしまうあたりは、ご愛嬌といったところか。このような微笑ましいギャップを内包しているところも、彼の魅力のひとつだと言えそうだ。

luz

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また、彼の謙虚で誠実な姿勢はバンドメンバーに対しても終始発揮されていたもので、Leda(Guitar / Far East Dizain)、RENO(Guitar)、MASASHI(Bass / Versailles)、淳士(Drums / SIAM SHADE / BULL ZEICHEN 88)という名うての猛者たちに対して、luzが大きな信頼を寄せながら愛情をもって接していることは、ライブのさまざまな場面からうかがえた。いずれもluzが尊敬するミュージシャンたちであり、昨年のツアーから親交を深めてきているメンバーも多いため、今回のツアーではより密な関係性から生まれるライブパフォーマンスというものが、実現することになっていたように感じられたのである。
本編ラストの「M.B.S.G」ではシングル「SISTER」でもゲスト参加していた、武瑠(ex.SuG~現sleepyhead)が登場し、ツインボーカルスタイルで熱唱するというレアな一幕も! つくづくluzは、良い人脈に恵まれているらしい。
武瑠
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なお、今宵のアンコールではこれもシングル「SISTER」にも収録されていたアニソン「キューティーハニー」の“SISTER Edition”を、luzが“悩殺ポーズ&投げキッス”付きで歌ってみせるくだりもあり、観衆たちがさらなる狂喜乱舞状態へと陥ったことは言うまでもない。
「みんな楽しかった? ありがとね(笑)。僕も今、凄く楽しいです!……でも、残り2曲でこのツアーが終わりになります」。luzのこの言葉に対し、「やだー!」「終わらないでー!」などの声が多く飛び交い始める場内。そして、その喧騒を遮るようにしながら、ここから彼が語り出したのは長い独白だった。
luz
「あのね、今回のツアーで僕はちょっと考えたんです。毎年こうやってワンマンをやらせてもらってますけど、いつかは自分が歌えなくなる時って来るんですよ。絶対に」
どこか唐突にも思える言葉に、場内は一転して水を打ったような静けさに包まれだす。
「あのー、ファイナルだからこそ俺はずっと皆に話したかったことがあるんです。聞いてくれるかな? 俺は、ほんとにね。いつも言ってることだけど、福井にいた頃はどうしようもない人間だったんですよ。家庭の状況も良くなかったし、好きなゲームをするとか、好きなアニメを観るとか、しょーもないことしかしてなくて。生きてる理由なんて、そのくらいのことしかなかった。夢を見ることもなく、そんな風にずっと過ごしてたんです。だから、よく言われてたんですよ。僕は母子家庭だったんですけど、お母さんから「好きなことがあるかなら、ひとつのことを続けてみたら?」って。「どんな小さなことでも、きっといつか自分の為になるはずだよ」ってそう言われました」
このあたりについては、これまでのインタビュー記事などでも公になっているエピソードだが、話はここからそれ以上の深みを増していくこととなっていく。
「今でも後悔してるんですけど、18の時に僕は大事なお母さんを亡くしたんです。目の前で、助けられなくて。僕がもっと早く動いていたら助けられたんじゃないか?とか、今でも悔いがあります。だけど、そこで失ったものが大きかったからこそ、僕はそこからひとつのことを続けよう、って思うようになりました。それが、今のこのluzとしての自分の活動です。あれから8年経って、ここまで続けてきた中で、あんなにどうしようもなかった自分が、今はこれだけたくさんの人に支えられてます。お母さんを亡くした時から、自分は絶対に自立しようと思ったんですよ。だから頑張ってきたつもりなんですが、でもまだ全然ちゃんと自立出来てなくて。結局、ここにいる皆に支えられているんですよ。そんな僕ですが……新しい夢を見つけました。ここにいるみんなと叶えたい夢を見つけました」
あらたな夢についての、勇気ある宣言として。次の瞬間、luzはこう言い切った。
「どれだけ時間がかかってもいいから。どれだけバカにされてもいい。笑われたっていい。でもきっと、もしその夢が叶った時に僕は、その夢のために自分は生まれてきたんだと思えるはずだから。皆で武道館、行こうよ。僕は、ずっと支えてきてくれている皆に恩返しがしたい……!」
溢れてくる思いが止められないのか、luzはさらにこうも言葉を続ける。
「自分がバカなせいで皆にたくさん心配をかけて、それでも皆が“ここ”に帰ってきてくれて、僕に対しても「おかえり」って言ってくれて……。本当にありがとうございます。あらためて、皆の前で言わせてください。「ただいま!!」」
luz

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おそらく、luzは活動自粛期間に多くのことを考えたのだろう。悩み、苦しみ、葛藤し、そのうえで彼は今ひとつの夢を公言するまでに至ったのだ。
「ひとつの大きな夢の為に、僕は生まれてきたんだと思います。絶対、絶対、皆のことを連れていきます。この言葉が嘘にならないように。この歌で約束させてください」
丁寧なアカペラから始められた「光彩」が、この空間に居合わせた者たち全ての心の奥にまで、じんわりと届いたことは疑うべくもない。それでいて、大ラスの「カメリア・コンプレックス」では明るく無邪気な笑顔もみせたluz。
大切なものを失い、時には不慮の事態に見舞われたりと、luzの人生は決して平穏無事というわけではないのかもしれない。それでも、彼は今ここに来てより大きな夢を追っていくことを選んだ。宿命や運命などに自分の身を任せるのではなく、自らの主体性をもって夢を獲りにいこうと決心したluzが、ここからいかにして道を切り拓いていくことになるのか。我々としては、その過程をしかと見届けていきたいものである。luzの未来に幸多からんことを!

文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)、加藤千絵
※REFLECTIONの「O」の正式表記は「Ó」
未掲載カット含む全ライブ写真は【 こちら 】

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