長野・室内型フェス<OTOSATA Rock
Festival 2018>ライブレポート

6月16日(土)、17日(日)長野・茅野市民会館にて、6年目の開催となる室内型ロックフェス<OTOSATA Rock Festival 2018>が開催された。梅雨の合間の快晴に恵まれた2日間、DJを含めて全32アーティストが出演。各アーティストの熱い想いを込めたステージに、会場が熱狂の渦に包まれた両日。全出演者のアクトを見届けた筆者が、このフェスを余すところなくレポートする。

6月16日(土)OTOSATA初日。茅野駅で下車して駅と直結した会場へと向かうと、会場からGET FREEのDJプレイが聴こえてくる。祭り囃子のように響くロックンロールに気持ちを煽られながら、入場ゲートへと誘われると、“音場”と名付けられた入り口ロビーはアッパーなDJプレイに体を揺らすハイテンションな観客の熱気で、すでにお祭りムードが充満。
高高-takataka-

会場の茅野市民館内には、メインとなる巨大なALPSステージ、天井にミラーボールが回るライブハウス風の彗星ステージ、小さなホール会場を利用した椅子付きのMarbleステージと、3つのステージが設置。開演時間になり、フェスの幕開けを飾るアコースティック・デュオ、高高-takataka-がMarbleステージに登場。静かに力強く鳴らされるアコギの演奏と伸びやかな歌声、美しいハーモニーでしっかり聴かせるステージは会場の雰囲気にピッタリで、ここから始まるフェスへの期待を募らせるのに十分なアクトだった。
kobore

メインとなるALPSステージの幕開けを務めたのはフレンズ。キュートでパワフルなボーカルととグルーヴィーな演奏で、明るく華やかなステージで会場を彩った彼女ら。盛り上がりたくてウズウズしてる観客を、おかもとえみ(Vo)とひろせひろせ(Key/Vo/Rap)が巧みに煽ると全員がピースマークや掛け声を合わせて、会場に多幸感が溢れる。彗星ステージでは、ライブハウス風の雰囲気を活かしたギターの爆音とアグレッシブなステージを見せたkobore、Marbleステージでは地元・名古屋への想いを熱く語り、エモーショナルな歌声を響かせたLUCCIが会場を沸かせ、<OTOSATA>がどんどん熱を帯びていく。
▲LUCCI

各バンド50分という、フェスにしては長尺の持ち時間が与えられ、50分という時間の遣い方も見どころである<OTOSATA>。ALPSステージで過去楽曲から最新曲まで、新旧織り交ぜた全11曲を50分間ノンストップで披露し、ワンマンさながらの高いクオリティのステージを魅せてくれたのはBIGMAMA。圧倒的な歌と演奏にライブが進むほどに観客が心掴まれ、会場の熱が急上昇していくのがよくわかった。続いて、彗星ステージにはキャラの強い7人のメンバーが賑やかに盛り上げ、お祭り騒ぎでフロアをかき回したHEALTHY DYNAMITE CLUB。Marbleステージにはポップで軽快な曲にファンが手拍子や振り付けを合わせ、会場に一体感を生んだEVERLONGと、個性豊かなバンドが次々登場。「この機会に色んなバンドを見てみたい!」と、場内を慌ただしく駆け回ってたのは僕だけじゃないはず。
フラワーカンパニーズ

ALPSステージを独自の色に染め上げ、深みと説得力のあるボーカルと重厚なサウンドを聴かせてくれたのはGRAPEVINE。疾走感ある演奏に乗せた伸びやかで色気のある歌声で、丁寧に力強く言葉を紡いでいったThe Cheserasera。民族楽器を取り入れた、独創的かつ底抜けに楽しいサウンドで沸かせたHOBBLEDEES。50分という持ち時間の中で各自の色を存分に放つ濃厚なライブアクトは、短時間のステージが矢継ぎ早に続くショーケース的なフェスとは満足度が明らかに異なる上、出演者側のステージに賭ける気合いや気概の違いもよく分かる。ALPSステージに登場したフラワーカンパニーズは、ライブが進むごとに熱気を帯びていくフロアに、鈴木圭介(Vo)が「まだまだ足りない」とばかりに降りていき、♪ヨッサホイヨッサホイと自らの誘導で会場中を踊らせて、力づくでクライマックスを生んだ。
Czecho No Republic

MarbleステージをCzecho No Republicがポップに華やかに締めくくり、彗星ステージを地元バンドであるINKYMAPが気合い十分の勢いあるステージで締めくくると、残すはALPSステージのトリを務める、TOTALFATのみ。今年で5回目の出演となるTOTALFATは、<OTOSATA>への強い想いや愛情もたっぷり感じる、渾身の歌と演奏でブチ上げ、フロアに巨大なサークルモッシュが生まれる。大盛り上がりのフロアを笑顔で眺めながら、「<OTOSATA>の座談会をやった時、この地方を“ロック不毛の地”と言ってたのがショックだった。この景色を見たら絶対にそんなことない。ロックが響かない土地なんてない!」と熱く語ったのはSHUN(Vo/Ba)。<OTOSATA>の効果もあって、確かに今、この地にロックがしっかり根付きつつあることをフロアの熱気が証明していた。

全てのアクトが終了し、BAD HABITSのDJに送られながら、会場を後にする観客の満足そうな笑顔が印象的だった初日。お祭り騒ぎはまだまだ終わらない。

   ◆   ◆   ◆

6月17日(日)<OTOSATA>2日目。初日に続き、雲ひとつない晴天に恵まれたこの日。会場の中庭部分にある芝生では、午前中から強く照りつける日光とWONG KEYのDJプレイを浴びながら、開演までの時間を心地良さそうに過ごす観客の姿が見える。
▲テスラは泣かない

2日目の幕開けを務めたのは、彗星ステージのテスラは泣かない。タイトなバンド演奏に華を添える飯野桃子(Key)の鍵盤サウンド、村上学(Vo/Gt)の真摯な歌声が胸に響いた彼らのステージ。ライブハウス風の薄暗い会場も日常を忘れさせ、フェスモードへと気持ちをスイッチングしてくれる。Marbleステージのトップは、さよならポエジー。3人が力強く丁寧な歌と演奏で紡ぐ楽曲世界に体を揺らしたり、座ってじっくり聴き入ったりと、集まった観客はそれぞれのスタイルで楽しんでいた。ALPSステージの一発目を務めたGOOD ON THE REELは、ライブ序盤から自身の世界観を丁寧にしっかりと作り上げていく。「僕も名字が“ちの”って言うんですよ」と笑う千野隆尋(Vo/Gt)の感情的な歌と力強くも繊細な演奏が、観客の心をガッチリ掴んでいた。

現在のバンドの勢いを表すような、前のめりなほど勢い溢れる歌と演奏で超満員のフロアをかき回し、灼熱の空間を作ったのはENTH。軽快に重厚にと変幻自在のサウンドで観客の体と心を揺さぶるステージは、会場を完全掌握しているようだった。真っ赤なワンピースで大きな笑顔を浮かべて登場した瞬間、ALPSステージが明るく華やいだのは井上苑子。巧みなバンド演奏をバックに、ギターを背負って堂々とした歌と演奏で魅せると、コール&レスポンスや掛け声を誘って一体感を生む。「<OTOSATA>には3年連続出演。この日を楽しみにしてました!」と笑顔で語ったPOTは、同じくこのステージを楽しみにしていたであろう観客がポップな曲調にジャンプを合わせて、会場を大きく揺らす。
▲宍戸翼(The Cheserasera)

08年の無期限活動休止宣言以来となる、バンド名義での貴重なステージを見せてくれたのは、長野県出身のセツナブルースター。10年ぶりと思えない息の合った歌と演奏で観客を魅了すると、ライブでは一度も演奏したことがない新曲を披露するなど、意欲的なステージを展開。「今後の予定は決まってません」と語っていたが、ここから始まる物語を期待させるライブだった。また、音場では両日ともに出演となった、片平実(Getting Better)がロビーにサークルモッシュを起こしたり、初日に出演した宍戸翼(The Cheserasera)が弾き語りでのゲリラライブを敢行したりと、ライブ会場以外でも楽しいことが起こり続けていたこのフェス。鳴り止むことのない最高の音楽と笑顔の観客が、会場のお祭り気分や幸福感をどんどん増幅させる。

ALPSステージに登場したSHE'Sは、感情豊かなボーカルとピアノを擁する激しく美しいロックサウンドで、楽しさや切なさといった様々な表情を見せるステージに会場中が釘付け。心と身体を躍らせながら、手拍子や歌声を合わせるフロアが幸福な空気に包まれていくのがよく分かった。Marbleステージでは、エンターテイメント性の高いステージにみんなが笑顔になり、自然と手を上げて振り付けを合わせたヒップホップ・ユニット、SUSHI BOYS。彗星ステージでは、ソリッドなバンド演奏とキャッチーなメロディ、全力のライブパフォーマンスで初めて観る人も巻き込んでブチ上げたShout it Outと、タイプの異なるアーティストを多く見られるのもフェスの醍醐味だが。主催者である松本ALECXの田中店長が厳選した<OTOSATA>の出演者たちはジャンルこそ異なれど、ライブやステージに対する熱い姿勢にどこか共通点を感じたし、ライブを見ていて考える隙や感じる隙、心に引っかかる何かを与えてくれるアーティストばかりだった。一見、雑多に見える出演者だが、たくさんライブを見る中で、僕は主催者が<OTOSATA>を開催する意義や意図が少し見えた気がした。
WOMCADOLE

2日間に渡って行われた<OTOSATA>もいよいよクライマックス。超満員の観客に迎えられ、ステージに登場したのはフェス皆勤賞となる、My Hair is Bad。「6年目の出演です。体力が10あるとしたら、12使っていきたいです」と、椎木知仁(Vo/Gt)がライブへの意気込みを語ると、序盤から異常なほどのテンションでフロアをかき回す。真っ直ぐで直情的な歌と演奏で観客の心を鷲掴みした彼らのステージがこの日一番の盛り上がりを生むと、残すは各ステージのトリのアーティストのみ。彗星ステージは、WOMCADOLEが観客の残った体力を搾り取るような、ヘヴィで攻撃的なステージで締めくくり、Marbleステージは、電波少女が独特の空気感を醸し出しながら、ダンサーを加えた賑やかなステージで締めくくる。
MOROHA

そして、いよいよALPSステージに2日間の大トリとして登場したのは、長野県出身のラップ・グループ、MOROHA。魂込めたラップとアコギ・サウンドで序盤から観る者の心を揺さぶると、会場は彼らの独壇場。「フェスの楽しい思い出を台無しにするから」とうそぶきながら、熱く真正直なメッセージを直接的に心に届けると、観客は固唾をのんでステージを見守り、真正面から言葉を受け取る。アフロ(MC)が主催者の田中店長や<OTOSATA>への想いを語りながら、50分のステージを完全燃焼したMOROHAは、観る者の心に大きな爪痕を残してステージを去った。

こうして無事、幕を閉じた<OTOSATA Rock Festival 2018>。2013年の初開催から6度目となるこのフェスに参加して、集まった全ての人の<OTOSATA>への熱い想いと、今後への期待を強く感じた。正直、まだ完成形には至っておらず、発展途上段階のフェスではあるが。「このフェスをさらに良くしていきたい」、「もっとこのフェスを楽しみたい」という、出演者や参加者の想いとフェスへの愛情が2日間を通じてしっかり伝わってきた。6年前、<OTOSATA>がこの地に蒔いた種は少しずつだけど確実に成長し、実を結ぼうとしている。ここからどんどん大きくなっていくであろう、来年以降の<OTOSATA>が本当に楽しみだ。

写真提供:OTOSATA Rock Festival 2018取材・文:フジジュン

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