SMAPは「無限の住人たち」である――
映画『無限の住人』のラストが示すも
のとは【SMAP is ALIVE(6)】

連載企画「SMAPは生きている」、第6回。木村拓哉主演の映画『無限の住人』で図らずも示された、<アイドルとファンの関係性>とは?

万次は、何かを失ったから、何かを得た映画『無限の住人』は、次のような物語だ。
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「百人斬り」という伝説の異名を持つ侍、万次。彼は、最愛の妹、町を目の前で殺され、生きる目的を失ってしまう。
そして、町の生命を奪った者たちを皆殺しにするが、その過程で、片眼と片腕を失う。つまり、精神的にも肉体的にも「欠損」を負うことになる。
瀕死となった万次の前に、謎の老婆が現れる。万次は自分の息の根を止めてほしいと頼むが、老婆は逆に、不死身の躰を与える。
死ぬのではなく、生きつづけろ。
つまりは、そういう宿命を、無理矢理、「付与」する。
万次は、新たな業とともに生きることになる。それから50年。
不老不死となった万次は、半世紀前と同じ姿のまま、ひとりの少女と出逢う。町にそっくりな彼女の名は凛。両親を惨殺した男に復讐したいのだという。
かくして万次は凛の用心棒として、彼女の仇討ちのために、凄まじい道行きに同行することになる。
では、その「旅」は何を意味するのか。
一見、ドメスティックな時代劇に映るが、グルーバルなフェアリーテイル(おとぎ話)にも思える。
つまり、これは、単純な娯楽活劇というよりは、読み解きがいのある普遍的なストーリーなのではないだろうか。
ここで描かれているのは、「欠損」と「付与」である。
万次にとっては、凛との「旅」もギフトとなる。
なぜなら、それは「再生」の道行きだからだ。
だが、同時に、こうも思わずにはいられない。
万次は、何かを失ったから、何かを得たのだと。
だからこそ、わたしは、この物語をフェアリーテイルだと感じる。
“永遠の命”を「付与」された、アイドルという存在万次の宿命と木村拓哉の宿命は重なる。
三池崇史監督もそう公言しているし、そのような見立ては多い。わたし自身、この正月にあるサイトに寄稿した文章でそのようなことを書いた。
つまり、死ぬことが許されない万次は、木村拓哉であることをやめられない木村拓哉その人と二重写しになる。それが本作の醍醐味であるのは間違いない。
だが、少し時間が経つと、こうも思った。
万次の運命は、木村拓哉だけではなく、SMAP全体にも重なるのではないか。いや、もっと言えば、多くの人々に愛されるアイドルという存在はすべて、無限の住人なのではないか。
彼ら彼女らは、全員、ファンから永遠の生命を、ある意味、半ば強制的に「付与」されているのではないか。そのように思うのだ。
わたしたちは、アイドルに永遠を求める
わたしたちは、アイドルに永遠を求める。SMAPという集合体は四半世紀以上もの歴史を生きてきた。なんと、万次が不死身となってからの年月の半分である。25年以上、芸能の最前線を疾走してきた。今後、このようなグループは現れないだろう。まさに不世出の存在だ。
わたしたちは、アイドルに永遠を求める。その存在が魅力的であればあるほど、永遠に生きつづけてほしいと願う。懇願する。さらには信じる。信じすぎて盲信することもある。
たとえば。
SMAPは絶対に終わらない。
そう祈る。念じる。
だが、SMAPもまた、人間である。
この世に、終わらないことなどないのだ。
映画『無限の住人』は、万次ではなく、凛の視点から観ることもできる。
凛にとって、万次は決して死なない存在だ。常に彼女のそばにいて、彼女を守ってくれる。
わたしたちは、大好きなアイドルに、そのような願望や憧憬を抱く。
ずっと、そばにいてくれるよね。
映画に向き合うとき、最初はどうしても、物語だけを追いかけることになる。
だが、もう一度、向き合ったとき、違う面が見えてくる。
万次が映画の最後でどうなるか、ここでは書かずにおこう。
だが、そこには、アイドルとファンの、SMAPとわたしたちの、関係性が、図らずも批評されていると思う。
わたしたちは、あの謎の老婆であり、凛である。
そして、万次はSMAPである。
SMAPとは何だったのか。
SMAP解散前に撮影された映画に、その答えが秘められている。
ひとりひとりが考えることができる、これは絶好の機会である。
連載<SMAP is ALIVE―SMAPは生きている>更新中!
第1回:【SMAP】PVから見えてくる、“5人からの隠れたメッセージ”
第2回:俳優・木村拓哉、キャリア最良の演技!? ドラマ『A LIFE』で見せた“名シーン”
第3回:ハンパない!『嘘の戦争』の演技に見る「草彅剛にしかできないこと」
第4回:メンバー5人のラジオから受け取る、“変わらない日常”の尊さ
第5回:【中居正広】生放送でより輝く、MCを超えた魅力とは?『ミになる図書館』~『スマステ』を見て
第6回:SMAPは「無限の住人たち」である――映画『無限の住人』のラストが示すものとは
最終回:【SMAP】“珠玉の10曲”からいま受け取る、彼らが残したかったメッセージ

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