ミュージカル『テニスの王子様』3rd
シーズン 全国大会 青学(せいがく)
vs氷帝 ゲネプロレポート

テニミュ最新作が2018年7月12日TOKYO DOME CITY HALLにて開幕。今作より登場の新・青学(せいがく)メンバーを中心に、2.5次元ミュージカルを牽引し続ける“テニミュの今”を見逃すな!
前作「青学(せいがく)vs比嘉」から5ヶ月。青学(せいがく)が再び強敵・氷帝と戦う全国大会準々決勝の幕が開いた。
今作での注目ポイントは、青学(せいがく)9代目キャストから引き続き登板の越前リョーマ役・阿久津仁愛(にちか)を除くメンバー11名が新たなキャストになった“代替り公演”だということ。熱心なファンであるほどその仕上がりが気になるところだが……ゲスト校の比嘉が会場の空気を温め、インスト曲に乗せてこれまでの試合の回想シーンで紡がれていくオープニングから1年トリオのエール、そして青学(せいがく)レギュラー陣勢揃いナンバーまでの畳み掛けるような心地よい流れの中、新キャストたちはとても自然に観客の前にその姿をお披露目してくれた。それぞれが「自分は青学(せいがく)メンバーなんだ」という自信を持ってステージに立っている誇りと観客と出会えた喜びで溌剌としたオーラを放っているのが素晴らしい。これまでの青学(せいがく)とはまた違った、彼らにしか見せることのできない新たな青空がしっかりと舞台上に広がっていた。
阿久津仁愛ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
第一試合は青学(せいがく)・桃城(大久保 樹)vs氷帝・忍足(井阪郁巳)。野生の勘を身に付けた“曲者桃ちゃん”として先陣を切った大久保は、真っすぐな強さで試合を引っ張り、歌詞がしっかりと耳に届く歌声も好印象。新青学(せいがく)の芯の強さを届けてくれた。対する井阪もこれまで封印してきた熱さを全開にする忍足を、深くパワフルに演じていた。
阿久津仁愛、大久保 樹ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
続くダブルスは青学(せいがく)・乾(竹ノ内大輔)&海堂(中島拓人)vs氷帝・向日(北乃颯希)&日吉(内海啓貴)。持久戦で相手をジリジリと追いつめる青学(せいがく)ペアと、短期決戦型のせっかちな氷帝ペアという真逆なタイプのぶつかりあいだ。身軽さを生かした歌とダンスで観客を引きつける北乃と内海に対し、重厚さのあるミディアムナンバーで揺るぎない粘り強さを示す竹ノ内と中島。個性のぶつかり合いが生む対比が鮮やか。
三試合目は青学(せいがく)・手塚(青木 瞭)vs氷帝・樺地(八巻貴紀)。青木は肩の治療から完全復活し、プレイヤーとしてまた新たなステップへと進んだ手塚を丁寧に表現。揺るがない歌声と着実なプレースタイルで新登場の新鮮さを“未知の力を発揮する無敵の部長”へと変換、存在感をきっちり示す。八巻もまた相手のプレーをすべてコピーしてしまう特殊な試合運びの樺地を小細工なしで真摯に演じ、一筋縄ではいかない大切な試合を構築。ふたりの纏うどっしり感で会場の空気をキュッと締め直した。
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
気づけば一幕だけで3試合が経過! このちょっと早めの体感スピードは観客にもまさにスポーツ観戦時のあの感覚を与えてくれるが、初テニミュのキャストたちにも心地よい緊張を持続させるよい効果があるように思えた。一幕最後、これまでの余韻と二幕へのブリッジとして挿入される青学(せいがく)・不二(皆木一舞)と氷帝・跡部(三浦宏規)による情感あふれるナンバーも、ソロでのダンスの見せ場をたっぷりと盛り込んだ“攻め”の演出。三浦の美しいダンスはもちろん、皆木の堂々としたパフォーマンスは、天才・不二の在り方を印象づけるのに充分であった。
二幕に入り、試合はますます佳境へ。ここで登場するのが青学(せいがく)黄金(ゴールデン)ペア・大石&菊丸(江副貴紀&田口 司)vs氷帝・宍戸&鳳(小早川俊輔&渡辺アオト)。絶大な信頼感を誇るダブルス同士の戦いは白熱の展開で、小早川&渡辺が経験値を重ねて築き上げてきた気迫と熱でさすがのコンビネーションを発揮。一方、江副&田口も伸び伸びとした歌声と笑顔で身体も気持ちもシンクロしていく鉄壁の絆を臆することなく体現。確実なプレーの応酬で、最終試合へと会場全体の期待を繋いでいく。
トリを飾るのは、満を持して登場の青学(せいがく)・越前vs氷帝・跡部のシングルス。コートに入った瞬間から生意気を発動する阿久津と、同じく初っぱなから惚れ惚れする俺様ぶりで観るものすべてを煽っていく三浦。テニミュのステージで経験を積んできた同士が役者としてもキャラクターとしてもガチでぶつかりあうライブ感は、ここまで戦ってきた仲間たちの思いも重なり、グングンとステージ上をヒートアップさせる。
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝
試合は互いに一歩も引かぬ戦いのタイブレークが続く。勝つコトだけに集中して強さと熱さをさらに増していくリョーマを演じる阿久津から感じるのは、絶対的なプリンス感。座長として作品に埋没してきた日々を感じさせる大きさと気迫はこれまでの公演を凌ぐ頼もしさに満ち、深化した姿で舞台上を駆け回る。全力を尽くすがゆえじりじりと動きが制限されていく跡部を演じる三浦もまた、抜群の身体能力を生かしたパフォーマンスにプラスして、歌声の表情や台詞の届け方など繊細な表現が磨かれており、キングと呼ばれるにふさわしいキャラの奥行きを見せつけてくれる。そして、研ぎ澄まされたふたりにいよいよ決着のつく瞬間が……。
知っている台詞、知っているナンバー、知っているゲーム展開。でもこれは初めて観る世界であり、初めて出会うみんなの顔で──テニミュの最新作を観るたびに改めて思うのは、「テニスの試合をミュージカルにしてしまった」テニミュのすごさだ。さまざまな2.5次元ミュージカルが生まれている今、それらに触れることでもテニミュの表現の唯一無二さ、“テニミュというジャンルの存在”は明確。役者のピュアな躍動と、原作世界を大胆且つ的確に描き上げた歌詞&キャッチーなミュージカルナンバーの融合。そのハマリ度の高さはやはりテニミュでしか感じられないのだな、と。テニスラケットを握ったダンスももはや“珍しい”ではなく“なくてはならない”要素。もちろん、毎作ごとに新たな表現が積極的に取り入れられていく柔軟さも忘れない。役者ひとりひとりの活躍と輝きも素晴らしいが、最終的にはステージにあるすべてが“テニミュという世界”に内包され一丸となり、「全部が楽しい!」と、観る者の心に刻まれていくのもこの作品ならではの手触りであり大きな武器。特に今作は全員がステージに並び明るくなった客席と一体になって笑顔を交わし合うエンディングの新曲がとどめ! にこにことした気持ちになれるハッピーな締めくくりは“舞台がくれる喜び”そのもの。ここにしかない“青春”を思い切り体感させてくれるテニミュの揺るぎなさはやはり見事だ。
出演者 会見コメント
越前リョーマ役:阿久津仁愛
僕以外の青学(せいがく)キャストが一新し、“全国大会で比嘉を倒した青学(せいがく)”というのを目標に稽古して来ましたが、そこで止まるのではなく、ここからも常に上を目指して頑張っていきたいです。全部の試合、全部のキャスト、全部のキャラクターにそれぞれ個性があってストーリーがあって……僕は氷帝戦も全部好きで全部見どころだと思いますが、やっぱりその中でも一番の見どころはリョーマのシングルス1ですね。非常に長い試合が繰り広げられ、稽古でも毎回自分の限界を超えようと思っていましたけど、衣装を着てメイクをして実際舞台上のコートに立ってみると、疲れよりも楽しさが感じられて、ホントにリョーマに入り込めてるのかなって感じます。演じていてホントに楽しいですし、もっともっとコート上をはみ出るくらい全力で走りますので、リョーマのキツそうなを是非観にきてください(笑)。僕たち12人の青学(せいがく)で氷帝の氷を溶かして暑い夏をみなさまにお届けします。そしてキャスト一同テニスに捧げている青春をみなさにお届けしたいと思いますので……全公演来てください!!
手塚国光役:青木 瞭
僕たちの新青学(せいがく)が合宿や稽古を経て、ようやくここまでたどりつけました。さらにこれから一公演一公演重ねることで必ずパワーアップして、東京凱旋公演でここへ戻ってこれたらと思います。僕が思う見どころはやっぱり全試合なんですが、手塚がやってるシングルス2の樺地戦は特に観て欲しいですね。完治した左腕でしっかりラケットを振り青学(せいがく)メンバーにどうその強さを見せつけられるか、どんな表現で試合が展開するのかを楽しみにしてもらいたいです。青学12人で最高の夏にしたい。氷帝と比嘉のみんなも稽古でいろいろなことを僕らに教えてくれたので、その力をすべて発揮して頑張っていきたいと思います。ぜひ劇場ヘ足をお運びください。
跡部景吾役:三浦宏規
まずは1年ぶりに氷帝9人全員で返って来れたことがホントに嬉しいです。僕たち氷帝は8代目、9代目、そしてこの新青学(せいがく)とバトンがつながっていく中、全部の青学(せいがく)を見てきました。また新しい青学(せいがく)のみんなと戦えるのがスゴく楽しみ。とてもワクワクした気持ちです。みどころはやはりすべて、です。お互いチームとして「負けたら終わり」の気持ちで挑んでいますし、すべての試合の流れが全部繋がっていて、自分の試合だけじゃなくベンチから見る他の試合もすごく手に汗握るので……やっぱりみどころは全部、ですね。繫がりを感じて欲しいです。今回は平成最後の夏の公演です。公演を観て「あ〜、平成最後の夏はミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学(せいがく)vs氷帝を観たよ」って深く心に刻んでいただけたらと思います。よろしくお願いいたします!
木手永四郎役:武藤賢人
今回比嘉は初めてのゲスト校ですが、比嘉はむしろここからがスタートなので、青学(せいがく)と氷帝に負けないように熱量を持ってやりたいです。そしてこの公演もしっかり盛り上げられるように頑張って、観に来てくださったお客様が笑顔で帰ってもらえる舞台にしたいと思っています。“比嘉を破った青学(せいがく)の試合を見にいく心境”は比嘉みんなでかなりこだわって演じていこうと話し合っているので、青学(せいがく)と氷帝の試合はもちろん全部みどころですが、そういう僕らのことも注目してもらいたいですね。まだ燃え切れていない比嘉、時には面白くて時には真剣な比嘉もいっぱいいっぱい携わっていますので。
(左から)武藤賢人、青木 瞭、阿久津仁愛、三浦宏規
取材・文=横澤由香 撮影=山本れお

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