劇団鹿殺し・菜月チョビ×髙嶋政宏イ
ンタビュー ストロングスタイル歌劇
『俺の骨をあげる』は「奇想天外で何
が起こるかわからない」!?

圧倒的なパワーとパフォーマンスで、はちゃめちゃとも思えるステージを繰り広げ、今、演劇界で最も注目を集めるカンパニーの一つである劇団鹿殺し。Cocco石崎ひゅーい堂島孝平など話題のアーティストとコラボした音楽劇でも大きな話題を集めた。そんな劇団鹿殺しの最新作『俺の骨をあげる』が、髙嶋政宏をゲストに迎え、8月10日(金)より上演される。本作は、2013年に上演された『BONE SONGS』に大幅な改訂を加え、生と死の狭間にいる女性・辛島タエとタエの骨となって歩かせてくれた5人の男たちとの人生を鮮やかに描き出した、鹿殺し流の音楽劇。本作で演出を務め、タエ役を演じる菜月チョビと、鹿殺しには初参加となる髙嶋に意気込みを聞いた。
写真:江森康之
——髙嶋さんが、劇団鹿殺しに出演されることを決めたのは、どういった思いからだったのでしょうか?
髙嶋 思いも何もないです。いつも観ている、大好きな鹿殺しから声がかかったので、本も見ず、内容も聞かずに、とにかくやると。そういう感じでしたね。
————髙嶋さんから見て、鹿殺しの魅力はどんなところですか?
髙嶋 説明不可能な情熱とエネルギーですね。それが最高なんです。『俺の骨をあげる』も、説明のしようがない魅力がある作品だと思いますよ。公演を観て、お客さんが感じたものがすべて、という作品になると思います。
————菜月さんは、髙嶋さんのどんなところに魅力を感じてオファーされたんですか?
菜月 大大先輩なんですが、純粋な本気さがあり、何事にも真剣な気持ちで取り組む姿に魅力を感じました。キャリアを重ねた方で、純粋さを持ち続けていらっしゃる方って、貴重だと思います。それと、髙嶋さんは、本質を見て判断してくださる。鹿殺しに対しても、理屈や理論じゃなく、もっと生き物の根底のところで、「この人たちは必死で生きているから本物だ」みたいな感じでとらえてくださっている。原始的で動物的なところで感じて突き進むという感覚に、勝手にシンパシーを感じています。安心できるなと。
髙嶋 (それが)鹿殺しイズム!
菜月 あはは(笑)。そういった私が感じている髙嶋さんの魅力は、今回演じていただくキャラクターにも通じるものがあるので、そのキャラクターを通して、髙嶋さんの熱量や真剣さをお客さんが感じ取ってくださったら嬉しいです。
————菜月さんのお話をお聞きして、いかがですか?
髙嶋 いや~久しぶりに真剣な話しました。いつも下ネタばっかりなんで。でも、確かに、(自分は)どの作品でも真剣っていうのはあると思います。
————ところで、髙嶋さんはロックがお好きとお聞きしました。鹿殺しといえば、やはり生バンドによるロックミュージックですが…。
髙嶋 俺、生のロックバンドがのった舞台に出たいっていうのが昔からの夢だったんで、それが今回叶ったんですよね! やっぱり、音楽は大音量で聞かないとダメ。誰もがすまして座っているような音量じゃダメなんですよ。そういう意味でも、めちゃくちゃ楽しみです。
————ご自身の役柄はどうとらえてらっしゃいますか?
髙嶋 僕が演じるのは、タエのお父さんで、しがない覆面レスラー。娘が生まれた時に膝を壊してしまって、そこから転落人生が始まるという役どころですが、それだけじゃ語れない。奇想天外で、何が起こるかわからない。プロレス、ロック、卓球、デスメタルってものが渾然一体となった、単純じゃない作品なので。三島由紀夫作品などの四重、五重構造と違う種類の多重構造です。
菜月 そうですね。
髙嶋 (お客さんには)頭で考えるんじゃなくて魂で感じて欲しいですね。あまり深く、細かく考えずに。
【動画】劇団鹿殺し ストロングスタイル歌劇『俺の骨をあげる』PV

————なるほど。本作は、『BONE SONGS』の改訂版となる作品とのことですが、現在、菜月さんの中ではどのような演出プランをお考えですか?
菜月 5人の骨たちを大きく、より深く描きたいなっていうのがまずあります。なので歌っていただくタイミングが早くなり、そして増えていくと思います。
そして、今回、劇団鹿殺しの音楽劇に、初めて「ストロングスタイル歌劇」という名前をつけたんです。鹿殺しは、バンドをオケピに入れ込まず、そこにドンって置いていますが、そういうことで気を散らされるようなひ弱な物語じゃない。これまで、ライブハウスでお芝居してきたり、路上でやったりと、いろいろなところでやってきて、どんなところでも役者が魅力的だったら、ちゃんとかっこいいっていうことがわかってきた。そうやって作り上げてきたものが、鹿殺しの「ストロングスタイル歌劇」だと思うので、そのスタイルを確立したいです。
それから、私たちは、限られた人数でどこまで世界を変えていくか、広げていくかということを意識してやってきたという一面もあるので、今回は、それをよりわかりやすい形で見せていこうと思っています。今までは、カーテンコールになるまで、誰がどんな早着替えをしていたのかもわからないし、何人でやっているのかもわからなかった。でも、今回は、「この人数でやってます」というのをお客さんに意識してもらいながら、その人がどう変わって、どんなに世界を変える力があるのかっていうのを伝えたい。出演者たちの生き様や力を伝えられる作品にしたいです。
————高校生のタエが出会う卓球選手・秀二役の相葉裕樹さんと、タエの息子・歩役の伊万里有さんも、鹿殺し初出演ですね。お二人の印象は?
菜月 髙嶋さんも初めての共演ですか?
髙嶋 お二人とも、共演したことないですね。
菜月 私もご一緒するのは初めてなんですが、鹿殺しのメンバーが共演したことがあって、メンバーから名前が上がった方たちなんです。(本作は)すごくダイナミックな作品なので、身体的にも大きな演技ができる人がいいなっていうことと、この作品自体を理解してくれそうなスピリッツがある人ということで、お名前が上がったんです。それで、私が会いに行って、オファーしました。
相葉さんは、普段、ミュージカルにたくさん出られていて、きれいな役をやっていることが多いのですが、今回、お願いした秀二という役は、卓球の王子様として出てきますが、自分の策に溺れて無様に死んでいく滑稽な役です。なので、どうだろうと思っていたんですが、お会いしたら、オファーする予定だった役よりも、よりふざけた役をやりたいとおっしゃってくださったので、気が合うなって思いました(笑)。かっこいいところだけを見せたいという若い人が多い中、人間的に愛されるということをわかっている方なんだなと感じましたし、すごく頼りになると思いました。
髙嶋 伊万里さんはどういう方ですか?
菜月 すごくまっすぐで、でもとてもいい意味で馬鹿な感じがある方です(笑)。陰と陽で言ったら、陽。思い込みすぎないところがいいなと思ったんです。伊万里くんは、30歳なんですが。
髙嶋 30歳でいい意味でバカ!それ最高ですね!!
菜月 そうなんですよ。変に大人になってないというか…。30歳になると、そろそろ小難しくなってもいい年齢ですから。
髙嶋 30代は、一番かっこつけて、色々と理論的なこと言ってみたり…。
菜月 そうそう、そういうのがない感じが逆にいいなって、楽しみだなって思います。なかなか素直に30歳は迎えられないですからね。あ、相葉くんも同じ30歳ですね。
髙嶋 30代の俳優って演技論が好きな人がけっこう多いんですよ。
菜月 映像の人もそうだっていいますもんね。鹿殺しは、誰も演技論を話さないんです(笑)。だから、その辺も合いそうだなって思いますね。
————最後に、公演に向けての意気込みを。
髙嶋 とにかく稽古をしたいです。俺、動いてないと、不安なんですよ。ちょっと時間が空くと、「やばいよ、何かやらないと」って、「しょうがないジムに行こう」って。だから、今は、台本が早く欲しい。練習したい。そんな意気込みです。
菜月 すぐに渡します(笑)。私たちの企画で、サンシャイン劇場に挑戦するのは二度目なんですが、これって、下手したら劇団が潰れてもおかしくない大きな挑戦なんです。よそから入ったお金ではなくて、私たちの積み上げた歴史でサンシャイン劇場でやるという、大きな挑戦を一緒にしてくださるのに一番ワクワクしてくださる皆さんが集まったので、この機会を無駄にせず、燃え尽きたいです。それぞれ生きてきた年数と経験がそこに出るような人間が19人いるので、19人分の人生がちゃんと舞台に乗って、生命力にあふれたものを作りたいなって思ってます。
髙嶋政宏・菜月チョビ
取材・文・撮影=嶋田真己

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